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【明日方舟】シナリオ翻訳 往昔の風を求めて「アレーン ~ 域外の同族」

 

アレーン
アレーン

武器の信頼性証明?

アレーン
アレーン

それってなに?

アレーン
アレーン

僕本人が武器を持参して、工房で検査を受け、工匠のサインをもらう必要がある?

アレーン
アレーン

自分専用武器の使用に、そんな工程があるの……チェッ、なんだかめんどくさそうだなぁ。

アレーン
アレーン

先生がちょっとぐらい融通利かせて、僕の代わりにサインをもらってきてくれればいいじゃないの。

アレーン
アレーン

だめ?ロドスの規則だから?

アレーン
アレーン

つまんないなあ。わかった、わかったよ、先生がそう言うんだったら、ちゃんと自分で行くよ。

アレーン
アレーン

来て早々、あのケルシー先生に怒られるだけはごめんだからね。

アレーン
アレーン

じゃあまたあとでね、せーんせ。

ロドス艦船、第三修理工房、早朝

(ノックする音と扉を開ける音)

アレーン
アレーン

誰かいないのー?

アドナキエル
???

こんにちは、工房は今営業をお休みしているんですよ、五名の工匠たちがみんなメンテナンス競技試合に参加しちゃったもので。

アレーン
アレーン

メンテナンス競技?なにその変な試合。

アレーン
アレーン

先に武器を壊してからどうメンテナンスするのかを競うの?それとも誰が一番刃物をきれいに磨けるかとか?

アドナキエル
???

残念だけど、ただの戦場で半壊した武器のメンテナンスと改良を競う試合ですよ。

アドナキエル
???

もし本当に武器をピカピカに磨いて、それを攻撃手段に変えられるんだったら、優勝できなくもないかもしれませんけどね。

アドナキエル
???

……ん?結構いいアイデアかも。今度試してみようかな。

アレーン
アレーン

はは、変な人。お好きにどうぞ。

アレーン
アレーン

こんなことのためにまた往復するのはゴメンだからね、工匠がいないけど、ここにはあんたがいるじゃないか。

アレーン
アレーン

どうせただの恒例行事の検査なんだし、そんな真面目にならなくてもいいでしょ。どう、そこのアミーコさん、代わりに見てくれないかな、この証明にサインしてくれればいいからさ。

(書類をめくる音)

アドナキエル
???

武器の信頼性証明ですか?

アレーン
アレーン

そうだよ。

アドナキエル
???

武器の信頼性証明は二人の工匠が同時に検査したあとに確認済みのサインを入れなきゃならないんですよ。

アドナキエル
???

オレはまだ実習生でアシスタントだから、オレの名前をサインしても役に立たちませんよ、助けになれなくてごめんね。

アレーン
アレーン

二人のサインが必要なんだったら、ここにはきみとぼくの二人がいるじゃないか、ちょうどいいじゃん。

アレーン
アレーン

自分のアーツロッドのことは、自分が一番よく知っている、何も問題はないよ。何も起こらなければ、誰にも知られない、誰も知らないってことは、つまり何も問題はない、違う?

アドナキエル
???

その考え方は面白いですね。

アドナキエル
???

でもここの人をナメないほうがいいですよ、特に厳しい何人かは。

アドナキエル
???

万が一何かが起ったら、重大な事故になりかねません。オレたちだけじゃなく、その場にいなかった工匠も一緒に処罰されるんですよ。

アレーン
アレーン

チェッ、真面目だなー、あーあめんどくさいなー。

アドナキエル
???

でも使えそうではありますね。武器をメンテナンスするって考えを持たない人たちだっていますし。

アドナキエル
???

戦場で使い捨てにしたほうが楽なんでしょうね。

アレーン
アレーン

そんなバカがいるの?

アレーン
アレーン

まあいいや。そういうことだったら、じゃあ――

アレーン
アレーン

きみだけでも武器を検査してよ。

アレーン
アレーン

それだったらいいでしょ。完全にただの無駄足にするわけにもいかないし、イライラしちゃうんだよねそういうのって。

アドナキエル
???

あー……まあいっか。じゃあちょっと待っててくださいね。

アドナキエル
???

この最後のボルトを締めたら――よし。

アドナキエル
???

お待たせ。

アドナキエル
???

……ん、あなたの表情を見るに、まだ何か企んでいて、諦めきれていないようですね。

アレーン
アレーン

なんのことだか、ぼくにはさっぱりわからないかな。

アレーン
アレーン

ほら、渡したからね。ぼくのアーツロッド。

アドナキエル
???

はぁ……まあいいや。

アドナキエル
???

よし、じゃあ検査させてもらいますよ。

アドナキエル
???

(小声)気を付けさえして、事故を起こさなければ、たぶん大丈夫だよね……

アレーン
アレーン

じゃあ頼んだからね。

アドナキエル
???

武器の検査には少しだけ時間がいるので、ここで少しだけ待ってもらいます。

アドナキエル
???

見学ならご自由にどうぞ、でも工房の中のものはできればあまり触らないようにしてください、いつも危ないものを作りたがる何人かの工匠の師匠たちがいるので……

アドナキエル
???

あなたもわかりますよね?半分しかできていない未完成品ならもっと危ないんですよ。

アドナキエル
???

それに、ここには源石成分が含まれてる鉱物も少なくありません……たとえあなたが感染者だとしても、気を付けたほうがいいですよ

アレーン
アレーン

心配ご無用。ぼくはそんな無鉄砲じゃないよ。

アレーン
アレーン

……ちょっと待って。

アレーン
アレーン

変だな、ぼくは自分は感染者だなんて言ってなかったはずなんだけど?

アドナキエル
???

言ってませんよ。でも見れば大方予想できます。

アレーン
アレーン

言ってみてよ、どうやって見抜いたの?そんなにはっきりしてた?

アドナキエル
???

うーん……説明するにはちょっと難しいんだよね、オレにもよくわからないんです。

アドナキエル
???

やっぱりたくさん観察してきたからかな、みんな表情とか、動きとか、それと行動のルーティーンとかで、色んなものが見えてくるんですよ。

アレーン
アレーン

なんだかバカにされてる感じ。

アドナキエル
???

本当なんですって。

アドナキエル
???

この杖の検査だけでいいんですか?ほかにまだあるんでしたら、まとめて見てあげますけど。

アレーン
アレーン

その杖だけだよ。

アレーン
アレーン

残念だけど、ぼくは検査が必要な守護銃を持っていないんでね。

アドナキエル
???

奇遇ですね、オレも持っていませんよ。

アレーン
アレーン

……

アレーン
アレーン

きみって本当に変な人だね、ちょっと面白いかも。

アドナキエル
???

うーん……お褒めいただきありがとうございます?

アレーン
アレーン

褒めてなんかないよ。

アレーン
アレーン

このアーツロッドに使用上の問題はないから、適当に見てもらえばいいよ。

アドナキエル
???

検査するからにはちゃんとやらないと。

(???がアーツロッドを弄る音)

アドナキエル
???

うーん……すごくいい材質ですね。

アドナキエル
???

杖にぶら下がってるこれってアーツソースですか?

アレーン
アレーン

そうだよ、でもそれよりかは個人的な趣味かな、それで殴れるし。

アドナキエル
???

それもいいアイデアですね、接近戦でも有利に戦えますもんね。

アレーン
アレーン

工匠さん、名前はなんて言うの?

アドナキエル
アドナキエル

オレはまだ工匠とは呼べませんよ。

アドナキエル
アドナキエル

行動予備隊A4小隊のメンバー、アドナキエルです、ついでに兼業でここで弟子をやってます。

アドナキエル
アドナキエル

あなたは?

アレーン
アレーン

アレーン。

アドナキエル
アドナキエル

いい名前ですね。

(アドナキエルがアーツロッドを弄る音)

アドナキエル
アドナキエル

うーん……メインアーツユニットに損傷は見当たらず、ぶら下げてるアーツソースの表面にも明確な裂傷や破砕の痕跡は見当たらず。

アドナキエル
アドナキエル

状態は良好なようですね。

アレーン
アレーン

ふふん、だから言ったでしょ、問題はないって。

アドナキエル
アドナキエル

じゃあ次は、杖を使ってご自分のアーツを放ってもらえますか?そうすれば実行プロセスから杖の作動状態が確認できますので。

アレーン
アレーン

このままでいいの?ぼくのアーツはそんな優しいもんじゃないよ?

アドナキエル
アドナキエル

そうなんですか、じゃあ簡単でいいのでアーツのタイプを教えてくれますか?

アレーン
アレーン

分解、毒素。

アドナキエル
アドナキエル

うわ、確かに危なそうですね。

アドナキエル
アドナキエル

それじゃあ杖を隣の透明ボックスに置いて、手をボックスの横にある穴に入れてもらってから、能力を使ってください。

アドナキエル
アドナキエル

そうすればどんなに強い発揮性な能力でも、安全です。

アドナキエル
アドナキエル

便利でしょ?

アレーン
アレーン

めんどくさいなー……

アレーン
アレーン

これで、よしっと、こんなもんか。

(アレーンがアーツロッドを弄る音)

アレーン
アレーン

やっちゃっていい?

アドナキエル
アドナキエル

いいですよ、オレは機械を操作しますので。

アドナキエル
アドナキエル

腕部に圧迫を感じるようになっても、気にしないでください、正常な現象ですので。

アドナキエル
アドナキエル

これでよし!

アドナキエル
アドナキエル

じゃあアーツを使っても大丈夫ですよ、オレに被害は及びませんので。

アレーン
アレーン

誰も心配してないんだけど?

アレーン
アレーン

(アーツを放つ)

(アーツを放つ音)

アドナキエル
アドナキエル

はい、完了です!

アドナキエル
アドナキエル

残りは全部こっちの作業なんで、杖を預かりますね、隣で休憩してもらってもいいですよ。

アレーン
アレーン

うん。

(アレーンが歩く音)

アレーン
アレーン

サンクタ人って銃とクロスボウにしか興味がないんだと思ってた、でもきみはアーツロッドにも詳しいんだね、外にいるサンクタってみんなこうなの?

アドナキエル
アドナキエル

オレを連れてるアイアンハンマー師匠がアーツロッドのメンテナンスと鋳造に長けてるってだけですよ、それに小隊の仲間の武器もメンテナンスが必要ですからね。

アレーン
アレーン

アーツロッドに長けてるのに、コードネームはアイアンハンマーなの?

アドナキエル
アドナキエル

そうなんですよ。

アドナキエル
アドナキエル

師匠たちってすごく適当に名前を決めちゃうんですよ、オレが初めて実習しにきたときも半日ぐらいポカンとなりましたよ。

アドナキエル
アドナキエル

ほら、そこに師匠たちの名札がかけてありますよ。

アドナキエル
アドナキエル

興味があったら見てもいいですよ。

アレーン
アレーン

……

アレーン
アレーン

じゃあ遠慮なく。

アレーン
アレーン

(第三修理工房工匠リスト)

アレーン
アレーン

(アイアンハンマー、スズカン、ロック、シールドブレイク、アバンドンナート)

アレーン
アレーン

(適当すぎだろ……)

アレーン
アレーン

(でも、これはチャンスかも……)

アレーン
アレーン

工匠たちってみんな自分のサインを名札に刻むの?

アドナキエル
アドナキエル

いやいや。

アドナキエル
アドナキエル

あれは師匠たちがカッとなったときの産物ですよ。

アドナキエル
アドナキエル

ある日師匠たちが工芸で論争になって、そしたら全員自分たちの知り尽くした工芸に名札を彫ってほかの人と比べ始めたんですよ。

アドナキエル
アドナキエル

気が収まったあと、みんな面白いと思って、工房では自分たちが作った名札を、外出時は会社が配布した統一の名札を使うって約束し合ったんです。

アドナキエル
アドナキエル

面白いでしょ。

アレーン
アレーン

おも……しろいかな。

アレーン
アレーン

(全員のサインがかけてある。)

アレーン
アレーン

(全部手書きだ。)

アレーン
アレーン

(いいね。時間が省けそうだ、適当に二つ選べばいっか……)

アレーン
アレーン

(チラッ)

アレーン
アレーン

(よし、チャンス。)

アレーン
アレーン

(捺印をしてっと……)

アレーン
アレーン

(できた。アーツも結構便利じゃん。)

アレーン
アレーン

(ん?このサイン、ラテラーノ語だ。)

アレーン
アレーン

アドナキエル、この工匠は?

アドナキエル
アドナキエル

ん?

アドナキエル
アドナキエル

ああ、それはアバンドンナート師匠ですね。

アドナキエル
アドナキエル

ラテラーノから来たんですよ、オレと一緒です。

アドナキエル
アドナキエル

でも師匠は銃関連のものを作らないんです、剣のほうが好きなんですよ。

アレーン
アレーン

どうして?彼も守護銃を持ってないの?

アドナキエル
アドナキエル

守護銃はさすがに持ってますよ、ただ師匠は銃が好きじゃないんです。

アドナキエル
アドナキエル

聞いた話によると銃をラテラーノの実家に置いていって、それっきり戻ってないみたいなんですよ。

アドナキエル
アドナキエル

「あんなそこら中薬莢だらけの場所なんざ、見るだけで頭が痛くなる」って。

アドナキエル
アドナキエル

師匠はそう言ってました。

アレーン
アレーン

いいねぇ。

アレーン
アレーン

その人とは気が合いそう、そんな予感がするよ。

アドナキエル
アドナキエル

はぁ、師匠はそれで家族と険悪になってしまい、ラテラーノに帰れそうにないのが残念です。

アレーン
アレーン

もしそのお師匠さんがきみの言った通り本当に銃が嫌いなんだったら、ラテラーノでの生活に、あまりいい思い出はなさそうに思うけど。

アレーン
アレーン

それでも、帰りたいと思うの?

アレーン
アレーン

ラテラーノにそんな懐かしむ価値があるの?

アドナキエル
アドナキエル

言われてみれば、確かに考えてもみませんでした。

アレーン
アレーン

じゃあさ。

アレーン
アレーン

きみはどうなの、きみはラテラーノに帰りたい?

アドナキエル
アドナキエル

うーん……どうでしょうね。

アドナキエル
アドナキエル

オレはとっくの昔からラテラーノで生活していませんので。

アドナキエル
アドナキエル

この天使の輪が原因でね。

アドナキエル
アドナキエル

それにそのあと鉱石病にも罹っちゃったから、なおさら帰れませんよ。

アレーン
アレーン

だから、きみの天使の輪の位置が……鉱石病のせいじゃないよね?

アドナキエル
アドナキエル

そうですね、オレは生まれつきほかの人とは違うみたいなんです。

アレーン
アレーン

それは……可哀そうだね。

アドナキエル
アドナキエル

小さい頃父さんと母さんがいつも笑顔で言ってくれて、いつも褒めてくれてたから、オレは今でもこれって実は幸運なことなんだって思ってますよ。

アドナキエル
アドナキエル

生まれつきほかとは違うって、なんだかカッコよくないですか?

アドナキエル
アドナキエル

まあ当然、笑い話なんですけどね。

アレーン
アレーン

謙遜しなくていいよ。確かにきみはほかとは違う変な人だから。

アドナキエル
アドナキエル

そうですか?自分はまだ普通だとは思ってたけど……

アドナキエル
アドナキエル

ほかのサンクタ人と共通点も多いし、あまり変わったところはないと思うけどなぁ。

アレーン
アレーン

例えば?どんな共通点があるの?

アドナキエル
アドナキエル

例えば……うーん、オレも帽子が被れないとか。

アレーン
アレーン

……

アレーン
アレーン

あははははははは!

アレーン
アレーン

ゲホッゲホッ、うん、そうだね、確かにそうだ。

アレーン
アレーン

あんなものを被るなんて人を全く隙間のない卵の殻に閉じ込めるようなもんだよ、気持ち悪いったらありゃしない。

アレーン
アレーン

専門的な訓練を受けたヤツとか、例えば公証人役場や教皇騎士の人たち、それか戦闘狂以外じゃないと、あれに耐えられるサンクタ人はいないだろうね。

アドナキエル
アドナキエル

そうですよね。

アドナキエル
アドナキエル

とにかく、たぶんこの輪っかが原因で、オレは銃の所持資格審査に通過できなかったんだと思う、それから暫くしない内に家族揃ってラテラーノを出ました。

アドナキエル
アドナキエル

鉱石病もそのあと罹ったんです。

アドナキエル
アドナキエル

ラテラーノは感染者を迎え入れてくれませんからね、あなたも感染してから、戻っていませんよね?

アレーン
アレーン

……うん。

アドナキエル
アドナキエル

だから、ラテラーノには……あまり思い出はありません。

アドナキエル
アドナキエル

小さい頃に起こった出来事もほとんど憶えていませんし。

アドナキエル
アドナキエル

あっ、でも街角にいたヨハネ師匠のことは憶えていますよ!

アドナキエル
アドナキエル

彼はオレにデザートの作り方を教えてくれたんです、オレが出て行くときもわざわざ店にある全デザートのレシピを本にしてオレに送ってくれたんですよ!

アレーン
アレーン

(チッ……出たよ、サンクタたちになくてはならないデザート。)

アドナキエル
アドナキエル

引っ越しのときにあの本を無くさなければなぁ、はぁ。

アレーン
アレーン

(毎年両親がぼくのためにでかいケーキを用意してくれた、ぼくが食いきれないと知りながら、家で一人にさせて、あれを、吐きそうになるぐらい甘さの塊を片付けなきゃいけなかった。)

アドナキエル
アドナキエル

でも今は、自分でもヨハネ師匠と寸分違わないマフィンが作れるようになりました。

アドナキエル
アドナキエル

今でもあの時のデザート店内のマフィンの匂いを憶えてるんですよ。

アレーン
アレーン

(ぼくもよく憶えてるよ、あの匂い、嗅ぐたびにのどがオエッてなるようなあの匂い。)

アドナキエル
アドナキエル

……

アドナキエル
アドナキエル

おや、デザートは嫌いでしたか。

アドナキエル
アドナキエル

珍しいですね、デザートが嫌いなサンクタ人は初めて見ました。

アレーン
アレーン

……また見抜いたの?

アドナキエル
アドナキエル

はい。

アドナキエル
アドナキエル

いつもは言わないようにしてるんです、不愉快になる人も大勢いますから、だからいつも黙っているんです。

アドナキエル
アドナキエル

でも、あなたはあんまり気にしないと思ったので。

アレーン
アレーン

そっか、確かにね。

アレーン
アレーン

気にしてないさ。変人はどうであれ普通の人よりは面白いからね。

アドナキエル
アドナキエル

デザートが好きじゃないというんだったら、あなたはオレ以上に変人ですよ。

アドナキエル
アドナキエル

今度あんまり甘くないデザートを作ってみますから、そのときは試食させてあげますね。

アドナキエル
アドナキエル

ヨハネ師匠元気にしてるかな……

アドナキエル
アドナキエル

あとでトランスポーターたちにお願いしよっかな。

アレーン
アレーン

……

アレーン
アレーン

一つだけよくわかったよ。

アドナキエル
アドナキエル

なんです?

アレーン
アレーン

きみは正真正銘ラテラーノのサンクタだ。

アレーン
アレーン

銃を持っていなくても、天使の輪がズレていても。

アドナキエル
アドナキエル

うーん……

アドナキエル
アドナキエル

そうかもですね。

アドナキエル
アドナキエル

オレにはあそこの思い出があるし、帰れないのは都市だけであって、家ではない。故郷というのはいつでもどこでも手に触れられるものですからね。

アドナキエル
アドナキエル

都市への往来がなくても、行き交う信書、言伝、写真があれば。

アドナキエル
アドナキエル

本当に懐かしく思うのであれば、便利じゃないですか?

???
???

確かに言われてみれば納得しちゃうかもねー。

???
???

でもそこの匂いを嗅いだり、そこの壁を触れたり、実際に故郷に戻らないと、ホームシックになっちゃう人もいるからねー。

???
???

まああたしはどうでもいいんだけど。

???
???

二人がデザートを楽しむときにあたしも入れてちょうだいよ、あんまり甘くないのもいける口だからさ。

(アンブリエルが歩いてくる足音)

アドナキエル
アドナキエル

こんにちは、アンブリエル。

アンブリエル
アンブリエル

こんちはー。

アンブリエル
アンブリエル

おっ、ちはーっす。新入りさん。

アンブリエル
アンブリエル

どう呼べばいいかな、お兄さん?

アレーン
アレーン

アレーンだ。

アンブリエル
アンブリエル

こんちはーっすアレーン。

アンブリエル
アンブリエル

アドナキエル、相変わらずだね、んじゃ銃を頼んだよー。

アドナキエル
アドナキエル

そこに置いてもらえばいいよ、まだアレーンの武器をやっていますから。

アンブリエル
アンブリエル

はいよ――

アンブリエル
アンブリエル

うっ、何この、甘い匂い、町の店で売ってるようなものじゃなさそう……

アレーン
アレーン

お好みだったら、ぼくのところに来ていっぱい吸ってもいいよ。

アンブリエル
アンブリエル

うーん……やめとく。

アンブリエル
アンブリエル

いいことなさそうだし。

アンブリエル
アンブリエル

でもー、もしあんたの香りがあたしを一日中昏睡させることができるんだったら、ちょっとは考えてみよっかなー。

アンブリエル
アンブリエル

あのいっつもしかめっ面してるヤツがあたしんとこに来て、「義務を履行してください」って言ってくるからねー。

アンブリエル
アンブリエル

あれから逃げ出す方法を考えたら、昏睡する方法が一番現実的かな。

アンブリエル
アンブリエル

でもあいつらの頑固な石頭程度じゃ、一日昏睡しただけじゃ足りなさそう。

アンブリエル
アンブリエル

めんどいねー。

アレーン
アレーン

しかめっ面してるやつって、公証人役場の人のこと?

アンブリエル
アンブリエル

それ以外に誰がいるのさ。

アンブリエル
アンブリエル

あいつらに目ぇ付けられてないの?公民の責任と義務の履行を監督するとかなんとかって。

アレーン
アレーン

ぼくも言われるよ。

アレーン
アレーン

でもこの前ぼくが昼寝してるときに部屋のドアを破って入ってきたやつが、今はぼくの代わりに用事を済ませるためにあっとこっち行ったり来たりしてくれてるんだよ。

アレーン
アレーン

あいつらは確かに面倒くさいけど、面倒くさい用事の処理は得意だからさ。

アレーン
アレーン

ちゃんと扱えば、あんな面倒くさいこともなんともないよ。

アンブリエル
アンブリエル

わお、なんか悪モノみたいじゃん、さっすがー。

アレーン
アレーン

ぼくは褒めてくれてありがとうって言うべき?

アドナキエル
アドナキエル

いやいいよ。

アドナキエル
アドナキエル

アレーン、アーツロッドの検査が終了しましたよ。

アドナキエル
アドナキエル

アーツ回路に少しだけ腐食が見えるだけで、大きな問題はありませんでした。

アドナキエル
アドナキエル

軽微な腐食程度ならアーツに影響はありません、もしメンテナンスをするんでしたら、今ここで処置してあげますよ。

アドナキエル
アドナキエル

午後に工匠たちが戻ってくるんで、そのときに信頼性証明書にサインしてもらってください。

アドナキエル
アドナキエル

(小声)もう必要ないかもしれないけど。

アドナキエル
アドナキエル

はい、お返します。

アレーン
アレーン

ありがと。

アドナキエル
アドナキエル

次はアンブリエルのライフルですね――よっと。

アンブリエル
アンブリエル

お願いねー。

アレーン
アレーン

きみは……自分で銃を調整したりしないの?

アンブリエル
アンブリエル

するよー。

アンブリエル
アンブリエル

でもめんどくさくなる時もあるじゃん、そのときはどうするの。

アレーン
アレーン

壊れるまで使えばいい。

アンブリエル
アンブリエル

それは……なし。

アンブリエル
アンブリエル

銃がないと給料が貰えなくなる。

アンブリエル
アンブリエル

給料が貰えなくなるとサボる機会もなくなる。

アンブリエル
アンブリエル

あたしはそんなアホなことはしないよ。

アレーン
アレーン

ふーん……意外とまともなんだね。

アンブリエル
アンブリエル

もし銃が必要なくなった生活になって、銃を隅っこに置いて埃を被せることになったとしても受け入れなれないかなー。

アンブリエル
アンブリエル

あっ、ラテラーノにいればそういうこともあるかな、でもホントに埃を被せたら、二日目にはどっからか湧いてきた親戚とか友だちに怒られたり睨まれたりするから、うざいんだよねー。

アンブリエル
アンブリエル

だから、あたしはもう諦めた。

アドナキエル
アドナキエル

アンブリエル、ライフルに問題はないですよ。

アンブリエル
アンブリエル

問題なんてあるわけないっしょー、先週チェックしたばっかじゃん。

アンブリエル
アンブリエル

あとはオイルを入れてくれればいいよ。

アドナキエル
アドナキエル

わかりました……

アレーン
アレーン

こういうときは銃を持ってて疲れるとは思わないの?

アンブリエル
アンブリエル

まだマシだよ。

アンブリエル
アンブリエル

なんだかんだ言って方法はあるからねー。

アレーン
アレーン

きみがラテラーノを離れて、ここにやってきたように?

アンブリエル
アンブリエル

ん?

アンブリエル
アンブリエル

あんたってホント遠慮ないよねー、会ったばっかりの女の子にそんなドストレートなこと言っちゃったらさ、モテなくなっちゃうよー?

アレーン
アレーン

それはごめんなさい、怒らせたかな?

アンブリエル
アンブリエル

まだ平気。

アンブリエル
アンブリエル

でもまあ、そうかもしれないね、確かにあそこは好きじゃないなー。

アンブリエル
アンブリエル

都市を守る仕事で、毎日栄誉のために栄誉のためにってうるさく言われるより、自分の財布を膨らませたほうがマシ。

アンブリエル
アンブリエル

悠々自適に、気楽に過ごす。

アンブリエル
アンブリエル

そっちのほうがよっぽどいいよ。

アドナキエル
アドナキエル

銃の検査終わりましたよアンブリエル!

アンブリエル
アンブリエル

あざーっす。

アンブリエル
アンブリエル

すご、あたしよりピカピカに磨かれてるじゃん。

アンブリエル
アンブリエル

じゃあお二人ともごゆっくりー、あたしは先に戻って休むから、じゃあねー。

アドナキエル
アドナキエル

じゃあね!

アレーン
アレーン

……

アドナキエル
アドナキエル

もうすぐ飯時だ、アレーン、まだほかに何か手伝うことはありますか?

アドナキエル
アドナキエル

なければ工房を閉めてご飯に行きたいんですけど。

アレーン
アレーン

アレーン
アレーン

ああもうないよ。

アドナキエル
アドナキエル

ご一緒にどうですか?

アレーン
アレーン

遠慮しておくよ、あのエグゼキューターっていう公証人役場のオペレーターと先約があるんっでね、ぼくに通達があるっぽい。

アレーン
アレーン

ついでにアンブリエルが出没した情報をあいつに言ったら、恩を買ってくれるかな?

アドナキエル
アドナキエル

えっと?それって冗談?

アレーン
アレーン

そうだよ。

アドナキエル
アドナキエル

あなたってホント冗談好きですよね……

アドナキエル
アドナキエル

オレにはわかりますけど、ほかの人からすれば誤解が生まれるかもしれませんので、ほどほどにしてくださいね。

アレーン
アレーン

心配しなくても大丈夫だよ。

アレーン
アレーン

そうだ、午後もここにいる?

アドナキエル
アドナキエル

ん?いますよ。昼食を取ったら戻ります。

アレーン
アレーン

わかった。

アレーン
アレーン

ねぇ知ってるかな、きみの観察眼は確かに普通じゃないけど、一つ大きなミスを見過ごしたよ。

アレーン
アレーン

午後にまた来るね。

アレーン
アレーン

あのアバンドンナート師匠の話は面白そうだったから、彼に会うために、もう一往復するのも悪くはないかな。

アレーン
アレーン

それじゃあまた午後に。

アレーン
アレーン

ただいま、先生。

アレーン
アレーン

もちろん、工房にはちゃんと行ったよ。

アレーン
アレーン

あっ……でもこれは先生には渡せないかな。

アレーン
アレーン

見抜いてたの?あいにく工房に人がいなくてね、このサインは捺印したやつなんだ、工匠本人のサインじゃないよ。

アレーン
アレーン

はぁ、どうやらこの証明書を持っていっても、どのみち見破られちゃうんだね。ロドスのドクターはやっぱり鋭いね、アンブリエルの言ってた通りだ。

アレーン
アレーン

安心して、午後にまたもう一回行くから。もう一枚証明書をちょうだい、工匠たちが試合を終えたら、本物のサインをもらいに行くから。

アレーン
アレーン

ん?急に素直になったって?

アレーン
アレーン

はは、ヤだなー、ぼくはいつだって先生の言うことはちゃんと聞いてるよ、違う?

アレーン
アレーン

ねぇ、先生、なにその表情。

アレーン
アレーン

心を変えた理由?

アレーン
アレーン

うーんそうだなぁ……

アレーン
アレーン

面白い人たちを見つけたんだ、彼らのために時間を費やしても悪くないかなって。

アレーン
アレーン

どうかな?

アレーン
アレーン

ちゃんとした理由に聞こえるかな?

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