私は錯覚を見ているのでしょうか、また空が暗くなってきたような?
…それが錯覚だったら良いのだがな。
時間はもう残されていない。
天災の雲はさっきよりも黒く、そしてはっきりとした形になってきている。
ちっ、裸眼でもゆっくりと形作っているのが見えるのはとてもいい兆候とは言えないな。
加えてどの通りにもレユニオンが待ち伏せされている可能性がある。…いや、この言い方では生ぬるいな。
レユニオンが街中にあふれているだろう。
街のほぼ全てで暴徒が破壊や強盗、交通機関や店舗を焼き払っているようです…。
あの人達は天気の良いピクニック日和か何かと思っているのでしょうか!
今ピクニックに出かけたら、きっと天災に見舞われるぞ。
それだとほとんどのレユニオンが野蛮で頭が悪いということになってしまう。
…。
…ふふ。
彼らは本当に…ピクニックをする訳ではないと思います…。
私はただ愚痴を言っただけで…そういう意味では…。
ーー
そういうことでは無いのか?
あっ…
すまない、私はいつもこうだ…
あああ…だ、大丈夫ですよ…
逆に笑いをこらえるのが少し難しかったです…!
えっと、こんな危険な時に笑うなんて大変なことなんですよ。
大丈夫です、もうすぐ着ますよ。
これらのことが全部終われば。
(戦闘)
えっ…!
わっ!足どうされたんですか?
動かないで下さい。先に処置をしましょう…
道を急いだばかりに気づくことが出来ませんでした。すみません、お願いします…。
思い出します…あの感染者診療所でのことを。名前は…アザゼル。
チェルノボーグの地下ネットワークを全て掌握しているのに私達には協力しなかった!レユニオンとの関係は曖昧ですが…。
少なくとも、彼らが情報を共有してくれていたり、提示していてくれれば…
私達はすぐここから出ることが出来ていたのかもしれません…。
それが全てではありませんよ…
アーミヤ、彼らと交渉している時にもいましたよね?
彼らの傲慢な態度に私は…。
ボス…。
感染者達が他者を信頼することは非常に難しい。
多くの苦難を経験したのであれば、保守的で頑なになるのは当然のことだ。
少なくとも彼らのあの振る舞いは…理解出来るし、許してあげたいです。他人に用心しないと他人から傷つけられるのですから。
ましてや感染者同士なんて簡単に信頼しあうことは出来ません。みんながみんな私達のように危険を冒しても構わないという訳では無いのです…。
・感染者診療所?
・…
私達感染者は一度捕まったら大多数の都市では隔離されてしまうのです。或いはまとめて”処理”されたりもします。
最も運が良くても都市からは追い出されてしまいます。
オリジ二ウムに感染した場合、簡単に言うと体はオリジ二ウムに冒されててしまい、それは死んだとしても広がり続けます。
ですので、大勢の人はこのことを「鉱石病」と呼んでいます。
この病は感染者に普通とは違った特異な力を生み出し、きちんと管理された法杖を使用しなくても術を使うことが出来るようになるのです。
また、何故なのか分かりませんが、多くの人達は感染した後に大きく変化が起こります。
最終的に、これら全てが原因となり、彼らは…。
…。
死ぬことになる。
自分の最期を自分で言うなんて皮肉なもんだな。
ドーベルマン先生…
大丈夫だ、アーミヤ。続けろ
…はい。
鉱石病には薬はありません。少なくとも今この状況では感染者は絶望の中にいて、苦痛と共に命を失うのです。
そして彼らの遺体ですが…。
…新しい感染源となってしまうのです。
常人とは違った特殊な力を得ますがーー
感染すれば必ず死ぬという恐ろしい感染症ーー
この2つのことから感染者は…この大地では多くの人達に恐れられています。
ーー
たったこれだけの言葉だと、ドクターはそれを上手く理解することは出来ないと思います。
ですが、あなたがこれらの問題の影響に直面したときには…理解出来ると思います。
感染者達の置かれている立場が現実ではどうなってるのか分かると思います。
ロドスアイランドのようにお互い別け隔てなく、あるいはレユニオンのように熱狂的に感染者が囲われる組織はまれだ。
私はお前が怒る理由も分かるが、あの小さな診療所の苦悩も理解出来る。
…そうですね。
もしかしたら、彼らも何か問題を抱えていたのかもしれませんよね。
他者に何かを要求する前にお前が出来ることを証明するべきなんだ。
ボス…
よし、処置完了しました!
どうですか?
はい、問題ありません。ありがとうございます。
いえいえ、これが私のやるべきことですから。
え?そこの負傷者さんーーちょ、ちょっと待って下さい!走らないで!まだ包帯が!
彼女がいると…本当に安心できます。
若くて、気も小さいのに…ましてや感染者ですらありません。
ですが彼女はみんなを信頼しており、みんなのために頑張っています。時々怖い顔をしますが…。
負傷者のうめき声やひどい傷を見ても彼女は気を動転させることはしません。
彼女の頑張っている姿を見るたび、私は思うんです…
ええ…
「まだ足を止めて休んではいけない」と感じます。
はい、私達は自分のためだけに戦っているのではありません。
ロドスアイランドの人たちはみんないい人たちです。多くの人が恐れと敵意によってお互いにいろいろな溝ができているのかもしれません…。
ですがロドスアイランドにいれば、誤解はきっと解けると思うのです。
私もそう思います、アーミヤ。
ええ…。
行きましょう、ドクター。