・起きろ!
起きろ!!
…?
起きろ…起きろ!
アダム!温かい水を持ってきてくれ!
父…
あ…
彼女は生きてる!よかった、彼女はまだ生きてるんだ!ご先祖様、ありがとう!
アダム!早くして!
父…さん…?
父さん?
…俺は…そうだ!俺が父さんだ!
そうだ、そうだ!俺がお前の父さんだ!
寝るな、寝るな!父さんの手を掴んで離さないでくれ!
父さん…大丈夫…寒い…
寝ないでくれ、俺の娘、俺の娘!生きるんだ!
体温がまだ低いままだ!米什卡、何とかしてくれ!
流れを何とか傾けることは出来ないのか?
寒い…!父さん!寒いよ!
…娘…私の娘!頑張ってくれ!
父さん、ないで…もう私から離れないで…。
10:48 AM
チェルノボーグ分離都市”14区”廃墟
地下上層部
…。
・起きろ!
・…
・お願いだから…
もう起きている。
お前は私が意識不明の時に殺さなかったということはよほど自信があるのか、それとも他の何かをするためか?
・そんなことは…。
・私は選べなかった
・…
・そうしても良かったのか?
いずれにせよ、お前はそうしなかったということか。
・君がずっと寝言を言っていたからかもしれない
・…
・君の素性を聞いてもいいか?
…。
お前はさっきまで手を抜いてくれた。だから今お前を殺しはしない、これでお前への命の借りは返したと思っている。
周りは見たか?
出口を見つけることが出来なかったのか。
しばらくの間、私達はここを離れることは出来なくなったようだ。
…。
私が呼んでいる父の名前は博卓卡斯替という。かつてウルサスの将校だった。
本当の父は早くに死んでしまった。
小さいときのことはぼんやり覚えている。ある男がクロスボウの矢を遮り、女を守った。女は私を懐に抱き、背中で2つ目のボウガンの矢を防いだ。
・君はその目で見たのか…。
あの時の私は目の前のことを理解することは出来なかったが、この記憶を忘れるということは無かった。
何があったのかという本当のことは祖母が後から教えてくれた。
私は祖母にその光景の意味を問い詰めはしたが、彼女はもう言い逃れは出来ないと感じた時に私に教えてくれた。
”それはあなたの生みの親なの…死ぬ前にあなたを守ったのよ”とな。
おかしなことに私は彼らを全く知らない。私の頭の中にはこの光景意外に、彼らに関する記憶が何も無いからだ。
私の生みの親はそのまま私から忘れられていった。彼らにどんな感情を持っていたのかすら分からない。
…。
・つまり君の祖母が君を育てたのか。
半々だ。もう半分はウルサス感染者の血によるものだ。
…どういうこと?
はあ…
私は西北にあるとある鉱場で生まれた。
鉱場の場所は遠いが、規模は大きくはなく、いかなる都市にも属していなかったから、周辺には集落すら無かった。四季は雪以外何も無かった。
この鉱場は刑場と同じで、死と奴隷の宣伝のために建てられたものだ。このような鉱場は雪原には数え切れないほど存在している。
私の生みの親はこの鉱場の鉱夫だ。
祖母は私に付き添い言語の勉強をしてくれはしたが、両親に何の罪があったかは教えはしてくれなかった。だがここで処刑された。
その後、私は少し年を取り、鉱場のあちこちで聞いたところ、両親はウルサス皇帝の戦時戦略に反対したことがあるということを知ったんだ。
彼らの逮捕は意外なものだった。逮捕リストの一番下の二行は空白となっていて、捜査を担当した士官は表札に名前を書き写していた。
裁判を経ずに、私の両親は名前を失い、暖かな小さな都市から寒い北地に越してきた。しすて何百年もの労役に服した。
当然、そこまで生きられる人なんて居はしないが生きるどころか、離れることすら出来なかった。
そして私の祖母も”庇った者”として、一緒に鉱夫に処せられてしまい、この鉱場に移ることになった。
実際、鉱場にいる鉱山労働者の経歴の全てはとても似通ったものとなっている。
そして案の定、私の両親は採掘中にオリパシーに感染した。全ての鉱山労働者はオリパシーに感染をした。
今、この鉱場を抜け出ても、お前の話を信じる者などいない。お前は感染者だからだ。最も恐ろしく、最も悪辣で最も過激なオリパシー患者だからだと。
だが、鉱場の監視役である――ウルサスの駐在軍は感染者が自然に死ぬ速度は遅すぎると考えた。
あいつらはくじを引き、オリパシー患者の運命をそれで決め、あいつらは人を殺し機嫌を取っていた。
雪は鉱山労働者を狂わせていた訳じゃなく、あいつらを狂わせていた。感染者はあいつらにとって人には見えなかったのだろうな。
私が5歳の時に両親は黒いくじを引いた。
私が10歳の時に祖母は黒いくじを引いた。
私が11歳の時に私は黒いくじを引いたが、それは重要ではなかった。あいつらはもうくじを引きはしなかった。鉱場全体を廃棄したいだけだったからだ
その時、鉱場の全ての大人の患者は既に死に尽くしており、皇帝の新たな処理方法は鉱場の人工を欠乏させることとなった。
命令により、ウルサスの監督どもは最後の感染者の処分に着手をした…子供の感染者がいたにも関わらずだ。
その後、あいつらは鉱場を爆破し、感染者の墓にして、罪を隠すためにそれを用いた。
その後の行軍生活の中で、あいつらはずっとそのようなことをしていたことを知った。。
私は悔しかった。そして痛みも感じた。
私は多くの鉱石を砕き、他の子供達と一緒に鉱場に暮らしていた。私達は兄弟のような仲だったが、私達は後はもう不甲斐なく死んでいくだけというものだった。
より強い感情が私の胸の仲で生まれ、両親と祖母の死が目に浮かんでいる。
あいつらが刑を執行する時、私のアーツは私の体内から暴発し、その場で刑を執行する4人の士官を殺した。
当然、私に局面を変える力なんてものは無い。
子どもたちは監視員にとって見れば家畜だ。あいつらは軍人だから鋭利な刃物を持ち、装甲を身に着けている。私達はまるで虫が尾であいつらを刺しただけに過ぎない。
あいつらは私を地面に叩きつけ、最後の殺戮を始めようとしていた。兄弟たちの泣き声が耳に入ってきた所で…。
ゲリラがここに来たんだ。
博卓卡斯替の小隊だった。
西北の凍原では感染者を監視する全てのウルサス軍は夢を見るものだが、この小隊はあいつらにとっては正に最悪の悪夢というものだった。
・君は…彼らを誇りに思っているようだ。
私に出来るならば、私は。
彼らは徹底的に私達の前で人斬りを撃退してくれた。だから鉱場の感染者の子どもたちは一難を逃れることが出来た。
ただ…。
人間性の無い白い大地だ。私と不運な仲間たちは、彼らの体の中の熱い血とウルサス軍人の中にあるどす黒い赤は一箇所に流れて氷となっていた。
私は突然とあることに気づいたんだ…。
このウルサスの兵士たちも最初は命令に従っていただけなんだ。あいつらも私達と同じ血が流れているんだと。
天地を覆い隠すような言論や、悪意を加えた事績が意図的に作り上げた敵意と残忍さと冷徹さがあいつらの体の中に定着し、芽生えてしまったんだと。
あいつらをこんな風にしたのはウルサスだと。
はあ、はあ…。
お前に…頼みがある。
ジャケットの左ポケットに飴がいくつかある。一粒持ってくれないか。
…食べてみたいのであれば、自分のためにもうひとつ持っても構わない。
ん?お前も菓子には興味があるようだな。
この飴は前に食べた飴とは全く違ったものになっているかもしれないが…。
だが、人生は短いんだ。常に新しいものを試してみるのも良いんじゃないか?
・どうすればいい?
飴を私の口に入れてくれ。私の肌には触れないように気をつけろよ。
・合わないんじゃないか?
・…
・これで良いか?
指先から首まで私の体は全て麻痺してしまっている。今は首から上しか動かないんだ。
だが、少しでも舌でも動かしていなければ、すぐに凍えてしまう。
だが他の事は心配しなくても良い。お前が本当に私を怒らせるようなことをすれば、お前はすぐに死ぬことになるだろうがな。
・(フロストノヴァに飴を与える)
ありがとう。
・(自分も飴を食べる)
・(自分も飴を食べる)
・(自分も飴を食べる)
お前には辛いと思うぞ。
お前にはとても辛いと思うぞ。
お前にはとても辛いと感じるだろ。
…
・…
お前の表情…。
ふふ…。
すまない。思わずからかってみたくてな。
この冗談は周りの奴らには言いすぎて、もう誰にも効かなくなってしまった。
今やっとのことで…この機会を見つけたからな。すまないな、私は少し…我慢が出来なかった。
・どうしてこの飴を食べるんだ?
…。
寒いからだ。
さっきも注意をしたが、ほんの少しでも私の皮膚に触れることに鳴るとお前はひどい凍傷を負うことに鳴る。
もしお前が以前に私に触れていたら、お前の反応から分かる。お前は殺意は持っていないようだ。
・この現象は現存する学術資料の記述を超えているな。
私の寒さは冬そのものを超えてしまっている。
外界の熱はついには私の体全体に広がっている冷たさをついには貫くことすら出来なくなってしまった。だが熱い飲み物は好きだ。熱いものは胃に入ってくると飲み物の温度を感じることが出来るから…。
悲しいことに、私の内臓は熱い飲み物だと火傷をしてしまうが。
私の楽しみはこのような酒と刺激的な調味料を混ぜたものだけだが、糖質の混合物を少し加えてかろうじて飴のものもそれに入る。
このような温かい感じのものは例え短い仮想なものだったとしても、私に心地よいものをもたらしてくれる。
すまないな。さっきはお前をからかってしまって。
・だから、さっき寒いと言っていたのか…。
…オリパシーはこの恐ろしい体を作った。
だが、当時、この冷たい私の体を博卓卡斯替はしっかりと抱きしめてくれたんだ。この温もりを知らない体をな。
私は彼の鎧を脱いだ二本の腕が私によって壊死したことを気にはしなかった。
何故なのかは私もよく分からなかった。彼の気持ちが私に伝わったからかもしれない…私は目を覚まし最後まで生きた。
・つまり、博卓卡斯替は…。
私の身内だ。幼い私は彼を親友としても扱っていたこともある。
私は言ったが、本当の父親のことはあまり覚えてはいない。潜在意識の中でこの巨大な獣を家族のように思っていたのだろう。私もよくは分からないが。
ただ外見と異なり、彼は感傷的で、あるところは頑固で、このような人物は以前はウルサスの殺戮機械でもあった。おかしなことだろう?
笑えないな、だろう?私も笑えないさ。
彼はかつてのウルサスの戦争での英雄だった。年を取ってからは都市国家から退いたようだが。
・ウルサスの兵士なのに、感染者のために戦っているのか?
もしお前がウルサスの一方的な言葉を信じていないのであれば分かることだろう。こういった人は少なくはない。ただまあ、感染者で”パトリオット”と呼ばれているのその唯一人だけだ。
彼は妻を早くに亡くし、息子と二人で暮らしていた。
そう、彼は魔族だ。魔族の中でも最も凶悪なタイプのな。しかし息子は学者となった。ウェンディゴ学者としては…恐らくウルサス史上初の学者だっただろう。
博卓卡斯替は最後に参加した戦いで、オリパシーに掛かった。
彼の兵士たちは彼の病状を隠してはくれていた。彼も息子に対しては全てを隠していた。彼は自分の息子を巻き込みたくは無かったから、病躯を引きずって暗いところで死にたがっていた。
だが、”大反乱”の間、息子は感染者の権益のために奔走をしていた。父と息子は連絡をしなくなって久しかったが、やはり息子は父のことをウルサスの従者だと思っていたようだ。
彼には確かなものがった。彼は命令を受けて、自分の隊列の代価を惜しまず秩序を維持するように命じた。彼は兵士たちに武器を用いることを許可し、衝突は苛烈を極め、雪の中では常に倒れている人がいた。
彼はかつてはそういう人だったんだ。
そして彼は街で息子を見かけた。その時の息子から既に体から体温を感じることは無かった。
彼は私を抱きしめた時に、自分の息子のことを思い出したのかもしれないな?
彼の息子は彼のような感染者のために自分の範囲の中で奮闘をしていたんだが、彼は自分の手で息子を殺したんだと認めていたよ。
彼の小隊は彼と一緒に離れた。それ以来、西北の凍原には感染者を虐待していたウルサス人の肝を握りつぶすゲリラが出没するようになった。
…。
その年老いた獣は私に一字たりとも言ったことは無かったが。
彼は私のことを本当の彼の娘のように思っているのかもしれない。だが私だって彼にそのことを一字一句ちゃんと教えてもらいたい。
全ては彼の部下が言ったことに過ぎないんだ。博卓卡斯替本人に。いかなる人であろうとその一言を明らかにすることは出来ないのだから。
あの怪物のような老人であろうと、脆く多くの穴を持つ心を持っているんだ。
彼は私達感染者の子供を救う以前に、既に彼の隊列は4つもの鉱場を渡っていた。
前の感染者たちは私のように命は無く、彼らの死体は崩れ落ちた鉱山に埋められ、処刑をしたウルサス連隊は姿を消した
彼は私に何を見出したのだろうか?家族?救い?それとも少しばかりの心の安らぎだろうか?よく分からない。
…ごほ、ごほ。
・君の喉や内出血…これもオリパシーの症状か?
おそらくな、大丈夫だ。アーツを使いすぎた後遺症かもしれない。
今日は今回が比較的激しいものとなっている。こんなことは過去に一度しか無かったんだが。
昏睡状態となり、全身が麻痺し、意識がはっきりした後も自由に行動出来なくなるということは起こったことがある。自分の状況は自分でもよく分かっている。
・君はもうアーツを使うことは出来ない。
必要ないと言うなら代わりに戦ってくれるのか?
ロドスの…お前をどう呼べばいい?
・ロドスのオペレーター達はこういう風に呼んでいる。
Dr.◯◯◯?
Dr.◯◯◯か。
…ロドスはいい戦士だと認めよう。しかし私はまだお前たちを信じることは出来ない。ましてや、お前たちは元々は製薬会社だけだっただろう。
・ロドスは多くのことをする必要がある。
戦いのこと以外は私には関係は無いがな。
チェルノボーグでお前たちの戦いは見た。お前たちはしっかりとした立場を持っているようだ。それを自分の目でも確認はしたが、お前たちの善悪を判断することは出来ない。
アレックスがお前たちの手によって死んだと効いた。それがお前たちに対しての疑いを抱かせるものだった。
今、お前たちを置いてチェルノボーグ分離都市の廃墟を離れることは出来ない。お前たちがもっと多くのレユニオンの感染者を傷つけるからだ。
だが、お前は私の多くの無駄話をこんなにも聞いてくれた…。
私はお前達が他の感染した人たちには全く説明として成していないとは思う。
・あの感染者は恐ろしいだけだ。
誰が死をもたらす人に恐怖を感じない?
Dr.◯◯◯、今のお前は怖いのか?
・そうだ。
・よく分からない
・いいや。
お前には恐れという感情が本当にあるのか?
それすら疑いの対象だ。
もし死を前にした人がお前のように静かだったら、お前は本当に無欲なのかもしれないと思うだろう。
私はいつも一つの疑問を考えている。
”私は死ぬのが怖いのだろうか?”
聞く所によれば、ウルサス駐在防衛軍は私のことを雪怪の女王や冬の死神と言っているらしいな。
だが事実は私の小隊はボロボロだ。氷原を転々とし生き延びているだけ。
私のアーツは強大だ。これは敵と仲間の目によっても証明されている。
もちろん、私の体はお前が見た通り、オリパシー患者という体に過ぎない。
私は自分が特殊だとは感じていた。私の病気が理由だからではなく、私の凍霜がその感覚をもたらした。
私は自分の能力を一種の祝福としていたが、博卓卡斯替の頑固な爺さんはこれを呪いだと思っているようだ。
私達は深い泥の沼を通り抜けたり、氷水が私の足に染み込んだこともあったが私は寒さを感じなかった。
老人は依然として私達が戦場に向かうことを許しはしない。しかし彼の兵士には既に多くの死傷者がいる。
彼はランプを付けて、一人でテーブルの前に静かに座っていた。彼は泣いていると思っていたが、それを証明することは出来ない。彼を慰めるべきかも分からなかった。
5年目に初めて敵の前で寒波を呼び起こした。
兵士は氷のように凍り、一人はそいつの氷の上でころんだ。そして二人は氷の欠片となった。
私は戦いに参加をし、兵士たちは私を見て畏敬の念に満ちていた。兄弟姉妹達は私を誇りに思い、他の感染者とも話をしていた――
”これが俺たちの姐さんだ、彼女は俺たち全員の生命を救ってくれたんだよ。”
私のアーツは本当に誰かを救ったのだろうか?
鉱山から出た子どもたちは私が作ったオリジ二ウムを背負い、私達は「雪怪小隊」となった。
そのオリジ二ウムは私の寒さを拡散させ、霜と復讐は感染者達の敵に与えるものとなった。
だが、どうせ…寒いだけだ。新しい生命が生まれることもない冬のような寒さだ。
それでも私は幸せだと思う。私の兄弟姉妹達は行きていけるからだ。
この大地で行きていけるのだから。
・普通の人と共存したいと思ったことは無いのか?
普通の人…。
普通の人とは何だ?
チェルノボーグの中で感染者が極刑に処されるのを見ていた人達か?それとも鉱場で感染者を撃つことを楽しんでいた兵士のことか?
あの監視の顔を思い出す度に、歯を食いしばる。あいつらの喉を掻っ切って、あいつらの血を飲んでやりたいと…。
…。
だが、私はウルサス人を憎んではいない。
私達のゲリラは雪の中を歩いている際、谷間から撤退している時にウルサスの軍隊として私達を追いやってきたのも…
窓際にパンをいくつか置いて作っているのも、ウルサス人だからだ。
ウルサス人はそこまでの冷血な生き物ではない。私の敵は感染者を熾烈な道に追い込んでいるウルサス帝国だけだ。
普通の人を敵にはしない。感染者を恨むように教えられたウルサス人も、恨みに覆われる前は普通の人だったからだ。
だが、”敵だから殺し合う”ということだけで、ここまで戦ってきた。
私は感染者だ。それに間違いはない…だが、その前に私だって普通の人だ。
・レユニオンの今の行動は?
…私と博卓卡斯替の最大の不和は彼が感染者団体としての行動を極力守るからだ。
”レユニオンは、感染者にとって聞こえ、頼りになる、最初の名前となる”。
”レユニオンの、行き先がどこだろうと、全てが出来なくとも、直接の破壊をし、レユニオンの崩壊によって、感染者の自信を失わせ、戦う自信を持たせる。
――あのじいさんはそう言っていた。それを信じて疑わないという風に。
・どうして途切れ途切れに話すんだ?
彼が今はそういう風に話すからだ。私はただ、ごほごほ、彼の口ぶりを真似しただけだ。
Dr.◯◯◯、ロドスは何故あまり知られていない製薬会社なのか知っているか?
お前たちは表舞台に立てないからだ。表に立つと今のレユニオンのようになってしまうからだ。
お前たちはその道を行け。
・そうかもしれないな
・…
・私達に本当に出来るだろうか。
ふむ。
凍原を転々とした十数年後、感染者の女性が私達に手を差し伸べてきた。彼女は言った。”私と一緒に行き、全ての束縛を打ち砕こう”と。
想像してみろ。戦場となった古い城の廃墟で出会ったその女は一人で、名簿とナンバープレートを除いて何を持っていない。
彼女の話でさえ、私は事実とそぐわない、おかしいと思った。
彼女は私達にこういった”私と一緒に来い”とだけ。
彼女は私達と共に戦い、いろいろな考えや力を持って友人となた。私達は一緒に雪原を離れ、ウルサスの都市に向かい歩いて行った。
彼女が物思いにふけって吐いた言葉も、私と切磋琢磨をしている時の大剣の大振りも、彼女が背負っている力もとても誠実で重いものだった。
負傷した兵士を治療するときには彼女がいた。感染者に駆け引きや学説を語る時も彼女はいた。そしてウルサスの討伐隊と戦った時も彼女はいた。
私達は普通の人たちと食事をすることくらいは出来る。彼女は身分を気にもせず、彼女の目には嘘は見えなかった。
私達の小隊は強大になり、友情も増えていった。彼女が連絡をした人はみんないい人だった。いい人ばかりだった。
その時は彼女は私の友達だと思った。彼女は黙々とこの飴を作っていた。彼女は腕が悪くて、作ったものの味は良くなかったが。
彼女が食べている時、表情は変わっていった。彼女は努力をして私に笑顔をくれていた。
その表情はとても変なものだった。彼女は強がっていたことを知っていたから、私は声を出して笑っていた。
今は全てが変わってしまった。
お前が見ているようにチェルノボーグは天災の中で破壊された。多くの一般人は死んではいないが、新たな感染者となった。
彼らの目には生きていこうとする欲が少しも見えない。
もしこれが彼女の欲しいものなのであれば、私は最初から従いはしなかっただろう。
もしお前が知らないのであれば、この秘密を教えてやる。
今、彼女は龍門を奪おうとしている。今回の結果はチェルノボーグとは異なり、感染者達は巨大な廃墟ではなく、自分の都市を手に入れるためだ。
お前はこんなやつ信じられないか?
もしこれが演技だとすれば、このような演技でこの地上のいかなる人であろうと騙せることになる。
私には今まで私の頭から離れたことがない考えがある。
”彼女と正面から対決したら、私にはどれくらいの勝算があるのか?”。
私達が決裂をし、彼女が感染者達をだましていることが見つけたり、感染者に不利な策略をしているのであれば…。
私は彼女と戦う。彼女は裏切りの代償を思い知らなければいけないから。
幾度ものウルサスでの死闘が私の考えを洗い、私の能力を磨き上げてきた。
はっきり言ってもいい。私は彼女に勝てはしなくとも、彼女は私と共に死に追いやることは出来る。
頑固者は私の考えには賛同しないだろう。彼は長い間戦ってきたせいで、彼の老いは彼を犠牲の道にのみ向かわせてしまっている。
・君の父のやり方には反対だ。
彼は的に対しては強いが、友人に対しては誠実だ彼は自分がこれらの人を守るべきだと思えば、彼は友人の現実に直面する必要ができ、これは彼を軟弱にさせるだろう。
一生人を信じてきたじいさんは…この頑固者は裏切られたあとはどうすればいいのかは考えてはいない。
彼は我慢をし苦い果実を飲み込んできたのだろう。彼は裏切られた苦しみを何度も引き受けたが、何も言ってこなかった。
レユニオンの話を聞いて参加した感染者には、自分の全ての行動は放任されていると思っている感染者だっている。
レユニオンの内部は分裂してしまっているのに。私達の指導者はこれらのことは黙認をしている。
龍門での仕事が終われば、必ずチェルノボーグに帰るだろう。その時、今回こそは彼女と向き合わなければいけない。
私にはまだ時間が残っている…だからこそ。
…兄弟たちがみんなの家を探してくれると約束をしてくれたんだ。私は倒れる前にその約束を果たさなければいけない。
・何故そんなことを全部教えてくれたんだ?
お前の目つきが教えてくれたんだ。お前は人斬りではないとな。
・そうかもしれないが、どうだろうな
・…
・私にも自分が何なのかはよく分かってはいないが。
自分を疑うのは最も良いことだ。そうすることでお前は何かを信じて一人で歩くなんてことが出来なくなるのだから。
…お前には外の音が聞こえるか?
彼らは上の廃墟を掘り起こしているようだな。
私の体ももう…。
ああ…私の指はもう動かすことが出来る。
ありがとう。
・何が?
・…
・私は何かしてやれたのか?
この時間を潰してくれて感謝するよ。
Dr.◯◯◯、お前とは賭けをしたい。
…。
お前の小隊がまずここに切り込んできたら――。
私は一瞬にしてお前たちを全員殺す。
私の兄弟姉妹が掘っているのであれば、お前の命もここまでだ。
賭けるか?