

ハイビスカス
じゃあ、口を開けて下さいね。

ハイビスカス
あーーー。

???
…

ハイビスカス
あーーー。

???
ん。

ハイビスカス
さっ、口を開けて下さい、歯の検診をします。何も悪いことはしませんから

???
…。

ハイビスカス
えーっと..。

ハイビスカス
毎回奥の手を使うことを強制しないでくれますか。

ハイビスカス
うぅ、すぐに言うことを聞かせてやるんだから。

ハイビスカス
はい!

ハイビスカス
ペッローさん、これ何だと思いますか?

???
?

ハイビスカス
これってあなたは一番好きなものですよね。

ハイビスカス
検査にちゃんと協力をしてくましたら…

ハイビスカス
ここにある蜜餅は全部あげちゃいますよ。

???
(クンクン)

???
…。

ハイビスカス
おかしいですね。彼女どうして蜜餅に反応してくれないのでしょうか?

ラヴァ
やり方に問題があるな、ハイビス。

ラヴァ
食べものには変なものを追加するなと何回も言ったはずだけど。

ラヴァ
お前は聞いてくれやしない。

ラヴァ
ほらっ、ペッロー、これをやるよ。

???
(クンクン)

???
あう。

ラヴァ
食べ終わったら話を聞いてやるんだぞ。

???
うう。

???
あうあう――。

???
あう。

ハイビスカス
成功ですね!

ハイビスカス
流石ラヴァ、頼もしいですね!

ラヴァ
お前がダメなだけだ。

ハイビスカス
では口腔検査を始めますよ。

ハイビスカス
食べ物をちゃんと飲み込んで、はい、口を大きく開けて――。

ラヴァ
あ、そう言えばハイビス。

ハイビスカス
舌で舐めないでくださいよ――あ、どうしましたか?

ラヴァ
どうして彼女を連れて帰ってきたんだ。

ハイビスカス
彼女が可愛そうでしたから。それにひどく感染もしていますし。

ハイビスカス
それにレタニア分会の怪鳥さんも言っていましたから。

ハイビスカス
「君たちが制圧してくれて助かったよ、レタニア警察や賞金稼ぎに捕まっていたら、彼女から希望が無くなっていたところだ」

ハイビスカス
「彼女のような感染レベルの感染者はは最近レタニアの感染者に対する政策の変化によって、人道処理される可能性が高い」

ハイビスカス
「出来れば、彼女を少なくともレタニアの境内から連れて行ってもらえるとありがたい」

ラヴァ
感染者じゃなくとも、彼女のように無差別に人を襲っていては必ず捕まることになるだろう。

ラヴァ
私達の前に少なくとも24回、100人近くの旅行者が被害を受けている。

ラヴァ
これはレタニア境内だけで数えた話だ。彼女が他のところで何をしでかしていたのやら。

ラヴァ
彼女の攻撃術には私達5人とも上手くいなすことすら出来なかっただろう。

ハイビスカス
食べ物を手に入れてお腹を満たすこと以外に彼女は何も悪いことは――あいた!

ラヴァ
「悪いことはしていません」だと?!もう少しで命を落とすところだったんだぞ!

ラヴァ
クルースが警戒をしていなければ、ビーグルがタイミング良く盾で私を守ってくれなければ、彼女が投げた石で覆われた槍でお前の妹は危うく粉砕されるところだったんだ。

ハイビスカス
ペッローさん、私の手を噛まないで下さい!

???
あう。

ハイビスカス
はいはいはい、私がラヴァのことについて解決するのを手伝いますから。

ハイビスカス
歯もすぐに良くなりますからね。もう少しの我慢です、頑張って下さい!

ハイビスカス
はい、いい子。

ハイビスカス
ラヴァ、怒っちゃだめですよ。

ラヴァ
私は事実を述べただけだ、怒ってなんかいない。

ハイビスカス
どうしたのですか?急に子供のように細かいことにこだわるようになって。

ハイビスカス
あなたはペッローさんのことが好きじゃないのですか?

ラヴァ
ああ、大好きだ。彼女も私が大好きだろうな。

ラヴァ
彼女の対処をする時はいつも、岩と炎と氷が私の体めがけて飛んでくるからな。

ラヴァ
彼女がどうやってこのような複雑なテクニックを身に着けたのかは分からないが。

ラヴァ
おい、ペッロー。お前は本当にオリジ二ウムアーツを習ったことは無いのか?

???
わう?

ハイビスカス
ああ、動かないで――ラヴァ、今は邪魔しないで下さい!

ラヴァ
質問をしただけなんだが…。

ハイビスカス
ラ――ヴァ――!

ラヴァ
分かった分かった、私が間違ってた、それでいい。

???
うう?

ハイビスカス
あ、すみません、ペッローさん、すぐ終わりますので。

ハイビスカス
こことあそことそこですね。

ハイビスカス
…。

ラヴァ
…。

ハイビスカス
ふう、そろそろですからね。

ハイビスカス
はい、ペッローさん、検査はほぼ終わりました。この水を持ってうがいをしましょう。あのお盆に吐くんですよ。飲まないでくださいね。

???
あう。

???
(ごっくん)

ハイビスカス
ラヴァ。

ラヴァ
ん?

ハイビスカス
まだ拗ねているのですか。

ラヴァ
お前には関係無いだろう。

ハイビスカス
私達のチームで初めて彼女に美味しいものをあげたのはあなたでしょう。。

ラヴァ
お前、だから何だって言うんだ。

ハイビスカス
栄養学の観点から見れば彼女は飢えすぎていて糖質を多く摂るべきでは無かったのでしょうが、その時は本当に何でも良いので補給しなければいけませんでした。

ハイビスカス
そしたら。

ラヴァ
おい…。

ハイビスカス
ラヴァはコソッと外に出てたくさんのお菓子を買ってきました。

ハイビスカス
ふと気がつくと、お金を全部使ってしまったことに気付いたんですよね。

ラヴァ
もう言うな。

ハイビスカス
ペッローさんを護送して帰ってきたときも、みなさんは彼女が逃げ出すのではないかと恐れていました。

ハイビスカス
その中でラヴァだけが勇気を出して彼女とコミュニケーションを取って、みんなが彼女のことを深く理解出来るように手助けをして、手枷を外しても逃げ出さないようにしたんですよね。

ラヴァ
あー…。

ハイビスカス
ペッローさんが蜜餅が好きだと知ってから、私達のチームの中で一番蜜餅を焼いたのはラヴァでした。

ラヴァ
待て、止まれ!

ハイビスカス
お姉ちゃんはとっても誇りに思っていますよ~

ラヴァ
もう言うな、恥ずかしくなってくる!当事者がここにいるんだぞ!

ハイビスカス
私は、私がするべきことをしたまでです。

ハイビスカス
嬉しいことはたくさんお話します、ふふ。

ラヴァ
そうだ!

ハイビスカス
どうしましたか?

ラヴァ
何だ、あの――口腔検査、まだ最後の段階が残っているだろ。

ハイビスカス
はい。

ラヴァ
その後、彼女はどうすれば良いんだ?

ハイビスカス
それは…。

ハイビスカス
それは私達では決められるものではありません。

ハイビスカス
担当のオペレーターさんたちはまだ計画を練っているようです。オーキッドさんは午後に私達に知らせの人が来ると言っていました。

ハイビスカス
とにかく、午前中は忙しいですよ。こんなにも多くの検査をペッローさんはしなければ――

ビーグル
ハイビス、ラヴァ!ペッローさんの検査はまだなんですか!これ以上はドーベルマン先生のトレーニングに間に合わなくなります!お先に失礼しますから!

ラヴァ
え?

ハイビスカス
え?

ハイビスカス
ええっと、あれ?

ラヴァ
お前、ドーベルマン先生には休暇を取ったと言っていなかったか?

ハイビスカス
え?あれ、えっ…。

ハイビスカス
休暇を取って、あ、忘れていたようです…

ラヴァ
それを早く言え!

ハイビスカス
あの時はペッローさんの検査を手伝うこと一心dした…

ラヴァ
終わった。

ラヴァ
終わった終わった終わった。

ラヴァ
どうするどうするどうする。

ラヴァ
まずは、私達は今ペッローを連れて出掛けているから、誰かに彼女を預ける。訓練が終わった後にその誰かを見つけ出せればいいが。

ハイビスカス
それではあまりにも…

ラヴァ
じゃあ他に方法があるっていうのか!

ラヴァ
もう艦橋に追い出されたくはないぞ…

ラヴァ
お前も前回のように医療知識を覚えながら体力トレーニングをしたいっていうのならそれで良いが。

ハイビスカス
いや!

ラヴァ
それなら、いいだろう、そういうことならば。

ラヴァ
私が武器のことをやってやる、お前は彼女を連れて行って来い。

ハイビスカス
ですが、ペッローさんのうがいがまだ――。

ラヴァ
彼女はとっくに飲んでる!

ラヴァ
行け!

ラヴァ
(いた!)

ラヴァ
鍛冶屋さん!

ヴァルカン
何かあったのか?

ラヴァ
この子の面倒を見てもらないか、訓練が終わったら探しに来るから

ヴァルカン
何だ?子供か?

ラヴァ
これは彼女の好きな蜜餅、もしペッローが癇癪でも起こしたら一緒に食べてほしいんだ。

ヴァルカン
?

ラヴァ
それと彼女には武器はしばらく触らせないでくれ。

ラヴァ
お願いだ!

ハイビスカス
お願いします!

ラヴァ
早く行くぞ!

???
待って!

ラヴァ
ごめんな、ペッロー、すぐに帰ってくるから!

ラヴァ
ああ、もう3分しかない。私達は死んだな…。

ラヴァ
…

ヴァルカン
???

ヴァルカン
これはどういうことだ?

???
うう…。

???
…

ヴァルカン
武器は私が持ってやろうか?

???
(首を横にふる)

ヴァルカン
分かった。

ヴァルカン
一緒に来るといい。私の工房はこっちだ。

ヴァルカン
どうぞ、入ってくれ。

ヴァルカン
炉が熱いと感じたなら、そこの間に行ってもいいからな。

???
ありがとう(小声)

ヴァルカン
気にするな

???
…。

???
あなたは鍛冶屋さん?

ヴァルカン
ロドスの鍛冶屋、コードネームはヴァルカン。

???
ヴァル…カン…。

???
ヴァルカン

???
ヴァルカンはミノス人?

ヴァルカン
そうだ

???
ヴァルカンは武器を見てくれないの?

ヴァルカン
未登録の武器を管理する権限が無いんだ。

ヴァルカン
すまない

???
そっかー…。

???
うー…。

ヴァルカン
(これは…ミノスの工芸か。懐かしいな)

ヴァルカン
(こんなにも摩耗しているとは、出来るだけのケアはしているようだ)

ヴァルカン
(塗りは以外にも綺麗だな、損傷も大きいようには見えない。簡単にメンテナンスをすれば元の状態に戻るだろう)

ヴァルカン
(おかしいな、破裂孔も無いし、刃にも巻きがない。鋼材の温度も少し低かったようだ)

ヴァルカン
(鋼材…)

ヴァルカン
(何処かで見たことが…)

ヴァルカン
(…)

???
あの、お姉ちゃん?

ヴァルカン
(お姉ちゃん?)

ヴァルカン
(…まあいいか、彼女の好きにさせれば)

???
斧の上のグリップの近いところ。

???
そこに文字が書いてあるの。

???
それがおいらの名前!

???
ミノス語なんだ!

???
ミノスに行きたかったんだけど、長い間、そこに行けなかった。

???
会った人は良い人も悪い人もいたけど、おいらの名前読めなかったんだ。

???
ヴァルカンはミノス人、これってどう読むの?

???
読んでくれないかな?

ヴァルカン
まずは見てみよう。

ヴァルカン
(…)

ヴァルカン
(幸い完全には削れてはいないようだ)

ヴァルカン
(このスペルは…)

ヴァルカン
(ミノス語の間違いないな)

ヴァルカン
(慣用的な発音に合わせると)

ヴァルカン
(Ce…O…Be…)

ヴァルカン
ケオベ。

ケオベ
ケ…オ…ベ…。

ヴァルカン
ケオベ

ケオベ
ケ…オベ。

ケオベ
ケオベ

ケオベ
おいらはケオベ!

ケオベ
これがおいらの名前!

ケオベ
うん…。

ケオベ
ヴァルカンお姉ちゃん?

ヴァルカン
(ヴァルカン…お姉ちゃん…?)

ヴァルカン
(彼女にそれとなく注意するべきだろうか…)

ヴァルカン
ど、どうした?

ケオベ
みんなって二つ名みたいなのはあるの?

ケオベ
ラヴァのお姉ちゃんがラヴァを呼ぶ時は別の呼び方があるみたい。

ケオベ
”ラヴァちゃん”みたいな

ケオベ
私ももう一つ欲しいなあ

ヴァルカン
すまない、名前はあまり得意じゃないんだ…。

ケオベ
ヴァルカンお姉ちゃんは鍛冶屋さん、鍛冶屋さんは良い人。良い人はきっといい名前を出してくれると思うの!

ヴァルカン
(どういう考えだ?)

ヴァルカン
(まあいい、わざわざ子供を困らせる必要もないだろう)

ヴァルカン
とりあえず、考えさせてくれ。

ケオベ
うん!

ヴァルカン
(ニックネームが欲しいのだろうか?)

ヴァルカン
(武器の名前は付けたことはあるが、どうしようか?)

ヴァルカン
(ケオべッセウス?ケオベネ?ケオベティア?)

ヴァルカン
(いや、いやいや、武器の名前じゃないんだ、こういうのは使えないな)

ヴァルカン
(んー…)

ヴァルカン
…

ケオベ
ヴァルカン?

ヴァルカン
(さっき彼女が言っていたのは”ラヴァちゃん”か?)

ケオベ
ヴァルカンお姉ちゃん、大丈夫?

ヴァルカン
(思いつかないな…彼女のくれた例を使うとしようか)

ヴァルカン
”ケーちゃん”と呼ぼう。

ケオベ
ケーちゃん?

ヴァルカン
そうだ。

ヴァルカン
(ごかませればいいんだが…)

ケオベ
ケーちゃん…ケオベ…。

ケオベ
ヴァルカンお姉ちゃん、ありがとう!

ヴァルカン
どういたしまして。

ヴァルカン
?!

ヴァルカン
大丈夫だ、ケーちゃん、私を探している人だ、悪くない人。

ケオベ
!

ヴァルカン
武器を離して、良い?

ケオベ
悪くない人?

ヴァルカン
悪い人じゃない。

ヴァルカン
ロドスに悪い人はいない。

ヴァルカン
怖いなら仕切りに隠れててもいいよ。

ケオベ
ケオベは何も怖くないよ。

ヴァルカン
そうか。

ロドスオペレーター
ヴァルカンさんはいらっしゃいますか?

ヴァルカン
どうした?

ロドスオペレーター
こんにちはヴァルカンさん、後方勤務部の者です。昨日ロドスに到着したペッローのお嬢さんに後方勤務部の決定を伝えに来ました。

ロドスオペレーター
ハイビスカスがペッローのお嬢さんをあなたに預けたばかりだと言っていました。今もここにいらっしゃいますか?

ヴァルカン
ああ、いるぞ。

ケオベ
ヴァルカン!

ヴァルカン
怖くない、大丈夫。

ロドスオペレーター
こんにちは、ペッローのお嬢さん。

???
おいらはペッローのお嬢さんじゃない、ケオベっていうの。

ロドスオペレーター
ヴァルカンさん。

ロドスオペレーター
そうなんです?

ロドスオペレーター
分かりました。ケオベ。

ロドスオペレーター
つきまして、私達はあなたを救助した後、あなたの状況について検討を行いました。結果は以下の通りとなりますのでよくお聞き下さい

ロドスオペレーター
これまでは特殊な事情に基づいて、一時的にあなたの人身の自由の制限を行ってきました。

ロドスオペレーター
この点については誠に申し訳なく思っています。現時点から自由行動の権利を再取得、即座に発行という形にさせて頂きます。

ケオベ
???

ロドスオペレーター
何か分からない所でもありましたか?

ヴァルカン
彼女は公文書的な言葉遣いは良く分かっていないと思う。

ヴァルカン
私にくれ、彼女に私から伝えよう。

ロドスオペレーター
お手数おかけします。

ヴァルカン
…。

ヴァルカン
…。

ヴァルカン
分かった。

ヴァルカン
ケーちゃん。

ケオベ
んー?

ヴァルカン
どうして外をさまよっていたんだ?

ケオベ
ミノスに行きたかったから。

ケオベ
でも道を間違えちゃったみたい。

ロドスオペレーター
レタニア分会が集めた資料によれば彼女はボリバルから出発をして東方三国の境まで歩き、そこで引き換えしたようです。

ロドスオペレーター
帰りの途は北のほうからぐるっと回って、最後にレタニアにいた私達によって救助されたと。

ロドスオペレーター
脚力は素晴らしいの一言に尽きますね。

ロドスオペレーター
ですが、こんなことを聞いてどうするんです?

ヴァルカン
ミノスに着いたら何がしたい?

ケオベ
おいらの名前を聞いて、それで…。

ケオベ
それで…

ケオベ
まだ決めてないよ。

ロドスオペレーター
ヴァルカンさん、状況を彼女に教えて下さい。彼女に自分で決めさせましょう。

ヴァルカン
その後、何がしたい…

ケオベ
わからないよ…。

ヴァルカン
考えてみよう。

ヴァルカン
とっても大事なことなんだ。

ケオベ
おいらは…毎日がお腹いっぱいになればいいな。

ロドスオペレーター
ヴァルカンさん、あなたは――。

ヴァルカン
しっ、静かにしてくれ!

ロドスオペレーター
….

ケオベ
あったかいお湯にたっぷり浸かって、思いっきり厚いお布団に潜り込みたいな。

ケオベ
ずっと寝転がって、それでも寝転がって、お腹が空くまでそれをするんだ。

ケオベ
まだあるよ。

ケオベ
大きなお部屋に自分の宝物をその中にちゃんと入れておきたいなあって。

ケオベ
ずうっとそれを背負ってるとたまに大変になるんだ。

ケオベ
特にお腹が空いた時とか。

ケオベ
うーん、これくらいかなあ。

ヴァルカン
分かった。

ヴァルカン
食べるところがあって、飲むところもあって、部屋があって、安心して寝られる、そこにいたいってことだな?

ケオベ
そうだよ。

ヴァルカン
だが多くの時間で頭を使うことになるし、たくさんの悪人を討たなければならない。時には何日間か眠ることが出来ないかもしれない。それでも変わらずそうしたい?

ケオベ
よく分からないけど…。

ケオベ
でも。

ケオベ
ヴァルカンお姉ちゃんはヒーローになるんだって言ってるの?

ヴァルカン
ヒーロー?

ロドスオペレーター
ははは――あ、ごほん。

ヴァルカン
ああ、そうだ、ヒーローになるんだ。

ケオベ
いいよ。

ケオベ
お腹いっぱいになれるし、ヒーローにもなれる。

ケオベ
それよりも良いことって無いよね。

ヴァルカン
そうだな。

ロドスオペレーター
本当に彼女を――

ヴァルカン
彼女はそう決めたんだ。手続きを頼んだ。

ヴァルカン
保証人が必要なのであれば私に名前を入れてくれれば良い。

ロドスオペレーター
あなたは――。

ヴァルカン
もう一度言わなければだめか。

ロドスオペレーター
ええっと――。

ロドスオペレーター
あなたがそういうのであれば私はもう何も言いません。

ロドスオペレーター
すぐにケオベさんのためにテストの準備をしましょう。

ロドスオペレーター
ですが、それにはそれなりの責任があるということをご承知下さい。

ロドスオペレーター
――と説明していただければ。

ヴァルカン
ああ、そうしよう。

ロドスオペレーター
では、お先に失礼します。

ヴァルカン
ああ。

ケオベ
んー…

ケオベ
何が起きたの?

ヴァルカン
いや、大丈夫だ。

ヴァルカン
たくさんのことを勉強して、たくさん喧嘩をするだけだ。

ヴァルカン
いくらか労力を費やすことにはなるが。

ヴァルカン
今の暇な内にゆっくりと休むといいよ。

ケオベ
うん。

ケオベ
んー…。

ケオベ
お姉ちゃん?

ヴァルカン
ん?

ヴァルカン
(少し慣れてきたな)

ケオベ
蜜餅食べよ、ラヴァが焼いたの、おいしいよ。

ヴァルカン
良いのか?

ケオベ
はお、どうぞ。

ヴァルカン
ありがとう。。

ヴァルカン
…。

ヴァルカン
(この味は?)

ヴァルカン
(皮が脆くなく、砂糖の味にも問題はあるが)

ヴァルカン
(それ以外はミノスのものと同じ味だ)

ケオベ
美味しい?

ヴァルカン
美味しいな。

ケオベ
でしょ~。

ヴァルカン
だが。

ケオベ
んー?

ヴァルカン
この餅は新鮮な焼きたての食感が良いんだ。

ヴァルカン
餅にジャムを少し掛けて、お茶を一杯な。

ケオベ
もっと美味しくなるの??

ヴァルカン
そうだ。

ヴァルカン
後で機会があれば、隣にいるマッターホルンに作ってもらうと良いだろう。

ヴァルカン
彼はこういう食べ物を作るのに心得があるからな。

ケオベ
本当?

ヴァルカン
ああ。

ケオベ
ありがとう、お姉ちゃん!

ヴァルカン
今後数日間、多くのテストを受けることになる。

ヴァルカン
自分以外にも武器の状態も調整しておくんだぞ

ヴァルカン
何かいるものはあるか?

ケオベ
おいら、鍛冶屋さんに欲しい物言っても良いの?

ヴァルカン
欲しい物があるのであれば。

ケオベ
じゃあ、おいらの宝物をお姉ちゃんの部屋にある武器みたいに綺麗にしたいんだ。

ケオベ
それで、えっと、他の武器の色も斧と同じ色に変えるの。

ケオベ
うーん…面倒じゃないかなあ?。

ヴァルカン
あまり時間は掛からない。

ヴァルカン
仕上げを急ごう、そうすればラヴァ達をびっくりさせることが出来るかもしれないしな。

ケオベ
ほんとー?

ヴァルカン
ああ

ヴァルカン
武器を持ってきて。今から始めよう。

ケオベ
うん!

ラヴァ
はあ、はあ、ふう、あー、疲れた。

ラヴァ
ハイビス、ペッローは大丈夫かな。

ハイビスカス
彼女はあんなにも強いですし、ヴァルカンさんは暖かい方ですから、大丈夫ですよ?

ラヴァ
え?ヴァルカン?暖かい?

ラヴァ
まあいいか、鍛冶屋さんが悪いことをしないっていうのは分かってるし。

ラヴァ
訓練中に後方勤務部のオペレーターが探しに来たっていうほうだ。彼が来た時には書類の袋を握っていた。

ラヴァ
少し不吉な予感がする。

ハイビスカス
あ、またですか。

ハイビスカス
私の経験から言わせれば、ラヴァの「不吉な予感」っていうのは一般的に良いことなんですよ。

ラヴァ
なら良いが…おい、着いたぞ。

ラヴァ
ラヴァだ。ペッローを探しに来た。

ヴァルカン
ドアには鍵が掛かっていないから直接入ってきてくれ。

ハイビスカス
え?ペッローさん?

ヴァルカン
誰だ?

ラヴァ
お、お前その武器どうした?

ケオベ
あ、ラヴァとハイビスカス!来てくれたんだ!

ケオベ
これからは、これがおいらの名前だよ。

ケオベ
これからはペッローさんじゃなくて、ケオベって呼んでね。

ラヴァ
ええっと――???!

ハイビスカス
ええっと――???!

人事担当
今日は何のためにおいでに?

ヴァルカン
彼女の成績はどうだ?

人事担当
どうでしょう?

人事担当
どうなんでしょうかね。

人事担当
指揮が分からない内に、武器むやみやたらに振り捨てるだけで、性質的には遊びですね。

人事担当
彼女をどう思います?

ヴァルカン
結果は?

人事担当
結果を言えば。

人事担当
彼女は合格です

ヴァルカン
そうか。

人事担当
めちゃくちゃでテストが不合格な部分も山程ありましたが、素質と潜在力から言えば十分オペレーターになれると思います。

人事担当
最も重要ないくらかの審査員からの意見では全て採用でした。他の細かい所はあまり重要ではないと。

ヴァルカン
ドクターは人を見誤ることは無いからな。

人事担当
あなたもですよ。

人事担当
ではもう時間ですので。

人事担当
理由を教えてくれませんか。

人事担当
私達はオペレーター採用の試験を始める際は、通常行路は本人の自由意志が原則となっています。

人事担当
あなたのしていることは深刻な疑いを本人の代わりに決めているようなものです。一般的に保護者又は親族を除いて、または協議書で明確に紹介しているものを除いて、私達の大部分は一票で否決となります。

ヴァルカン
すまない。

人事担当
これでいいですかね?

人事担当
まあ、そこまで厳しいものでもありません。規則は形骸化していますし、人は生きていますから。

人事担当
理由をお教え下さい、上に説明がしたいので。

ヴァルカン
武器が好きな人はみんな悪い人じゃない

人事担当
はい。

人事担当
待って下さい、ええっと、それだけですか?

ヴァルカン
ああ。

人事担当
あまり気軽なものにしないでください、もういくつか挙げなければ報告書を作成出来ないんです

ヴァルカン
私が言うのか?

人事担当
録音も素材としてとても重要となります。

ヴァルカン
分かった…。

ヴァルカン
私は鍛冶屋だ、人をあまり見ることはない。だが、武器については目を離すなんてことはしない。

ヴァルカン
武器のメンテナンスとメンテナンスの知識が全く無い人ならば。

ヴァルカン
使用時間が長ければ、必ず武器は損傷していく。

ヴァルカン
だが彼女は持ちうる力を全て使って不可逆的な損傷を抑制しており、能力の範囲内で武器のメンテナンスをしている。

ヴァルカン
この点は彼女の潜在力と能力を確信させるには十分な材料だ。

人事担当
何故彼女が武器の維持が出来ないことを知っているんです?

ヴァルカン
彼女は砥石さえ使うことが出来ず、油脂の選び方さえも全く分かっていない。当然規則に書いてあるような科学的な方法も分からない。

ヴァルカン
唯一知っていることは武器を綺麗に塗ることだけだ。この点だけは彼女はよくやっている。

人事担当
まだ続けますか?

ヴァルカン
他に言うことは無い

ヴァルカン
履歴については私よりもあなたのほうが知っているだろう

人事担当
そうですね。

人事担当
ボリバル人が世界中のミノス人を探していましたが、結局世界中をミノスを求めて駆け回っても着くことはありませんでいsた。。

人事担当
何故自分が行こうとしているのかも分かっていません。

人事担当
元気だということ以外なんと言えば。

ヴァルカン
信念はあることは良いことだ

人事担当
これは私が知りたいことですが。

人事担当
あなたは普段他人に対しては無関心ですよね。

人事担当
ケオベはあなたにとって特別なのですか?

人事担当
ケオベの一体何処があなたを惹きつけたのです?

ヴァルカン
武器だ。

人事担当
私は真面目に聞いているんですよ、ヴァルカンさん。

ヴァルカン
私も真面目だ

人事担当
どういうことです?

ヴァルカン
彼女の名前は斧に刻まれていた

ヴァルカン
ミノスは極東では無いから、何かにつけて武器に名を刻む伝統というものはない。

ヴァルカン
残るというものは多くの意味で並外れていることだ。

ヴァルカン
ましてや。

ヴァルカン
彼女の手にある斧は私では鍛えることは出来ない。

ヴァルカン
だが、あの鍛錬の方法は何処かで見たことがあるんだ

ヴァルカン
彼女が謎を解くのを助けてやりたいんだ。

ヴァルカン
そうすればいつかは彼女も振り向いて私のために迷いを解いてくれるのかもしれない。

ヴァルカン
所詮、鍛冶屋の私心なだけだ。

人事担当
?

人事担当
えっと…

人事担当
あなた達職人は秘密が本当に多いですからね。

人事担当
ええ、難しいことでは無いのでしょう。

人事担当
こちらが知りたいことは以上となります。

人事担当
お疲れさまでした、帰ってお休みになって下さい

ヴァルカン
すまないな。

人事担当
こちらこそすいません、私も公務ですので。

ヴァルカン
ありがとう。

人事担当
いえ、こちらこそ。今度一緒に飲む時は私が当番の時に来て下さい。新しい調理法を開発したんですよ。「カジミエーシュの風」と言うんです。機会があれば食べに来て下さい。

ヴァルカン
ああ、きっと行くよ。

人事担当
ふう…。

人事担当
だから人事という仕事は難しいんですよ。

人事担当
こいつらは履歴書をちゃんと書くということを知らないんです。

人事担当
話をしてみてみないと腹の中にどれくらいのものを隠しているか分からない。

人事担当
謎の謎は何処にそんなに多くの謎があるのかっていうことだ。

人事担当
探偵なのかって?私は人事だぞ!

人事担当
(力強く短いヴィクトリア方言)

後方勤務部職員
専門員か?

人事担当
どうかしましたか?

後方勤務部職員
新人の面接は終わりました。ご出席を。

人事担当
分かりました。そうだ、これがケオベの契約書です。全部の印は捺印しています。書類は保管しておいてください。それとオペレーターを派遣し正式に入社させる事項です。

後方勤務部職員
分かりました。

人事担当
待ってください、教わる時はヴァルカンに傍聴させることは覚えておいて下さい、一部の条項の理解は彼女の助けが必要かもしれません。

後方勤務部職員
分かりました。

人事担当
ふう、お喋りも終わったし仕事を始めるか。

人事担当
…(オペレーターの資料を持ち替える)

人事担当
はあ。

人事担当
やっぱり。

人事担当
また履歴書をちゃんと書かない新人か。

人事担当
今夜もまた忙しいだろうなあ。