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【明日方舟】未尽の篇章 カポネ&ガンビーノ「一匹と群れ」 翻訳

カポネ
カポネ

9時35分、予定時刻よりも5分超えちまってる。

カポネ
カポネ

念のため場所を変えるぞ。

ガンビーノ
ガンビーノ

俺も一秒たりともこんな場所にいたくはねえが、引継ぎ人が俺たちんとこに来なきゃどうするんだ?

ガンビーノ
ガンビーノ

街に入ったらすぐ俺たちんとこに来るって約束だろ?今は検問所から誰も出てきちゃいねえ、きっとどっかで詰まってるんだろうよ、もう少し待とうぜ。

カポネ
カポネ

本当にここで待つつもりなのか?こんな目立つ検問所で。

ガンビーノ
ガンビーノ

だったらどうするってんだ?いま俺たちはあのイカレ女のパシリにされてるんだぞ、分かってんのか!

ガンビーノ
ガンビーノ

俺たちをとっ捕まえて最初にかけてきた言葉を忘れたのか?

カポネ
カポネ

「考えが変わった、キミたち二人はこの屍よりも役に立ってくれるといいね」だろ。

ガンビーノ
ガンビーノ

それじゃねえ、その次だ!

ガンビーノ
ガンビーノ

「ボクの邪魔だけはするなよ。したら今度こそ殺すからね」だ!

ガンビーノ
ガンビーノ

だからよ、その引継ぎ人とはぐれて手紙を取り損ねるよりも、こうして人目のつくところに残って待ったほうがいい。

カポネ
カポネ

お前な――はぁ、まあいい。

カポネ
カポネ

ほら、人が出てきたぞ。

ガンビーノ
ガンビーノ

どれどれ、俺たちの引継ぎはどういう顔をしてたっけな……

カポネ
カポネ

探しても無駄だ。

ガンビーノ
ガンビーノ

そりゃどういう意味だ?

カポネ
カポネ

チッ。

カポネ
カポネ

最初から引継ぎ人がどういう顔でどういう格好してるか教えられてねえんだよ、あの女から。俺たちが見つけるんじゃねえ、向こうから見つけてもらうんだ。

(様々な人が検閲所から出てくる)

カポネ
カポネ

ちゃんと引継ぎの流れはちゃんと憶えてるのか?

カポネ
カポネ

おい、ガンビーノ?

ガンビーノ
ガンビーノ

……「マヨネーズ入りのマカロニは如何?」って聞かれて、こっちが「二人前」って答えてから手紙を受け取るんだろ。

カポネ
カポネ

憶えてて助かるよ。

ガンビーノ
ガンビーノ

当たり前だ!あんな反吐が出る合言葉なんざ、イヤでも憶えちまうぜ!

カポネ
カポネ

9時50分、街に入ってきた最後の連中も全員さっぱりいなくなっちまった。

カポネ
カポネ

きっとなんか遭ったんだろう、そろそろこっちから動こう。

ガンビーノ
ガンビーノ

そん時この場に俺たちがいなくなってすれ違ったらどうするんだよ?

カポネ
カポネ

んな都合のいいこと起こるわけねえだろ!これ以上ここでボーっと突っ立ってる暇はねえんだ!

ガンビーノ
ガンビーノ

じゃあもしかして向こうが検問所に引っかかってたりして?

ガンビーノ
ガンビーノ

そうじゃなくても俺たちにはなんの落ち度はねえぞ、向こうが俺たちを見つけられなかったんだからな。それだけであのイカレ女が俺たちを殺すこともねえはず……

カポネ
カポネ

どっちも変わんねえだろうが!

カポネ
カポネ

あのアマがどれだけイカレてるかはテメェだって知ってんだろ!ヤツは結果を欲しがってるだけだ、どっちがヘマしたかなんて気にもしちゃいねえ!いいからとっととテメェのケツをどかしやがれ!さもないと屁じゃなくてヘマをこくぞ!

ガンビーノ
ガンビーノ

……分かった分かった、動きゃいいんだろ。でどこでそいつを探しゃいいんだ?

カポネ
カポネ

いちいち俺に聞くな。少しは自分でオツムを動かしたらどうなんだ?

カポネ
カポネ

シラクーザ人を除いてあのアマに手紙を送るヤツはいねえ。ペンギンの連中はともかく、シラクーザと繋がってる龍門の人なんざ限られてくる。

ガンビーノ
ガンビーノ

それって俺たちがシラクーザから連れてきたあの裏切者どものことか?

ガンビーノ
ガンビーノ

俺たちを裏切っただけでなく、人まで攫いやがったって言うのか!?

カポネ
カポネ

ハッ、ようやく人の言葉が理解できたようだな。

ガンビーノ
ガンビーノ

……

カポネ
カポネ

確証はねえさ、だが必ずどっかで繋がってる。少なくとも何か知ってるはずだ。

カポネ
カポネ

行くぞ、そいつらを探す。

ガンビーノ
ガンビーノ

裏切りのクソ野郎どもが、八つ裂きに――

カポネ
カポネ

おい待て!

カポネ
カポネ

龍門に足を踏み入れてからずっと言ってるだろうが、龍門には龍門のルールがあるって!

カポネ
カポネ

俺たちがどうやって鼠王に負かされたか、どうやって俺たちを見逃してくれたか忘れるんじゃねえぞ。

ガンビーノ
ガンビーノ

分かってる、テメェに言われるまでもねえ!

カポネ
カポネ

そうだといいんだがな。

カポネ
カポネ

つまりだ、あの裏切者どものところに行く目的はゴロを吹っ掛けに行くわけじゃねえ、ただ情報収集するだけだ、分かったか?

ガンビーノ
ガンビーノ

……

カポネ
カポネ

静かにしろ、もう着いたぞ。

カポネ
カポネ

気分はどうだ?

ガンビーノ
ガンビーノ

ピンピンしてるさ。

ガンビーノ
ガンビーノ

そんでどうする?適当に誰かとっ捕まえて聞き出すか?

カポネ
カポネ

いいや。

カポネ
カポネ

もしヤツらがシラクーザからの引継ぎ人を攫ったとなれば、きっと上からの指示なんだろう。違ったとしても、下っ端どもが上からのお達しを知らされていない可能性がある。

ガンビーノ
ガンビーノ

こういう時は頭が冴えるんだな、お前。

カポネ
カポネ

……

ガンビーノ
ガンビーノ

そんでどうする?また昔みたいに俺が場を荒らしてお前が潜り込むのか?

カポネ
カポネ

いや、もう少し様子を見よう。向こうの守りが薄ければお前がリスクを冒すまでもねえ。

カポネ
カポネ

あんなクソアマの事情なんぞで人を失くしたくはないんでな。お前みたいないつも足手纏いなヤツだって例外じゃねえ。

ガンビーノ
ガンビーノ

ハッ、言っちゃくれるがな、俺がいなけりゃテメェはヘマをこいてあのクソアマに殺されてたよ。

???
マフィアA

はは、ブラックジャックだ!

???
マフィアA

ほらほら掛け金を全部寄越しやがれ――

???
マフィアB

おい、そりゃなんだ?

???
マフィアA

なんだよ、今さら文句なんぞは受付け――

???
マフィアB

テメェ、カードを隠していやがったな!

???
ガンビーノ&カポネ

……

カポネ
カポネ

(小声)真昼間から見張りの仕事をほっぽり出すたぁ組の名が泣いちまうぜ。

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)もし俺がドンだったら、その場でカードを呑み込ませてやったぜ。

カポネ
カポネ

(小声)お前は今どっち側の人間なんだ?仕事に集中しやがれってんだ。

ガンビーノ
ガンビーノ

……

カポネ
カポネ

(小声)そもそも警戒心が皆無なのはこっちとしちゃ好都合だな。

???
マフィアA

ったく、こりゃ大損したぜ。

???
マフィアA

最近は懐が寂しいんだよ、じゃなきゃ俺だってこの手は使いたくねえ。

???
マフィアB

俺が金を持ってるみたいに言うんじゃねえよ、金を騙し取ろうとしたクソッタレが!

???
マフィアA

お前んとこの振り分けは市場周辺だろ、ならせめてパシリで小銭ぐらいは稼げるはずだ。その代わり俺はどうだ?感染者がひしめき合ってるような活気もシノギもねえような場所で、パシリのお小遣いすら稼げられねえんだぞ!

ガンビーノ
ガンビーノ

パシリだぁ!?

???
マフィアA

誰だ!?

???
マフィアB

なんだ、誰かいたのか?

???
マフィアA

話し声が聞こえた、そう遠くねえ。

???
マフィアB

なんて言ったんだよ?

???
マフィアA

“パシリ”って……聞こえたような。

???
マフィアB

ククク……そりゃ空耳だろ、もしくは命知らずなクソがテメェを真似しておちょくったんだろうよ。

???
マフィアA

……そうかもな。

カポネ
カポネ

(小声)バカかテメェは!なに大声出してんだ!?

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)……いやその……

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)俺たちがあの貧乏小僧どもを引き取ったのも、いつかはガンビーノとシシリアの名を引き継がせようと思っていたのに……

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)それが……パシリをやらされてるだとぉ?

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)バカなのはどっちだ!俺たちはなんのためにあいつらを引き取ったと思ってやがるんだ!

カポネ
カポネ

(小声)生きるために決まってるんだろ、このスカタン!

カポネ
カポネ

(小声)今じゃそれがこっちには好都合だって言ってんだよ、まだ分からねえのか?

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)テメェこそ何が分かって――

(爆発音)

カポネ
カポネ

銃声!?

カポネ
カポネ

いや違う、源石爆弾だ!音からしてここから街を幾つか隔ててるらしいが――おいガンビーノ、テメェどこ行こうとしてんだ!

ガンビーノ
ガンビーノ

テメェもさっさとその重たいケツをどかしたらどうなんだ?

(ガンビーノが走り去る)

カポネ
カポネ

……

カポネ
カポネ

待てよこのクソッタレ!

(カポネが走り去る)

カポネ
カポネ

が、ガンビーノ……テメェ、少しは待つことぐらい――

カポネは十数秒はやく現場に辿りついたガンビーノと同じく、ハッと声を失った。
二人の目の前には黒いハットを被り、黒いコートを着た人がいたのだ。
その横にはそこかしこに龍門に根を張ってるマフィアの者たちが転がってる。気絶したり、痛みにうなされてる者もいるが、全員生きている。

黒づくめ
黒づくめ

マヨネーズ入りのマカロニは如何?

ガンビーノ
ガンビーノ

……

カポネ
カポネ

ダ……二人前を頼む。

黒づくめ
黒づくめ

そら、受け取れ。

カポネは数歩近づいていき、黒づくめから一通の手紙を受け取った。
封には見覚えのあるシーリングスタンプが押されている、だが彼は今この時それが何を意味してるのか思い出せずにいた。

ガンビーノ
ガンビーノ

ボンジョルノ、あんたどこのファミリーの――

???
ガンビーノ&黒づくめ

!?

黒づくめ
黒づくめ

ドン――いや……ガンビーノ……さん?

ガンビーノ
ガンビーノ

トマソ!?

ガンビーノ
ガンビーノ

この野郎ここで何をしてやがるんだ――いやそれより、誰がこの手紙をテメェに寄越した?そいつは今どこだ!

トマソ
トマソ

し――知りませんよ、元から俺の手紙なんですから。

ガンビーノ
ガンビーノ

それで俺たちを誤魔化せると思うなトマソ!テメェがどういう人間なのかは分かってんだ!

ガンビーノ
ガンビーノ

考えるまでもねえ、こんな大勢をテメェ一人で片付けられるはずがねえ、逆に半殺しにされるのが道理ってもんだ!きっと手紙をテメェに寄越したヤツが代わりにやってくれたんだろ!

ガンビーノ
ガンビーノ

手紙の送り主を教えろ、さもないと分かってんだろうな?

トマソ
トマソ

お……教えられません。

ガンビーノ
ガンビーノ

どうやら俺が留守にしてる間に色々と忘れちまったようじゃないか、トマソ。

ガンビーノ
ガンビーノ

何がなんでもテメェの口からその野郎の行方を絞り出さなきゃならなくなっちまったな、死ぬよりも惨い苦しみを味わわせてやる。

トマソ
トマソ

そんな脅しは効きませんよ!

トマソ
トマソ

死んでも教えられません、死んでも!

ガンビーノ
ガンビーノ

そうかよ、ならこれでも食らい――

カポネ
カポネ

待てガンビーノ!

ガンビーノ
ガンビーノ

黙れカポネ、グダグダとババアみたいに口うるさくするんじゃねえ!手紙を寄越した野郎を見つければ、俺はこんなクソッタレな都市から出られるかもしれねえんだ!そんで俺はあそこに戻って……

カポネ
カポネ

手紙とこのシーリングスタンプをよく見やがれ、そしたらイヤでも思い出すだろうよ。

ガンビーノ
ガンビーノ

……

ガンビーノ
ガンビーノ

!?

ガンビーノ
ガンビーノ

これは……あの女の手紙?そんなまさか……なんで彼女が龍門なんかに目を向けて……

(警笛の音)

カポネ
カポネ

クソ、近衛局だ、爆発音に気付いて来やがった!

ガンビーノ
ガンビーノ

おいトマソ、俺たちについてこ――

ガンビーノ
ガンビーノ

チッ、ずらかりやがったか。

カポネ
カポネ

そんなヤツ放っておけ、今じゃテメェの身すら持たねえんだぞ!

(警報音)

???
聞き取りづらい声

……武器を下ろし……すでに包囲……

カポネ
カポネ

……こっちだ!

ガンビーノ
ガンビーノ

そっちは袋小路だぞ!

カポネ
カポネ

いいから俺を信じろ、こっち来い!

(カポネ達が走り去る)

近衛局隊員
近衛局隊員A

こ、これはマフィア同士の闘争か?

近衛局隊員
近衛局隊員B

いや、どちらかというと一方的なもんだろうな……見ろ、全員生きてる。

近衛局隊員
近衛局隊員A

確かに、見た限りだとどいつも重傷だな。

近衛局隊員
近衛局隊員A

真犯人はまだ遠くには行っていないはずだ、追うぞ!

近衛局隊員
近衛局隊員B

分かった、でどっちに向かう?

近衛局隊員
近衛局隊員A

この先の道は両側ともにこちらの見張りが配置されてる。逃げた人が賢ければ、この路地を逃げるほか選択肢はない。

近衛局隊員
近衛局隊員B

この路地なら私でも知ってる、袋小路だ。

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)おい、これがテメェを信じた結果か?

カポネ
カポネ

(小声)聞こえていねえのか?通りは両側ともに見張りで固められてるんだぞ、なおさら逃げられねえだろうが!

近衛局隊員
近衛局隊員A

隠れても無駄だ、出てこい!

近衛局隊員
近衛局隊員B

人命沙汰を起こさなかったことに免じて、減刑処分も考慮に入れておく!

近衛局隊員
近衛局隊員A

これ以上の抵抗は諦めろ――出てこい!

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)こっちに来るぞ!

カポネ
カポネ

(小声)静かにしてろ、今考えてる……

近衛局隊員
近衛局隊員A

隠れても無駄だ!その後ろが行き止まりなのは分かっている!武器を捨てて出てこい!

ガンビーノ
ガンビーノ

(小声)おい、思いついたか!?

カポネ
カポネ

(小声)考えてる、考えてる――

近衛局隊員
近衛局隊員A

もう一度繰り返す、武器を下ろせ!減刑処置も考慮に入れて――

ガンビーノ
ガンビーノ

Vaffanculo!

(ガンビーノが近衛局隊員を殴り飛ばして走り去る)

近衛局隊員
近衛局隊員A

動くな――

(近衛局隊員達が追いかける)

近衛局隊員
近衛局隊員B

動くな!動くなと言っているんだ!

ガンビーノ
ガンビーノ

今のうちに逃げるぞ!

(ガンビーノが走り去る)

近衛局隊員
近衛局隊員B

なっ、仲間がいたのか!?クソ、虚を突かれた!はやく増援を呼べ――

(クロスボウの音)

近衛局隊員
近衛局隊員A

……あと一人仲間がいた!武器はボウガンだが、腕は下手くそだから心配はいらない!

カポネ
カポネ

腕が下手くそだとぉ!?

カポネ
カポネ

龍門じゃなけりゃ絶対テメェの脳天のぶち抜いてやってたぜ!

(カポネが走り去る)

カポネ
カポネ

ぜぇ、ぜぇ……

カポネ
カポネ

ここまで来りゃ、あいつも、追ってはこないだろ……

ガンビーノ
ガンビーノ

今の俺たちは逃げてばかりだな?あ?たかだかザコども数人風情で。

カポネ
カポネ

まだ威張れるとは心底感心したよ、このクソッタレが。

ガンビーノ
ガンビーノ

……

カポネ
カポネ

それにその気取った態度も、落ち込むほど面倒臭さが増してきやがる、ウザいったらありゃしねえぜ。

ガンビーノ
ガンビーノ

なんだよ、昔が恋しくなっちまったのか?

カポネ
カポネ

まあな。

ガンビーノ
ガンビーノ

……

ガンビーノ
ガンビーノ

俺にこの一番新しい矢傷を残した野郎の顔なら今でも憶えてるさ。

ガンビーノ
ガンビーノ

今あの野郎と同じ船に乗ってなきゃ、もっと心臓に近い箇所にまったく同じ傷をあの野郎に残してやりたかったぜ。懐古なんざその後だ。

カポネ
カポネ

……そうだな。

カポネ
カポネ

俺もあの鼻を高くしてるクソ生意気野郎に矢を一発お見舞いしてやりたいぜ、今度こそ脳天をぶち抜いてやる。

ガンビーノ
ガンビーノ

ハッ、そりゃいいね。そんなに俺をぶちのめしたいのなら、今ここでおっぱじめて構わねえぜ?

カポネ
カポネ

テメェなんぞにビビってると思ってんのか?

ガンビーノ
ガンビーノ

違うとでも?不意打ちする以外俺に勝てねえお前が?

カポネ
カポネ

(深呼吸)

カポネ
カポネ

ああそうさ、俺じゃお前には勝てねえ。

ガンビーノ
ガンビーノ

なんだよ、あっさり認めたな?

カポネ
カポネ

……俺たちが今誰のためにパシらされてるか忘れるんじゃねえぞ、これはテメェが言った言葉だ、今そっくりそのまま返してやるよ。

ガンビーノ
ガンビーノ

……

カポネ
カポネ

頭を冷やしてくれて助かるよ、ガンビーノ。

カポネ
カポネ

だがまだ安心しちゃいられねえ。所詮俺たちは本物の送り主からこの手紙を受け取ったわけじゃない、あのクソアマがこれを“ヘマ”だと思うかどうか……

ガンビーノ
ガンビーノ

んなこと知るかよ。

ガンビーノ
ガンビーノ

どうせ手を出されても、俺たち二人じゃ十秒も持たねえんだからよ。

ガンビーノ
ガンビーノ

もう選択肢は空っきしなんだ、なにを今さら心配していやがるんだ?

ラップランド
ラップランド

随分と匂いが外に漂ってたけど、何かあったの?

カポネ
カポネ

いや……なんでもない。手紙なら無事に受け取った。

ラップランド
ラップランド

無事に?

カポネ
カポネ

ああ、無事に、何事もなくだ、スィニョリーナ。

ラップランド
ラップランド

無事だったのに帰ってきたのは今頃なのかい?

カポネ
カポネ

……

ラップランド
ラップランド

手紙。

カポネ
カポネ

えっ……もう読み終えたのか?

ラップランド
ラップランド

言いたいことがあるなら直接言いなよ。

カポネ
カポネ

いやいやいや、言いたいことなんて……

ラップランド
ラップランド

顔はなにか言いたそうだけど?

カポネ
カポネ

……

ガンビーノ
ガンビーノ

手紙に……俺たちのことは書かれてるかって……

ラップランド
ラップランド

クク、クハハハハハハ!

???
ガンビーノ&カポネ

……

カポネ
カポネ

書いてたのか?

ラップランド
ラップランド

うん、書いてた。

ラップランド
ラップランド

煮るなり焼くなりボクの好きにしろってさ。

ラップランド
ラップランド

どうしたんだい、黙っちゃって?

カポネ
カポネ

本当に……それだけなのか?

ラップランド
ラップランド

フッ、まだまだ鼻は利いてるようだね。

ラップランド
ラップランド

恥知らずなキミたち二人は荒野に穴を掘ってそこに埋めてやったほうがいいって手紙でアドバイスされたよ。

ラップランド
ラップランド

……

ラップランド
ラップランド

あんまり驚かないんだね。

ガンビーノ
ガンビーノ

驚くもねえさ、俺だって今の自分はみっともねえって思ってるからな。

ラップランド
ラップランド

それで、どう落とし前をつけるんだい?

ラップランド
ラップランド

情けないがあまり、ここでボクに首を刎ねられるとか?

ラップランド
ラップランド

それとももう一度チャンスをやろうか?今度は大目に見て15秒をやろう。

カポネ
カポネ

……冗談ならよしてくれ、俺たちも自分らの実力には心当たりがあるんでな。

ラップランド
ラップランド

フッ、そうかい。

ラップランド
ラップランド

なら一つアドバイスをあげよう。

???
ガンビーノ&カポネ

……

ラップランド
ラップランド

結局のところ、キミら二人にはもう利用価値はない。

ラップランド
ラップランド

向こうの掟は知ってるでしょ?媚びたって無駄だよ、シシリア夫人は負けイヌなんか眼中にないからね、ボク含めて。

ラップランド
ラップランド

これが何を意味してるか、キミだって分かっているはずだ。“シラクーザ”が死ねと言ってるんだよ。

ラップランド
ラップランド

ボクは全然気にしちゃいないけど、それにしたってキミたち二人の負けイヌっぷりはどうしようもなく目に余るものだ。

ラップランド
ラップランド

だから、ここで互いに“ケジメ”をつけな。

ラップランド
ラップランド

そうすればキミたちも少しは“名誉”を取り戻せるだろうさ。手紙を書いた人も満足するかもしれないし、ボクも時間を無駄にしないで済む。

ラップランド
ラップランド

さあどうだい?どうなんだい!?

ガンビーノ
ガンビーノ

……オメルタ。

ラップランド
ラップランド

なんだって?

カポネ
カポネ

あんたとオメルタを交わしたい。手紙の指示に反し、ファミリーをも裏切ったが、その代わりとして生き残った片方をあんたに保護してもらいたいんだ。

ラップランド
ラップランド

オメルタだって?保護に裏切り?

ラップランド
ラップランド

キミたちは二人して何回裏切ってきたんだい?わざわざボクが改めて言う必要もないよね?

カポネ
カポネ

……いいだろう、ここでケジメをつけてやる。

ガンビーノ
ガンビーノ

正気かカポネ!?

カポネ
カポネ

過去を懐かしむ必要はないどうこうって言ったのはお前だろ?

カポネ
カポネ

あんたの言う通りにするよ。三つ数え後に同時に撃って、どっちが生き残るか勝負だ。

カポネ
カポネ

ついでに言うが、こうして話してる最中に撃たなかったのは、この前テメェを不意打ちした際の詫び入れだ。これで貸し借りなしだぞ。

ガンビーノ
ガンビーノ

いいだろう、このトラディトーレが。ここでケリをつけてやる。

カポネ
カポネ

トレ……

カポネ
カポネ

ドゥーエ……

カポネ
カポネ

ウーノ!

カポネ
カポネ

死ね!

(ガンビーノとカポネが同時に離れ、クロスボウをラップランドに向けて打つ)

ラップランド
ラップランド

ククク、クハハハハハ!

(ラップランドが矢を避ける)

ラップランド
ラップランド

いいねいいね、そうこなくっちゃ!

(ラップランドが矢を弾く)

ラップランド
ラップランド

もっとだ、もっと来いよォ!キミたちの内に滾る恨み辛みをぶつけてくるんだ!どこまで命をかけられるかボクに見せてくれよォ!

(カポネが矢を放つ)

カポネ
カポネ

今だガンビーノ!

ガンビーノ
ガンビーノ

ハアアアアアア!!

(ガンビーノがラップランドに斬りかかる)

ガンビーノ
ガンビーノ

もう一発食らいやがれ――

(ガンビーノが再びラップランドに斬りかかる)

カポネ
カポネ

左だ!

(カポネが矢を放ち、ラップランドが弾く)

カポネ
カポネ

そんなバカな……得物すら抜いていないだなんて――

ラップランド
ラップランド

動きが単純すぎるんだよ、どこを攻めようとしているのかじっくりと見る必要もないね。

ラップランド
ラップランド

しかし二人ともお似合いじゃないか。バカなほうはてんでバカだし、賢そうにしてるほうもオツムの中身はすっからかんときた。

ラップランド
ラップランド

きっと若い頃シラクーザで苦労してこなかったんだろうね、自由気ままだったんじゃないのかい?

カポネ
カポネ

ガンビーノ!アイツを黙らせろ――

(ラップランドがガンビーノを素手で殴り飛ばす)

カポネ
カポネ

バカな!素手でやり返しただと!?

ラップランド
ラップランド

不思議に思うのかい?

ラップランド
ラップランド

なら、キミたちとボクは同じシラクーザに住んでいても次元の違う暮らしをしていたようだね。

(ラップランドが矢を全て避け、カポネの喉元にクロスボウを突き立てる)

ラップランド
ラップランド

こんな感じに。

ラップランド
ラップランド

自分のクロスボウに喉元を突き立てられた感覚はどう?

カポネ
カポネ

……大したことはねえな。

ラップランド
ラップランド

ボクのアドバイスを拒んだ以上、手紙の指示通りキミたちを適当に埋めるしかなくなってしまったね。

カポネ
カポネ

そうかい、だがその前に一つ忘れてるぜ。

ラップランド
ラップランド

何かな?

カポネ
カポネ

ここは龍門だ。

ラップランド
ラップランド

それがどうしたの?

カポネ
カポネ

ゴム矢尻の矢じゃ人は死なねえってことだよ!!!

(カポネがドスを抜くもラップランドが弾いて、カポネを殴る)

ラップランド
ラップランド

キミがドスを持っているのは知ってたけど、中々抜刀が速いじゃないか。

ラップランド
ラップランド

けど残念、それでも遅すぎだね。

カポネ
カポネ

ぐふッ――

ラップランド
ラップランド

確かにゴム矢尻じゃ人は死なない。

ラップランド
ラップランド

けど大動脈をやられたらどうなるかな?ボクにとって大動脈を瞬時に探し当てることなんて朝飯前なんでね。

カポネ
カポネ

(窒息した声)

ガンビーノ
ガンビーノ

カポネェ!?

カポネ
カポネ

ぐふッ……ごふッ――

カポネ
カポネ

ゲホッ、ゲホゲホゲホッ!

ラップランド
ラップランド

おめでとう!一命を取り留めたね!

カポネ
カポネ

ゲホッゲホッ……だから何だってんだ、どの道テメェにころ……

ガンビーノ
ガンビーノ

もういい、黙ってろカポネ。

カポネ
カポネ

ここが俺たちの死に時なんだ、最期ぐらいはせめて真のシシリアンらしく……

ラップランド
ラップランド

そうかい?

束の間、ガンビーノとカポネは目を疑った。
ラップランドが美しく装飾が施された封筒とキレイに折り畳まれた手紙を大雑把に摘み上げ、火に投げ入れたのだ。
みるみると手紙に火の苗が広がっていく。

ガンビーノ
ガンビーノ

イカレたかテメェ!?その手紙は……シシリア夫人の手紙なんだぞ!?

ラップランド
ラップランド

おや、ボクはまだイカレてなかったと思ってたのかい?

ラップランド
ラップランド

たかが気取ったことを書いた薄っぺらい紙じゃないか。こんなものは燃やすに限るよ、せいせいする。

カポネ
カポネ

このアマ……イカレてやがる……

ラップランド
ラップランド

なんだい、彼女側につくのかい?

カポネ
カポネ

……んな度胸ねえよ。

ラップランド
ラップランド

そりゃそうさ。彼女に牙を剥くも傍に立つも、キミたちはそこまでキモが据わっちゃいない。

ラップランド
ラップランド

一言も言い返せないまま、彼女に故郷を追われたキミたちならね。

ラップランド
ラップランド

悔しいとは思わないのかい?シラクーザを追われたのは何もかもあの女のせいだとは思わないのかい?

ラップランド
ラップランド

ずっとそのままビクビクと怯え続けるつもりかい?手紙に殺せと書かれて、その手紙が燃やされたことにすら恐れを抱いたまま。

ガンビーノ
ガンビーノ

……

カポネ
カポネ

……

ラップランド
ラップランド

フッ、呆れた。

ラップランド
ラップランド

ほら、立って。

カポネ
カポネ

どこに……連れて行くんだ?

ラップランド
ラップランド

連れて行く?どういう意味だい?

カポネ
カポネ

俺たちを荒野に埋めるんじゃないのか?

ラップランド
ラップランド

さっきの行動はとても見れたもんじゃなかったけど、恥知らずってほどでもなかったよ。

ラップランド
ラップランド

それにもう手紙は燃やしちゃったんだ、なんで今さらあの女の指示に従わなきゃならないんだい?

ラップランド
ラップランド

ほらいいから、さっさと立って!

ラップランド
ラップランド

こんなとこで寝そべってる暇なんてないよ、まだまだ別の仕事が残ってるんだから!

ガンビーノ
ガンビーノ

別の仕事?

ラップランド
ラップランド

この都市にはほかの一匹オオカミがいるからね。

鼠王
鼠王

龍門の茶はお口に合うかな?

トマソ
???

……

鼠王
鼠王

そうか。しかしまあそれもそうじゃろうな、シラクーザ人は病をもらった時にしか茶を口にしないと聞く。

トマソ
???

仰る通りで。

鼠王
鼠王

とは言えここは龍門だ。龍門人はやはりどうしても茶を口にしないと気が済まないものでな、カデッデュ殿。

トマソ
カデッデュ

そんなことで文句なんぞは垂れませんよ、鼠王殿。私は所詮スィニョーラの言伝係なだけですから。

トマソ
カデッデュ

だがこれだけはご理解頂きたい。どこに行こうがシラクーザ人はシラクーザ人です、シラクーザ人に暖かい茶を飲む習慣はありません。

鼠王
鼠王

そうじゃろうな、だが茶葉の香りに魅入ったシラクーザ人たちもいるぞ?お主やお主らの夫人も、これ以上まだその者たちの口に無理やりナニかを注ぎ込むつもりなのか?

トマソ
カデッデュ

……

トマソ
カデッデュ

夫人ならもうすでにあの者どもに手を出す意思はありません。あなたに敬意を表し、またあの者どもが龍門で勝手な真似をした謝意として、あの者どもの処置は鼠王殿に任せると夫人からお許しが出ました。

鼠王
鼠王

ならばこちらも詫びを入れよう。今朝方、現地の者たちがお主をあの連中の者だと誤解してしまい、彼奴等の拠点へ連れて行かれたことについてじゃ。

鼠王
鼠王

命までを取らず手加減してくれたことに感謝するよ。

トマソ
カデッデュ

お気になさらず。

鼠王
鼠王

さて、ほかに用事がないのであればこれで……

トマソ
カデッデュ

いえ、実はもう一つ。

鼠王
鼠王

何かね?

トマソ
カデッデュ

あの落ちぶれ者たちなら、確かに夫人は目をやるつもりはなくなりました。だがどうしても放っておけない二人がまだいまして。

鼠王
鼠王

あの“一匹オオカミ”たちのことかな?

トマソ
カデッデュ

まさしく。

トマソ
カデッデュ

ほかの者たちの命を取らないのは夫人の最大限の譲歩でした。ただあの二匹のオオカミが群れを離れることだけは絶対に許されません、ですので……

鼠王
鼠王

彼女らのことなら儂も耳に入れておる、お主らと彼女らの因縁に手を挟むつもりならないさ。

トマソ
カデッデュ

ご理解に感謝します。

トマソ
カデッデュ

それと、彼女らが龍門にいる間はこちらも余計な手出しはしません。ただもし外で暴れ回るものなら、こちらも手を出さざるを得なくなるので、ご容赦を。

鼠王
鼠王

龍門のルールに触れないのであれば好きにするとよい。

トマソ
カデッデュ

なるべく遵守致します。が、必ずとは保証できません。

鼠王
鼠王

それは脅しかね?

トマソ
カデッデュ

決してそのようなつもりは……

鼠王
鼠王

ならばその“なるべく”という言葉をじっくりと吟味するんじゃな。

鼠王
鼠王

単刀直入に聞くが、まさか龍門にいてここのルールに触れるつもりはないじゃろうな?

トマソ
カデッデュ

もちろんそのようなことは断じてありません。正直言って、龍門ないしそのバックにいる炎国とは摩擦を起こしたくないんです、どんな些細なものであっても。

鼠王
鼠王

儂を持ち上げすぎじゃ。

トマソ
カデッデュ

しかしこちらにもやらざるを得ないこともございますので、何卒ご理解をば。

鼠王
鼠王

……

鼠王
鼠王

ならそんな事態に発展せぬように、お互いに祈っておくものじゃな。

トマソ
カデッデュ

それは……鼠王殿のご意向として受け取っても?

鼠王
鼠王

シシリア夫人に最大の敬意を表して、これが儂の意向じゃ。

トマソ
カデッデュ

なるほど、承知致しました。

トマソ
カデッデュ

なるべくそのような事態まで発展しないように、こちらも尽力致します。

鼠王
鼠王

よかろう。

トマソ
カデッデュ

では、ここで失礼させて頂きます。

トマソ
カデッデュ

ご招待して頂きありがとうございました。もし機会がございましたらシラクーザへぜひお越しくださいませ、四倍に濃縮したエスプレッソをご馳走致します。

鼠王
鼠王

感謝するよ。

鼠王
鼠王

じゃがその前に、湯飲みに残った茶を飲み干しては如何かな?

トマソ
カデッデュ

鼠王
鼠王

ホストのもてなしに対して、ゲストも誠心誠意受け取らなければならない。これも龍門のルールの一つでな。

トマソ
カデッデュ

……

黒づくめのシラクーザ人は目の前に置かれた湯飲みを掴み、一気に傾けた。

トマソ
カデッデュ

これで如何でしょう?

鼠王
鼠王

もちろんもちろん、帰りには気を付けたまえよ。

鼠王
鼠王

行ったかね?

配下
配下

ええ、都市を出るまでずっと後をつけてきましたが、今のところ変装するつもりはまったくなさそうです。

鼠王
鼠王

そうか。

鼠王
鼠王

先ほどの会話はすべて聞いておったな?

配下
配下

ええ。

鼠王
鼠王

しばらくはシラクーザマフィアに目を配っておけと下に伝えろ。

配下
配下

はっ。

鼠王
鼠王

一匹オオカミの二人に関しては、一人はエンペラーが見ておるから構わなくていい。じゃがもう一匹に関しては、彼奴が龍門を出るまでしっかりと留意しておくんじゃぞ。

配下
配下

承知しました。

配下
配下

しかし、仮に龍門から出なかった場合は如何致します?

鼠王
鼠王

……

鼠王
鼠王

…………

鼠王
鼠王

………………

鼠王
鼠王

今日は金曜日じゃったな。

配下
配下

そうですけど……どうされました?

鼠王
鼠王

確か周りは今日……何かの金曜日と言っておらんかったか?まったく、今の若者言葉にはますます理解が苦しくなってきたわい。

鼠王
鼠王

ともかく、氷城(ビンセン)ホテルは今日すべてが70%割引されてる日じゃったな?

配下
配下

それは――ちょっと聞いてみますね。

鼠王
鼠王

割引の日だったら、今晩二人席の予約を入れておいてくれ。

配下
配下

二人席……ああ、なるほど!分かりました、今すぐ予約を入れておきますね!

鼠王
鼠王

まあそんな急がんでもよい、ちょいと古い友人との食事なだけじゃよ。

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