

ヴァーミル
んん…?

ヴァーミル
…。


???
私の歌声がもう聞こえたのですか。隠れる必要はありませんよ、こちらには悪意はありません。

ヴァーミル
剣子の手を持った奴は全員そう言う。だが、最後はいつも血を見ることになるんだ。

???
剣子の手?私にはあなたの言葉の意味が分かりません。私はラテラーノ公証所――。

ヴァーミル
黙れ!お前は俺を騙すことは出来ない!

ヴァーミル
やったか!

???
いいえ。

ヴァーミル
え?!

???
失礼。

???
目標を窓を開け逃げた。反応はかなり早いようだ。

???
現場を確認。塩漬けの羽獣の肉、なめし用の棚、処理済みの牙獣の皮、手作りのナイフ、木質の道具。

???
弓は降ろしてください。あなたの位置は分かっています。窓の後ろで待ち伏せしているのでしょう。

???
繰り返しとなりますが、私にはあなたへの悪意はありません。

ヴァーミル
――いやだ!

???
あなたの警戒心は随分と強いようだ。

ヴァーミル
この矢をくらえ!

ヴァーミル
手、手で矢を掴んだ?

ヴァーミル
どうして…お前は何者なんだ!。

???
報告されていた通り、遺言の相続人は暴れて、交流しづらいですね。

???
以上が当人の遺言の内容です。

???
それ以外にも私からもお願いがあります。

???
シラクーザの森の中で、私は腕を一つしか持たないヴァルポの少女に出会いました。

???
彼女は過去の復讐に溺れ、血に染められた大地にひどく固執しているようです。

???
慈悲から私は彼女を助けようとしたのですが、それが彼女のプライドを傷つけてしまったのかも知れません。ですが、彼女の強情な生き方には確かに私は感動もしました。

???
その後、私は一時的に援助をしたのですが、これは彼女の執念を固めてしまったこと気付き、私の寝食を困らせるものとなってしまいました。

???
ですから私の全てを彼女に贈りたいのです。ほとんど何も無いですが、悲しい遺物だけは残っています。

???
――失礼、あなたの親戚リストにはヴァルポ人はいないようです。これでは私達の仕事に多くの迷惑を掛けてしまいます。

???
ですから、これは子供がいないラテラーノ市民が死を前に公証所に静かに申請をしたのです。

ヴァーミル
…

ヴァーミル
(あいつの体には血の気が無くて、しかも何だか嫌な感じがする…)

ヴァーミル
(また俺達の家を壊しにきたやつか、嫌だ、絶対に嫌だ!)

ヴァーミル
今だ!

???
なるほど、また落とし穴ですね。ここにはいろいろな方向に触れると発動するものがあるようだ。

ヴァーミル
聞け!ハンターの罠で死にたくないのならば、武器を置いて、そこから一歩も動くな!

???
これでコミュニケーションが取れるのであれば良いでしょう。

ヴァーミル
お前は誰だ?

???
ラテラーノ公証所執行者で今回の遺言執行人です。どうぞ『イグゼキュター』及び下さい。

ヴァーミル
ラテラーノ…?

イグゼキュター
『ヴァーミル』、あなたが私の依頼の対象です。

ヴァーミル
どうして俺の名前を知っている?

イグゼキュター
あなたのお名前は遺言者であるディランマットさんによって教えられています。

ヴァーミル
俺はそいつを知らない。

イグゼキュター
何らかの理由で彼は複数の仮名を持っていたようです。

ヴァーミル
お前は俺を何処に連れていくつもりなんだ?

イグゼキュター
秘密保持のため、私には言えません。

ヴァーミル
…ちっ、うそばかり付く奴め!ここで死ね!

ヴァーミル
俺はここを離れない。俺の父や母、祖父、祖母、友達もいる、俺の家族は、全員、全員…。

イグゼキュター
私の任務はあなたを連れて行くだけです。

ヴァーミル
でたらめ言うんじゃねえ!お前は自分の立場分かってんのか!

イグゼキュター
交渉は出来ない状況のようですね。

ヴァーミル
ふん、この森を歩くということは俺たちの獲物になるだけだ。

ヴァーミル
お前の足元に散らばっている骨は元々は獣や悪人だったものだ!

イグゼキュター
分かっています。拠点の周囲には罠が張られているということは。

イグゼキュター
落とし穴に、トラバサミ、地雷、自動矢。

イグゼキュター
安心して下さい、全て解除しました。落とし穴は初級レベルですが、依頼対象に怪我をさせてしまう可能性がありますので。

ヴァーミル
…。

イグゼキュター
私と一緒に来て下さい。

ヴァーミル
――!どっか行け!

ヴァーミル
一歩でも前に進んでみろ、お前を打つ!

イグゼキュター
また逃げましたか。

ヴァーミル
おい、どうして俺を助ける?

老いた狩人
わしもハンターなんだ。

老いた狩人
尊敬すべき同行者が腕を失ったんだ。血肉がぼんやりと牙獣の側に横たわっていてな。そんなもの見ていられる訳無いじゃないか?

ヴァーミル
ふん…お前はハンターなんかじゃない。俺を騙すことは出来ないぞ。お前からは泥の匂いがしない。

老いた狩人
はっは、お前には隠しきれないようじゃな。じゃが、あの光景を目の当たりにした時、幼いながら荒野を制服しているお前には感動をしたよ。これは本当のことだ。

ヴァーミル
それはどういう意味だ?

老いた狩人
ただのわしの独り言だ。

ヴァーミル
お前の頭の上にひかるものと後ろの飾りは一体何なんだ?

老いた狩人
お前さん、ラテラーノ人を見たことはないのか?

ヴァーミル
ああ。

老いた狩人
これは…わしが捨てた故郷がわしに残した印だ。

ヴァーミル
人は家の地を捨てることは出来ない。

老いた狩人
まあ、とにかく、いろんな事があってな。さあ、立ってみなさい。

老いた狩人
これを入れてあげるとしよう。

老いた狩人
これは…?腕?鉄で作った腕?変なものだな。

老いた狩人
荒野の子供に敬意を表するよ。

ヴァーミル
お前は修理屋なのか?

老いた狩人
昔の仕事で多くのことを学んだんだ。

ヴァーミル
…。

ヴァーミル
…お前は俺を救ってくれた。お前は悪いやつじゃない、復讐のためには腕が必要なんだ、ありがとう。

老いた狩人
復讐か…わしはお前の運命は救えないな。

老いた狩人
だがこの腕で弦を引っ張る時は考えてみるのもいいじゃろう、復讐以外に私達は何故生きているのかを。

老いた狩人
考えが足りないと、今の私のように落ちぶれてしまうぞ。

ヴァーミル
俺は――。

老いた狩人
”復讐のために生きている”とは言わないでおくれ、それは古くてとてもつまらないものだ。

老いた狩人
…そう、意味が無いんじゃ。

ヴァーミル
(ラテラーノ…あいつはラテラーノ人といった…。)

ヴァーミル
(あいつは本当に…。)

ヴァーミル
あ!また来やがった!痛!

イグゼキュター
ディランマットさんの判断は正しかったようですね。

ヴァーミル
何?

ヴァーミル
くそ、いつここに追いつきやがった?

ヴァーミル
うわ!離せ!

イグゼキュター
止まりなさい、あなたが遺言相続人である以上、私はあなたを傷つけることは出来ません。

イグゼキュター
これは彼からの手紙です。

ヴァーミル
――!!

イグゼキュター
何故まだ抵抗するのです?

ヴァーミル
…手紙にはあいつの気と血の匂いがする。あいつに何をしたんだ!?

イグゼキュター
ラテラーノからここまでの旅はとても長い。ここに来るまで匂いの分子を留めておくことは出来ないのですが。

ヴァーミル
答えろ!答えないならここで死ぬことになるぞ!

ヴァーミル
ぐぁ!

イグゼキュター
まずは力の差を見せつけることが会話の成立の役に立つと判断しました。

イグゼキュター
次に遺言相続人を尊重し、回答させて頂きます。

イグゼキュター
ディランマットは手術台で死亡しました。穏やかな死ではありません。彼は不治の病を患っていました。

ヴァーミル
お前――!手を離せ!

イグゼキュター
これが彼の選択です。

ヴァーミル
おい!お、お前何やってるんだ!

イグゼキュター
オリジ二ウムが体を突き破り、感染は悪化している。

ヴァーミル
お前と関係ねーだろ!

イグゼキュター
執行対象が拒否を堅持し続ける場合は原則として諦めます。

イグゼキュター
ですが依頼人と上司は私に付属条約を与えました。必ず実行せよと。

ヴァーミル
――お前何をするつもりだ?

イグゼキュター
”ヴァーミルを生きながらえさせろ”。

イグゼキュター
要求がおおまかなものなので実行するのは複雑です。ご協力のほどお願いいたします。

ヴァーミル
…それもあの人の依頼なのか?

イグゼキュター
はい。彼は全ての財産の売却をし、公証所に追加の手数料をと将来の治療費を支払いました。

ヴァーミル
でも、どうして?あいつはただこの森を通り過ぎただけなのに…。

イグゼキュター
彼はあなたに生きていて欲しいのです。

ヴァーミル
だからどうしてなんだよ!

イグゼキュター
彼はあなたに生きていく価値があると思ったからです。

イグゼキュター
遺言をきちんと届けられた以上、私の仕事はこれで一段落しました。

ヴァーミル
な…!いつ俺を詰め込みやがった――!

イグゼキュター
次の行動に移す前に、あなたには返事を聞かなければいけません。

イグゼキュター
”あなたは生きたいですか?”

ヴァーミル
…。

イグゼキュター
お答え下さい、そう思う、そう思わないか。

イグゼキュター
私たちには時間はあまりありません。

ヴァーミル
俺は――

ヴァーミル
ところで、そのロドスというところは本当にこの奇妙な病気を治すことは出来るのか?

イグゼキュター
オリパシーを根治出来る人はいませんが痛みを和らげることは出来ます。

イグゼキュター
今まであなたがウルサス人にしていたことを全て考慮するに、単独での行動はお勧め出来ません。

イグゼキュター
それに私も丁度ロドスに行き、別の契約を履行するところです。

ヴァーミル
お前は俺を誘っているのか?

イグゼキュター
これは非常に合理的だと思いますよ。

ヴァーミル
ふん、嫌だね。

ヴァーミル
俺はまだやりたいことがたくさんあるんだ。この土地を離れる前に家族とも別れを言いたい。

イグゼキュター
ここは危険です。憎しみは一方の妥協だけでは終わらないのですよ。

ヴァーミル
ふん…よく知っているさ。

ヴァーミル
何を言おうが邪魔はするな。全てが終われば…ロドスに行く。それで良いだろ?

イグゼキュター
考えているのです。

ヴァーミル
何?

イグゼキュター
もし亡命者が再びあなたのことを見つけたらと思って、私の銃弾の備蓄が十分か考えているのです。

ヴァーミル
銃弾…?。おい、お前、俺と一緒に荒野を回るつもりなのか!?

イグゼキュター
あなたの回答を聞くに、あなたは公証所からの遺言状を受け取ったと見なしました。

イグゼキュター
遺言はまだ履行されていません。あなたをこのまま放っておいて危険に晒す訳にはいきません。これは私の義務です。

ヴァーミル
お前の助けなんて必要ねえ!俺はいつも一人で――

イグゼキュター
それにわざと妥協をし、その場から逃げる可能性もあります。

ヴァーミル
ちっ。

イグゼキュター
それでは遅くならないうちに出発しましょう。

ヴァーミル
俺はお前に承諾はしてねえからな、お前のような他人がくる必要は…おいまて。何処に行く?どうしてその方向を知っているんだ!?

イグゼキュター
調査の結果です。

ヴァーミル
お前の足元に――

イグゼキュター
落とし穴はもう解除しました。着いてきて下さい。

ヴァーミル
ああ――この変人め、俺はお前を遅かれ早かれ――!