

ここから議事庁の建物が見えます、よかったぁ、どうやらあそこは無事なようです――!

リサ、早く!

はい!

な、なんだ?どこかで火災が起こったのか?

俺の息子がまだ戻ってきてないんだ、誰か彼らを見かけてないか――!

憲兵は、チェフェリンはどこだ!?彼は英雄ではなかったのか、どうしてここにいないんだ!?

街中がパニック状態です!

でも住民たちはなんの攻撃も受けていない、誰かが彼らに吹聴してるのよ!

みなさんずっと長い間極度な緊張状態にありましたから、一旦弾けてしまえば、騒動が起こるのも当然です――

こっちです!議事庁をなんとしても守らないと!

見えてきました!すごい人数です!急ぎましょう!
(戦闘音)

む!?

この老いぼれが、いい手捌きじゃねぇか、鉱石病に蝕まれずに済む感覚はいいもんだろ?

うむ……私がもっと早く禁煙していれば、今頃お前たちはブタ箱の中でお唄のお勉強だ。

ここから立ち去れ、お前らをかつての町の一員だったことに免じて、見逃してやっても――

ハッ、まだ見栄を張るつもりか!今のヴォルモンドの正規軍人はお前だけだ、俺たちが知らないとでも思ったか?

お前ら……

チェフェリン!カッコつけは終わりだ!議事庁を寄越せ、これからは、俺たちがこの町を掌握する。

掌握してどうするつもりだ?

ハッ!?

そんな警戒するなよ、一時休戦だ、タバコを吸わせてくれ……そんで言え、お前らはどうするつもりだ?何をするつもりなんだ?

お前らの訴え次第ではヴォルモンドも考慮してくれるかもしれんぞ。

何が言いてぇんだ?

ほらっ、武器も下ろした、俺はお前らとの間に調和できない矛盾なんてないと考えてる、お前らはどうしてこんなことをするんだ?

……ハッ。今度はお前が正論を吐くのか?

俺たちの要求は犯人を渡すこと、偏見を無くすこと。

……家に帰りたい、仕事もしたい、簡単だろ?

……ちゃんと報告を書いて、定期健診してくれれば、簡単だ。

じゃあ今はなんだ!?俺たちは閉じ込められて死ぬのを待ってるだけだ!

あの街は地震で出来た地割れしか残ってない、そこら中いつ爆発するかわからないオリジニウム塊だらけだ、非感染者が街から離れてから、物資は日に日に貧しくなっていく、俺たちを助けてくれる人がいるか?

おっと、忘れるとこだった、てめぇらの無能のせいで、ヴォルモンドは死に向かっているんだ、俺たちはただそれに先んじて捨てられたにすぎない。

いわゆる秩序のために真相を隠蔽しておいて、自分のことをまだご立派だと思ってるのか?

……ん。

マッチが湿ってしまった、火がつけられないんだったら、続けるか。
(殴打する音)

ぐはっ――!?素手だと――?

うむ、せめてタバコの匂いを嗅げば、元気になれるんでね。

でも、先に謝っておく、「ちょっとした意外」が起こるかもな。
(殴打する音)

チクショウ、放せ!てめぇ――俺を殺すつもりか――ぐぶっ!

いや、ただの「業務過失」だ――
(殴打する音)

長官――!

――!

あ……

……もう片付いた、相手はあと数人だけだ、この貧乏くじを引いちまったやつ以外は、みんな逃げて行った。

――彼を殺したの?

たぶんしてないと思う。

……

……ロドスのお二人が彼を目覚めさせてくれるんだったら、いいんだがな。

まだ息があります!フォリニックお姉さん!

……今は救護が優先です。

あとでじっくり話をしましょう、「長官」。

いいだろう、ありがたく拝聴するよ、お嬢さん。


長官……

言ったはずだ、二人でいるときは、俺は長官じゃなく、トールの父親で、お前の伯父さんだ。

いいえ、長官、あなたはさっき……この感染者を殺すつもりでいた。

……否定はしない。

これだと対抗をより激化してしまいます……!それにあなたはヴォルモンドのかつての兄弟たちにこんな考えなしに手を上げてはならないんです!

たとえこいつがヴォルモンドには憲兵が駐在していないことをあの暴徒連中に教えていなかったとしてもだ。

何を意味するのかわかってるはずだ、タジャーナ。

だからといってこんな無情なやり方は――

全部ことの真相を知ってるのを除いてだな、でなければ私たちの誰一人とて正しい選択をすることは困難なんだ、こうせざるを得ないんだ。

もし客観的にだ、大層立派な銀行家あるいは予言者が、何人か死ねばヴォルモンドは今までの安寧を取り戻せると教えてくれたら――

私ならそうする、誰だってそうする。

……だとしても……

誰であろうと、だ。

……少なくとも結果から言えば、こいつは一命を取り戻せた、それで十分だ。

ところでロドスのことなんだが、真相をロドスらに教えたのか?それとも彼女らを現場に連れて行ったのか?

あの子の目つきが変わったように見えるんでね。

伯父さんは、とっくに私がそうすると予測してた……

まあそんなもんだ、私は隠蔽に意味があるとは思えない、だがせめて私自ら隠せば、たくさんの人を安心させることができると思っているんでね。

お前は彼女らのことをどう思ってるんだ?

私は、彼女たちはヴォルモンドを助けてくれると思います、彼女たちはアント先生と同じく気高い人たちですから。

ゴホッゴホッ、ゴホッ、じゃあ彼女らはロドスの代表に務まるか?

ここに派遣された以上、ロドスの気持ちの代表にはなるんじゃないでしょうか?

正直に言うと、もし私たちが出会ったロドスのオペレーター全員が善人だったとしたら、私はむしろ心配になる。

確か、あの狙撃手、彼女もロドスの人だったな……

アント先生の付き添いでここに来て、すぐに帰っていったあの人ですか?

彼女も天災に巻き込まれていなければいいんですけど……
(何かが崩れる音)

な、なんですか?またほかの襲撃が?

……ヴォルモンドには憲兵が駐在していない、だな。

この秘密もどうやら知れ渡ってしまったらしい、次はどうするんだ、悪党どもが来たとき、私たちは土下座して許しを乞うのか、それとも最後まで抗戦するのか?

――違う、この地響きは、地下から――!?

――チェフェリン!あいつらがほかの地区の地下通路を通って工業区域に潜り込んだ!

あいつらメインエンジンを壊しやがった……!


……見てみろ、美しくも、人影一つない街並みだ。

ヴォルモンド、冬霊山脈の月、うむ、その名に恥じない景色だ。

月、月ねぇ、ペッ!

俺たちの仲間が四人、あの烈火の中で死んだ。

教えてくれ、マドロック、どんな月なら火を起こすんだ?どんな月なら同胞たちを屍に変えるんだ?

それとも、この町が俺たちにその血塗れた牙を向けておいて、俺たちは声を飲み込んで我慢しなくちゃならないのか?

気が立ってるな、落ち着け、いつもはこんなに喋らないくせに。

俺たちはここを滅ぼさなきゃならねぇ!クソッたれのヴォルモンド人め!クソッたれの移民どもが!

それはダメだ。

マドロック!お前とお前のサルカズたちはその力を持っているんだぞ!

そうだなぁ。

お前の言う通りだ……サルカズ、サルカズより故郷を奪われた苦痛を身に染みて知る種族がほかにいるだろうか?

その主義主張で感染者を物で困らせないリターニアであろうと、そこにサルカズの居場所はない。

……あ、でもあのおばあちゃんが俺たちにくれたケーキ、美味しかったなぁ、甘さもちょうど良かったし。

あ?

だから……もう少し待とう。俺たちが滅ぼすのは、犯人ただ一人だ、自分たちの手心に憎悪を加えてはならない、さもなくば……

俺たちと過去になんの区別があるっていうんだ?
