
敵のサルカズ人は儀式の影響を受けていなかった……でもこちらのサルカズ人は儀式の影響を受ける、どういうことでしょう?

遊撃隊の所属にも見えなかった。一体何が……

ローズマリー…

ありがとう。

巡回に行ってきます。

お礼なら大丈夫です。アーミヤから「仕事をしてくれた人に礼を言うのはやめましょう」って言われてますので。

……

鎮静剤は少ししたら効いてきます。鉱石病の痛みもだいぶ和らぐでしょう。

この薬は、ほかの皆さんに持っていってあげてください。ストックは多くないので、手当てほどにしかなりませんが、少なくとも急性の重症の進行を抑えることはできます。

お前たちは本当に助けに来たのか?

申し訳ありませんが、今はあまり助けられそうにもありません

他に出来ることは、レユニオンのリーダーを潰すまで待ってもらうしか。

それに…レユニオンが全面的な暴動を起こすと、私達でも対処は出来ないと思います。

あたしがさっきあんたらに言ったことだけど。あ……あたし昔はこうじゃなかったんだ。

前まではお前らのことをすごく憎んでた。でも今は、あたしもお前らと一緒だ。

あんたらと同じ、ほかの全てから憎まれてる。もう少しであいつまでも死なせしまうところだった。あいつが居なければ……あたしらはとっくに死んでた。

でもあいつが毎回あたしらに物資を探させて、毎回死人が出るもんだから、あいつがレユニオンとつるんであたしらをオモチャにしてるんじゃないかって疑っていたんだ。

あたしらはみんな感染者なんだろう?レユニオンは……そんなにあたし達ウルサス人を憎んでいるのか?

人の内側にある醜い感情は煽り立てずとも、その勢いのまま任せれば、街の端から端まで容易に染め上げていく。

それよりも先生……さっきは突然すぎます!

アーミヤ、あのような芝居にはもう慣れたんじゃなかったのか?

もうあれで勘弁してください……!

交渉に時間を無駄にしてしまえば、次の行動に支障が出る。

じゃあなんだ……先生、彼女が嘘ついてたら、俺を本当に殺す気だったのか?

そ……そんなことは言ってなかっただろ!

もしもの話だ、傷を負った感染者はみんなあんたみたいに素直じゃない、俺だって一時期ムキになっていた。

うっ……

彼女は嘘をつかない。

君はロドスのオペレーターだ。まず君を信用する。

それに、あれは彼女への心理療法でもあった。結果的に君と彼女の行いが君の無実を証明できた。

それにしては…。

先生の表情は暗すぎる。本当にしでかすんじゃないかってビビったぞ……それにあれは演技にしては上手すぎる。

殺さないから安心してくれ。だがその場の全員に私はそうすると思い込ませるように演じなくてはならなかった。

ケルシー先生、ここまでやったんですから……もうGuardさんを怖がらせないでくださいね。

ああ

Guardさん、安心してください、本当にそんなことが起こるのでしたら、私が先生を止めますから。

さっきのですけど、トラウマとかにはなっていませんか?もしそうなのでしたら治療させていただきますけど?

あー、大丈夫だ、この程度でアーミヤに治してもらっていたら、俺の男としてのメンツが立たないからな。

そんなことより……マジで気が気じゃないのは出入口に立ってるあいつだ。

……

今はまだいいんだが、あいつが俺に言ったことは、大体理解した……でもあいつがでかい剣で敵を次々に斬りかかった…

あの時の任務は一生忘れることは出来ない。

あ……私知っています。

Guardさん……あの任務で彼女は現地武装集団の実験兵器の殺戮から四人の市民を救助したことは知っていますか?

彼女が斬殺したのは武装集団がサルゴン奴隷商人から買い取った廃棄された軍用実験術師だったんです。あの術師たちはみんな脳下垂体が切除されていました

自身の神経系ではなく、身体に埋め込まれた源石器官が彼らをコントロールしていたんです。つまり彼らは事実上すでに死んでいました。

だから彼らの源石器官を完全に破壊できるのはローズマリーさんだけだったんです。彼女は間違っていませんでした。

……そうなのか?

Guardさん、私が思うに、あなたのローズマリーへの印象と、あちらのご婦人の最初あなたへの誤解には似てるところがあります。

噂と印象は、他人が自分を知る最初の窓口なのです。あなたが何をしようと、彼らの反応はレユニオンへの排斥だけです、これはいくらかの改善は効きます。

けど、一か所だけに留まって認知してもらうことは……信用どころか、少しの理解も得られないでしょう。

真実を知ろうとする人がいない限り、真実をまき散らしても、それは真実とは見なされないのです。

つまりですね、そこにローズマリーさんがいるじゃないですか、直接聞きにいけば……いいんじゃないですか?

ちょ、直接?

何が聞きたいのですか?

(ローズマリーって怖いな……!)

(えっと……違いますよ……彼女も何を言えばいいかわからないだけかと……)

……

ローズマリー、お前は何をしにここに来たんだ?

任務のため

……あと、言いましたよね、復讐、家族たちの復讐だって。

質問は終わりだ。

……俺は何を聞いているんだかな。

昔はアザゼルにイラッと来て、今はローズマリーにイヤなことを聞いて。ハッ、もう何がなんだか。

だがお前はパトリオットを信用している。パトリオットと遊撃隊、レユニオンのことについて話してくれ。

先生とドクターなら、現状を理解してくれるだろう。

ここにまだ生き残りがいるのは、チェルノボーグでウルサス人が大勢まだ生き残っているのは……

全部パトリオットと遊撃隊、とそれに賛同する人たちのおかげだ。

遊撃隊がそこに立ってる限り、そこら一体は小競り合いすら起こらないし、他人に暴行を加えようと思う連中なんてもってのほかだ。

彼らは物資や資源の分配だけじゃなく、そこにいる人たちの生活の改善もしてくれる。

パトリオットは本来俺を都市から出してくれるはずだったが、俺は残ることを選んだ……この目で確かめるために。

彼がサルカズのリーダーと話してるところを聞いたとき、表でやってることが偽善だろうと、彼はその偽善を守ってくれてるんだ。

それに……それにScoutさんが俺を守るためにあそこで死んだとき、パトリオットはScoutさんを尊重してくれた。俺は……

・Scout……チェルノボーグで犠牲になったオペレーターか。

Scout!

・ローズマリー……?

Scoutがどうしたのですか?

私……憶えていなかった?彼は死んでしまった?彼は……

この虚しさは……彼?Scout……また忘れちゃった?

さっき……ターミナルに……どうしてまた忘れちゃったの?
1月3日
白髪の老人が私に黒い物体をくれた。Machinistはそれを見たっきり椅子から起き上がろうとはしなかった。
その老人は頷いたあとに去っていった、同行していたケルシー先生も何にも言わずに、私の頭をなでてくれた。
これはScoutのものだった。
Scout。
Scoutもいなくなった。
影すら残さず逃げられるScoutが?他が亡くなっても生き残ってきたあの人が?喋りだしたら止まらないあの人が?
Scout…
私は昔の記録を漁った。Scoutが私に蝶々結びを作ってくれた。でもあれは子供が使うもの、私はもう大きくなったんだよ。
Scoutはどうして死んだの?
どうして?どうして?どうして?
どうして?

……

うぅっ……

ローズマリーさん……

手を。目を閉じて。ローズマリーさん……

……

リートオペレーターも……俺たち小隊隊員と……変わらないんだな

Dr.○○、俺が話そう。

あなたを救助する任務のとき、Scoutは偵察部隊の隊長だったんだ。彼は今のあなたを見たことがない、そうだ……でも彼は昔見たことがあるって言うんだ、Aceみたいに。

彼は俺を助けるため、一人でサルカズ傭兵とやり合った。

彼ならば逃げたければきっと逃げられただろう。

俺は彼からあなたに言伝を頼まれているんだ……そうだ、思い出した。

彼はあなたと一緒に戦った時間を忘れたことは一度もないと言っていた。

・……?

あ……

あなたにもう前線で指揮してほしくないとさえ思っていた。でもこんな状況だ、あなたは見て見ぬふりはできないんだろうな。

ボス達はみんな俺のせいで犠牲になってしまった。俺は二人のエリートオペレーターの命を背負っているんだ

だがScoutさんは言ってくれたんだ、彼らは誰かのために死んだのではない、信念のために死んだんだってな。

彼の小隊も。俺の小隊も、な。

だから俺はレユニオンをいきさつをこの目で見るって決めたんだ。ものごとがどんな風に進むのか、どこでロドスを助けられるのか。

――俺は遊撃隊からも信念を見つけた。挫けず、真っすぐな、勇敢に戦おうとする信念を。

もちろん、あいつらのやり方は少し野蛮だけどな。でもあいつらは暴力に愉悦なんかを見出したりしない、あいつらにはそういう固いものがあると俺は信じている。

レユニオンが全ての感染者の解放するというなら、遊撃隊は……あいつらの仕事は全ての奴役者の消滅だ。

感染者を隷属する、感染者で一般人を脅かす全てをこの世から連中を消しさる、全て。

これも全部パトリオットがいるから成し遂げられるんだ、パトリオットが彼らを指導し、彼らを導き、彼らを守っている。

パトリオットがチェルノボーグを離れて任務を遂行する前に俺は彼と……少し話をしたことがある。

まったく、あの老戦士、一体いくつなんだかな?彼は俺なんかに……酒を酌み交わしてくれたんだ。俺はそんな待遇……初めてだった。

彼の年齢は確かに君の予想をはるかに超えている。

あの伝説を聞いたことはありますか?彼がウルサスを離れた伝説です。

耳にしたことはある。彼は精鋭部隊を連れてウルサスを離れた。あの大反乱は根も葉もない噂に真実味を加えてな。

実は、あの時彼についていったウルサスの精鋭たちは、今はもう数人しか残っていないんだ。

ウルサス正規軍との戦闘で、多くの戦士たちを失ったんだろう。

ほとんどの遊撃隊隊員は、遊撃隊が西北凍原で戦ってたときに志願した新しい連中なんだ

彼らの戦いぶりが、彼らの人望が、彼らの理想が、人を集めたんだろうな。

遊撃隊は一時期レユニオンと息が合ってた。だが感染者たちがウルサス人をあまりにも憎んでいたのかどうかは知らないが……事態は変わってしまった。

生きている人たちは天災に襲われ痛めつけられたこの大地みたいに、死ぬやつや頭がおかしくなったやつ、発狂しだしたやつ、未だに苦しんでいる人が蔓延るこんな事態になってしまった。

タキアナ……君の名前は確かタキアナだったな。

……そうよ。

膝はまだ痛むか?

何の話?

三日前、逃げたときに転んだだろ。

とっくに治ってるわよ……!あたしはウルサス人よ!あんたらみたいな……種族と違う。あたしたちウルサス人はあんたらよりよっぽど頑丈よ。

それは良かった……随分な怪我だったからな。

ハッ、俺はここで医療オペレーターの仕事もしないといけない、全然やり方がわからなくてもやらないといけないんだ。

俺はまだやることが山ほど残ってるんだ、ケルシー先生。

そうみたいだな。

えっ……

Medicは来てないのか?

どうしてそんなことを?

なんだっていいじゃないか。ローズマリーの様子を見れば察しはつく。俺たちは人員の消耗が激しいし、ロドスは戦闘しにここに来たんだろう。

その様子では、このセントラルシティがもうじき龍門に激突することを知らないようだな。

……

なんだって?

あー、龍門にレユニオンの増援を送るってことか?レユニオンの移動手段はこのセントラルシティだけ、ってのは聞いたことあるが。

セントラルシティが発信しているのはウルサスの都市識別番号だ。

え?

……何だと!?

ちょっと待て!!

……そんな、バカな!一体どうして!?

ようやくロドスがセントラルシティに乗り込んだ理由がわかったようだな。

何を話してるんだ?

(ロドスの“しゃべるな”のハンドサインを出す)

何でもない……

……随分と長い時間話してたけど、パトリオットとその部下たちがそんなに正義に溢れているのなら、どうしてレユニオンは未だにウルサスの土地で跋扈しているのよ?

レユニオンは“本来そうするべきではない”からだ。

……え?

Guardさん……

その、あなたはレユニオン及び現地の感染者と長い時間交流してきました。もしこちらに戻ってきて頂けるのであれば、私たちのこれからの行動にとても大きな助けになるのですが。

……

ええ、でもまだ離れるわけにはいかない、ですよね?

……そうだ。アーミヤ、そのなんだ、君なら、わかってくれるだろう?

すまない、俺は君から十以上も歳が離れているのに、自分がガキみたいに幼稚に思える。

自分を責めなくていい。むしろ、ロドスは君の行動を賞賛する。

……だが君の立場は危険すぎる。

Guard、もしレユニオンが崩壊、消滅してしまえば君の感染者への救助、彼らの生活基盤の支えるといった行動はより難しくなる。

それでもなお続けるのか?

ああ、続けるさ。

なぜならレユニオンにはパトリオットがいるからな。

彼さえいれば、レユニオンは崩壊しない。

遊撃隊員の多くが駐屯地から離れて、集まりだした、おそらく、彼がこの都市に戻る理由ができたんだろう。彼はすでにここに戻っているかもしれない。

彼がいれば、レユニオンは変えられるって信じている。

だがレユニオンは変化に対応する力に欠けている。根拠としてタルラはレユニオンのために何もかもを捧げるような首領ではないのがそれだ。

チェルノボーグのセントラルシティ、現地に捨てられたチェルノボーグの廃墟、ウルサスの感染者たち……

それにいつ動くのかわからないウルサス第三正規軍、局面は非常にまずい方向に向かうことになる。

だがレユニオンもそれ相応の戦力をもっている。

はっきり言ってロドスでは……今回の事件は解決できない。ロドスには厳しいと思う!

結局のところロドスはただの企業にすぎない、ケルシー先生だって分かっていることだろう。

俺はボス達を、Scoutさんたちを信じる……

パトリオットも。

……理解はできます。

……アーミヤ、怒らないのか?

私たちにできないこと、したことがないことで……どうしてあなたに怒りを向ける必要があるのですか?

この二週間いろいろ起きました。私たちもいろいろ変わりました。

でもだからと言って感染者が関わることで敵対することはありません。たぶん、チェルノボーグで起こったことと、Guardさんと私が見てきたことは、同じなんだと思います。

そうだな。俺もやっぱり……人が傷つけられるのは見ていられない。誰が誰を傷つけようが、耐えられない。

パトリオットがレユニオンを引き締めるのであれば、俺はきっと、彼の戦士たちと一緒に彼を信じるレユニオンのやつらと一緒に彼の背中についていく。

ロドスはお前に芽生えた新しい思想がロドスの利益を損なうと決めつけるつもりはないから安心してくれ。

むしろ、私たちはオペレーターたちには常に新しい価値観や知識に触れるように推奨している。そうすることで自分たちの目標が見つかったり、小さなことでいちいち悩まなくて済む。

私たちの考えも常に変化しているからだ。

……ありがとう、ケルシー先生、アーミヤ。

あ、そうだ。

今後、ドクターとも連絡していいですよ。

・どんどん連絡してくれ!
・……
・喜んでお受けしよう。

俺のロドスでの責任なんだが……アーミヤと先生……より重要にはなるのか?

……言ったじゃないですか。Guardさん、自分で決断することが大切だと。

それに、個人的にですけど、もしロドスがあなたと同じ立場だったら、同じことをしていたと思います。

人には人それぞれの価値観がある。お前は自分の価値観に従えばいい。

ここのウルサス人から自分のいるべき居場所を見つけ出してくれ。お前が目指している景色も守るべき人たちをしっかり守ってやるといい。

……

]……な、なによ、ジーっと見つめてきて……

……いや、何でもない。考えごとをしていた。

そうだ。

給料なんだが、お前の状況だと有給申請は通らないんだ、すまない。

それと、Guard、教えてくれ――

パトリオットがタルラを裏切れば、何が起こる?

……それはありえない。パトリオットはタルラをとても信頼している。

では、逆はどうなんだ?

……ケルシー先生!?

タルラがパトリオットを裏切るのだとしたら?

あるいは、我々はすでにレユニオン指揮官の「フロストノヴァ」と出会っており、彼女を死なせてしまっていたのなら?

先生!?先生は……何を言ってるんだ!?

か……彼女は……彼女はパトリオットの娘なんだぞ……!

私たちとパトリオットの間で起こった事は……

最悪の結果と言えます。それも陰謀家たちがもっとも見たいと思うような。

もしタルラが手放しに――パトリオットの意見を顧みず感染者が一般市民を傷つける行為を……それはもはや手放しや放任どころじゃなくなります。

パトリオットは感染者たちの反感の標的になってしまいます。真相を知らない人からや、恨み妬みを抱えた人を問わずに……

すでに良く思っていない人たちからも。

……

お……俺はもう行くよ。

パトリオットに知らせないといけない!

でも……ロドスは……

彼はロドスと……敵対するのか?
(ロドス前衛オペレーター?が走り去っていく足音)

・まさか事態がこんな風になるとは。

レユニオンがここまで来たのも自然とこうなったのではありません。

ミーシャにしても、フロストノヴァさんにしても……

レユニオンも私たちも、龍門も、これ以上他人に傷を与えるべきじゃないんです。

ドクター、まだやるべきことはたくさんあります……後処理のことを考えただけで疲れてしまうくらいには。

でもその前に……その前に、必ずチェンさんを見つけないと。

それと、もっとも重要なのが……

レユニオンのリーダー、彼女こそがレユニオンを今のように仕向けた元凶です。

よし、Mantra-2隊、応答願う。

隊長がすでにレユニオンの通信手段を洗い出しましたよ、すごく原始的ですね、その痕跡すら残っています。その連絡要員なら、この区域にいる彼女がちゃちゃっと片付けてくれますよ。

もちろん遊撃隊のじゃありませんよ、あれらは追跡目標ですからね。

彼らもやっちゃいます?

ダメだ。私たちの任務はここの殲滅でもないし、やつらの共倒れでもない。

それに、やつらの内部混乱は避けたい。やつらにはいずれ自分達を騙した連中に対抗してもらわなければいけないからな。

今からですか?

彼女が聞いたんですよ、ぼくはどちらでも良いんですけど。

いずれ自然と起こる……今じゃなくていい。

やつらの精神はすでに腐りきっているが、虚構の脊柱は健在だ。

取り除くか、へし折って、瓦解させて皮袋にする、本来なら私たちがそうしていただろう。

だがタルラは私たちの予想より一歩先を行っている、衝突を露見させ、矛盾を激化させた。

彼女は少々狂っているようにも思っていたが、今はむしろじわりじわりと人々を蝕む悪毒に見えてきた。
(通信が切れる音)

この都市の感染者と市民はともに反抗しなければならない。

タルラの放任は彼らに交流、共存と理解する機会を与えた。

彼女のクイーンの駒はまだ盤上に残っている、でなければこう放任するわけがない。

確信できる、彼女はレユニオンを滅ぼす、もっとも不名誉な方法で。

……彼女の毒を中和しなければならない。

だが全ては、ボジョカスティの決定によるだろうが……

・セントラルシティの侵入に成功したようだな。

これからの行動は潜入とは呼べなくなる、Dr.○○

前にも言ったように、セントラルシティ潜入は、計画遂行の2割ほどでしかない。

セントラルシティの司令塔とエネルギー区域への到達、この都市の移動を停止するためには、中央区は避けて通れない場所だ。

ただ、これから我々の進路を止めに来る敵は、一般のレユニオンでも、手持ち無沙汰なサルカズ傭兵軍でもない。

・レユニオンの幹部はあと数人だけだ。

Wは先に除外しておく。

レユニオンの暴君タルラより、戦術指揮者としてのお前が危惧すべきはもう一人の幹部だ。

北原の感染者遊撃隊は、ウルサス北西の第四軍の難攻不落な根城に駐在している……創設以来、そこの指導者は変わらずただ一人。

普通の反逆者なら虐殺されるが、この遊撃隊にはその虐殺する側を殺すほどの能力をもっている。

現地の権力者は彼らを殲滅するために一、二師団招集することはできるが、そんな行為は自分の無能っぷりをほか将校や議会に見せびらかすことにしかならない。

戦火はすでに上がっている、この遊撃隊のみ雪原に隠れ潜んでいる感染者たちから「盾」と呼ばれている。

感染者の盾。

スノーデビル隊も彼らの一部隊だった。彼らは感染者だけで組織されていない。

追放者、迷信者、迫害を受けた者、放浪者、フェリーン、ドゥリン、サルカズ、この遊撃隊は何も感染者のために戦っているわけではない。

・――すごく聞き覚えがあるな。

ほう?

・ケルシーと同じことを考えているようだ。
・……
・言ってみただけだ。

ロドスとまったく同じ、そうだろう?

ときおり、お前の直感はロドスに予想外のメリットをくれるな、Dr.○○○

・怒っていないのか?
・……
・反論が来るのかと思った。

なぜ私の目をじっと見つめている?

そんなおもしろいものではないだろう。

実際お前と似ている、あの遊撃隊の戦士たちも同じく一人の指揮官を信じ、一人の指揮官を守っている。

そうだ、ドクター、この遊撃隊は別の意味での「ロドス」だ。

だが彼らのリーダーも同じような人なのだろうか?違う。

Dr.○○○、心の準備をしておけ。でなければと後悔することになる。

たとえ我々の戦略目標の一つである、中央区の防衛を瓦解して艦橋と都市エネルギー区域までの道の打開が必要不可決だとしても……

君の安全のためにも、君とアーミヤには彼を遭わせたくない。

だが避けられない以上、もう一度言う。

……覚悟をしろ、Dr.○○○。彼に遭う前に彼の部隊と面を合わせる覚悟をしておけ。

私が他人に忠告を出すのは稀だぞ、ドクター。

彼の名は「愛国者(パトリオット)」、ボジョカスティだ。

はぁ……はぁ……

まだ……違う……区域にいるのか?

いや……だめだ!絶対……絶対パトリオットに知らせないと……

タルラが……タルラが連中を仕向けたのは……遊撃隊を対処するため……

だったら、だったら……遊撃隊は……最後に……

身内の手に殺される……!

パトリオットは……パトリオットはレユニオン唯一の支えなんだ……!

そいつの所に行かすわけにはいかないな。

お前は……

サルカズ人。

どこの所属だ?中央区に何の用だ?

隠さず話してくれよ。

あぁ、もしかして。お前はあの老いぼれのウェンディゴのものか。

お前――

鴨が葱を背負って来たってところか。

何を知っているんだ、脆弱な異種族の感染者さんは?