【明日方舟】ファートゥース(远牙 Fartooth)の詳細(性能やスキル、資料)

造影検査の結果、臓器の輪郭は不明瞭で異常陰影も認められる。循環器系源石顆粒検査の結果においても、同じく鉱石病の兆候が認められる。以上の結果から、鉱石病感染者と判定。

【源石融合率】5%
感染状況は軽度ではあるものの、体表には少量の源石結晶が見られる。

【血液中源石密度】0.21u/L
症状は比較的安定しており、コントロールもされているため、現在は観察が主となっている。

騎士競技は確かに金銭を手早く集める事が出来る。しかし、治療費を支払う手持ちが無ければ、彼女の今の状況のようにはいかない。その点で言えば血騎士はたしかに多くの人により多くの選択の機会を与えたと言えるだろう。

――ワルファリン

レッドパイン騎士団とロドスの協力によって、多くの感染者騎士がロドスを訪れて治療を受けている間、騎士たちのそれぞれの性格についての大まかな認識が得られた。

遠牙騎士は多くの人から見れば、口数が少なく、冷静で内気な人物だ。もともと独立騎士として「遠牙」の称号を得ていた。

この感染者の騎士嬢は多くの大騎士団や企業からの招待を拒否、騎士団の設立を検討していると公言していたため、この選択は彼女に少なからぬ迷惑を掛けていたものの、同時にレッドパイン騎士団への加入をきっかけとなった。

騎士団の他の初期メンバーに比べて、加入が遅い遠牙騎士と仲間たちの間には多かれ少なかれすり合わせが必要な点はあったものの、彼女と炎尾達や、ロドスでの他のオペレーターとの付き合いを見るに、遠牙騎士は意外にも彼女の外見が示すほど孤高で近づきにくい訳ではなく、硬い殻の下にある、この感染者騎士の態度はかなり穏やかで柔軟なものだった。

遠牙騎士はメジャー予選においても輝きを放ち、その実力は侮れないものがある。

有り難い事に個人の実力はレッドパイン騎士団の中でも指折りではあるが、遠牙騎士は実力者の中で多かれ少なかれ流行っている病である――傲慢さは無い。

この小柄な騎士は協力が上手く、団体の行動の中で彼女は往々にして自発的にチームメートと協力をし、もし主戦力を担当する必要があるのならば彼女の攻撃は凶暴かつ強勢、もしチームの中に他に主戦力が配置されているのであれば、遠牙は策略を変え、彼女は本当に風の音を聞き、風の中にある最も細かいメッセージを捕らえ、機敏かつ柔軟に遠隔地からチームを支援する。

そして、もう一つ注目すべきは最初に接触したとき、遠牙騎士の簡潔で独特な話し方は一時ながら、一部のオペレーターに誤解を与えるという事だ。

しかし、すぐに理解する事になるだろう。

彼女はまず困惑する短い言葉を半分だけ吐いて、それから説明口調で補填する。

一人で考えることに慣れ過ぎていて、常に即座に頭の中で重点をまとめて結論を出してから口に出すのだ。その後にみんなが困惑している事を意識し、続いて補足となる説明を追加している。

遠牙騎士の本名はユスティナ・ヴァレンタインであり、カジミエーシュの静かな小さな田舎で生まれ、成人するまでは普通の田舎の少女だった。

ユスティナは小さい頃から何処にでもいるカジミエーシュの子供のように騎士に憧れていた。キラキラした鎧を着た騎士は威風堂々としていて、強くてかっこいい、みんなの崇拝の対象だ。

ユスティナが成長時期には騎士競技は次第に盛んなものとなっていき、かつての騎士精神はカジミエーシュ人に忘れられてはいったものの、耀騎士の競技場での活躍により、ユスティナが憧れていた騎士のイメージがあまり壊される事は無かった。

自分の心の中にあった騎士の模範に対して、その後の出会いの時の双方の立場は当初のものとは程遠いものだった。憧れの相手に初めて近距離で接した時のユスティナの気持ちは本人だけが一番よく知っている。

しかし騎士になる夢を抱いて、大人になってから大騎士領への旅に出た田舎の女の子は、理不尽な厄運が突然自身に降りかかるとは思ってもいなかった。

ユスティナが大騎士領に到着、騎士に登録する前に道中の予期しない事によって鉱石病に感染していた。血騎士がまだ優勝していなかった当時、感染者が騎士になりたいという事は夢を語るのと同じだった。

夢は予想外の状況によって理不尽にも絞め殺され、目標を失った少女はどこにも行けず、血騎士が勝つまでは帰る場所も無かった。

感染者騎士法案の制定を推進するというニュースが伝えられるまでは。

徹底的に意気消沈した後の再び燃え上がる希望の火は、真の意味で灼熱を帯び、人々はそれによって火傷を負う事になる。

しかし再び歩みだした事によって、手放す事を出来はしない。

遠牙の経歴は特殊なものでは無く、すべての感染者騎士と同様に正式な騎士資格を得るためには一般人よりも多くの努力を払わなければならない。

このような体格からして優位性のない少女がどのように血生臭い不法競技の中で生き残り、どのように騎士の資格を獲得して、最終的には予選で大いに輝きを放ち、人気となって称号を獲得したのかは想像しにくい。

この少女がメジャーに参加した時、議論は多かったものの支持者もいた。また収入も少なくは無く、大衆の目には例外となる血騎士を除いた、一人の感染者騎士が手に入れる事ができる最高の結果でもあった。

しかし、このすべては遠牙本人にとってはそこまで重要なものではないのかもしれない。自ら騎士団を結成しようとしたのも、レッドパイン騎士団に加わることに同意したのも、遠牙が望んでいるものは名声や富という単純なものではないことを十分に説明している。

彼女はもう騎士ではある。しかし、田舎の少女であるユスティナの夢は本当に実現したのだろうか。

感染者となった後、再び一縷の望みを得て、この細い糸をしっかり掴んでよじ登ってきたものの、上に行けば行くほど、憧れていた騎士とは反対の側面に触れた。

どんな富や名声を持つよりも、憧れた騎士の栄光よりも、ユスティナは家に帰りたいだけなのかもしれない。

ロドスで治療を受けていた間、騎士団の仲間と一緒にいた時間を除いて、無人の艦橋の上層部が遠牙がよくいた場所だった。

彼女はそこでかつて畑で働いて、お金を貯めて自分のために最初の弓を買ったとき、自分が将来どんなカッコいい技を使うことができるかを夢見ていた。

彼女は陽の光の香りを放つ干し草の山を懐かしみ、耳元を吹いた風と彼女の吹く小曲を聞いていた親戚や友達を懐かしんでいた。

彼女は十分にカッコいい技を使うことができた時も、彼女はもう過去の簡素で静かな田舎の生活に戻りたいだけでしか無かった。

彼女が一人で高い所に座り、自分の木笛を吹き鳴らした時、風が笛の音を故郷まで持ち帰ってくれる事を望んでいる。まるで自分もここから故郷に帰る事が出来るかのように。

もちろん、ユスティナは誰よりもよく分かっている。過去の生活に戻るという事は感染者にとっては贅沢な事なのだという事を。

通常、遠牙はいつも騎士団の他のメンバーと共にる。野鬃と灰毫の口論には頭が痛くなるが、それでも黙って仲間と共に行動をする。

灰毫と野鬃にはそれぞれが目指す目標があり、遠牙はレッドパイン騎士団に加わって残っている動機も至極単純なものだ。

炎尾は彼女を誘った。彼女たちは同じ感染者の騎士であり、同じ立場を持っている。レッドパイン騎士団は彼女を仲間に受け入れて彼女に安らぎを与えた。

群れから離れて帰る場所がない人にとって、それ以上の理由は必要は無い。遠牙はレッドパイン騎士団が今後どのような方向に発展するかは気にしてはいないものの、仲間が此処にいる限り、彼女が今所持している帰属先がある限り、彼女にとってはそれで十分なのだ。

彼女は自分が大切にしているものを守るためには全てを惜しむ事は無いだろう。