真夜中の龍門の街では昔から幽霊に出会うという噂がある。それらは過去の盛世を見学しようという誘いを掛けてくるが、時間を掛けてよく見分ける必要がある。「幽霊」は生と死であるということを。 0:00 A.M. 天気/砂塵龍門市区、商店街

孑
――。

ワイフー
ねえ、今のあなたの顔、とても怖いってこと分かってます?

孑
…戻ってきたのか。あの人達はもう調べたのか?

ワイフー
少し鼻につくところがありますし、あいつらに滅茶苦茶仕打ちをしたいですが、私一人で出来るようなことでは無いので。

ワイフー
事務所の連中に頼むかもしれません。

ワイフー
相手の勢力は小さくはないですし、あいつは直接教えてくれませんし、思わせぶりなことも…。

孑
あいつら?

ワイフー
あ。

孑
あ?

ワイフー
…彼の名前はあ。

孑
はあ…まあ、要するに簡単じゃないってことだろ。

孑
手伝ってやるよ。

ワイフー
…聞き取れませんでしたか?相手がただ紛らわしいだけの奴らならまだしも、組織や規模のある派閥組織なのであれば軽率に行動してはいけません。

孑
「軽率な行動をしてはいけない」つっても不可能なことでは無いだろ、なあ。

ワイフー
どうしてわざわざ言ったことをほじくるのです?

孑
冗談を言っている訳じゃないんだが。

ワイフー
…おじいさんは無事だったのですか?

孑
怪我は重くはなかったが、それは重要じゃねえ。

ワイフー
――そうです、確かに重要では有りません。しかし真っ黒な事件であれば余計なお節介はしたくはありません。

ワイフー
ですが私の前で罪のない人が傷つき、奴らが勝手な真似をさせることだけは出来ません。

孑
…ありがとう。後でつみれを奢るよ。

ワイフー
つみれは必要ありませんが…。

ワイフー
そうだ。

ワイフー
今夜の事件にはペンギン急便も関係しています。彼らは誤魔化そうとすらしていません。

孑
あいつらは悪い奴らじゃない、多分巻き込まれただけだろ。

ワイフー
今年だけで何十回トラブルに巻き込まれているんですかね?彼らはもっと注意すべきでは。常にトラブルを起こして良いという訳ではありません。

ワイフー
彼らに会う機会があれば、警告する必要がありますね。


カポネ
砂、オリジ二ウムアーツ、アーツ、ふん。

カポネ
思うに龍門の裏の面を操っている化け物は本当に単なるお飾りじゃないってことだな。

マフィア
カポネさん、それはどういう意味で?

カポネ
一番手出ししちゃいけねえ人物ってことだ、違うか?

マフィア
マウスキングですか?ですが俺たちはボスとペンギン急便も同時に対処をするべきでは…。

カポネ
まだ龍門の座は半分ある。そうだが、状況は楽観的じゃない。だから一歩足りとも間違えられない。

マフィア
カ、カポネさん、何をしているのですか?クロスボウを置いて下さい!

カポネ
ファミリーを裏切るっていうのが本当に些細なことだと思うか?

カポネ
俺の龍門に根を下ろしたい。ガンビーノを捨てて生きていく。こいつらの顔を全て覚えてな。

カポネ
お前はその中にはいねえ。ガンビーノの犬は死ね。

カポネ
出てこい。

ガンビーノ
お前のことを恩を忘れるような馬鹿だと思っていたが、人の心を買うっていうのにはそれなりの方法があるんだぜ。

カポネ
そういえば、それはお前が教えてくれたな。

ガンビーノ
何故それを覚えていない?

カポネ
お前はかつて俺の忠誠を勝ち取ったが、また俺を失望させた。俺はお前の二の舞にはならない。

ガンビーノ
裏切りの意味っていうのをお前は知る必要があるな。

カポネ
裏切りはシラクーザでは最も汚い罪だ。だが残念ながらお前が抱いている栄誉というものは龍門では価値はない。

ガンビーノ
これを受け取れ。

カポネ
――スペードのJ?

ガンビーノ
お前は言ったな、お前はカードを隠す速度が遅すぎると!

カポネ
お前の剣は更に遅くなった、ガンビーノ。ペンギン急便との殺し合いで怪我でもしたか?それとも古傷が開いたか?

ガンビーノ
お前の弱さが俺を失望させた。ただ俺は血生臭い末路が裏切り者にはお似合いなのか考えているんだ。

カポネ
今、余ってるカードはお前だ。

カポネ
それで?何をするつもりだ?打倒ペンギン急便、打倒マウスキング、打倒龍門近衛局、打倒ウェイ・イェンウーでもやるのか?

カポネ
どうせ夢を見るなら、覚めないほうが良いんじゃねえのか。

ガンビーノ
安心しろ、少なくとも俺はお前の骨はシラクーザに送ってやる。それで、お前の故郷でお前の骨を粉々にしてやるよ。

マフィア
あんた達、やめてくれよ――!?

ガンビーノ
――何?

カポネ
邪魔者がいるみたいだな。

ガンビーノ
…お前を早く殺さなかったのは俺のせいだ。だが、まずはよそ者を迎える必要がある。

マフィア
あいつを抑えろ!おい!俺の足を踏むな…。

マフィア
こいつ、炎国のカンフーか!?あの女に全く触れられない!

マフィア
素手でどうするつもりだ――ぐはっ!

ワイフー
――ねえ。

ワイフー
ところで、あなた達は?

ガンビーノ
俺は罪の無い奴を殺したくはないが、しかし――。

ガンビーノ
お前は俺のチームの所を通って、俺の目の前に現れたっていうのに服は少しも汚れていねえ。

ガンビーノ
お前がマウスキングか?

孑
…お前ら、さっき貧民窟にいたか?

カポネ
シシリアンの決闘を中断させて、更には質問すらするのか?

孑
…ああ、どうやらお前達みたいだな。

カポネ
――!?

カポネ
こいつ、ぐっ、何を――!

ワイフー
あなたは見ているだけ?

ガンビーノ
誤解するな、包丁を使って殺すのも悪くはないってだけだ。それに俺自らが見送る必要もねえ。

ガンビーノ
だが俺が見た限りでは…お前も只者じゃねえな。

ワイフー
真面目に投降することをお勧めしますよ。

ガンビーノ
笑わせるな!

ガンビーノ
お前とあの狼の腕前は同じくらいだ。まさかマウスキングがまだお前のようなカードを隠しているとは思ってもいなかったぞ!

ワイフー
何のカードか、あなたが何を言っているのか分かりませんけども。おとなしくうつ伏せになって警察官に会いに行きましょうね――!

ガンビーノ
は!

カポネ
ちっ、思い出したぜ。お前には会ったことがある。お前は生鮮商人を装った討ち手だったな。

カポネ
おかしいな、特に注意するべき相手ではないと思っていたんだが。

孑
いや、それは誤解なんだが…まあいいか。

孑
今日、今、俺はそのつもりだ。

ワイフー
はあ!

ガンビーノ
ぐ!

カポネ
小娘にひどくいじめられているようだな、ガンビーノ。

ガンビーノ
お前を殺すのは後の話にしてやる、まだ喜ぶのは早いからな。

孑
お前は何度ものチャンスを使って奇襲を掛けたいと思っている。卑怯な奴だ。

ワイフー
拳が正しくない、それでどうやって勝つのです?

ワイフー
あなた達は自分たちがやりたい放題してきた暴力に対して代価を支払わなければいけません。


董じいさん
…こんなにも長く待たしたのはわしをここに連れてくるためか?

董じいさん
何のためだ?墓探しか?それとも死んだらわしの隣で一緒にいたいのか?

マウスキング
お主は何年も商売をしている割には、どうしてそんなにも口が悪いのじゃ。

董じいさん
客相手にはこんな態度はせん、お前は客ではないからな。

マウスキング
気持ちを傷つけおって。

マウスキング
――。

董じいさん
…これは发の墓だ。お前は知らないかもしれないが。

董じいさん
これは黄癬のチンで、閻魔の所に行きおった。

董じいさん
後ろには呉さんと鉄狂人が住んでいる。それに安老八も。安老八家は金持ちだったから、あいつのために山の斜面に配置してやった。

マウスキング
人が多いな。

董じいさん
良いんだよ、少なくとも隣同士なんだから。儂らもこれからの住むべき住所は考えるべきだな。

マウスキング
それを考えるのはまだ早いじゃろう。それとも何か不治の病にでも掛かっておるのか?

董じいさん
早くはねえよ。儂達はもうあまり長くは生きることは出来ないし、それにいろんな経験もした。

董じいさん
儂のような人に兄弟たちは命を掛けて儂の命を救ってくれた。何日か平穏な日々を過ごし、自分の一生を振り返って思い出したんだ。

董じいさん
大したことじゃねえが、大きな事をしただけに平穏な暮らしは出来ねえんだなって。

マウスキング
何を言うとる、つみれを売って悟りでも開いたか?

董じいさん
正直なところ、料理の値段ってのはマフィアよりもずっと高いもんだ。

董じいさん
ボス、お前は本当に将来わしをお前の隣人にしようという考えは無いか?ここは風水的にも良いし、共同で買えば墓地はずっと安くなるんだが。

マウスキング
もう良いか?

董じいさん
冗談だよ、冗談。えっと、お前には娘がいるんだっけか、俺は一人だけど。

マウスキング
貧民窟の子どもたちがお主に従っておるだろう。孑という男の子がいるだろうて。

董じいさん
血の親とは結局のところ違うからな。歳を取ってから、初めてこういうのを知った。

董じいさん
だから、わしより長く生きるんだぞ。だが、ほどほどにな。少し長い程度だ。下で待っててやる。

マウスキング
…お前は絶対にわしを咽させるという気概でもあるのか?

マウスキング
そういえば、後でまた古い友人に会いにいくんじゃ。一杯飲まないか?

董じいさん
いやいい。孑のことが心配だからな。あいつは本当にトラブルを起こすからちゃんと見ていねえと。

マウスキング
わしも少し手伝ってやろう。

董じいさん
それにしても、儂の他に生きている古い友人なんて何人にいるんだ?ここに全部いるんじゃねえだろうな?

マウスキング
一つだけな。

董じいさん
――ウェイとか言ったか。あいつとは話があわねえな。あいつとは長く付き合ってると本当に命が短くなるぞ

マウスキング
だが、当時ウェイ・イェンウーのために流れ弾を止めたのだろう。生涯まっすぐ歩くことが出来なくなった人が。おぬしだろう。

董じいさん
わしのことを思ってくれるのか?へっ、あのことはいつもわしが損したと感じているさ。

董じいさん
…少なくとも龍門はまっすぐ歩けているさ。それは損じゃないだろう。

マウスキング
お主は少しも変わらんな。それもいいじゃろうて。

マウスキング
本当に彼に会いたくないのであれば、先に行くといい。

マウスキング
それに彼がお主に会うとなると、儂は怖くて何も言えんわい。

董じいさん
やっと儂を開放してくれるのか。儂だってけが人なんだからな。リン。

マウスキング
…。

マウスキング
董。

董じいさん
聞こえなかった。

マウスキング
長く生きるのじゃぞ。つみれをたくさん売るのじゃ。

マウスキング
まずは龍門で店頭を買って、店を開き、弟子を何人か集めてから、棺桶を何処に置くのか考えるのじゃな。

マウスキング
マウスキングはまだ生きておるがお主達の死を見送る番ではない。

董じいさん
…そうだな。