(パワーアーマーが辺りに攻撃をしながら近寄ってくる)

――

……こいつは驚いた。

こっちはすでにジャミングシステムを起動している、あのクロージャが開発した最新世代のドローンでも私たちの位置を検知することはできないはずなのに、なぜこいつは……

このパワーアーマーは一体どんなセンサーなりそういった検知技術を使用してるんだ?

ヤツを故障させることはできるか?

目立つことはしたくないんだが……

仕方ない。ドクター、私に掴まれ。

出力重量比を10%増加、照準よぉい――
(Mechanistがパワーアーマーに攻撃を放つ)

命中だ。

――

……

右側の腕部装甲の破損を確認。

だが減速はせず。命中した瞬間も、停止する形跡は確認できず。

パワーアーマーを装着してる人は何者なんだ?痛みを感じていないのか?
(Mechanistがパワーアーマーに攻撃を放つ)

――
(Mechanistがパワーアーマーに攻撃を放つ)

――

左側上腕部の破損を確認。

右側の脹脛もだ。

ドクター、相手はまったく損傷に対して反応を見せないぞ。

一撃でヤツの動力源を麻痺させてやらねば、ヤツを止めることはできないな――

しかしこれは一体どういうことだ?

訓練された兵士であっても、あれほどの忍耐力を鍛えられるはずがない。

その通りだ。

一般的な生物が、おおよそ己の基礎的な神経反応を理知的に抑えることは不可能だ。
(何者かがパワーアーマーに攻撃をし、パワーアーマーを破壊する)

――
パワーアーマーの中心を打ち砕く一本の腕。夥しい機械の破片が火花と共に、まるで別形態の生命体の血液が如き噴出する。
そしてその腕はすぐさまに収められていった。
彼女のパワーをもってして引きちぎられた機械の残骸は、彼女の五指を覆う純白な甲殻と一緒に砂粒と化し、サラサラと地面に落ちるも、薄っすらとしたカルシウムの結晶に凝固した。
その傍らで地面に横たわるパワーアーマー。そのエネルギーの灯火はすでに消え去っており、躯体のど真ん中にはキレイな真円の穴がぽっかりと開いていた。

……素手でパワーアーマーのコアをぶち抜いただと?

なんて威力だ……だが、ありゃ私の自衛用の火砲よりも断然動きは静かだな。

ドクター、どうやら爆弾魔にされて、あのなんとか源石製品管理局にしょっ引かれなくて済むようになったぞ。

・こっちもこれ以上ロドスに前科を増やすのはゴメンだ。
・クルビアの拘留場はもうゴメンだ。

感謝するよ、サリア。

礼には及ばない、ドクター、それとMechanist殿も。

ロドスをライン生命の内部事情に巻き込んでしまったの私の責任だ――

だからお前たちの安全は私が必ず確保する、当然の義務だ。

……フェルディナントの予想通りね。

ロドスの者たちがサリアと合流した。

追いますか、マム?

さっきのパワーアーマーは見たでしょ?あれを着こんだところで、生きて帰れると思う?

……

そう怯えないでちょうだい。

もしもの話よ。

しかしいくらサリアが強くても、相手は三人だけですよ?

数ではこっちのほうが勝ってるんです、それに秘密兵器だって……

相手がどんなであれ、舐めてかかるもんじゃないわよ。

ライン生命とこうも長い間付き合ってきたっていうのに、あなたまだ分からないのかしら?ひ弱な科学者であるほど、人を殺すのに容赦しないかもしれないでしょ?

そ、それってあのメカニストのことですか、それともあの顔の見えない学者のことでしょうか?まさかアイツら、ライン生命警備課主任よりも強いと?

ロドスってのは……中々腕揃いなところね。

さっ、物は試しよ、本当に生きて帰れるかどうか試してみましょうか。ほかにも色々と面白いアイデアが思い浮んだことですし、行きましょ。


……
(無線音)

どうもこんばんは、大佐殿。

……クルーニー。

説明したまえ、基地で起こったことだ。

少々ごたついてるだけですよ……いくら我々が待遇を厚くしても、開拓者連中が満足してくれることはありません、あなたもご存じのはず。

向上心は彼らの利点であり、クルビアが発展し続けてこれた根幹でもあります。だが、たまにはそれのせいで……面倒事が起こしてしまうのも難点ですね。

面倒事ならさっさと片付けろ。

私が見たいのは君が約束してくれた成果だ、ライン生命の醜聞ではない。

クルビアには君たち以外にも科学技術を扱う企業はごまんといる、分かっているのだろうな?

……承知しております。

しかしどうかご安心を、大佐殿。

必ずやライン生命があなたのご期待に応えますとも。

隊長、もう何人も降りるって言ってるぞ。

誰も俺たちを構っちゃくれない、隊長のアイデアは無駄だ、いくら声を上げても届きやしない、何を試したって無駄骨だって言ってる。

……

それに、もうライン生命なんか放っておけとも言ってたぞ。

さっさと身代金をもらって、別の場所で仕事をもらったほうがいいんじゃないのか?

失踪しちまった連中なら……運が悪かったってことにするしかない。どうせ荒野に入っていく開拓隊は、年々俺たちんとこよりもたくさん死なせてるんだしよ。

……そこまでにしてくれ。

ほかの連中には、もう少し待ってろって知らせおけ。仲間のことなら俺が必ず連れて帰る。

どうするつもりなんだ?

外に出る。

外に出るって……危ないだろ?

もし警備課連中がスナイパーを寄越したら、出た瞬間にでも……

……願ってもないことだ。

願ってもないだと?おいサニー、あんたまさか緊張のあまり頭が錯乱しちまったのか?

相手は警備課のあのスナイパーなんだろ?ならあいつは俺の知り合いだ。あいつの射撃の腕はいい、もしどうしようもないって時になったら、俺は苦しまずに死ねるだろうさ。

サニー……

ウビカ博士、それとモーア先生――

少し俺と一緒に外に顔を出してもらいたい。

……

えらく腰が低いね、私たちにはノーを言う権利すらないはずだけど?

すまない、だがもう少しだけ辛抱してくれ。

お前らの今の境遇を見れば、外にいる連中も考えを改めてくれたり、あるいは俺たちの要求を呑んでくれるかもしれないんだ。

巡査部長、誰か出てきました!

ドローンに射撃準備を――

いや、待って。

……部長?

……

人質を巻き込むかもしれないでしょ。

えーっと……サイレンス先生、ちょっと。

はい、どうされました?

望遠鏡で見てほしいんだけれど、そのサ……開拓者の背後にいる人、あれがあなたの同僚たち?

隊長!つ、通信機に連絡が!

……貸せ。
(隊員が立ち去り、無線が繋がる)

……

やっぱりお前か。

それはこっちのセリフ。

今はもう……巡査部長だったか?お祝いを言いそびれちまったな。

まさかお前が自分からここの管轄に残るとは思いもしなかったよ……開拓区域に厄介事は尽きないというのに。

私も……まさかあなたがここまで堕ちるとは思わなかった。

昔受けた授業のこと憶えてる?あの法学の授業だけど。

あと……私が警察になった日、あなたになんて言ったか憶えてる?

……

「またバディーになれて嬉しい。これからもまた、小さい頃に遊んでたように、一緒にクルビアの秩序を守って、悪人共をお縄につかせてやりましょう」って。

ハッ……皮肉なものね。今真っ先にお縄につかせてやらなきゃならない相手が、よりによってあなただなんて。

マリー……

あなたの隊員が持ってるソレ、なに?手製の武器?

ならさっさとそんなみっともないオモチャなんか置いてちょうだい。

もうそんな体たらくになってしまったけど、まだ選択の余地はある。最後の選択よ。

傍にいるその無関係の女性二人を解放しなさい。

……いいや、それはまだできない。

チッ、自分から崖を踏み外しに行ってるようなもんよ。

クルビアじゃ、罪を犯してもブタ箱に放り込まれたくないのであれば、まだ開拓隊に入るという選択肢がある。

でもそいつがもし開拓区域で……もう一度法を犯せば、どんな結末を辿るのかしらね、教えてくれる?

……

ねえ、教えてよ、弁護士志望!

そんな風で俺を呼ばないでくれ、マリー、頼む……

私を後悔させやがって……

こっちはもう後悔しぱなっしよ……なんであの日、あなたが私の家に侵入した時、すぐにあなたをしょっ引かないで、見逃してやってしまったのかって。

あれはもう過去のことだ、あの時の俺はまだ……

……すまなかった、本当に。

でも、今回こんなことをしたのには理由があるんだ、だからどうかお前だけも聞いて……
(隊員が駆け寄ってくる)

……隊長!

どうした?

あの医者が……

……モーア先生がどうした?

……

デバイスに……エラー発生……パフォーマンス設定を……修正……

まずい、ジョイスが……

ウビカ博士、先生がどうかしたのか?

……発症したって、考えてもらえれば。

発症だと!?こ、鉱石病のか!?

お、俺が先生を支えておくから、先生が常備薬を持っていないか探してくれ!ちゅ、注射だったらどうすれば……

ッ……

おい!マジで苦しそうにしてるぞ!

そうだ……ここにライン生命が支給してくれたメディカルリングがあるじゃないか、こいつは鉱石病によく効くって言ってたよな?

いますぐ先生に付けてやらんと……

……

他人に自分の緊急医療装置を付けてあげるだなんて……

それを外して万が一発症してしまったら、キミの生存確率は大幅に低下しちゃうのにいいの?

先生はずっと俺たちをよくしてくれたからいいんだ!

俺なんかよりも、先生さえ無事でいてくれれば……

私とジョイスを誘拐したくせに。

だからといって、恩を忘れたわけじゃない。

俺たちだって自分たちのことで精一杯な一般人なんだ……すまない。

……通信はまだ繋がっていますか?

でしたら、私に開拓者たちと話をさせてください。

……

あの発症したリーベリは私の同僚で親友なんです。

何より、私は彼女の医者です。

開拓者たちから彼女の容態を聞かせてください。彼らの反応を見るに、まったく彼女に敵意がいるというわけでもなさそうなので。

……好きにして。

けど、あまり時間はないわよ。

さっき上から指示が入った、もしこれ以上開拓者が協力しないのであれば、10分後に実験基地全域の通信……及び開拓者居住区域の電力供給を切断する。

で、電力供給を切断ですか?

昼夜における荒野の温度差はバカになりません……もし夜になってしまえば、みんな凍えてしまいますよ!

それに、開拓者の中には鉱石病の末期患者だってたくさんいる……

生命維持装置が切れてしませば、彼らだって死んでしまいます!

……そんなことは分かってる。

だからこれは警告よ。

アイツらにはライン生命と警察側の覚悟ってもんを見せつけてやるのよ。

争いも訴えも、すべては法のもとでこそ成立する……犯罪の道に足を踏み外せば、もう二度と自分らの釈明に耳を傾いてくれる者はいなってしまうから。

でも……あの開拓者の隊長さんとはご友人のはずでは?

……友人?

もう友人なんかじゃないわよ、あいつが罪を犯したあの時から。

……

様子はどうだ?

血中源石密度は下がってきたけど、眼球運動は不安定のまま。

眼球運動?
(無線音)

彼女の鉱石病の病原が脳内にあるから、眼球を診るんだよ。

どんな病状の推移が起こっても、彼女の神経系統はそれに影響されてしまう。それによって深い眠りに陥ったり、あるいは癲癇を起こしてしまうことだってある。

誰だ?誰が話しているんだ?

……通信機が繋がったままだよ。

初めまして、隊長さん。

ジョイス・モーアを担当してる医師の、サイレンスです。

……サイレンス医師。

まず、あなたたちに感謝を述べさせてほしい。

ジョイスが今のように容態を安定させられたのは、あなたやほか開拓者が応急処置をしてくれたおかげだよ。

誘拐犯にお礼とはな……

だからそれのお返しとして、私たちを信じてほしい。私たちは本当にあなたたちの力になりたいんだ。

いい、よく聞いて?あと五分もすれば、通信もあなたたちが住んでる区域の電力供給も切断され――

隊長!きゅ、急に電源が切れちまったぞ!

……

向こうは時間を早めたみたいだね。

気にするな。むしろ俺たちにそれを報せてくれて感謝したいところだ。

マリーさんから話は聞いたよ、ライン生命の上層部と話がしたいんだって?

じゃあ先に、理由を聞いてもいいかな?

……

今この基地で行われてる実験を中止してもらいたい。

……実験を、中止?

ジョイス先生も、お前もいい人だ。だがあんなビッグプロジェクトを止めるには、些か力不足だろうな。

でも構わない、お前からライン生命のボスに伝えてくれないか……あの実験は危険過ぎるって。

その実験が危険だって証拠はあるの?

俺が証拠を握ってても、お前が俺を信用してくれても……行く宛てのない開拓者までお前は信用してくれるのか?

部長、準備が整いました、いつでも基地の通信を切断できます。

……サイレンス先生が話し終えるまで待ってあげて。

しかしすぐに切断しろと、主任が……

主任主任って、ここでの巡査部長は私なのよ?それとも何、主任がここの巡査部長なわけ?

そのフェルディナントとやらに伝えなさい、どう人質を救助するかは私が決める、あなたに指図される筋合いはない!

その主任はすでに局長とも話がついています、部長。これはあのお二人が策定したプランですので指示に従ってください。

……

フェルディナントって……あのフェルディナント?

まさか、今の警備課はすでにエネルギー課の管轄内に入っているとはね。

それは……

もし構造課までフェルディナントの指図に従わなければいけないのなら、即刻今ここでライン生命の研究員を辞職させてもらうよ。

……
(フィリオプシスが倒れる)

ジョイス……ジョイス!

どうした?先生は……眠ってしまったのか?

いいや、完璧に意識を失ってしまってる。

もし適切に治療をしてあげないと……暫くもしないうちに脳死状態に陥ってしまう。

……
(無線音)

サニーさん、サイレンスです。今から基地に入らせてもらうよ。

警戒してるのは分かってるけど安心して、なにも武器は持たないから。

気でも触れたの先生!?

いいや、私は冷静だよ。

安心してサニーさん、警察も警備課の人たちも……基地に入れたりはしないから。

サイレンス研究員、バカな真似はやめて頂きたい。さもなければ今の君の行為を……パルヴィス主任に報告させてもらうぞ。

構わないよ、ロドスのオペレーターとして359号基地に入らせてもらうから――

ボクもご一緒します……

――それと電気工学エンジニアである私の同僚も一緒にね。

基地に入ったら、無償で医療サービスを提供させてもらうよ。

何も私たちの友人が倒れたからとかではない、あなたたちのためでもあるんだ。

ライン生命がどんなことをしようが、そんなの私は知ったこっちゃない。

ただ、感染者を治療することがロドスにおける唯一の原則だから。





