ここの建物だけほかの部族と明らかに違いますね……
ボロ家だ!
うわ、この建物と装飾とかめっちゃ雑じゃん。
それにそこら辺にヘンテコな機械の残骸がおいとるな。
ズーママ、ほかと違ってお前の部族は特別な感じがするな。
あいつらもお前と同じで機械イジりが好きなんだな。
これらは全部私の部族のものたちが創り上げた傑作だ。
そうだな。彼らも機械の魅力を理解している、自分たちの情熱だけでこの部族を今の形に創り上げたんだ。
見ろよ、ガヴィルだ。
大首長の言っていたことは本当だったんだな、ビッグアグリーを使ってガヴィルともう一度対決らしいぜ。
なんだよそりゃ!?こりゃ見逃すわけにはいかねぇぜ!
うわー、人がたくさんだ!
こいつらの中には祭典のあとにここに集ってきたほかの部族の人も多く混じっている、彼らもいずれ私たちに加入するつもりでいる。
へぇ、つまりどういうことだ?
ガヴィル、お前が出て行ったままであれば、私は気にも留めなかった。だがお前は再び私の目の前に立ちはだかった、なら私はここでお前を倒す。
なぜだ?
お前が強すぎるからだ、ガヴィル。
あの日をまだ憶えているか、ガヴィル?
あの日?
あの日までは、私もお前と同じく、己の拳こそがすべてだと固く信じていた。
(殴打する音)
おりゃ!
うわあああ!
ガヴィルの勝ちじゃ!
ハハ、またアタシの勝ちー。
フンッ、もう一回だ、次こそ私が勝ってやる!
いいぜ!
(大地が揺れる音)
あれ、大地が揺れてる?
見ろ、あそこだ!
あれは……あれは一体なんだ?
でっけー鉄の塊だ!
あれはサルゴンの移動都市じゃ……
サルゴンって?
サルゴンとはわしらの国のことじゃよ。
じゃあイドウトシって?
移動都市というのはとても大きな部族みたいなものじゃ、そこのたくさんの人が住んでおる。
わしも若い頃に一度だけそこに行ったことがある。
さあさ、怖がる必要はない、こっちには来んよ。
あれはわしらと生涯無縁なものじゃからな。
……
ズーママ、どうしたんだ、気分でも悪くなったのか?
なんでもない、先に帰る。
おう、憶えてるぜ、サルゴンの移動都市がちょうどここ付近を通過した日だろ、あの日からお前はちょっとおかしくなっちまったもんな。
私はむしろ不思議に思うんだ、ガヴィル。
あのような物体を見て、驚きはしないのか?震え上がらないのか?自分の存在がちっぽけだとは思わないのか?
あの日感じたことだが、そりゃあ確かに「うわー、でっけぇ」とは思ったぞ、でもそれとアタシになんの関係があるんだ?
お前はいつもそうだ、ガヴィル。
あの日から、私はお前とのケンカに興味が失せた。
私はイナームに機械に関連する書籍を探してくれるように頼んだ、サルゴン語と機械の知識を学び始めた。
そしてその後大祭司と出会い、私たち二人でビッグアグリーを作り始めた。
それは知ってる、お前に会いにも行ったからな。
ん?ということは、そっちの変なヤツがお前が空気と話してたヤツなのか?
その通り!
うわっ、いつの間にあたしのところに!?
なんだかコウテイのボスに似とるなぁ……
コウテイ?あのペンギンのことを言っておるのか?
せやで、え、ボスのことを知っとるん?
知っとる知っとる、当然知っとるわい、何十年も会っていないがな、あれ、何十年だったっけ?何百年だったっけ?まあいい、とにかくお前からは確かにヤツの匂いがするな。
何百年ってどういうこと……
ええええ、まさかここにもボスのお友だちがおったんか!
お前本当に存在していたんだな、アタシはずっとズーママの頭が狂って創り出された幻覚だと思ってた、ロドスにいたときはわざわざそういった症状を研究していたもんだぜ。
ほほう、お前は知らないのだな、ガヴィル、小さい頃のお前がズーママに会いに来たとき、わしはずっとそばで見ておったのじゃぞ!
この様にな!
消えただと!
ハッハッハ、わしは普段人前には出ないのじゃよ、だが今はビッグアグリーを操縦せねばならんからな、仕方なく姿を見せているわけじゃ!
じゃが若造どもと機械を造るのも愉快なものよな!
そのビッグアグリーなんだけど、操縦に戻らなくて本当に大丈夫?建物にぶつかりそうだけど。
あ?おーっと、忘れておった!またあとで会おう!
うわっ、本当にすぐ操縦席に戻ってる、すごいなぁ。
やっぱうちのボスとそっくりや……
……
おっと、まだ話の途中だったの忘れてたぜ。でも正直に言うけど、ズーママ、どうせ最後もケンカをする以上、こんなこと言っても意味あんのか?
ある。
これはお前に聞かせてるんだ、私自身への反芻でもある。
わかるか、ガヴィル、私にとって、お前は最大の障壁なのだ。
あ?そうなのか?
正確に言うと、お前ではなく、お前みたいな人がだ。
かつて私は多くの人に機械の魅力と説いていた、だが結局、ほとんどは興味を示してくれなかった。
お前みたいな強者が彼らの模範になっていたからだ。
お前みたいな存在が彼らに伝えているんだ、ここでは、強ければ欲しいものが手に入ると。
お前の強さが、前進するための道筋を塞いでいるんだ。
だから私は決心した、人々のそういった考えを打ち破ると、より強大な力で、お前が建てた己の力への妄信を破壊してやるとな。
へー、ドクター、彼女結構理にかなってること言ってるじゃん、ドクターはどう思う?
・確かにそうだな。
・……
・機械は最高だからな。
ドクター、お前一体どっちの味方なんだよ!
確かに理にはかなっとるけど、でもどっか違うような……
そうね、このデカブツは本当にカッコイイわね!
でも確かに、お前の話を聞いてると頷きたくもなる。
でもアタシはみんなの模範になったつもりなんてない、アタシはアタシだ、アタシはこの拳ならなんでも解決できるって思ってる、誰でもねぇこのアタシのな。
わかっている、お前に責任はない。
だが、私はお前を必ず倒すと決心したのだ、ガヴィル、このビッグアグリーの力を使ってな。
みな聞け!
これから、ビッグアグリーはガヴィルともう一度新たに決闘を行う。
この決闘で正真正銘だれが真の大首長になるかを決める!
大祭司、やるぞ!
おう、待っておったぞ!
ガヴィル、準備はいいか!仲間と一緒にかかってきてもいいんだぞ!
待ちくたびれたぜ!
お前ら手を出すなよ、この戦い、アタシ自らこのデカブツを倒す!
さぁ来やがれ!
まずは通常のパワーを試すとしよう!
発射ァ!
(砲撃音)
ヘッ、二度も吹っ飛ばせるとは思うなよ!
ほう、さすがはガヴィルじゃな、見事な反射神経じゃ!だが問題ない、わしのビッグアイアンナックルをくらえ!
力比べってか?気に入ったぜ!
(ビックアグリーがガヴィルを殴る音)
ガヴィル、すごーい!
すごいでガヴィルはん!一人であのデカブツの鉄拳を受けとめたで!
いつも身体検査のときに疑問に思ってたんだけど、あの人なんで医療オペレーターをやってるの?
……敵なれど、誠にあっぱれじゃ!
じゃがな、まだまだ終わらんよ!こういうこともあろうかと、ビッグアグリーにパワー全開モードを備えておいたのじゃ!
ポチっとな!
なんだと!?
あのでかいやつのパワーがもっと強くなったっぽいよ!
ガヴィルが押し負けてる!?
嗚呼、なんと素晴らしい音なんじゃ!……ん?待て、ダイヤルがおかしいぞ……んんん?
大祭司、状況はどうなっている!?
アチチ、わしの尻が焼き焦げそうじゃ!
ビッグアグリーのことを聞いている!
おう、ついでにわしの状況も言っただけじゃ!エンジンのパワーが強すぎる、このままではビッグアグリーが暴走してまう!
でもなんだか刺激的でこれはこれでよいな!
先に脱出しろ!
戦うんじゃろ?このまま続行じゃ!さあ来い、ガヴィル、このわしが――
(爆発音)
大祭司!
わかった、わかったから、残念じゃ、どうやらプランを変更せねばいかんようじゃな。
ズーママ、心配せんでいい、わしが出来る限りこいつを抑える、その間にビッグアグリーを停止させるんじゃ!
……ガヴィル、離れていろ、この件はお前らとは無関係だ。
何言ってんだ、アタシを倒すんじゃなかったのかよ?
倒すさ、だがこのような方法でではない。
はぁ、いまさら水臭いぜ、もちろんアタシも手伝うぜ、そうだろ、ドクター?
大怪獣とのバトル!おいらも手伝う!
・ウタゲ、クロワッサン、戦闘準備だ!
・……
・結局私たちの手が必要なんじゃないか。
えー、こいつをやっつけるの?うそでしょ、めんどくさー。
旦那さん、終わったら残業代もらうからな!三倍やで!
ドクター、野次馬してないで!はやく指揮の準備をして!
ドクターの性格ってホントたまにわりとイラっとするな!
いいからさっさと指揮の準備をしろ!