10:26 PM 天気/曇り
日落大通り 「大地の果て」バー

ボス、このワインって何年ものなん?

うーむ。沈殿した色、悠久の香り、後味の甘さ、長い舌触り、これは――

先月スーパーで買ってきたやつだな。

さっきは龍門一のバーテンダーとかぬかしとったやろ!

ちっ、何回も言ったじゃないか。ここは武器を備蓄するところで飲む所じゃないって。ソラ!

はいはいはい、うがい用の水だよ。

うわあ…炎国の黄酒でうがいって…。

酒で消毒は確かに出来る。カウンターの下に工業用アルコールがあるから、間に合わせることは出来るが。

まあええわ。金があるなら他のものを買ったほうが良さそうやな。金を使うコツっていうのは過程や過程!金額は関係あらへん!

みんな、アップルパイが焼き上がったよ!パーティの始まりだ!

わ~エクシアの手焼きやん!

乾杯!

…いつの間にかこうなってたけど、これって何のパーティなの?

え?バイソンの歓迎パーティだよ。

…バイソン本人は?

え!知らない!

だったら言い訳をしとけ。私達は永遠に言い訳に事欠かさないってな。
(ドアを開ける音)

…あなた達は何をしているんですか?

や。パーティをするのを待ってたんや。ほれ。

あ、大地の果てにようこそ。

遅刻の罰として酒を3杯、主役が遅刻で3杯な。でも酒は飲めないからサイダー9杯で。

どうしてその名前を…。

(この内装のスタイル…キラキラの装飾…なぜペンギンがここにいるのだろうか…?)

ぼーっと突っ立ってないで、早く入って。これはあなたの歓迎パーティなんだから。アップルパイはいる?

…いえ。

僕とモスティマさんがマフィアに対応していた時、あなた達はここでパーティをしていたのですか。

それで…あのボスは?

彼は逃した。

正確には私が逃すことを許可したのだが。

僕は逃げられましたが…これからどうするんですか?

敵の数も目的も身分も既にはっきりとしている。

シラクーザのマフィアはペンギン急便の龍門での勢力範囲を奪いたいのだろう。

…私達は物流会社であるべきなのだろうが…まあいい。

気にしないでテキサス、いつか玄関掃除に使うから。

この話をしている辺り、まっとうな会社では無いやんな?

あいつらのやってることは無駄な仕事だよ。ボスの商売をあいつらに譲るなんてことはないから。

ペンギン急便を取って代わることは出来ないし、私はより取って代わることが出来ないのだからな。

それなら、僕たちにはたくさんの解決方法があるはずなので、どうして彼らと戦っているんですか?

知らない。

知らないって…あなた達は今までどうやって…。

まあまあ、そんなに真面目にする必要はない。チャンスを見つけたら、あいつらの頭を殴って川に投げるだけだ。それでいいだろう?

この茶番は寝られなかった二度寝と同じくらい時間の無駄だ。私は全く――興味がない。

そうそう、こんなの議論する価値も無いよ。はい、ガム。

…はあ。

少なくとも計画は立てるべきでは…待って下さい、このガムは何味ですか?

上級合成コール味。

このブランドのガムは危険物のカテゴリーに入れておこう、クロワッサン。

新しい味を見つけるとときめいてしもうてなあ。注意せんとなあ

おい、お前たちのパーティはもうやめだ。酒と料理と音楽はあるか?

あいよ~!

本当にジャズだ…予想外…ちょっとだけ…。

ここの主人はジャズ愛好家だったんだけど、ボスに譲渡されてからはちょっと変わったんだよね。

ちょっと?

主にボス自身のレコード全部にだが――。

やめてくれ、悲しい過去を思い出させないでくれ。

結局のところ、誰が彼の面倒な病気を調べてくれる?私は時間を割いて彼のためにこのバーの世話をしてあげれれば良いなって思ったんだ。

それはオリパシーですか?

龍門はあれだけ多くのことを経験したのだから、感染者への態度は変わったはず…。

いや…。

アルコールアレルギーな。

…。

龍門最高のバーテンダーを志す者にとっては本当に不治の病やんなあ。
(車の止まる音)

どうしてまた汚いものが飛び出してくるんだ?おい、お前たち、生きたいやつはすぐにカウンターの後ろで横ばいになれ。

オーダー!

あ、カウンターの下にコイン見っけ。やりー。

ここは狭いんだから、慌てないで――あ!エクシア!あなたのリング!

ぼうっとするな、バイソン。うつ伏せになれ。

へ?あ――。

撃て!
(発砲音とガラスが割れる音)

あーあ、この店全部壊れてしもうたやん。

皇帝さんはまだ外にいるようだけど、大丈夫なのですか!?

こいつらはどうしてここまでしつこく殴りかかってくるんだ。店が潰される前に潰せ!

ごめん、ボス。ゴム弾が無くなったみたい。椅子に座ってても良い?

安い酒を買ってここに置いたのは武器にするためじゃないのか!?

え?さっき飲んだのが最後の瓶やで。残りは全部高いもんや。

放っておけ、洗練されたワインを宮殿に保管するってのはつまらなく古臭いだけだが。

こういった素晴らしい醸造物ってのは開放されてなんぼだ。価値的にも物理的にも。

え?でも酒蔵の酒ってとても高いんじゃ――

持て、手にボトル一本、忘れるな、頭を打つだけだ。

私のバーを保護するってのはこの大地を守ることだ。行け。

エクシア。

はいよ!瓶で人を打つんでしょ。得意だよ。

ま、待って私も!
(瓶が割れる音)

奴らが出てきやがった!気をつけろ!うわあ!。
(瓶が割れる音)

10万、15万、45万、70万…。

その瓶はいくらや?おい、エクシア待て!その瓶は――あちゃあ。
(瓶が割れる音)

こ、これは…?

今夜の損失数字は、駄目や。少なくともうちらは盾で戦おうや。これ以上被害を出したらあかんで。

は、はい!

OK~、3、2、1、上や!
(戦闘)
(発砲音とガラスが割れる音)

こんばんは、シラクーザの犬。クロスボウの弾は終わり?じゃあ何故私達は生きているんだ?

流石皇帝だ。弾の雨の中で酒坏を持っているとは運が良い。

龍門は本当の殺し合いは容認していないはずだけど。

ゲームのルールには従わないと追放されてアウトだよ。

ルール?

龍門警察が到着する時にはお前たちの滅茶苦茶な死体しか見つけられないと思うがね。

…街にも奴らがいる。

裏口まで塞がれてしもうたな。うーん、こいつずっと恨みを持ってたみたいや。徹底的やな。

カポネのビビリはマウスキングとウェイ・イェンウーを恐れすぎている。後者は注目する必要があるかもしれんが…。

お前達とあのネズミは吐き気を催させるという点では一流だろうが、一文の価値もない。

あー、本当にそう思う?それとも悪口言いたいだけ?

誠意を持って「皇帝先生」。

クロワッサン、酒を拾え。大脳皮質を修理してやれ。

やけどな、ボス。実を言うとな、うちらはもう何百万もの価値があるワインを壊したんや。

あいつらの命の価値は?

どう見たってそこまでの価値は無いで。

…。

本気で言ってます?

まさか。私達は必ずウェイとの約束は守る。龍門の中では喧嘩せず、人の命を脅かさず、全ての商売の紛争は商売の中でやる。

ただ、今日は全部で5時間も逃げていた。いつもの2倍の労働時間だよ、2倍!

それだけじゃない。私達は1年分の行動補助金を爆破したんだ。車、ワイン、そして私が大事にしているレコードもな!

そして今、私のバーで予期しない死亡が発生した。これは大丈夫なのか?え?

分かりました。

テキサス、お前の名前は不快だ。

お前のようなシラクーザ人はしらない。だが、お前は再び尻尾を撒いて龍門から出ていくべきだ。

俺のファミリーを馬鹿にしたことを後悔するぞ、テキサス。

龍門に逃げてきた犬は誰なのか?お前はシシリアンを相手にする資格はない。

…。

それこそがちゃんとした表情だ、テキサス!それこそシラクーザの古来の人の姿だ!

ん?

予想外だね。君も呼ばれたの?

まあそうですね。しかし、ビジネスの飲み会から抜け出すというのいい感じですね。

あー、このマフィアの軽率ないたずらっていうのはこんなにも大勢の人を感動させるのに値するものなのかな?

無いですね。それに面倒くさい社交から身を離れて、一息つく機会を見つけたいだけです。

ですがクロワッサンのハンマーには新しい部品をカスタマイズしました。エクシアの守護銃の件もあります。とにかくやるべきことはたくさんあるのです。

ふーん、もしかしたら私もあなたの迷惑になるかも。

大丈夫ですよ。本職の仕事以外に同僚たちのために雑務を処理するのも私の役目ですから。

この杖を保管してもらえる?

これは白だ。その意味はあなたにも分かりますよね。

せめて今夜だけは気楽にさせてよ。ただのお祭りなんだから。

いつもそれを持ってるからダンスパーティーの会場で羽目を外すことが出来ないんだ。暴走しちゃうからね。

分かりました、おまかせを。これも仕事ですから。

はは。何でもかんでも仕事ってあなたも本当に大変だね。

終わったら一杯飲みに行かない?おごるよ。

大賛成です。同僚同士のつまらない飲み会よりもずっと良いですね。

しかし、この動きを見るに大地の果てを守ることは難しそうだ。

…ねえ、龍門に帰ってきたばかりじゃないの?今夜のことはどれくらい知ってるんだい?

全てですよ。今回の祭りの原因は複雑ではありません。全ての情報は明らかになっています。

手伝いに行かない?

ご遠慮しますよ。肉体労働は若い子どもたちにお任せします。あなた達の荷物を守り、お茶を飲みながら、仕事が終わるのをお待ちしておりますよ。

ええ。マウスキングがあなたをお待ちしている以上、楽しくお遊び下さい。

あなたもね、イース。

せっかくの鎮魂の夜なんだ。あまり頑張って仕事はしないようにね。

じゃ、先に失礼するよ。

…鎮魂の夜?

しまった、鎮魂の夜は休みになるはずでした。

どうしていつものように残業しているのでしょうか…ああ、大きな損失です。

少ないですが、彼女はあなたを私に残してはくれました。私達は久しぶりに旧友に語り合うことができそうですね。

ええ、あなたを手で握る感覚は悪くはない。文句を言っても始まりませんね。
(斬撃音)

逃げ道は無いぞ。

はあ、はあ、テキサス。お前の腕はお前の名前にふさわしいな…だからお前のファミリーは…。

口をつぐめ。
(斬撃音)

テキサスさ~ん、私のほうが多く解決してるよ~。

でもボスを制圧してるのはテキサスだよ、最低でも3人分じゃない?

え?だったら私の負け?

いや、誰もあんたと比べとらんよ。

あ、ここにボトルが1本完全な形で残っとるやん。価格はどれくらいかなあ。

1、2、3…7、0が7個?ありがたやー!

恐れるな!相手は5人だぞ!

そんな低俗なセリフ言うなよ!
(ガラスが割れる音)

ま、また頭を…ぐっ…。

まあ私を含めて6個目だし。

物流会社の6人の従業員と武装マフィアが正面衝突して勝者が前者になるとは…。

――おかしすぎない?

おかしくは無いやろ?喧嘩の腕に関しては人数が同じ位なんであれば、うちらは龍門一やで!

――!
(斬撃音)

お前たちの負けだ。投降しろ。

は?投降?お前、本当にあの「テキサス」か?

一旦剣を抜いて向き合ったシシリアンの前に「勝ち負け」は存在しねえ。あるのは「生きるか死ぬか」だ!

お前は後悔するんだな!

爆破!

――!伏せろ!
(爆発音)

ぐっ――また爆弾――
(爆発音)

――。

…ちっ、また逃したか。

追いかける?

いや、私は少し敵を過小評価してしまっていたようだ。

…あいつらは龍門に逃げ込んできた敗者だとしてもシシリアンを自任するマフィアだ。

テキサス、怪我をしてるの!?わ、私が包帯をしてあげるよ。

傷口は浅いから焦らなくても良い。

だめだよ!座ってて!救急箱を探してくるから…。

シシリアン…シシリアンとはどういう意味です?シラクーザ人の昔の呼び名ですか?

シラクーザ12ファミリーの起源の一つであるシシリ連合は最初に暴力によって戦果を得た都市国家なんだ。

それがシラクーザの「シシリアン」の語源だ。

ただ今は…この言葉は他の意味を持つようになった。昔の人が「シシリアン」を自任するということは滅多に無い。

奴らにはいろいろな理由があるのかもしれないが…強くはないが、奴らがそれを自称する以上は…。

もういいよ、テキサス、一気にこんなにも多くの話をするのは疲れるでしょ?

とにかく!あいつらはとても危険なマフィアだよ!それが自称だったとしても、そうでしょ?

…ああ。

このような襲撃を続けさせてはいけません。被害は拡大する一方です。

僕たちも反撃しないと。それしか――。

…ちょっと待ってくれ。どう言い訳してアルコールアレルギーの馬鹿バーテンダーに説明すればいいと思う?

これに説明も何も…あ。

最低でもボスが座ってる椅子は完璧やな。

この椅子だけが残っているが?

んー、その椅子だけが完璧に残っているね。

――あ、壊れたボトルも壁も一種の違った美感があるな。間違いない、これはまさに本人が独特なスタイルに改造したものだ!

いやいやいや、流石にそれは無理があるよ。

全額弁償の準備やな。んあー、ペンギン急便の経済は冬にまっさかさまや。

しかも酒のせいで身体はべとべとだ。ちょうど傷口の消毒も出来るが。

だめだよ、ワインで消毒をするなんて。ここに医療用アルコールがあるけど…どうしてストローが?ま、まあいいや。テキサス、消毒するね…。

…気が変わった。

あいつらは鎮魂の日に騒ぎを起こすと言っている――

この世を安らかにするしか無い。