Loading...

【アークナイツ大陸版】空想の花庭 HE-ST-1「冠を戴くのは」 翻訳

ラテラーノは楽園だ、と周りの人々はいつもそう言う。
そこは自由で、歓喜に満ち、秩序が働き、紛争が絶えないこの世の数少ない清浄なる地だと言う。
しかし、そこに疑問を抱かないか?
我々の聖なる都が、かの都市が如何にして造られたのか。如何にして維持され続け、そして発展してきたのか。
なぜラテラーノこそが唯一無二の存在であり、ラテラーノこそがこの世の天国、千年の楽園と讃えられてきたのか?
もしこの大地に再び戦火が燃え広がり、そして平和が一夜にして崩壊してしまった暁には――
この世は果たして、唯一つの楽園なるものの存続を許容してくれるのだろうか?

(警告音)

重大な危機が発生。

繰り返します。

重大な危機が発生。

……危機のレベルを計測中……

計測結果:最高レベル

これにより自動運行演算プログラムを開始します。

演算失敗。

緊急対応プログラムを起動します。

現在、適切なメンバーリストを入力中……

教皇騎士
教皇騎士

聖下、全員揃いました。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

うむ、ご苦労。

教皇騎士
教皇騎士

しかし、本当によろしいのですか?歴代の教皇を除いた者が聖徒に選ばれる前例などありません。このように決断されるのはリスクがあるのでは……

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

君の言いたいことは分かる。私もあらゆる書籍を漁って、千年間にも及ぶ記録に目を通してみたが、今回に類似した事例は書かれていなかった。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

だが心配には及ばないさ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

それよりも私が受けたあの警告のほうを心配してやったほうがいい。

教皇騎士
教皇騎士

その警告というのは、具体的にどういう……?

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

私としても真摯に君の質問に答えてやりたいんだが、生憎それができなくてね。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

強いて言うなれば、天に座す我らの信仰が、やがて危機が迫り来ると警告を発してくれたのだよ。ただそれがどういうもので、いつどこにやって来るかは見当もつかん。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

それから数人ほどの名前が記されたリストも渡されたのだが……

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

そのトップに名前が記された人物こそが、今回の主役というわけだよ。

教皇騎士
教皇騎士

だからあの小僧に聖徒の称号を与えるおつもりでいると?

教皇騎士
教皇騎士

それならほかの肩書きに変えても良いではありませんか。「聖徒」は……あまりにも特別で、背負うには重すぎます。何を言おう、最初にこの都を建てられた聖人らにしか与えられない称号なのですぞ!

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

ふむ……しかし、私もその称号を有しているではないか。

教皇騎士
教皇騎士

そ、それとこれとは別です!あなた様は教皇聖下であらせられるお方なのですから!

教皇騎士
教皇騎士

今回の一件は、あの小僧にそれなりの権限を分け与えてしまうようなことです!今後ヤツが多くの政務に口を出してくる可能性だって……とにかく、由々しき事態です!

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

まあまあ落ち着きたまえ、ジェオヴァンニ。少しだけ冒険をしなければならない時だってあるだろうさ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

それでそのリストなのだが、先ほど彼以外にも何人かの名前が書かれてると言ったね?それで私はその者たちにも……

教皇騎士
教皇騎士

ま、まさか聖下!そのリストに記されてる者たち全員に聖徒の称号を与えるおつもりですか!?

教皇騎士
教皇騎士

ふざけ……じゃなくて、重大な規則違反に値する行為ですぞ!

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

そう急いで否定しないでくれたまえ、ジェオヴァンニ。まずはその人たちを探してからでも良いではないか。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

そうそう、リストには何人か見知った人たちの名前も書かれていたよ。ほかに誰が載っていたか、君には分かるかな?

教皇騎士
教皇騎士

いえ、まったく……

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

そうかそうか。ふふ、ならもうしばらくの間は秘密にしておくとしよう。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

さて、ジェオヴァンニよ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

此度の儀式を終えた際には、私もそろそろその人たちに会いに行かねばならないようだ。

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

あれ~?なんでここ、こんなにもたくさん風船が飛んでるの?

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

大通りでアップルパイ投げ大会をやってたせいでこっちは遠回りするハメになっちゃったよ、そこら中パイだからで歩けたもんじゃない……今日なんかあったの?

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

さあな、なんか儀式が開かれたって聞いたぜ?詳しいことは俺もよく分からんが。

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

まあそんなこと放っておいて、イベントがあれば楽しめばいいだけだろ。俺たちはいつだってそう過ごしてきたんだ、考えるだけ無駄だよ無駄!

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

それよりもさ、あの風船をたくさん身体に括り付けたら飛べるようになるんじゃね?

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

そんなわけないでしょ。あんたのその体重じゃ、あと二十キロ減らしたって飛べるわけがないっての。

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

まあそう言うなよ!重いコートでも脱いだらいけるかもしれないだろ?どうせ今日はそんなに寒くないんだしさ……

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

ていうか見ろよ!また新しい風船が飛んだぜ!

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

……あぁもう我慢できねぇ!ちょっと服を持っててくれ、今日という日はやってみなきゃ気が収まらねぇぜ!

(元気なラテラーノ人がコートを脱ぐ)

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

ちょっ、ちょっと!気を付けてよね!

(元気なラテラーノ人が宙に浮き始める)

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

お、おおおおお!飛んだ、本当に飛んだぞ!

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

た、たっけぇ~……ってちょっと待て、なんでまだ上昇してるんだ?

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

ちょっ、ちょっと待てって!ひ、ひぃぃ……この高さは無理だって……!

???
???

失礼、通ります。

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

あ、そこのお兄さん!待って、手を貸してちょうだい!

???
???

ん?

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

助けてくれぇぇぇ!誰か、誰か下ろしてくれよぉぉぉ!

フェデリコ
フェデリコ

いいでしょう。

(フェデリコが風船に向かって銃撃を行う)

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

いってぇ!

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

痛ッつ~……いやぁ助かったよ、お兄さん。

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

そうだ!俺の風船は……あああああ!全部割られちまってる!ひどいぜあんた、やり過ぎだっての!

フェデリコ
フェデリコ

現場の状況を判断して、あれが最善だったと思いますが。

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

そうだけどよぉ~……ったく、少しは風船を残してもらっても良かったじゃねえか。

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

文句言わないの、あんたを下ろしてやるためにはああするしかなかったんだからね!まあまあお兄さん、こいつのことは気にしないでよ~。

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

そういえばお兄さん、かっこいい服着てるね。どこで仕立ててもらったの?

フェデリコ
フェデリコ

私も詳しくは……

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

えっ、本人が知らないってどういうこと?もしかして貰ったものとか?

元気なラテラーノ人
元気なラテラーノ人

こりゃ多分制服か何かだぜ、なーんか見覚えがあるような……

愉快なラテラーノ陣
愉快なラテラーノ陣

へぇ、制服……どういう仕事だったらこんなかっこいいのが着れるんだろ?あたしもそこに入ってみたいな~!

フェデリコ
フェデリコ

……これが標準的な制服の類かどうかは私では判断できかねます。

フェデリコ
フェデリコ

ただ、もし共に働くおつもりがありましたら、教皇庁のほうへ履歴書類一式を送ってください。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

“……かの者たちはサンクタを導き、都市を築き、そこをラテラーノと名付けた。”

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

“災いが再び迫り来る時、サンクタには新たな啓示が降臨し、新たな導き手が民を導いてくれるだろう……”

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

“今に生きる者たちが、永劫に朽ち果てぬサンクタの楽園を見届けよう。”

レガトゥス
レガトゥスたち

我らここに見届ける。

教皇騎士
教皇騎士たち

我らここに見届ける。

シスター
シスターたち

我らここに見届ける。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

よし、儀式はこれでおしまいだ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

さあ、顔を上げなさい、我が子よ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

……いや、少なくともこれからは呼び方を改めなければならないね。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

顔を上げ、私の傍に近づきたまえ。ラテラーノが築かれてから千年、歴代の教皇を除き初めて聖徒に選ばれた者――フェデリコ・ジャッロよ。

フェデリコ
フェデリコ

……

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

あまり喜んでなさそうだね。外で飛んでいる風船はあまり好みじゃなかったのかな?

フェデリコ
フェデリコ

なぜ、私を?

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

なんだね?

フェデリコ
フェデリコ

何もかも理解に及びません。聖徒の具体的な責務とはなんですか?やがて迫り来る「災い」とは?そういった事象に、直ちに行動を取ったほうがよろしいのでしょうか?

フェデリコ
フェデリコ

「災い」の詳細を知る必要があります。それによって得た具体的な判断材料をもとに、作戦を練り上げなければなりませんので。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

ふむ、真っ当な質問だ。しかし、私ではおそらくそれには答えられん。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

そもそも私が得た警告はとてもシンプルでありながらも難解なものでね。明確な答えを出してくれてはいないのだよ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

その時々の時代は様々な波乱と試練に直面する、我々は可能な限りそれに備えるしかない。だが一つだけ確かなのは、君にはそれに対処しうる力があるとし、法が君を選んだということだ。

フェデリコ
フェデリコ

……やはり、私にはまだ……

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

そう急ぐことはないさ、まだまだ時間はある。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

それよりも今は、もっと現実的な話をしようじゃないか。たとえば今着用しているその装い……とても似合っているよ、フェデリコ君。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

枢機卿の何名かがわざわざ今回の採寸や配色を決めるために論争を引き起こしたくらいだからね……だが、すべて無駄ではなかったようだ。

フェデリコ
フェデリコ

それは枢機卿が担当すべき業務内容ではないはずですが。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

まあまあ、堅苦しいことは言わないでやってくれ。我慢できず興味ある物事にそっぽを向いてしまうことだってあるのだから。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

君の業務履歴のほうを見させてもらったが、優秀な執行人じゃないか。とてもとても優秀だ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

君はほかの人たちと違って、戒律に縛られることもなく、多くの行為を禁忌と見なすことはしないみたいだね?

フェデリコ
フェデリコ

然るべき時に応じて禁忌を破る行為は許されると考えおりますので。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

それは当然さ、私も反対はしていないよ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

時々やり過ぎなところはあるが、これまで完璧に任務をこなしてこれたのは君なりの判断基準があったからなのだろうね。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

であれば、一つ君に任せたい任務がある。本当なら私が自ら出向かわなければならなかったんだが、急遽ほかの用事が入ってきてしまってね。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

とはいえ、決して楽な任務ではないぞ?状況はとても複雑で、なんなら我々の想像を超えるものに発展する可能性だってある。君がこれまで受けてきたものとは一味違う任務だ。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

だが、君ならきっと遂行してくれることだろう。どうか私に見せてくれたまえよ……法が君を選んだワケを。

イヴァンジェリスタ11世
イヴァンジェリスタ11世

そういうわけでフェデリコ君、この任務を受けてくれるかな?

フェデリコ
フェデリコ

了解しました。執行人フェデリコ、任務を受容します。

フェデリコ
フェデリコ

では、詳細を。

???
痩せこけた老人

アルトリア、何を見ているのかね?

アルトリウス
アルトリウス

この花たちを見ているのさ。

アルトリウス
アルトリウス

修道院を回ってみたんだが、ここにしか咲いていない花なんだね。しかし咲く時期に間に合ってよかったよ、ここの景色は本当に美しい。

???
痩せこけた老人

……それをクレメンが聞いたらきっと大喜びするだろうな。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

この花たちは彼が面倒を見ているのだが、もう随分と鑑賞しに来る人は見なくなったよ。本来なら修道院のあちこちに咲いていた花だったのだが……

痩せこけた老人
痩せこけた老人

今ではもうここにしか残ってはいない。

アルトリウス
アルトリア

そうか、それは残念だね。とても素敵な花言葉を持った花だと聞いたものだから。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

かつてはな。

アルトリウス
アルトリア

今は違うのかい?

痩せこけた老人
痩せこけた老人

……違ってはいないかもしれんが、目が衰えてしまってからは花を観賞するのも一苦労でな。儂はもう歳を取り過ぎた、ここに長く居座り過ぎてしまったよ。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

そなたの音色は痛みを和らげることができても、老いを巻き戻してくれることはない。それと同じように、花では一人ひとりの腹を満たしてはくれんよ。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

物事というのは、何事も思うようにはならない。よぉく分かっておるさ。きっと我々がラテラーノに救援の手紙を送った時から、こういった日々は運命付けられたのだろう。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

苦い結果しか残らなかった……

痩せこけた老人
痩せこけた老人

今日という日々がな。

アルトリウス
アルトリア

ふむ、苦い結果か。その苦みが、余韻ですら舌先にずっと残り続けるようなものだというのなら、私は嫌いではないけどね。

アルトリウス
アルトリア

私の知る限りじゃ、痩せこけた土地だからこそ甘露な果実が実ると思うんだけどね。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

……痩せこけた土地、か。そうだな、その通りだ。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

こんな痩せこけてしまった土地が、儂ら唯一の住処になってしまったとは……

痩せこけた老人
痩せこけた老人

きっとより素晴らしい、穏やかな暮らしを見つけることができると……かつて儂らはそう信じていた。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

雨風を凌ぐことができる城を持つことができ、信仰をいつまでも貫き……かつて住んだ土地以上に、今ある平穏な暮らしに思いを馳せることができると。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

儂らはただ紛争から逃れ、静かな場所で穏やかに暮らしていたいだけだったのに……

痩せこけた老人
痩せこけた老人

なのに今は……

老人の痩せこけた顔が僅かに震える。
力を振り絞って、くたくたになった皮膚から懸命に人を押し潰す言葉を吐き出そうとするも、それは咳と壊れた鞴のように漏れる息に取って代われてしまった。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

あれから一体何年経った?五十年か、六十年か……それともそれ以上か?

痩せこけた老人
痩せこけた老人

海の災いが起こってから、儂は裁判所の要求を拒否してイベリアを出ていった。それから何代もここに住み続けてきた人たちを……それこそ生まれから死ぬまでの一生を見届けてきた。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

それが今となっては、生きることすら難しくなってしまったものだよ。

アルトリウス
アルトリア

いつだってそういうものじゃないか、生きるということは。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

そうだな……

痩せこけた老人
痩せこけた老人

ここにいる人たちを見てみなさい。彼らがどこの人たちだったのか、儂にはもう分からなくなってしまったよ。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

彼らはイベリアの人だったか……それともラテラーノの人だったか……

痩せこけた老人
痩せこけた老人

儂らはもうあまりにも遠くへ来てしまったのかもしれんな……

痩せこけた老人
痩せこけた老人

……

痩せこけた老人
痩せこけた老人

なあ、アルトリア。

痩せこけた老人
痩せこけた老人

これまでの月日を歩んできた儂は、まだラテラーノ人のままでいると思うか?

アルトリウス
アルトリア

それはあなた自身にしか答えられない問題だね、ステファノ・トッレグロッサ主教。

修道院の主教
修道院の主教

そうでありたいと、儂自身はそう思っておるのだが……

アルトリウス
アルトリウス

なら、あなたは今でもラテラーノ人のままだよ。

修道院の主教
修道院の主教

……そなたの言葉はいつだって真実だ、ならそなたを信じよう。

修道院の主教
修道院の主教

……だからもう儂の考えを探ることはよしてくれないか?

アルトリウス
アルトリア

まさか。あなたのプライバシーを探ることなんか絶対にしないさ、主教様。

修道院の主教
修道院の主教

そなたがここに留まることを許したのは、ここは悪意を持たぬ者を拒まないからだ。この意味は分かっているな?

修道院の主教
修道院の主教

しかしだ、やはり今でもそなたが何を求めてここにやって来たかは見当もつかんな。

アルトリウス
アルトリア

もし何も求めていないって言ったら?

修道院の主教
修道院の主教

……

アルトリウス
アルトリア

どうやら信じてはくれないみたいだね。

アルトリウス
アルトリア

ならこうしよう、私にはどうぞお構いなく。ここでの出来事や人たちには決して関わらないと約束しよう。もちろん、主教様のこともね。

アルトリウス
アルトリア

私はただこの修道院の物語に引き寄せられ、素敵なエンディングを目にしたいと願う旅人に過ぎないさ。

アルトリウス
アルトリア

それでも信じられないのなら、このヘイローに向かって誓いを立てようか?

修道院の主教
修道院の主教

……ずるい人だ。

修道院の主教
修道院の主教

……よかろう、その言葉を信じよう。

そうして老人は再び静かになった。
老いを経てしまえば、人は誰しも凝り固まり、干からびてしまうものなのだろうか?かつて周りの者たちに愛されてきたこの一本一本の皺も、今では鬱々とした雰囲気を感じさせるだけとなった。
両の目もすでに濁りきってしまい、翳りに覆われてしまった。この目を見るだけでも、数十年にもおけるこの修道院の月日を窺い知ることができそうだ。
この老人の顔つきも、昔はきっとより温厚で優しい、よりラテラーノ人らしい顔つきをしていたことだろう。

修道院の主教
修道院の主教

この数十年もの間、聖都は一度たりとも儂らの要請に返事をしてはくれなかった。だが、儂は祈りを諦めたわけではない。

修道院の主教
修道院の主教

儂の信仰は儂に友愛を教えてくれた。兄弟と姉妹たち、そして誠実な友人らを見捨てることなど一度も教われなかったさ。

修道院の主教
修道院の主教

だが多数の幸福のために、少数を切り捨てなければならないというのであれば……

修道院の主教
修道院の主教

私がとても敬虔な信徒だったら、そんなことをすれば裏切りになると思うかな。極めて恥ずべき行為だ。

アルトリウス
アルトリア

主教様もそう思っているんじゃないのかな?

修道院の主教
修道院の主教

……それは答えられんな。

修道院の主教
修道院の主教

仮に信仰が自身を裏切れば、それを信じていた者たちはどうすればいいというのかね?

壮年の狩人
壮年の狩人

よし、ここに置いておこう。

壮年の狩人
壮年の狩人

あとで若いやつらに任せておけばいい。これくらいあれば今年の冬は凌げるはずだ。

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

うん、分かった。あとで呼んでおくよ。

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

しかし、本当にラッキーだったよ。この肉さえあればもう少しは持ち堪えられそうだ。

壮年の狩人
壮年の狩人

……すまなかった。

壮年の狩人
壮年の狩人

だんだん寒くなってきたせいで、あまり獲物が獲れなくなってしまってな。今回の収穫は予想よりもはるかに少ない結果になってしまった。

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

何言ってるんだ、そんなことは言わないでくれ。

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

あんたたちがいるおかげで、子供たちも少しは肉にありつけるようになったんだ……すまなかったなんて、そんなこともう言わないでくれよ。

壮年の狩人
壮年の狩人

はは、そうか、なら撤回させてもらおう。今日は子供たちのためにたんと美味しいものを作ってやってくれ。

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

そうしてやりたいのは山々なんだけど……でも、やっぱり節約しておかなきゃ。

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

そうだ、ヘルマンはどうしたんだ?今日は狩りに参加しなかったのか?もしかして怪我をしたんじゃ……?

壮年の狩人
壮年の狩人

……あいつのことなら心配するな、なんともないさ。

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

本当か?

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

怪我をしてしまったら一大事だ、放っておいたらもっとひどいことになる。だからそんなことでウソを言わないでもらいたいんだが……

壮年の狩人
壮年の狩人

分かっている。ちゃんと助けが欲しい時はお前たちを呼んでおくから。

 

壮年の狩人
壮年の狩人

まあそういうことだ。時間ももう遅いし、私は先に帰らせてもらうよ。

 

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

……待ってくれ、ジェラルド!

ジェラルド
ジェラルド

なんだ?

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

……みんな、最近ずっとラテラーノのあの話で持ち切りなのは知ってるだろ?別にやましいことを考えてるわけじゃないんだが、やっぱりどうしてもせっかちなところがあってだな……

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

だからもし何か気に障ることを言われても、あんまり気にしないでやってほしいんだ……

ジェラルド
ジェラルド

……

ジェラルド
ジェラルド

分かっているさ。

痩せ細った修道院の住民
痩せ細った修道院の住民

そ、そうか……それならいいんだが……

レイモンド
逞しい青年

……

ジェラルド
ジェラルド

おお、レイモンド。すまなかったな、ひとっ走りさせてしまって。

ジェラルド
ジェラルド

さあ、残りはあいつらに任せるとして、私たちはもう行こう。ところで、ヘルマンはまだ戻ってきていないのか?

レイモンド
レイモンド

ヘルマンなら今日一日中見かけなかったすよ。ちょうどさっきデービーたちが探しに行ったから、俺もあとで探しに行くつもりです。

レイモンド
レイモンド

それと、探索しに出かけて行ったやつらも用意はできてるってことっす。夜そいつらが戻ってきたら色々と分かってくるかもしれません。

ジェラルド
ジェラルド

そうか、助かったよ。それじゃ、引き続き荷物を片付けておいてくれ。

レイモンド
レイモンド

……ちょっと待ってくれよ、ジェラルドの兄貴!

レイモンド
レイモンド

本当に……俺たちはこのままでいいのかよ!?

ジェラルド
ジェラルド

落ち着け、レイモンド。

ジェラルド
ジェラルド

お前も分かってると思うが、私たちはもとから選べる状況じゃなかったんだ。

レイモンド
レイモンド

だからこうして妥協するっていうのか?

レイモンド
レイモンド

じゃあ俺たちはこれまで一体なんのために……俺たちがあいつらとは違うから?俺たちだって同じ――

ジェラルド
ジェラルド

レイモンド!

ジェラルド
ジェラルド

そこまでにしろ、わがままを言うんじゃない。

レイモンド
レイモンド

でも!

ジェラルド
ジェラルド

でもじゃない。

ジェラルド
ジェラルド

お前が気に食わないのはよぉく分かっているさ、レイモンド。

ジェラルド
ジェラルド

だがな、そうするしかないんだ。まあ、今日はまだ時間がある……もしまだ顔を会わせたい人たちがいるのなら、最後くらい会いに行ってやりなさい。

摂食。
それは生存本能を満足させるために、食べ物を認識してから口に運び、そして咀嚼して呑み込む行為。
すべてにおける生命活動の礎であり、すべての生物が生まれて最初に備わる本能。
呑み込み、摂取し、そして吸収する。
生存するために尽くされる、ありとあらゆる努力の源である。
これ以上真っ当で純粋な欲求など、ほかには存在し得ないでしょう。

???
温厚な修道士

もう一度あなたに忠告しておくべきでしたね、今はあまり適切な時期ではありません。

???
温厚な修道士

今のあなたは、身体も心も弱い状態です。その状態でいると、周りの状況に影響されて正常な判断ができなくなってしまうのですよ。

???
温厚な修道士

……

???
温厚な修道士

もう私の声は届いていないのですか?

返事はなかった。
広々とした地下空間には修道士の声と、これまで聞いたこともないような不気味な音だけが聞こえてくる。
その不気味な音の正体は、食料を摂取する音であった。
栄養になり得るものであればなんであれ引き裂き、食道へごくりと呑み込み、そして腹の中に落とし込む生々しい音。
やがて音のする先に、元々の姿形を失ってしまった“ナニか”のシルエットがうっすらと暗闇の中から現れてきた。

???
温厚な修道士

もうすぐ冬に入る頃合いですから、近頃はてっきり曇りが続いてきてしまいましたね。

???
温厚な修道士

この修道院も……まるで孤立無援の孤島といったところ。修道院だけでよくここまで長く耐えてきましたが、それももう限界の様子。

???
温厚な修道士

周りの壁を見れば分かりますが、隙間や亀裂だらけで強い風を防ぐことすらできない。

???
温厚な修道士

ふむ、燃料も残り僅かといったところでしょうか。もし寒さを凌げるものがなければ、今年の冬は多くの人が凍え死んでしまうでしょうね。

???
温厚な修道士

しかし、だからといって何も手だてがないわけではありません。

???
温厚な修道士

それほど規模は大きくありませんが、近くに源石の鉱脈が眠っています。

???
温厚な修道士

そこでエネルギー源になる源石を掘り出せばよいです。これまでの間、貴方がたはずっとそうしてきたではありませんか?

???
温厚な修道士

だが周知の事実として、源石の採掘は鉱石病の感染に晒されるリスクを伴います。

???
温厚な修道士

ほかに選択肢があるのなら、誰もそんなリスクを冒そうとはしませんよ。一旦鉱石病にかかってしまえば、それは死刑判決を受けたも同然なのですから。

???
温厚な修道士

当初貴方がたは自らの故郷を捨て、はるばるこの修道院までやってきた。自身を受け入れてくれるために、進んで危険な仕事を請け負ってきましたね。

???
温厚な修道士

そういう貴方がたはもう、この修道院にとって不可欠な存在になっていったのですが……

???
温厚な修道士

……

???
温厚な修道士

やはり私の声はもう届いていませんか……

???
“摂食する黒い影”

……

???
温厚な修道士

ふむ、これは少しばかり……

???
温厚な修道士

私も悲しい気持ちになってしまいましたよ。

フォルトゥーナ
サンクタの少女

あのー……誰かいませんか……キャッ!

フォルトゥーナ
サンクタの少女

なんで……地面にこんなにもガラスが散乱してて……

クレマン
痩せ細った男

フォルトゥーナか?いいところに来てくれた。

クレマン
痩せ細った男

そっちのほうを持ってくれないかな?窓枠を取り付けたいんだ。今日は風が強いからね、そのせいでガラスがまた割れてしまったんだ。なんとか塞いでやらないと。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

あっ、うん!任せて!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

でもつい二日前に直したばっかりよね、また割れちゃったの?この前だって、ずっと歯を震わせながらステファノお爺さんのミサに参加したばかりなのに……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

あっ、テープいる?切ってあげよっか?

クレマン
痩せ細った男

うーん、粉々になっちゃってるから、今回テープは使えそうにないね。ごめんよ……さすがにガラスの破片を全部元通りにくっ付けることはできそうにないかな。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

クレマンさんのせいじゃないよ、謝る必要はないって。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

じゃあどうする?とりあえず何かで塞いでおくとか?風が入ってきちゃうと寒いから……あっそうだ、使えなくなった布地でも持ってこよっか?

クレマン
クレマン

いや、布は貴重だから、服のために取っておこう。これからますます寒くなってくるからね。

クレマン
クレマン

たぶん木材がまだ残ってるはずだから、それを使おう。ほら、ジェラルドたちがこの前解体した空き家の。あとで探しに行くよ……

(クレマンが窓枠を塞ぐ)

クレマン
クレマン

よし、窓枠はこんな感じでいいかな。ありがとうフォルトゥーナ、助かったよ。

クレマン
クレマン

そうだ、さっきは何か用事でもあったの?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

あっ、そうだった!えっとね、何か食べ物がないか探してたのよ。もうフィーヌのせいで、お昼ご飯食べ損ねちゃったから……

デルフィーヌ
手厳しい少女

誰のせいでお昼を食べ損ねたって?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌ!?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

どうしたの?あなたまでこっちに来ちゃって。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

どうせあたしが来なかったら、好き勝手あたしの悪口を言ってたんでしょ?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

悪口なんか言ってないわよ、全部事実でしょ。あなたに長ったらしいお説教さえなければ、こんなことにはならなかったんだから。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

それはあんたがいつまで経ってもトロいからだよ、人に騙されてるっていうのに呑気な!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あのレミュアンって女には気を付けろって再三言ったでしょうが!あちこち関わってさも心配してるようなフリを見せてるけど、絶対なんか企んでるって!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

フォル、あんた最近いつにも増してボーっとしてるけど、まさかあの女に何か吹き込まれたんじゃないの?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

そんなことないわよ!何も吹き込まれていないし、ボーっとなんかしてない!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

……いいや、してるさ。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あたしらはサンクタなんだから、それくらい分かるよ。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

レミュアンさんだってサンクタなのよ?あの人に悪意はないことくらいあなただって感じ取れているはずなのに、なんで信じてあげられないのよ?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

どうしてそんなにラテラーノ人を毛嫌いしてるわけ?私たちだって……もともとはラテラーノ人だったでしょ?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

ステファノお爺さんだってこの前、すぐにまたラテラーノに戻れるって言ってたじゃん。それなのにラテラーノからの使者を閉じ込めちゃうなんて……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

どうしてそんなにラテラーノへ帰りたがらないの?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

レイモンドたちと一緒に行けないからだよ、その理由だけでも十分でしょ!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あの人たちは見捨てろっていうの?申し訳ないけど、あたしには無理だね!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

そういう意味で言ったわけじゃなくて!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

じゃあどういう意味なのよ!

クレマン
クレマン

落ち着きなさい二人とも!

クレマン
クレマン

主教様がああ決断されたのにはきっとあの方なりの考えがあるからだ。だから二人とも……少しは落ち着きなさい。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……

クレマン
クレマン

とりあえず私は木材を探してくるよ、窓を塞いでおかなきゃならないからね……フォルトゥーナもデルフィーヌも、少し頭を冷やしておきなさい。

(クレマンが立ち去る)

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……フィーヌ、あなた私の考えが感じ取れないの?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

感じてるよ、当たり前じゃん。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

でも……いや、ごめん。さっきはついカッとなっちゃった。あんたがそういう意味で言ったわけじゃないことくらい、分かってるから。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

ううん、私も……ごめんね。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あんた、いつもその銃持ってるよね。確か父親から譲ってもらったんだっけ?もうとっくに使い物にならなくなったんじゃないの?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

うね、どこかの部品がダメになっちゃったみたい。それに私、銃の扱い方よく知らないから……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

でもね、使うために持ち歩いてるわけじゃないの。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

そうなの?ずっと飾り半分で持ち歩いてるのかと思ってた。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

まあ、半分はそうね。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

こうして銃を握ってるとさ、なんだか……祈りの姿に見えない?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

お父さんが私に銃を譲ってくれた時にそう言ったの。これはサンクタたちの慣わしだって。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

……そんな慣わしがあるなんて初めて聞いた。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あたしの婆ちゃんの、母方のだけど、銃を谷に落っことしちゃったから……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……元気出して、フィーヌ。ほら、私の貸してあげるから。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

この銃を直したら、また一緒に使い方を勉強しましょう。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

だから今は、とりあえず一緒にお祈りをしよっか。

クレマン
クレマン

えぇっと、この前残ってた木材は……確かこの辺りに……

クレマン
クレマン

あったあった、やっぱりここに置いてたか。

クレマン
クレマン

うん、これだけでも十分かな。もし余っても、窓枠の周りの補強にも使えそうだ。

クレマン
クレマン

それから燃料は……

クレマン
クレマン

もう少ないな……

クレマン
クレマン

ん?

クレマン
クレマン

だ、誰だ!?

クレマン
クレマン

……

クレマン
クレマン

……誰もいない?

クレマン
クレマン

見間違い、なのかな……?

リケーレ
リケーレ

本当におかしな地形をしているな、ここ。どういう名称の地形だったっけ?岩石砂漠みたいだが、奥に深い谷も確認できるぞ?

リケーレ
リケーレ

まあいいや、とにかく足元には十分気を付けてくれよな。

???
スプリア

お気遣いどーも。あなたがこんなに紳士的だったなんて初めて知ったよ、リケーレ。

リケーレ
リケーレ

おっと、お褒めの言葉なら結構だ。あんたに褒められてもいいこと何一つないからな。

???
スプリア

そうケチケチしないでよ、今回は本心で言ってるんだから。

???
スプリア

それで、ターゲットの修道院はっと……どれどれ、前にあるあれがそうなの?

リケーレ
リケーレ

ああ、多分あれで間違いない。

???
スプリア

それで、どうやってあそこに入るつもり?このまま玄関のほうまで行って、ご丁寧にノックして知らせるとか?

???
スプリア

もしかしたらお出迎えしてくれるかも?

リケーレ
リケーレ

フェデリコ、どうする?

フェデリコ
フェデリコ

ひとまずこのまま接近しましょう。

リケーレ
リケーレ

了解っと。あっ、もう一度俺たちの任務を確認しておくか?

フェデリコ
フェデリコ

ターゲットの修道院を確認。イベリアとラテラーノが1011年に共同で立ち上げた大型移動総合施設、正式名称“アンブロジウス修道院”。

フェデリコ
フェデリコ

当修道院は本来であればイベリアに所属していたものではあるが、六十一年前に規定のルートから航路が外れてしまう、そのまま行方不明に。

フェデリコ
フェデリコ

しかし一か月前、ラテラーノは当修道院からの救援の知らせを受けたため、そこに特使を二名派遣した……というのが事の経緯です。

???
スプリア

ここまでは普通だね。

???
スプリア

で、こっからが問題。一体なぜ派遣した二人の特使は連絡が途絶えてしまって、武装要員であるあなたたちを直接ここに送り込まなきゃならなくなったのか。

フェデリコ
フェデリコ

私が受けた任務内容は、連絡が途絶えてしまった枢機卿補佐官レミュアンとレガトゥスのオレン・アルジオラスを探し出し、身元の安全を確保すること。

フェデリコ
フェデリコ

及び人員の傷害を可能な限り避けながら、修道院内部の正常な運行を確保することです。

リケーレ
リケーレ

それは……あまり派手にやり過ぎるなって意味なんじゃないのか?ほら、教皇聖下からの。

フェデリコ
フェデリコ

……

???
スプリア

まあ、オレンのほうはどうでもいいよ。私はレミュアンのために今回の任務へ志願したんだから。

フェデリコ
フェデリコ

私情を任務に持ち込まないでください。

フェデリコ
フェデリコ

現時点で、任務対象の状況は不明瞭です。建物内の住民たちも、敵意を抱いてるかどうかは不明です。

リケーレ
リケーレ

じゃあ……まずは潜入調査でもしてみるか?

フェデリコ
フェデリコ

いえ。

フェデリコ
フェデリコ

このまま正面から突破し、速やかに任務を遂行したほうがよろしいでしょう。

フェデリコ
フェデリコ

もしすでに二人の身に何かが起こってしまった場合、彼女らの遺骨をラテラーノへ持ち帰る任務に変更せざるを得なってしまいますので。

タイトルとURLをコピーしました