ケルシー(KAL’TSIT’・凯尔希)
【記録】
医者は注射器を握った右手を挙げて私に難解な文句を言ってきた。
「君の旅が収穫満載で終わることを祈るとしよう。つまり君が――私達になるかもしれないということだが」
鉱石の結晶が埋め込まれたその手を見て、やっと意味を気付くことが出来た。結論的には手ぶらで変えることが最も良い結果になるのかもしれない。
「よく来たな?心拍が早くなったようだが。すまない、落ち着かせたかっただけなんだが」
「大丈夫だ…。彼女の能力は本能的に答えることなのだから」
「あいまいな言い方はあまり好きじゃない。だが、今の発展度合いであれば君の答えは確かにどうでも良いだろう。君は自分から見ても”知識欲”が旺盛な人だろうか?」
「唯一の疑問だが――。君はもう一度彼女に会いたいと思ったのか?それは君が私達になるということになるかもしれないが」