ドクター、少し辺りを回ってみたんだが、それらしい人は見つからなかったぞ。
どうやら祭典が終わったあとにまたジャングルに入って彼女らを探しに行くしかなさそうだ。
――!(勝利の雄たけび)
あっ、ペーターが勝ちました。
あのペーターってやつ中々やるじぇねぇか、一回お手合わせしたくなってきたぜ。
はい、彼は私の部族の勇士ですから。
でも、きっとガヴィルさんには敵いませんよ。
ハハ、それはどうだろうな。
ガヴィルさんは小さい頃にあとちょっとで大首長の座を手に入れられたんですよ!ペーターに負けるわけがありません!
小さい頃?
ん?ああ、あの時か。
アタシがまだ全然小さかった頃、面白そうだなーっと思って、祭典に一回参加したことがあるんだ。
はい、あの時のガヴィルさんはもうすでにめちゃくちゃすごかったんですよ!
ガハッ……
ワイルドマインド部族の最強もたかがこの程度か!
つ、つよい……
チッ、俺たちの部族の勇士があんな簡単にやられてしまうなんて。
俺たち全員でまとめてかかろうぜ!
ダメだ、人数比べならもっと敵わねぇ……今回は諦めるしかないのか……
挑戦者はまだいるか!いないのなら、この俺が大首長の挑戦権をもらうぞ!
アタシだ!
お前は……ワイルドマインド部族にいる孤児のガヴィルか?
ちんちくりんの中でもお前は結構いい腕をしてるって聞くが、ガキは祭典に参加できる資格はねぇ、家に戻って数年お乳を飲んでな。
フンッ、アタシに勝ってから言いな!
はっ!さすがは孤児、怖いもの知らずだな!
アタシの家族は部族のみんなだ、ムダ話はいい、やるのかやらねえのか!
ふんっ、ガキが、後悔するなよ!
(殴打する音)
バ、バカな……二発殴られただけで……
ガヴィル、すごい……
フンッ、口ほどでもねぇ!
ほかに挑戦者はいるか!
ガヴィルは孤児なのか?
ガヴィルさんは言ってなかったんですか?
言ってなかったか?
あぁ、本当に言ってなかったようだな、まあそんな特に重要な話でもなかったからな。
アタシは自分の両親を知らないんだ、でもここではそんな珍しいことでもないんだ。
ドクター、お前は想像できないかもしれないが、ここでは、人が死んでしまうことなんて簡単なことなんだ。
天災なんか必要ない――実際ここの人たちは天災がなんなのかすら知らないんだ――風邪、あるいは劣悪な天候で人が死ぬことだってある。
たぶんアタシの両親もあんな感じで適当に死んじまったのかもな。
いや、もうやめよう、とにかく、アタシは小さい頃から部族のみんなと一緒に育ってきたって知ってくれればいい。
ガヴィルさん……
・大変だったな。
・……
・少なくとも今の君は誰よりも健やかだ。
よせよ、ドクター、アタシが可哀そうなヤツみたいじゃねぇか。
孤児はアタシだけじゃない、ここでは、何個かの家庭が一緒に孤児を数人育てることなんてよくあることなんだ。
ドクター、そんな思い詰めるな。
アタシだってここを離れてから、こういうことは普通じゃないってことを知った。
むしろこれはアタシが医学の道を志すようにしてくれた想いでもあるんだ。
ハハ、そうだな。
それであの時の祭典の結果はどうなったんだ?
あの時のは……
見つけた、バウンティーハンターの悪いヤツめ!
誰だ!?
ん?この声って……
ドクターを返せ!
何訳のわからない事を言ってんだ?
ケーちゃん!?
トミミ、お前の子分に縄で縛って部族に連れて行ったんじゃねぇのかよ?
えっ、そうしたはずなんですけど?
あの子の力は決して弱くはない、きっと自分で縄を抜け出したんだ……
バウンティーハンター、ドクターを返せ!
じゃないと地の果てまで追い詰めたとしても絶対に許さないよ!
チッ、どうやらあのオバカさんはまだ目が覚めてないようだな。
ぐはっ!
ペーターが吹っ飛ばされた!
ペーターをやっつけたぞ!
なんだか強そうだな……
あのおかしな動きをしてる子はどこから来たんだ!?どこの部族の者なんだ!?
知るかよ、彼女が何言ってんかさっぱり分からねえ!
チッ、こいつらまさかケーちゃんが新たな挑戦者だと思ってんのか……
ガヴィルさん、助けにいきますか?
少し待ってくれ、あのおバカさんの戦闘能力は相当なモンだ、こういう場面でも彼女なら対処できる、今止めに行っても同士討ちになるだけだ。
だが、このままだと会場が混乱してしまうのも事実だ、ドクター、場面を抑えるようにトミミの子分たちの指揮を頼んだぞ。