第六健診室
ロドス本艦
じゃあ、口を開けて下さいね。
あーーー。
…
あーーー。
ん。
さっ、口を開けて下さい、歯の検診をします。何も悪いことはしませんから
…。
えーっと..。
毎回奥の手を使うことを強制しないでくれますか。
うぅ、すぐに言うことを聞かせてやるんだから。
はい!
ペッローさん、これ何だと思いますか?
?
これってあなたは一番好きなものですよね。
検査にちゃんと協力をしてくましたら…
ここにある蜜餅は全部あげちゃいますよ。
(クンクン)
…。
おかしいですね。彼女どうして蜜餅に反応してくれないのでしょうか?
やり方に問題があるな、ハイビス。
食べものには変なものを追加するなと何回も言ったはずだけど。
お前は聞いてくれやしない。
ほらっ、ペッロー、これをやるよ。
(クンクン)
あう。
食べ終わったら話を聞いてやるんだぞ。
うう。
あうあう――。
あう。
成功ですね!
流石ラヴァ、頼もしいですね!
お前がダメなだけだ。
では口腔検査を始めますよ。
食べ物をちゃんと飲み込んで、はい、口を大きく開けて――。
あ、そう言えばハイビス。
舌で舐めないでくださいよ――あ、どうしましたか?
どうして彼女を連れて帰ってきたんだ。
彼女が可愛そうでしたから。それにひどく感染もしていますし。
それにレタニア分会の怪鳥さんも言っていましたから。
「君たちが制圧してくれて助かったよ、レタニア警察や賞金稼ぎに捕まっていたら、彼女から希望が無くなっていたところだ」
「彼女のような感染レベルの感染者はは最近レタニアの感染者に対する政策の変化によって、人道処理される可能性が高い」
「出来れば、彼女を少なくともレタニアの境内から連れて行ってもらえるとありがたい」
感染者じゃなくとも、彼女のように無差別に人を襲っていては必ず捕まることになるだろう。
私達の前に少なくとも24回、100人近くの旅行者が被害を受けている。
これはレタニア境内だけで数えた話だ。彼女が他のところで何をしでかしていたのやら。
彼女の攻撃術には私達5人とも上手くいなすことすら出来なかっただろう。
食べ物を手に入れてお腹を満たすこと以外に彼女は何も悪いことは――あいた!
「悪いことはしていません」だと?!もう少しで命を落とすところだったんだぞ!
クルースが警戒をしていなければ、ビーグルがタイミング良く盾で私を守ってくれなければ、彼女が投げた石で覆われた槍でお前の妹は危うく粉砕されるところだったんだ。
ペッローさん、私の手を噛まないで下さい!
あう。
はいはいはい、私がラヴァのことについて解決するのを手伝いますから。
歯もすぐに良くなりますからね。もう少しの我慢です、頑張って下さい!
はい、いい子。
ラヴァ、怒っちゃだめですよ。
私は事実を述べただけだ、怒ってなんかいない。
どうしたのですか?急に子供のように細かいことにこだわるようになって。
あなたはペッローさんのことが好きじゃないのですか?
ああ、大好きだ。彼女も私が大好きだろうな。
彼女の対処をする時はいつも、岩と炎と氷が私の体めがけて飛んでくるからな。
彼女がどうやってこのような複雑なテクニックを身に着けたのかは分からないが。
おい、ペッロー。お前は本当にオリジ二ウムアーツを習ったことは無いのか?
わう?
ああ、動かないで――ラヴァ、今は邪魔しないで下さい!
質問をしただけなんだが…。
ラ――ヴァ――!
分かった分かった、私が間違ってた、それでいい。
うう?
あ、すみません、ペッローさん、すぐ終わりますので。
こことあそことそこですね。
…。
…。
ふう、そろそろですからね。
はい、ペッローさん、検査はほぼ終わりました。この水を持ってうがいをしましょう。あのお盆に吐くんですよ。飲まないでくださいね。
あう。
(ごっくん)
ラヴァ。
ん?
まだ拗ねているのですか。
お前には関係無いだろう。
私達のチームで初めて彼女に美味しいものをあげたのはあなたでしょう。。
お前、だから何だって言うんだ。
栄養学の観点から見れば彼女は飢えすぎていて糖質を多く摂るべきでは無かったのでしょうが、その時は本当に何でも良いので補給しなければいけませんでした。
そしたら。
おい…。
ラヴァはコソッと外に出てたくさんのお菓子を買ってきました。
ふと気がつくと、お金を全部使ってしまったことに気付いたんですよね。
もう言うな。
ペッローさんを護送して帰ってきたときも、みなさんは彼女が逃げ出すのではないかと恐れていました。
その中でラヴァだけが勇気を出して彼女とコミュニケーションを取って、みんなが彼女のことを深く理解出来るように手助けをして、手枷を外しても逃げ出さないようにしたんですよね。
あー…。
ペッローさんが蜜餅が好きだと知ってから、私達のチームの中で一番蜜餅を焼いたのはラヴァでした。
待て、止まれ!
お姉ちゃんはとっても誇りに思っていますよ~
もう言うな、恥ずかしくなってくる!当事者がここにいるんだぞ!
私は、私がするべきことをしたまでです。
嬉しいことはたくさんお話します、ふふ。
そうだ!
どうしましたか?
何だ、あの――口腔検査、まだ最後の段階が残っているだろ。
はい。
その後、彼女はどうすれば良いんだ?
それは…。
それは私達では決められるものではありません。
担当のオペレーターさんたちはまだ計画を練っているようです。オーキッドさんは午後に私達に知らせの人が来ると言っていました。
とにかく、午前中は忙しいですよ。こんなにも多くの検査をペッローさんはしなければ――
ハイビス、ラヴァ!ペッローさんの検査はまだなんですか!これ以上はドーベルマン先生のトレーニングに間に合わなくなります!お先に失礼しますから!
え?
え?
ええっと、あれ?
お前、ドーベルマン先生には休暇を取ったと言っていなかったか?
え?あれ、えっ…。
休暇を取って、あ、忘れていたようです…
それを早く言え!
あの時はペッローさんの検査を手伝うこと一心dした…
終わった。
終わった終わった終わった。
どうするどうするどうする。
まずは、私達は今ペッローを連れて出掛けているから、誰かに彼女を預ける。訓練が終わった後にその誰かを見つけ出せればいいが。
それではあまりにも…
じゃあ他に方法があるっていうのか!
もう艦橋に追い出されたくはないぞ…
お前も前回のように医療知識を覚えながら体力トレーニングをしたいっていうのならそれで良いが。
いや!
それなら、いいだろう、そういうことならば。
私が武器のことをやってやる、お前は彼女を連れて行って来い。
ですが、ペッローさんのうがいがまだ――。
彼女はとっくに飲んでる!
行け!
ロドス本艦
第六身体検査室前
(いた!)
鍛冶屋さん!
何かあったのか?
この子の面倒を見てもらないか、訓練が終わったら探しに来るから
何だ?子供か?
これは彼女の好きな蜜餅、もしペッローが癇癪でも起こしたら一緒に食べてほしいんだ。
?
それと彼女には武器はしばらく触らせないでくれ。
お願いだ!
お願いします!
早く行くぞ!
待って!
ごめんな、ペッロー、すぐに帰ってくるから!
ああ、もう3分しかない。私達は死んだな…。
…
???
これはどういうことだ?
うう…。
…
武器は私が持ってやろうか?
(首を横にふる)
分かった。
一緒に来るといい。私の工房はこっちだ。
ロドス本艦
ヴァルカンの工房
どうぞ、入ってくれ。
炉が熱いと感じたなら、そこの間に行ってもいいからな。
ありがとう(小声)
気にするな
…。
あなたは鍛冶屋さん?
ロドスの鍛冶屋、コードネームはヴァルカン。
ヴァル…カン…。
ヴァルカン
ヴァルカンはミノス人?
そうだ
ヴァルカンは武器を見てくれないの?
未登録の武器を管理する権限が無いんだ。
すまない
そっかー…。
うー…。
(これは…ミノスの工芸か。懐かしいな)
(こんなにも摩耗しているとは、出来るだけのケアはしているようだ)
(塗りは以外にも綺麗だな、損傷も大きいようには見えない。簡単にメンテナンスをすれば元の状態に戻るだろう)
(おかしいな、破裂孔も無いし、刃にも巻きがない。鋼材の温度も少し低かったようだ)
(鋼材…)
(何処かで見たことが…)
(…)
あの、お姉ちゃん?
(お姉ちゃん?)
(…まあいいか、彼女の好きにさせれば)
斧の上のグリップの近いところ。
そこに文字が書いてあるの。
それがおいらの名前!
ミノス語なんだ!
ミノスに行きたかったんだけど、長い間、そこに行けなかった。
会った人は良い人も悪い人もいたけど、おいらの名前読めなかったんだ。
ヴァルカンはミノス人、これってどう読むの?
読んでくれないかな?
まずは見てみよう。
(…)
(幸い完全には削れてはいないようだ)
(このスペルは…)
(ミノス語の間違いないな)
(慣用的な発音に合わせると)
(Ce…O…Be…)
ケオベ。
ケ…オ…ベ…。
ケオベ
ケ…オベ。
ケオベ
おいらはケオベ!
これがおいらの名前!
うん…。
ヴァルカンお姉ちゃん?
(ヴァルカン…お姉ちゃん…?)
(彼女にそれとなく注意するべきだろうか…)
ど、どうした?
みんなって二つ名みたいなのはあるの?
ラヴァのお姉ちゃんがラヴァを呼ぶ時は別の呼び方があるみたい。
”ラヴァちゃん”みたいな
私ももう一つ欲しいなあ
すまない、名前はあまり得意じゃないんだ…。
ヴァルカンお姉ちゃんは鍛冶屋さん、鍛冶屋さんは良い人。良い人はきっといい名前を出してくれると思うの!
(どういう考えだ?)
(まあいい、わざわざ子供を困らせる必要もないだろう)
とりあえず、考えさせてくれ。
うん!
(ニックネームが欲しいのだろうか?)
(武器の名前は付けたことはあるが、どうしようか?)
(ケオべッセウス?ケオベネ?ケオベティア?)
(いや、いやいや、武器の名前じゃないんだ、こういうのは使えないな)
(んー…)
…
ヴァルカン?
(さっき彼女が言っていたのは”ラヴァちゃん”か?)
ヴァルカンお姉ちゃん、大丈夫?
(思いつかないな…彼女のくれた例を使うとしようか)
”ケーちゃん”と呼ぼう。
ケーちゃん?
そうだ。
(ごかませればいいんだが…)
ケーちゃん…ケオベ…。
ヴァルカンお姉ちゃん、ありがとう!
どういたしまして。
?!
大丈夫だ、ケーちゃん、私を探している人だ、悪くない人。
!
武器を離して、良い?
悪くない人?
悪い人じゃない。
ロドスに悪い人はいない。
怖いなら仕切りに隠れててもいいよ。
ケオベは何も怖くないよ。
そうか。
ヴァルカンさんはいらっしゃいますか?
どうした?
こんにちはヴァルカンさん、後方勤務部の者です。昨日ロドスに到着したペッローのお嬢さんに後方勤務部の決定を伝えに来ました。
ハイビスカスがペッローのお嬢さんをあなたに預けたばかりだと言っていました。今もここにいらっしゃいますか?
ああ、いるぞ。
ヴァルカン!
怖くない、大丈夫。
こんにちは、ペッローのお嬢さん。
おいらはペッローのお嬢さんじゃない、ケオベっていうの。
ヴァルカンさん。
そうなんです?
分かりました。ケオベ。
つきまして、私達はあなたを救助した後、あなたの状況について検討を行いました。結果は以下の通りとなりますのでよくお聞き下さい
これまでは特殊な事情に基づいて、一時的にあなたの人身の自由の制限を行ってきました。
この点については誠に申し訳なく思っています。現時点から自由行動の権利を再取得、即座に発行という形にさせて頂きます。
???
何か分からない所でもありましたか?
彼女は公文書的な言葉遣いは良く分かっていないと思う。
私にくれ、彼女に私から伝えよう。
お手数おかけします。
…。
…。
分かった。
ケーちゃん。
んー?
どうして外をさまよっていたんだ?
ミノスに行きたかったから。
でも道を間違えちゃったみたい。
レタニア分会が集めた資料によれば彼女はボリバルから出発をして東方三国の境まで歩き、そこで引き換えしたようです。
帰りの途は北のほうからぐるっと回って、最後にレタニアにいた私達によって救助されたと。
脚力は素晴らしいの一言に尽きますね。
ですが、こんなことを聞いてどうするんです?
ミノスに着いたら何がしたい?
おいらの名前を聞いて、それで…。
それで…
まだ決めてないよ。
ヴァルカンさん、状況を彼女に教えて下さい。彼女に自分で決めさせましょう。
その後、何がしたい…
わからないよ…。
考えてみよう。
とっても大事なことなんだ。
おいらは…毎日がお腹いっぱいになればいいな。
ヴァルカンさん、あなたは――。
しっ、静かにしてくれ!
….
あったかいお湯にたっぷり浸かって、思いっきり厚いお布団に潜り込みたいな。
ずっと寝転がって、それでも寝転がって、お腹が空くまでそれをするんだ。
まだあるよ。
大きなお部屋に自分の宝物をその中にちゃんと入れておきたいなあって。
ずうっとそれを背負ってるとたまに大変になるんだ。
特にお腹が空いた時とか。
うーん、これくらいかなあ。
分かった。
食べるところがあって、飲むところもあって、部屋があって、安心して寝られる、そこにいたいってことだな?
そうだよ。
だが多くの時間で頭を使うことになるし、たくさんの悪人を討たなければならない。時には何日間か眠ることが出来ないかもしれない。それでも変わらずそうしたい?
よく分からないけど…。
でも。
ヴァルカンお姉ちゃんはヒーローになるんだって言ってるの?
ヒーロー?
ははは――あ、ごほん。
ああ、そうだ、ヒーローになるんだ。
いいよ。
お腹いっぱいになれるし、ヒーローにもなれる。
それよりも良いことって無いよね。
そうだな。
本当に彼女を――
彼女はそう決めたんだ。手続きを頼んだ。
保証人が必要なのであれば私に名前を入れてくれれば良い。
あなたは――。
もう一度言わなければだめか。
ええっと――。
あなたがそういうのであれば私はもう何も言いません。
すぐにケオベさんのためにテストの準備をしましょう。
ですが、それにはそれなりの責任があるということをご承知下さい。
――と説明していただければ。
ああ、そうしよう。
では、お先に失礼します。
ああ。
んー…
何が起きたの?
いや、大丈夫だ。
たくさんのことを勉強して、たくさん喧嘩をするだけだ。
いくらか労力を費やすことにはなるが。
今の暇な内にゆっくりと休むといいよ。
うん。
んー…。
お姉ちゃん?
ん?
(少し慣れてきたな)
蜜餅食べよ、ラヴァが焼いたの、おいしいよ。
良いのか?
はお、どうぞ。
ありがとう。。
…。
(この味は?)
(皮が脆くなく、砂糖の味にも問題はあるが)
(それ以外はミノスのものと同じ味だ)
美味しい?
美味しいな。
でしょ~。
だが。
んー?
この餅は新鮮な焼きたての食感が良いんだ。
餅にジャムを少し掛けて、お茶を一杯な。
もっと美味しくなるの??
そうだ。
後で機会があれば、隣にいるマッターホルンに作ってもらうと良いだろう。
彼はこういう食べ物を作るのに心得があるからな。
本当?
ああ。
ありがとう、お姉ちゃん!
今後数日間、多くのテストを受けることになる。
自分以外にも武器の状態も調整しておくんだぞ
何かいるものはあるか?
おいら、鍛冶屋さんに欲しい物言っても良いの?
欲しい物があるのであれば。
じゃあ、おいらの宝物をお姉ちゃんの部屋にある武器みたいに綺麗にしたいんだ。
それで、えっと、他の武器の色も斧と同じ色に変えるの。
うーん…面倒じゃないかなあ?。
あまり時間は掛からない。
仕上げを急ごう、そうすればラヴァ達をびっくりさせることが出来るかもしれないしな。
ほんとー?
ああ
武器を持ってきて。今から始めよう。
うん!
はあ、はあ、ふう、あー、疲れた。
ハイビス、ペッローは大丈夫かな。
彼女はあんなにも強いですし、ヴァルカンさんは暖かい方ですから、大丈夫ですよ?
え?ヴァルカン?暖かい?
まあいいか、鍛冶屋さんが悪いことをしないっていうのは分かってるし。
訓練中に後方勤務部のオペレーターが探しに来たっていうほうだ。彼が来た時には書類の袋を握っていた。
少し不吉な予感がする。
あ、またですか。
私の経験から言わせれば、ラヴァの「不吉な予感」っていうのは一般的に良いことなんですよ。
なら良いが…おい、着いたぞ。
ラヴァだ。ペッローを探しに来た。
ドアには鍵が掛かっていないから直接入ってきてくれ。
え?ペッローさん?
誰だ?
お、お前その武器どうした?
あ、ラヴァとハイビスカス!来てくれたんだ!
これからは、これがおいらの名前だよ。
これからはペッローさんじゃなくて、ケオベって呼んでね。
ええっと――???!
ええっと――???!
(数週間後)
ロドス本艦
後方勤務部の小さな会議室
今日は何のためにおいでに?
彼女の成績はどうだ?
どうでしょう?
どうなんでしょうかね。
指揮が分からない内に、武器むやみやたらに振り捨てるだけで、性質的には遊びですね。
彼女をどう思います?
結果は?
結果を言えば。
彼女は合格です
そうか。
めちゃくちゃでテストが不合格な部分も山程ありましたが、素質と潜在力から言えば十分オペレーターになれると思います。
最も重要ないくらかの審査員からの意見では全て採用でした。他の細かい所はあまり重要ではないと。
ドクターは人を見誤ることは無いからな。
あなたもですよ。
ではもう時間ですので。
理由を教えてくれませんか。
私達はオペレーター採用の試験を始める際は、通常行路は本人の自由意志が原則となっています。
あなたのしていることは深刻な疑いを本人の代わりに決めているようなものです。一般的に保護者又は親族を除いて、または協議書で明確に紹介しているものを除いて、私達の大部分は一票で否決となります。
すまない。
これでいいですかね?
まあ、そこまで厳しいものでもありません。規則は形骸化していますし、人は生きていますから。
理由をお教え下さい、上に説明がしたいので。
武器が好きな人はみんな悪い人じゃない
はい。
待って下さい、ええっと、それだけですか?
ああ。
あまり気軽なものにしないでください、もういくつか挙げなければ報告書を作成出来ないんです
私が言うのか?
録音も素材としてとても重要となります。
分かった…。
私は鍛冶屋だ、人をあまり見ることはない。だが、武器については目を離すなんてことはしない。
武器のメンテナンスとメンテナンスの知識が全く無い人ならば。
使用時間が長ければ、必ず武器は損傷していく。
だが彼女は持ちうる力を全て使って不可逆的な損傷を抑制しており、能力の範囲内で武器のメンテナンスをしている。
この点は彼女の潜在力と能力を確信させるには十分な材料だ。
何故彼女が武器の維持が出来ないことを知っているんです?
彼女は砥石さえ使うことが出来ず、油脂の選び方さえも全く分かっていない。当然規則に書いてあるような科学的な方法も分からない。
唯一知っていることは武器を綺麗に塗ることだけだ。この点だけは彼女はよくやっている。
まだ続けますか?
他に言うことは無い
履歴については私よりもあなたのほうが知っているだろう
そうですね。
ボリバル人が世界中のミノス人を探していましたが、結局世界中をミノスを求めて駆け回っても着くことはありませんでいsた。。
何故自分が行こうとしているのかも分かっていません。
元気だということ以外なんと言えば。
信念はあることは良いことだ
これは私が知りたいことですが。
あなたは普段他人に対しては無関心ですよね。
ケオベはあなたにとって特別なのですか?
ケオベの一体何処があなたを惹きつけたのです?
武器だ。
私は真面目に聞いているんですよ、ヴァルカンさん。
私も真面目だ
どういうことです?
彼女の名前は斧に刻まれていた
ミノスは極東では無いから、何かにつけて武器に名を刻む伝統というものはない。
残るというものは多くの意味で並外れていることだ。
ましてや。
彼女の手にある斧は私では鍛えることは出来ない。
だが、あの鍛錬の方法は何処かで見たことがあるんだ
彼女が謎を解くのを助けてやりたいんだ。
そうすればいつかは彼女も振り向いて私のために迷いを解いてくれるのかもしれない。
所詮、鍛冶屋の私心なだけだ。
?
えっと…
あなた達職人は秘密が本当に多いですからね。
ええ、難しいことでは無いのでしょう。
こちらが知りたいことは以上となります。
お疲れさまでした、帰ってお休みになって下さい
すまないな。
こちらこそすいません、私も公務ですので。
ありがとう。
いえ、こちらこそ。今度一緒に飲む時は私が当番の時に来て下さい。新しい調理法を開発したんですよ。「カジミエーシュの風」と言うんです。機会があれば食べに来て下さい。
ああ、きっと行くよ。
ふう…。
だから人事という仕事は難しいんですよ。
こいつらは履歴書をちゃんと書くということを知らないんです。
話をしてみてみないと腹の中にどれくらいのものを隠しているか分からない。
謎の謎は何処にそんなに多くの謎があるのかっていうことだ。
探偵なのかって?私は人事だぞ!
(力強く短いヴィクトリア方言)
専門員か?
どうかしましたか?
新人の面接は終わりました。ご出席を。
分かりました。そうだ、これがケオベの契約書です。全部の印は捺印しています。書類は保管しておいてください。それとオペレーターを派遣し正式に入社させる事項です。
分かりました。
待ってください、教わる時はヴァルカンに傍聴させることは覚えておいて下さい、一部の条項の理解は彼女の助けが必要かもしれません。
分かりました。
ふう、お喋りも終わったし仕事を始めるか。
…(オペレーターの資料を持ち替える)
はあ。
やっぱり。
また履歴書をちゃんと書かない新人か。
今夜もまた忙しいだろうなあ。