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【明日方舟】シナリオ翻訳 ストーリー7章2話「別離の夜」(後半)

ウェイ・イェンウー オフィス 6:30p.m

ケルシー
ケルシー

ええ、その通りです、ウェイ長官。三十二時間後、中心街は龍門に激突します。

ケルシー
ケルシー

都市の識別ナンバーは変わっていません、つまりこのチェルノボーグの移動都市メイン区画は依然ウルサスの領土となっています。

チェン
チェン

中心街の攻撃はウルサスへの宣戦布告になる、ということか……?

ウェイ
ウェイ

レユニオンはこの方法でウルサスを牽制するわけか、酔狂なことだ。

ケルシー
ケルシー

落ち着いてるのですね、魏殿。あなたにはどうやらウルサスが平和を愛する国に見えるようだ。

ウェイ
ウェイ

ウルサスの拡大欲求は、富、領土と発展への渇望から成り立っている。

ウェイ
ウェイ

数十年前のウルサス帝国であれば、利益のためならば全世界を敵に回そうと躊躇な

く戦争をしかけてきただろう。

ウェイ
ウェイ

しかし、炎国に宣戦だと?

ウェイ
ウェイ

炎国は数百年間、他国との戦争は避けてきが、これは炎国が戦争に勝てないからではない。ましてや軽率な国には、炎国の繁栄がどこから来たのかを理解できはせんだろう。

ウェイ
ウェイ

共倒れに等しい戦争が終わったのちに、炎国は長い年月をかけて国力を養う必要があった、しかし不安定な内政を抱えていたウルサスにとっては大きな打撃を受けた。

ウェイ
ウェイ

今のウルサスはかつての悪徳ではない。この無益で失敗が目に見えている戦争を吹っかけてきたのは愚か者と狂乱者の仕業だろう。

ケルシー
ケルシー

魏長官、その両者を見かけない国や街などないと思いますが。

ウェイ
ウェイ

天災のあらゆる芽を取り除くのが私の責務の一つだ、それはウルサス帝国議会とて変わりはないだろう。

チェン
チェン

……

ウェイ
ウェイ

帝国議会の答え次第で、我々は直ちに各種の措置を実行、チェルノボーグの中心街の運転を停止させる。

ウェイ
ウェイ

そのあとの外交のいざこざは、外交官に任せる。

ウェイ
ウェイ

我々はこの危機を門前で消滅させる。

ケルシー
ケルシー

相手がウルサスであるのに、ずいぶんな信頼があるようですね?

ウェイ
ウェイ

いや、信じているのは利益だけだ

ウェイ
ウェイ

たとえウルサスが此度の戦争で大量の資源を獲得できたとしても、立て続けにおこった戦争で、内部の腐敗を消すことはできないだろう…

 

ウェイ
ウェイ

いかなる国家だろうと征服した人民と領土から湧き出た反乱と互いを仇敵とみなす劇毒に耐えることを出来はしない。

ウェイ
ウェイ

今のウルサス帝国は見掛け倒しの屍にすぎん。

ケルシー
ケルシー

それが利益に基づきウルサスがあなたとの協定に締結するだろうという理由ですね?

ウェイ
ウェイ

私と帝国議会議長との間にはいかなる協議も結ばれてはいない。ただまだほんの少しばかりの理性が残っているだけだ。

ウェイ
ウェイ

文月、電報を頼む。速やかに両者との……

文月
文月

はい

ウェイ
ウェイ

……文月

文月
文月

ここにはまだウェイ長官宛てのメッセージがあります。

文月
文月

ケルシー先生、アーミヤさん、それとチェンさんも……聞いてください。

ウェイ
ウェイ

文月?

文月
文月

よくよくお聞き下さい、見方が変わるかもしれませんので。

ウェイ
ウェイ

それは無いだろう

文月
文月

あなたがこれ以上彼女らを断ったら、正真正銘、孤立無援になってしまいますよ。

???
レコーダー

“ウェイ長官、このメッセージを聞いているということは直ちに行動をとらないといけません。”

ウェイ
ウェイ

これは……私のトランスポーターじゃないか

???
レコーダー

“ここからのメッセージはアーツによる暗号化が施されています。”

???
重厚な男性声の記録

“ウェイ長官、第三と第四集団軍に動きがありました。理由は分かりません。”

???
重厚な男性声の記録

“首謀者すら突き止めることが出来ていません。”

???
重厚な男性声の記録

“彼らが議会でこそこそと私の醜態をあざ笑ってました。つまり私では彼らの責任追及のための証拠は見つかりません。”

???
重厚な男性声の記録

“チェルノボーグで事件が起こったのであれば、全力で阻止をしてください。でなければ収束が不可能となってしまいます。”

文月
文月

以上です。

ウェイ
ウェイ

……最後まで聞かせてくれ。

文月
文月

残りはトランスポーターの独り言ですが……

ウェイ
ウェイ

彼は私のトランスポーターだ、最後まで聞かせてくれ。

???
重厚な男性声の記録

“ウェイト議長には会えていません。私と連絡を取っているあちら側の特使も不明勢力に追われているようです。こちらのトランスポーターが無事だったのが幸いですが。”

???
重厚な男性声の記録

”こちら側のトランスポーターも夜中の内に圣骏堡(都市名)から脱出したそうです。どうやら誰かが協力してくれていたらしいdす。ウルサスの内部勢力が対立しているんだと思います。

???
重厚な男性声の記録

そのあとの道中で、襲撃に何度もあいましたが誰かも分からない人たちが私を助けてくれた。

ウェイ
ウェイ

ウェイトの勢力が助けてくれたのか……

???
重厚な男性声の記録

”こちら、ウラル地溝に到達、そこにある発信施設を少し借りました。この後に何が起こるのかはもう分かりません。

???
重厚な男性声の記録

“龍門にもどって故郷の茶が飲みたいです”

ウェイ
ウェイ

彼の今は?

文月
文月

生死不明です。

ケルシー
ケルシー

レコードを聴く限り、帝国議長は傍観に徹するようですが。

ケルシー
ケルシー

帝国議会はウルサスの中枢とはいいますが……チェルノボーグの現在地はウルサスの辺境に位置しています。

ケルシー
ケルシー

辺境はいまも軍と残存貴族の勢力範囲内です。

ケルシー
ケルシー

軍はあの反乱騒動後、ほかの事件に介入する機会がありませんでしたが、感染者達にはありました。

ケルシー
ケルシー

厳重な監視下のため旧貴族たちもチェルノボーグの災難に策を巡らせることが出来なかったようですが、感染者達にはそれが可能でした。

ケルシー
ケルシー

そう、訓練を受けていない大多数のレユニオン構成員たちが軍や警察、ましてや秘匿されていたチェルノボーグ暴動鎮圧部隊に対抗できるはずがない――

ケルシー
ケルシー

しかし、天災になら出来ます。チェルノボーグは事前に土地区画を分離しなかったから。天災の襲来にチェルノボーグは手詰まりだった。

ケルシー
ケルシー

レユニオンは事前に街に潜入して街の武装組織の集中を阻止する必要があった。そうすれば軍隊も察知できなくなるから。

ケルシー
ケルシー

龍門と私たちもレユニオンの動向は予見していました。近衛局もレユニオンに対する包囲殲滅を策していたのに、チェルノボーグは…。

ケルシー
ケルシー

今日に至るまでチェルノボーグ、はてはウルサスには……声を上げる機会は一切無かった。

ケルシー
ケルシー

謎が解けましたね。

ケルシー
ケルシー

ウルサスはあの都市と、そこに住んでる住民の生き死にには目をつむり、ただでチェルノボーグをレユニオンに渡したということ。

ケルシー
ケルシー

死の淵をさまよい、死を恐れなくなった感染者たちが天災終息後にこの都市を引き受けた。

文月
文月

奴らが手を出す必要なんて一切ありません、ただ譲ってあげただけです…道を。

文月
文月

事が起こるのを待っているだけで良いのです。

アーミヤ
アーミヤ

そうなのであれば、天災襲来後のチェルノボーグは、ただの資源の無い死んだ都市になると思いますが……

文月
文月

そうすることで感染者たちが龍門に流れ込むのです!レユニオンを指揮してるのが誰であろうと、まるでそれがごく自然に起こったかのように仕組まれて……!

ウェイ
ウェイ

――

ウェイ
ウェイ

指令だ。監察司を直ちに止めさせろ、武力を使っても構わん。臨戦態勢を整え、中心街を確実に沈黙させる。

ウェイ
ウェイ

中心街が停止するまで、一切の情報漏洩を禁ずる。

アーミヤ
アーミヤ

ウェイ長官?!

文月
文月

こちらから仕掛けるのですか?

ウェイ
ウェイ

文月、龍門がこれまで経験したことからお前もわかるだろう。国民はウルサスへの宣戦を絶対に許しはしない。

 

ウェイ
ウェイ

…たとえ優勢であったとしても、その代償は龍門の全てとなるからだ。だからこそこちらから仕掛けなければならない。

ケルシー
ケルシー

宣戦布告は布告側が必ず他国から敵視されることを意味します。

ケルシー
ケルシー

他国と戦時同盟を結ぶことも難しくなるでしょうし、孤立無援になる可能性も高いでしょう。

アーミヤ
アーミヤ

それよりも……真相が何であろうと、戦争が終わった後でしか検証することが出来ないというのが最もまずいのでは……!

ケルシー
ケルシー

一部の国家にとって真相なんてどうでもいい、欲しいのは大義名分だけだ。

ケルシー
ケルシー

です、ウェイ長官。和平は平和的な外交手段で取り戻すことができると私は信じていますよ。

ウェイ
ウェイ

意見感謝するよ、ケルシー君。

ウェイ
ウェイ

だが、残念なことに、ウェイトと私のつながりだけが両国最後の和平手段だった。

ウェイ
ウェイ

たとえ敵が帝国第三軍団だろうとウルサス皇帝だろうと、戦争に勝利したとしても、今

回の戦争は遅かれ早かれ避けられるものではない。

ウェイ
ウェイ

和平の可能性はもう残っていないのだよ。

ウェイ
ウェイ

ウェイトが公式の方法でこの件を呵責しないということは、トップから抑え込まれ口が出せなくなったということだ。彼とて政治家だ、身勝手なところもある。

ウェイ
ウェイ

彼をここまで追い詰めた帝国の官僚機構も半分機能していないということ状ろう。

ケルシー
ケルシー

軍は両翼からウルサスすらも挟み込むことができるでしょうが、ウルサス領土内の龍門を挟み込むことができないはず。龍門は他都市への疎開措置を実行すべきです。

アーミヤ
アーミヤ

ですが、今から都市を疎開させても間に合わないじゃないのでは?!

ウェイ
ウェイ

中心街を止めない限り、龍門は衝突後に瞬時に破壊される。その後の領土衝突もどれほどの災難が引きおこるものになるか。

アーミヤ
アーミヤ

ですが、中心街を止めるには……

ウェイ
ウェイ

私達が艦砲射撃や暗殺の特殊部隊を派遣することはすなわち、ウルサスへの宣戦とな

る。

ウェイ
ウェイ

本来、ウェイトがかろうじて引きとどめていた事態だが、チェルノボーグにて何もかもが崩れた。

ウェイ
ウェイ

チャンネルが切られ、対話の余地がない孤城はもはや何をしようがお構いなしだ。

ウェイ
ウェイ

先生のおっしゃる通りだ。今は龍門だけが、我々しかチェルノボーグに立ち向かうことは出来ない。

ケルシー
ケルシー

ウェイ長官、どうかもう一度お考えを。開戦は最悪な結果を招くだけです。

ウェイ
ウェイ

この戦争が当り障りなく過ぎ去ったとしても、龍門にとってはさらなる最悪な結果がやってくるだけでしかない。

アーミヤ
アーミヤ

アーミヤ
アーミヤ

ウェイ長官、ロドスが…。

私が行く。

ウェイ
ウェイ

…。

ケルシー
ケルシー

アーミヤ
アーミヤ

え…チェンさん?

文月
文月

チェン?

チェン
チェン

私が解決する。

ウェイ
ウェイ

お前は龍門の人間だ。

チェン
チェン

ならば龍門から抜けるとしよう。

ウェイ
ウェイ

チェン警司、出過ぎたマネはするな、これはお前の職責ではない。

チェン
チェン

龍門に反逆者が必要なら、私がなる。

チェン
チェン

ウェイ・イェンウー、私はお前も、お前のこの都市も、お前の綺麗ごとにまみれた街には…。

チェン
チェン

もううんざりだ。

チェン
チェン

お前がスラム街に手を出したときから、私はこの街の者ではない

ウェイ
ウェイ

この緊急事態に君と是非を問う時間などありはしない。

チェン
チェン

彼らが何をしたというんだ、なぜあんなことをした?

ウェイ
ウェイ

……“彼らが何をしたか”だと?

ウェイ
ウェイ

チェン警司、彼らが何をしたか知っているのか?

ウェイ
ウェイ

教えてくれ、チェン警司。レユニオンがどこを潜伏地に選んだのか、どうやってこの都市に潜入できたのか?

ウェイ
ウェイ

おまえはスラム街の住民を信用しているようだが、彼らはおまえを信用してるとは言えるのか?その信用は一体何処を見れば分かる?

ウェイ
ウェイ

おまえのスパイと灰色のリン以外、“感染者が自分たちの居住区に侵入してる”と報告しにきたスラム街住民がいたか?

チェン
チェン

事件は急速に進展をしていた、情報を取得できなかったのはだれの過失でもないだろ!

ウェイ
ウェイ

君は民間から情報をひとつでも入手出来ていたか?

チェン
チェン

…。

ウェイ
ウェイ

どうかね?

チェン
チェン

無かった。

ウェイ
ウェイ

一つたりとも、一人たりとも無かっただろう。

ウェイ
ウェイ

彼らは君たちを信じてはいない。彼らは自分らを守ってくれるマウスキングと近衛局の隊長を信じるよりも、外からやってきた扇動者と感染者を信じるほうを選んだのだ。

チェン
チェン

レユニオンの脅迫にあったのかもしれないだろう。あの感染者らは暴力で事を片付けようとする。

ウェイ
ウェイ

龍門は彼らに暴力を振るわなかった、と彼らは思うか?

ウェイ
ウェイ

私は助け合う行為をとがめたりはしない。

ウェイ
ウェイ

むしろ思うことすらもある、もし彼らが身近の感染者を今も憎み続けていたのなら、今日まで待たなくて良かったものをとな。

ウェイ
ウェイ

だが、彼らはマウスキングに、君たちに助けを求め、レユニオンの侵攻を

共に阻止することができた――

チェン
チェン

だが彼らは、私たちのことを……

ウェイ
ウェイ

そうだ、彼らは君たちを信用はしていない。お前が彼らにどれだけ時間と資源を与えたとて、彼らは一度たりとも君を信用はしなかった。

チェン
チェン

なら、早急に近衛局がスラム街に進駐するべきだったのでは無いのか!

ウェイ
ウェイ

近衛局の進駐を断ったのは彼らだ。数名の近衛局職員が殺されたのも彼らの仕業だ。

ウェイ
ウェイ

私と灰色のリンがやっとの思いでスラム街の凶悪分子を一掃した時、戦士たちへの犠牲に目をもくれなったのも彼らだ。

ウェイ
ウェイ

それでも龍門が彼らを拒んだと?

ウェイ
ウェイ

答えてくれ、チェン警司。

チェン
チェン

…。

ウェイ
ウェイ

私の目を見て答えろ、チェン警司!

チェン
チェン

彼らのせいではない。

ウェイ
ウェイ

では誰のせいだというのだ、チェン警司?

ウェイ
ウェイ

私は何度も君に警告したはずだ。君の考えと理念は尊重するが…それらが職務に影響を与えてはならないと。

ウェイ
ウェイ

近衛局の責務は龍門を防衛することだろう。特別督察隊の責務は近衛局を指導して龍門を防衛することだろう。

ウェイ
ウェイ

君がスラム街保護に力を注ぐことによって龍門に穴が開いてしまった。龍門の敗因にもなりえるかもしれないものをだ。

ウェイ
ウェイ

レユニオンに利用されたスラム街の感染者が龍門攻防戦の中心となり、チェルノボーグから警戒心をそらした。

ウェイ
ウェイ

我々のレユニオン掃討の戦術計画が中心街の侵攻を許してしまう弱点となったのだ。

ウェイ
ウェイ

だが、彼らの中の非感染者は、ただ見てるだけだった。

ウェイ
ウェイ

龍門が陥落したら、彼らがその元凶だ。

チェン
チェン

…違う…。

ウェイ
ウェイ

龍門が戦争することになり、多大の犠牲を生じ、多くの血を流した際の責任は誰が担うというのだね?

ウェイ
ウェイ

この数区の都市に、我々は幾多の災難への対策を間に合わせることができなかったのだ。

チェン
チェン

お前の対策ってまさか――

ウェイ
ウェイ

今の論点はなんだと思うかね?

チェン
チェン

ウェイ
ウェイ

龍門が彼らを拒んだのか?そうではない。

ウェイ
ウェイ

彼らが龍門を拒んだのだ。

チェン
チェン

……お前は彼らを見捨てる気なのか?

ウェイ
ウェイ

浅はかで漠然な行動で自分自身を追いやったのだ。私がもうあの連中の面倒を見る理由など何処にもない。

ウェイ
ウェイ

チェン、人間はどうしても失敗や過ちを作ってしまう。

ウェイ
ウェイ

過ちは誰だって犯すのだ、それは当然だ。その過ちを改め、時には覆いかぶせて成功に導くことも出来る。

ウェイ
ウェイ

私が出来ないことだろうと、いつか必ず誰かがやり遂げる。そして今、私にはやり遂げなければならないことがある。

チェン
チェン

過ち?やり遂げること?

チェン
チェン

そうか、お前の言いたいことがすべて理解した。

チェン
チェン

感染者がこの街にいること自体が過ち、そう言いたいのだろう?

ウェイ
ウェイ

……頑固者だな。

ウェイ
ウェイ

チェン警司、君と話したことはすべて覚えている。今はやるべきことをやれ。

チェン
チェン

いいだろう、はっ…

チェン
チェン

ウェイ・イェンウー、私が、近衛局がやるべきことは間違った奴をつまみ出し、間違いを解決することだろう?

チェン
チェン

どうやら、お前が言っていることによれば間違ってるのは私だけということだな。

チェン
チェン

もしくは私もその間違いらしい。

チェン
チェン

わたしも感染者だからな。

ウェイ
ウェイ

君は――

文月
文月

チェン?!

アーミヤ
アーミヤ

チェン隊長……え?

チェン
チェン

もう隠す必要はないだろう。

チェン
チェン

……この三年間、おまえは私が感染者だという情報を隠し通してきた。だが今、感染者がこの街で身を置くことが出来ないというのであれば、私にここにいるべきではない。

ウェイ
ウェイ

ふざけたことを!

チェン
チェン

私も彼女も感染者だ。ここの人間ではない。私にはやるべきことがあるし、これ以上の過ちも犯しはさせない。

チェン
チェン

彼女を止められるのは私だけだ。

“思い悩むなよ、分かってるから。誓いを立てた姉妹じゃないか、そうだろ?姉妹だったら……隠し事は無しだ。”

義親相残

チェン
チェン

私は感染者であり龍門の叛徒……これは私にしか出来ないことだ。

“お前もあいつらも憎い。お前たちを愛しているはずなのに、すべてが憎い。”

血親相残

チェン
チェン

ここまで来てしまったからには最後まで進み続けなればいけない。

“どうして私なんだ?どうして私じゃなければいけないんだ?この席に安寧なんかあるのか?どうして私が座らなければいけないんだ?”

至親相残

ウェイ
ウェイ

許可は出来ん。

ウェイ
ウェイ

今、ここでお前がオフィスから出ていけば、チェン・ファイギ……おまえは龍門の敵だ。

ウェイ
ウェイ

お前と私の十年間の努力が……水の泡になるぞ。

(斬撃音)

チェン
チェン

私がしてきたことは……お前があんなことをした時点で無駄になった。

チェン
チェン

龍門は火の海になり、一面は戦場と成り果てるだろう。お前にはお前の、私には私のやり方がある。

チェン
チェン

ただ違うのは私はおまえみたいな人間じゃないということだ。誰であろうとその人を“過ち”とは思わない。

ウェイ
ウェイ

この都市の陥落はわたしが許さん、お前がやろうとしている無謀な襲撃もだ。

ウェイ
ウェイ

権威とはいつだろうと道具に過ぎん。その道具で領地を正すというのであれば、その期待に応えなければならない。

チェン
チェン

はっ。

ウェイ
ウェイ

己をあざけ笑うではない、チェン督察。

チェン
チェン

……?

ウェイ
ウェイ

それをあざけ笑うということは、己をあざ笑うことだ。

ウェイ
ウェイ

君に教えを問いているのは変えてほしいからだ。君が繁栄のみを求めてきたこの土地の渇望を変えてくれることをずっと望んでいた。

チェン
チェン

それで変わったか?それで変えられたか?私がしてきたことに意味はあったのか?

ウェイ
ウェイ

今は無理だろうと、いつかは必ずそうなる。

ウェイ
ウェイ

君が成し遂げろ。

???
案内人

お、お待ちください!どちら様ですか!

???
案内人

今お入りになられては……警備員、警備員は!?何者かが侵入してきました!

???
???

ウェイ様、お通しを。

ウェイ
ウェイ

――下がっていろ

???
???

どうかお通しを!

ウェイ
ウェイ

来てはならん。

チェン
チェン

ふ、ふふ、はははははは……

チェン
チェン

ウェイ・イェンウー、お前の正体がやすやすと暴かれてしまったな。お前の私兵が我が物顔でオフィスに入ってくるとはな?

???
???

チェン家のお嬢様、龍門は危機に直面しているのです!

チェン
チェン

理屈は通ってるようだな

チェン
チェン

だが、お前たちのことは信じない。言いたいことがあるんだったらあいつに聞くがいい。

???
???

ウェイ様……我々はたとえこの身が欠けようと死して衝突を阻止してまいります!ウェイ様のお心を煩わせたりは決して致しません!

ウェイ
ウェイ

下がっていろ!

???
???

ウェイ様!

チェン
チェン

どうした、ウェイ・イェンウー?どちらを行かせるのかがそんなに難しいか?

チェン
チェン

人を殺す時はすぐに決めるくせに、どうして人を助けるときはそこまで優柔不断なんだ?

チェン
チェン

今回も……そうだ。

チェン
チェン

前回もそうだったな。

チェン
チェン

私はきちんと別れを言いたいだなんて思ってはいない。

チェン
チェン

まあいい、ウェイ・イェンウー。私はお前に別れを言うつもりなんてさらさら無かったからな。

チェン
チェン

文月さん、母さんがあなたにしていたこと申し訳なく思っています。ありがとうございました、長い間私のことを世話してくれて。あなたの事はずっと親として見ていました。

文月
文月

……チェン?!

ウェイ
ウェイ

チェン警司!

チェン
チェン

私はもう警司ではない。近衛局のバッジもお前に返す。

ウェイ
ウェイ

――取り押さえろ!

チェン
チェン

ここでやり合うと?だれが本当の叛徒か決めるためにか?

???
???

チェン警司、お覚悟を!

チェン
チェン

感染者だから、お前たちの敵なのは当然か。

???
???

おやめください!さもなくば容赦いたしませんよ。

チェン
チェン

だれに容赦しないだと?!

???
???

……何?!

チェン
チェン

こけおどしで脅したって無駄ということをお前らに分からせてやる!

???
???

ウェイさま、お気を付けを!

チェン
チェン

赤霄、振気!

“イェンウー、この剣が龍を屠るというのであれば、ドラクは含まれるのか?”

“入る?じゃあ気を付けないとな、はは……”

ケルシー
ケルシー

これは…アーツの乱流?

アーミヤ
アーミヤ

先生、下がっててください!私がアーツを防ぎます!

ケルシー
ケルシー

いや……エネルギーの層が切断系のアーツで裂かれるだけだけだ。

ケルシー
ケルシー

彼女はこちらを狙ってはいない。動けばアーツ攻撃の範囲に入ってしまうだけだ。

アーミヤ
アーミヤ

あ、はい!

ケルシー
ケルシー

アーツの範囲が伸びている。退け!

チェン
チェン

――来い!

???
???

斬龍剣が一瞬で鞘から?!

???
???

ちっ……!

チェン
チェン

腕で防いだのか?

???
???

その通りです!チェン警司、剣術が昔より進歩されましたね!

ケルシー
ケルシー

……火で鍛えたオリジニウム、赤霄か?まさかまだ製造していたとは。

アーミヤ
アーミヤ

先生、あの剣ってアーツに対抗するために作られたのものなのでしょうか?

アーミヤ
アーミヤ

……最初にチェンさんが見せてくれなかったのも、まだ私達のことを敵として見られていたからでしょうか……?

チェン
チェン

どけ!

???
???

ウェイさま、警司のお考えは固まってるようです。第二波は防ぎきれません。

???
???

ご命令とあらば、五体満足は保証出来かねますが、命をかけても必ずチェンさまを龍門に留まらせてみせましょう。

ウェイ
ウェイ

――ならん、おまえは下がっていろ。その剣に触れてはならん!

???
???

救援を呼びます

チェン
チェン

させるとでも?赤霄――

ウェイ
ウェイ

やめろ!!

チェン
チェン

はぁ……!

ウェイ
ウェイ

ファイギ、君は雲裂の剣を使うつもりなのか?

チェン
チェン

……

ウェイ
ウェイ

君に剣を教えたのが誰なのか忘れたのかね?

ウェイ
ウェイ

君に剣術を辞めさせようと考えたことはなかったが、今はそうはいかん。

ウェイ
ウェイ

私に手を出させてくれるなよ、チェン・ファイギ。

チェン
チェン

好きにするがいい、魏さま。赤霄は私の手にある。

チェン
チェン

赤霄を私にくれたとき、まさか自分が殺されるとでも思っていたのか?

チェン
チェン

こいつでお前を殺しはしない、ウェイ・イェンウー。

ウェイ
ウェイ

……

チェン
チェン

お前は私を守ってやっていると思っている、そうだろう?

チェン
チェン

母さんは鬱で死に、タルラは連れ去られた。わたしは職でオリパシーに感染した。

チェン
チェン

お前がしてきたことは全てわたしを守るため、そうなんだろ?それはお前の心の罪悪感から来ているのか?それとも計略に対する自信か?

ウェイ
ウェイ

私はもう悲劇を起こしたくは無いのだ。

チェン
チェン

黙れ!

チェン
チェン

ウェイ・イェンウー、この剣には殺すべき人も…守るべき人もいる。

チェン
チェン

彼女が本当にこの龍門を滅ぼしたいというのならば……

ウェイ
ウェイ

だめだ……だめだ。行ってはならない。

チェン
チェン

ここでお前と黒子に勝とうだなんて思ってはいない。

チェン
チェン

……だがなウェイ・イェンウー、出口ってのはドアだけじゃない。

???
???

窓から出ようと?!

ウェイ
ウェイ

チェン・ファイギ、馬鹿な真似はよせ。地上から数百メートルは離れているのだぞ

チェン
チェン

私が何も窓からの脱出が初めてじゃないのなんて知っているだろう。

ウェイ
ウェイ

――

ウェイ
ウェイ

チェン・ファイギ、君は彼女に会ってはならん!

文月
文月

あぁ…チェン…。

ウェイ
ウェイ

私たちがしでかした過ちを繰り返すな!私達のこれまでの道を辿ってはいけない!

ウェイ
ウェイ

仮にこの街のために命を落とすやつがいるとすれば、きっとそいつは――

チェン
チェン

そうだな

チェン
チェン

……伯父さん……

チェン
チェン

いや、ウェイ・イェンウー……これまでのツケは今日で帳消しだ。

ガラスが割れる音が響き渡り、チェンは仰向けに建物から落ちていった。

龍門の主が声を荒げて叫び、黒衣をまとった私兵たちが矢のごとく割れた窓にとびかかった。

しかし、チェンの心にほころびは生じなかった。

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