【明日方舟】緘黙テキサス(缄默德克萨斯 Texas the Omertosa)の詳細(性能やスキル、資料)

造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定。

【源石融合率】0%
鉱石病の症状は見られない。

【血液中源石密度】0.12u/L
テキサスの経歴を見るに、このような危険な環境で感染しなかったのは奇跡とも言える。或いは彼女の腕の良さの証明でもあるだろう。

ロドスの旧友。

テキサスが後にヴィジルとペナンスの二人を連れてロドスを訪れた時、多くの人が衝撃を受けた。何しろ身なりを見るだけで、ヴィジルとペナンス、そして彼女の体からはシラクーザの息を感じる事が出来たのだから。

彼女はシラクーザから帰ってきたのだ。彼女のことをよく知っているオペレーターはこの結論について少し疑問に思っている部分はあるものの、結局の所のテキサスへの共通認識は――彼女はシラクーザと関係はあるが、彼女の過去に何が合ったのかは誰も知らないという事だ。

幸い、彼女の後ろにいたペンギン急便の面々はそんな疑念を払拭してくれた。テキサスに対してのもう一つの共通認識はペンギン急便にいる限り、テキサスはテキサスでしか無い。

それと共にシラクーザでの経験やロドスを訪れた二人の人物を知ることで新たな共通認識も生まれたのだが。

テキサスは本当に恐ろしいという事だ。

テキサスにとってジョバンナとラップランドはクルビアとシラクーザでの過去をそれぞれ代表している。

或いはもしかすると七年前の事が起きなければテキサスは無口なラップランドのようにも、殺人鬼のジョバンナのようにもなっていたのかもしれない。

ラップランドはシラクーザへのヒステリーを意味しており、彼女と向き合う事は出来ないが、他に居場所はない。

ジョバンナはクルビアへの迷いを意味し、彼女は他にも出来る事が分かっていながらも、どうしたら良いのか迷っている。

事実、テキサスはもし自分が全てから逃げ出さなければ、彼女たちと同じような道を辿っていたかもしれないという事を理解している。

そのため、彼女はラップランドが目の前に現れた時、ジョバンナと向き合わなければならなくなった時、彼女は懐かしさを覚えつつも罪悪感も感じていた。

だから彼女はラップランドの様々な行動を容認し、ジョバンナの避難も受け入れたいと考えている。それは彼女が自分のファミリーに属するもの全てを否定しながらも、決して消す事の出来なかった文化の中で育ったからという理由に他ならないだろう。

彼女が遂にこの全てを捨て去ると決心した時、彼女は自分が支払った代価を知る事になった。
それに価値はあったのだろうか？

彼女は絶えず、その事に対して自問自答していたが、答えが出来る事は無かった。

クルビアとシラクーザから離れた後、彼女は過去の生活に代わる新しい生活を必死に探すしか無かった。

彼女にとって、その生活の中に追い求める価値のあるものが無かったとしても、その人生そのものに追い求める価値があったのだ。

幸いにも彼女はそれを見つける事が出来た。

テキサスとペンギン急便は新ウォルシーニに長期滞在することを選びはしなかった。

所用が終わった後、彼女はすぐに他のペンギン急便のスタッフ達と一緒に龍門に戻り、ペンギン急便を再開させた。彼女たちの生活は何も変わっていないようだ。

彼女がヴィジルの手助けをするというのは事実だ――新ウォルシー二が彼女を必要とする時、彼女はそこにいるはずだ。

現在のところ、新ウォルシーニの設立にはシチリア夫人の後ろ盾があるので短期間ではあるものの、ほとんどのファミリーは様子見する事を選んだ。今の情勢は決着が着いた後というよりも嵐の前の静けさのようなものだろう。

テキサスはそれをわかっている。テキサスだけで無く、ペンギン急便のスタッフ全員がだ。

現在、龍門と新ウォルシーニの間をペンギン急便が往復しているのはテキサスのためでは無く、ソラのためだ。

『テキサスの死』の成功でソラは少なからぬ人気を集めたが、それを知ったSIRENレコードはソラにはこのチャンスを掴んでもらい、シラクーザで女優業を続けてもらいたい期待、即座にソラのビジネス戦略を変更した。新ウォルシーニはさまざまな角度から言ってもソラが飛躍するために最適な場所だった。

そこでソラは新ウォルシー二に頻繁に向かう必要が出てきた。

一方、この機会を無駄にしたくないクロワッサンはバイソンを見つけて、フェンツ急便と連携、ヴィジルと相談をして多国籍物流ルートを構築しようとした。一朝一夕で出来るような事では無いが、クロワッサンは楽しんでいるようだ。

エクシアはシラクーザのピッツァを食べ尽くして一番美味しいピッツァを見つけるという壮大な野望を企てていた。

そのため、一時期はテキサスが一番暇となっていた。

しかし、彼女達を結びつける何かが有る限りは彼女達はずっと共にいて、進退を共にするだろう。

テキサスは昔と変わる事は無かった。彼女はテキサスという姓を再び名乗って新たなファミリーを作る事を選んだわけでも、ヴィジルの元について新ウォルシーニの一員になる事を選んだ訳でもない。新ウォルシーニというシラクーザの都市が行きつけになったという程度の変化しか無い。

彼女の態度は非常に明確だ。全てが終わった後、シラクーザに残る選択はせず、自身の足跡を残したくは無いと考えていた。ヴィジルも彼女の意思を尊重し、ペンギン急便が新ウォルシーニに設立した支社には全く手を出さなかった。そのため、最後のテキサスがウォルシーニに亡霊のように現れて消えた後、どこへ行ったのか、あまり知られていない。

もちろん状況は常に変化している。

ベルナルドが巻き起こした滔天の大波は一時的には静まったものの、各ファミリーが隠していた野望は再び動き始め、シラクーザの過去のバランスは揺らぎ、新ウォルシーニが平和的に発展する時間はほとんど無い。

その一方で狼の主の間で何年も続いていたゲームはいよいよ表面化しつつあり、このゲームがシラクーザにどのような影響をおよぼすのか、終盤に差し掛かってもよく分からないままだ。

シラクーザに大きな変化が訪れる事は誰の目から見ても明らかだろう。

何か大きな理想を実現するために彼女は大きな力を手に入れるべきなのか、それともそれに頼るべきなのか、テキサスはこの問題の答えに対しては肯定的ではあったが、最終的に彼女はヴィジルやペナンスと共に一線を画す事を選んだ。

彼女の考えは単純だ。彼女はそのような偉大な理想に属している訳ではなく、彼女はただ良識に基づいて何かに腹を立てている一般人であり、彼女が彼らに約束出来る事はたった一つのみ――シラクーザが完全に変わるまで、彼女自身が骨身砕けるまで戦い続けるという事のみだ。

テキサスの帰還を祝うパーティでエンペラーは一時だけ興に乗り、ペンギン急便の設立について話し始めた。

当時、エンペラーはクルビアにてストリートアートの研究を行っていた。ある日、彼は突然特別な臭いを感じたのだという。実際、クルビアに足を踏み入れた時には狼の主がそこにはいたのだ。

興味を持った彼は何事かと見に行くと、ザーロが人間と取引をしている様子を見かけた。その取引相手は誰でもない、テキサスだったのだ。

「そんな目で見るなよ、テキサス。まさかお前も本当に偶然道で出会ったなんて思っちゃいないだろ？」

エンペラーは狼の主と取引が出来る人物に興味を持ち、しばらくテキサスを尾行したが、彼女の中には混乱と名も付けられないような炎しか無かった。長い間彼女は歩く死体のような泥にまみれた人生を送っていたのだ。

「その頃、俺様は既にテキサスファミリーで何が起こっていたのか知っていたんだよ。若い者には手を差し伸べてあげなきゃならないだろ。動き始めたら考える時間なんてものはねえ、俺様はあいつを半ば強引に引きずって、この物流会社を設立したんだよ」

「あれ」

「どうした？」

「ボスが何をこんなに調子の悪い事を言い始めるんだろうって思ってたけど、そんなにも真面目な人だとは思わなかった」

「お前たち、少しはボスを尊重しろよ１」

「だからボスはラップが好きなんだね。実はクルビアの影響を受けていたり？」

「違うな、ラップという芸術がクルビアで流行ったのは俺様の影響だ。」