【明日方舟】ステインレス(白铁 Stainless)の詳細(性能やスキル、資料)

造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定。

【源石融合率】0%
鉱石病の症状は見られない。

【血液中源石密度】0.14u/L
ロンディニウムの工廠は作業員の日常的な保護をサポートしてくれはするものの、それでも毎年一定数の作業員が鉱石病に感染している。ステインレスは自分が幸運なだけだと分かっていた。

ロドス本艦に乗り込んでから半日も経たない内にステインレスはエンジニア部のオペレーターと兄弟分になり始めた。

翌日目を覚ましてから彼はオペレーター宿舎から食堂に向かい、食堂から工房に向かい、3階デッキを経て、少なくとも15人の異なる地域から来たオペレーターと挨拶をした。1人の名前を間違えただけでなく、その中の何人かはあまり知られていない本名で呼ぶ事さえもあった。

作戦記録によれば、ロンディニウムでの特別行動では、ロドスに自ら友情の手を差し伸べた最初の自救軍のメンバーだった。これは間違いなく彼の性格と密接に切るに切れない関係だと言える。すぐに友人となったエンジニアオペレーターによればステインレスは特別な社交テクニックを使ってはいないという。

「あの誠実で温かな眼差しで見つめられ、手を差し伸べられてしまうと、本当に感染してしまったように何年も前から知っている親友のように思ってしまうんだ」と控えめなオペレーターは感慨深げに言った。

ステインレスは活発で明るい性格ではあるが、他者の考えを無下にして距離を無理やり縮めるという事はしない。それどころか、彼は常に友人たちの気持ちの変化に細心の注意を払っている。多くのオペレーターは気分が落ち込んでいる時、ステインレスから手作りの小さな贈り物を受け取ったことがあり、その巧みなアイデアに笑わされている。

「フェイストが来てからというもの、私のボスとしての部門内人気ランキングの順位は下がる一方だよ！」とクロージャは愚痴をこぼした。

「彼が私の部下を全部次から次へとポイポイしてるんじゃないかとか疑う事はあったけれど、考えてみれば私達が先に彼を掘り起こしたんだった。幸いにもだけど……ちょい待って、彼ってもしかして私を押しのけてチーフエンジニアになろうとしてるんじゃないの！？」

工房に立つステインレスの両手は二十代の若者とは思えないほどしっかりしていた。

ロンディニウム市民自救軍に入隊する前、ステインレスはロンディニウムの軍工場で十年近く働いていた。正式な社員となる前は更に七、八年ものあいだ見習いをしていたのだ。

ドリルやスパナを握ることができるようになってから、彼は職人になったという事なのだろう。

ヴィクトリアの機械工業は極めて発達してはいるが、ロンディニウムの軍需工場は全てのヴィクトリアの工場の中でも最も先進的だ。これらの工場はすべて一つの小型街区に近い大きさを持っており、内部ブロックの分業は明確で自動化されたパイプラインが交錯し、各種の機械のパイプラインは相互接続されており、まるで発達した自己完結型の交通ネットワークのようになっている。

工場内外をつなぐベルトコンベヤーは材料と中間製品が各ブロック間で効率的に流れる事を確保し、大小のアームはほとんどのパターン化された体力的な仕事を担っている。大型機械の間を行き来する労働者は主にこの機械化されたパイプラインシステムのメンテナンスを担当し、全ての段階でミスが発生しないように点検からシステム更新まで行っている。

一般労働者でありながら、ステインレスの工学理論レベルはクルビア機械工学科を卒業した大学院生に劣らない。それだけでなく、彼は非常に実践的な部分にも長けている。いくら高性能な機械だろうと機械に過ぎず、より繊細な観察力と適応力を必要とする製造段階では経験豊富な労働者の手は欠かせない。

このような作業パターンはロドスのエンジニアオペレーターが慣れているものとは異なる。クロージャを含めてロドスのエンジニアは個人の創造力に依存して仕事をする場面が多い。各グループの作業習慣によって工房は多くのブロックに分割されている。

そのため、ロドスでは本当の意味での制式装備はほとんど生産されておらず、同じオペレーターのためにカスタマイズされた武器でも、次の修理では大きく変わる可能性がある。

ステインレスは急速にロドスのエンジニアオペレーターという身分に適応した。一方で彼は自動化技術に対する自分の知識を駆使してクロージャにロドスの基本メンテナンスの効率を大幅に上昇させる一連の提言を提出した。

一方で彼はエンジニア一人一人と交流にも興じて奇抜なアイデアを次々と提案、迅速に実現に移した。

やがて、彼が設計と製造を行った戦場用多機能プラットフォームは第十三世代まで更新され、ロックロックのドローンも急速に世代交代を行っている。

彼は更に開発中のスマート音声対話機能に合わせるためにクロージャがLancet-2などの作業プラットフォームを改造した際に用いた技術を借りて、自分のプラットフォームにはディスプレイをつけて感情を表現させた。

「ロンディニウムのあまりにも発達したオートメーションは彼の才能をやや制限してしまっている」とMechanistは評価した。

「しかし、彼が受けたしっかりとした訓練は行き過ぎる想像力を地に落とす基礎にもなっている」

ステインレスはロンディニウムのハイバリー区で生まれ育った。

ハイバリー区と言われて誰もが真っ先に思い浮かべるのは広大且つ壮大な工場群と高くそびえる密集した労働者の住宅だろう。稼働し続ける工場の影響で空気は常に高温多湿、エンジンオイルやサビの匂いが漂い、広々とした工場内部とは異なって工場外の全てが混雑している。

地上の鉄道駅は真っ直ぐビルの中を通り抜け、青果売り場はゴミ集積所のすぐ側にある。街の地面や住宅の外壁にはいつも黒垢が付着しており、ロンディニウムの半年間続く雨でも洗い流せない。

ハイバリー区に住んでいる人のほとんどはここで働いている労働者だ。彼らは毎日のほとんどの時間を工場で過ごし、仕事が終わったら鉄道車両で各工場に付随している従業員寮に運ばれていく。彼らは忙しい毎日を繰り返えす事で、巨大工業で有名な都市を支えてきたが、彼らはロンディニウムの他のブロックの様子を見たことが無いという場合も多い。

市議会が計画したブロックの縁にある高層宿舎は壁のように工場区に漂う鉄さびの臭いが他のブロックに流れる事を遮り、労働者たちの視線さえも遮った。オクトリグ区の博物館やオペラハウス、マグナ区の一軒家や広い庭は彼らの生活とは関係が無いのだ。

だが、ステインレスが描いたハイバリー区には別の景色が広がっていた。

「ヴィクトリアで鱗フライとポテトパイを食べた事があるだろ。ロンディニウム一帯でも最高の鱗フライ屋とパイ屋はきっとハイバリー区にあるに違いねえ。俺が知っている何人かのオーナーは全員惜しげもなく食材を使って手早く上手に作ってくれる。軽食屋なんてコストパフォーマンスが良く無ければハイバリーでは長続きしないからな」

「パブもあるんだぜ。毎週金曜日の仕事が終わったら、俺たちはパブにしばらく滞在するんだ。飲み過ぎて家に帰れなるなんて心配は無い。何しろ、前にも後ろにも座っているのは友達だからな」

「俺が一番好きなのは寮のリフトかな！はは、あれはビルの労働者が建物の廃材を使って改造したもので、数十階から地下輸送管まで一気に下る事が出来るんだ。俺は子供の頃、そこをよく昇ったり下ったりしてたから、ばあさんに尻を叩かれそうになっちゃってさ……」

サルカズはハイバリー区に入ってからも、ほとんどの工場を破壊してはいない。外の人からすればハイバリー区は今でも昔と同じように忙しくしているように見えるかもしれない。

しかし、彼が大切にしていた生活の一部は消えてしまったことを知っていた。大半の軽食店は閉まり、工場からパブへの道にはいつもサルカズ傭兵がうろつき、リフトは隠れた場所にあって監視が難しいため、早々に都市防衛兵に破壊されてしまった。

ステインレスが言ったように、彼がハイバリー区を離れてロンディニウム市民自救軍に加わったのは、「故郷と自由」のためだった。彼が次々と困難な戦いに身を投じる事を支えているのは彼の記憶の中のシンプルな喜びなのだろう。

自救軍……私は多くの彼らに出会った事がある。

私が見た自救軍は軍隊ではなく、フェイストのように情熱と希望に満ちた若者達だった。彼らの組織はまだ緩い組織で明確な行動計画も無い。彼らの目標はいったい何だったのだろう。サルカズから人を救う事なのか、サルカズを倒す事なのか。彼らが本当にサルカズを打ち負かすことが出来たとしても、その次は？

彼らはロンディニウム人に苦痛を与えてきたのはサルカズだけでは無いことに気付くのだろうか。

この若者たちは自らを戦士と自称してはいるが、実際にはほとんど実戦に参加した事は無い。

目の前のこのような戦争は私は過去に何度も経験してきた。

戦争は多くの苦痛をもたらす。最も浅い傷は刀剣と砲弾による外傷、そして親友の犠牲を見て何もできない自分への自責の念だ。そして一番深い傷というものは敵からのものでは無い事が多い。

フェイストはいつも簡単に人を信用する。特に彼が友達と呼ぶ全ての人を信用していた。彼は全ての人が彼と同じようにお互いを守るために、少しでも良い未来を勝ち取るために立ち上がり、共通の敵に対抗すると思っているんだ。

彼は分かっていない……より良い人生を渇望するというのは本能ではあるが、より良い生活のために戦うというのはそうでは無い。

将来彼はきっともっと多くの裏切りを経験するだろう。裏切りは彼の心の底に消えない傷を残すだろう。

彼のような若者がこの戦争を生き抜いた後も、まだ簡単に他人を信頼し、人生に純粋な希望を抱くことができるだろうか。

以前は信じる事は出来なかった。

今は……ああ、私は認めなければならない、あの子は私が思っているよりずっと強い。私は彼にこの問題に立ち向かう勇気を見たんだ。

――とある老労働者とドクターのロンディニウム事件期間中の会話から抜粋

「博士、冗談を言わせてくれないか？昨日さ、夢を見たんだ。俺がこっそりと俺の工場にロドスのエンジンとキャタピラを取り付けるっていう夢。

それは自走出来て、高速戦艦よりも速く走り、走るどころか飛んでいく。どんどんと高い場所に飛んでいって真っ黒な場所に飛んでいった。周りにはサルカズはいないし、大公爵の軍隊もいない。

俺はそれでもまだ止まりたくなかったから、俺たちの工場は飛び続けた。その先には明らかに何も無いのにそこから受けた感覚はとても広大なものだったんだ……あー、こんな夢馬鹿らしいよな？

馬鹿らしくない？偶然だな、俺の夢の中でもドクターは工場の一番高いところで俺と一緒に座っていたんだ。俺が前に進み続けたいっていう気持ちを伝えた時も、ドクターは全然馬鹿にしなかったんだよな」