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エンカクのモジュールテキスト
この刀とその主人は彼を殺す機会があったものの、その刀は結果的には折れてしまった。
一つは戦場の泥地に、もう一つは花畑の棚に置かれている。
「彼は憎しみを持って訪ねてきた」
「あの制式長刀、傭兵達がよく使うものに見えるけど」
「彼は友の復讐のためだと言っていたが、誰の事なんだか」
「……この鉢の枝、黄色くなって、芽が出にくくなっているんだ」
「生きる意志を失った人に何が出来るんだろうね?」
「他人の生死が自分の命をも凌駕するなんて事、何の意味も無いのに」
「くだらないな」
「友のために多大な犠牲を払うなんて、よくある言葉じゃないか」
「だが、彼はそれを行動に移す事が出来る。はっ、彼には少しは見所があるって事よ」
「んー…こっちは大きくなってきているのに、こっちは萎れてる。一つは摘まないとダメそう」
「芽は摘み取る事で、生き残った箇所はすくすくと育っていく。植物とはそういうものだ」
「残念な事に彼は刀の使い方を全然分かっちゃいない。切って切ってただ切って、力任せに振るうだけ」
「刀が折れたとしても、拳で、その次は歯で、彼は復讐を果たそうとした」
「彼は生きている者に代価を支払わせるために、自分の命を意に介す事は無かった」。
「幾らかは意味があるのかもしれない、ただ…」
「命は自身を死んだ命の従属としか見なす事が出来ないのであれば、強い存在になれはしない」。
「植物は摘まれて土に埋められた部分すらも自身の養分として吸収する事で、よりすくすくと育つ事が出来る、そして何輪かの花を咲かす事も出来るかもしれない」。
「全ての命も同じなんだよ」
「……」
「この鉢は温室の中は向いていないのかもしれない、ベランダのほうに持っていくとしよう」
「新しい一面を覗かせてくれるかもしれない」
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