カチャカチャ、ガチャガチャ。忙しいったらありゃしねえな、アカフラ人は。
今何をしてるかだって?ハッ、アカフラの戦士にできることつったらこれぐらいしかねえだろ。
超つえー武器と超すげー人工物、大祭司とイナム商会のバックアップもあって、俺たちはこうも簡単により多くのからくりを作ることができるようになった!
征服!そして“ゴウギョウ”!アカフラの名はやがて全大地に轟くことだろうよ!
“ゴウギョウ”、“ゴウギョウ”、いや~いつ口にしてもいい響きだぜ……発音これで合ってるよな、ヨギ?
いや、“コウギョウ(工業)”な、兄貴。それにそろそろ休んだほうがいいぜ、それと仕事を増やさないでくれ……えーっと、全自動植林伐採一体化マシン“ジャングル三号”の仕事を。
正確に言うと昨日の夜にぶっ壊れて作り直したから、四号ではあるが。
近頃の俺なら特にピンピンしてんぜ、心配はいらない。それにまさか石……ああそうだった、源石がこんなにも役に立つとはな、まったく目から鱗だぜ!一体誰がこんな新しいテクノロジーを?
大半はイナムが持ってきたもんだな。
ほほう……ガヴィルと同程度の怪力があって、上半身をグルグルと回転させながら発射することもできれば、空中でしばらく停滞することもできるのか、このマシンは……
まあ確かにすごいわな。でも大祭司が言うには、最初の頃このデカブツは“解体”されてたらしいぜ?
なあヨギ、昔からずっと考えてたんだがな。ほら見ろよ、外にはあんなにも大地が広がっていて、今の俺たちはこんなにも……“ゴンギョウ”を揃えているじゃねえか!
コウギョウな。それにその言葉の使い方は間違ってる、大祭司が言ってた。
いいんだよそんなこと、大事なのはどんどん数を増やしていってるでけえマシンどもだ!操縦もどんどん簡単になってるし、事故率もどんどん低くなってるし!
今の俺たちならもっとたくさんのことができるって思えてこねえか!?
……たとえば?
もっと野心を持ちなよ、弟よ。視野をサルゴン全土に置いてみるんだ、そしたら見えてくるはずだぜ――
おお、おおお……
――そしたら見えてくるはずだ!山三つ分ぐらいの高さの!湖二個分ぐらいのデカさがある俺たちの彫像が!
おおお――!
当然だが、族長の彫像だって……なんなら大祭司の分だってあるぜ!あっ、イナムも忘れちゃいけねえな……
そんで後は記念的な建物も欲しいな……宮殿ってのはどうだ!そうだな……木材で作るか?いや、石とか硬い岩とかで作ったほうが……なんなら源石で作るのもアリだな!それがいい!
源石を積み重ねるんだ!そんでバカでけえ宮殿をよ!
積み重ねるって、どんな感じに?あの神殿みたいにか?
いや、もっと簡単な形にしたほうがいいな、円形とか……うーん、石じゃ円形はちとムズいな。なら上だ、上に積み上げてどっから見ても三角形に見えるようにしようぜ。
おお!三角形!ピラミットみたいなもんだな!じゃああとは名前を考えねえと!
……でも、今こんなことを夢見てもどうせ無駄だろうな。俺のこの病気じゃその日が来るまでもてないってガヴィルが言ってたし……
兄貴……いや、思考を変えればそんなことはないぜ!宮殿を兄貴の墓にしちまえばいいんだ!
そうすればアカフラどころか、サルゴン全土が兄貴を忘れることはなくなるぜ!名前だってもう決めてらぁ、“ヨギヨタタワー”だ!絶対兄貴が生きてるうちに作り上げてやるからな!
ヨギ……!
(トミミが近寄ってくる)
そんな縁起の悪いことは言わないでくださいよ……
おっ、トミミ……まだここにいたのか?
てっきり昨日からずっとガヴィルと族長を追い掛け回してたんだと思ってたぜ。
せっかくこっちに戻ったんですから、そうせっせと帰っても勿体ないじゃないですか。
それもそうだな。そんで今日は何しに来たんだ?アイサツはもう済ませてあるのか?
実は……
(冷たいドゥリン人が近寄ってくる)
……
おっ、オメーがイナムの言ってたガキだな?なんだよ、今日の賄いについて文句を言いにきたのか?いやな、俺も最近量が減ったとは思ってたんだよ、肉もあんまねえしさ……
いや、別のことでだ。それとオレの名前はスティッチ・キャンパス、あんま人の身長だけを気にするもんじゃないぞ、アダクリスってのはどいつもこうなのか?
あはは、いやそんなことはないですけど……
まあいい、所詮は尻尾が太いだの細いだの程度で騒ぎ立てる連中だ……そういう文化的差異も尊重してやらないと。
えっと、あの……
そうか、ならスティッチ、何の用でここに来たんだ?今俺たちはちょうどサルゴンの偉大な“アオザシン”を模索していたんだ。
青写真な。
ああそうそう、青写真。聞いたかドゥリン人、青写真だ!俺たちの偉大な計画だよ!
あのー……見てくれだけ大それた墓が偉大な計画とは思えないんですけど……もし全員がそんな墓を持ち始めたら、ジャングルじゃ収まり切れませんよ。
墓が全部の用途ってわけじゃねえよ、記念だよき・ね・ん!
それにデカく作れば、俺以外にも族長やガヴィルも一緒に入れるだろ?そんで後世の連中が子供を抱えながら俺たちの石像の前でズゥママと“ガヴィルウィル”の美談を聞くんだ……
(やっぱこんなとこ来るんじゃなかった……)
な、なるほど……!で、でもですね……
そうだ、今は墓の話じゃなくて――
――そしたら名前を“ヨギヨタタワー”から変えないといけません!ガヴィルさんの名前も入れないと!わ、私の名前もついでに入れてくれると嬉しいかな……
……
あっ、いやいやいやそうじゃなくて……あのですね、イナムとこちらのスティッチさんが以前話し合われて、そのことをみんなにも共有してほしいためにここにやって来たんです。
とても大事なことなんです。ガヴィルさんにも手紙を送ったんですけど、間に合ってくれるかどうか……
なんだよ大事なことって?こっちはもう先が長くない自分に人生のピリオドを打とうとあれこれ模索してんだよ!これ以上に大事なことなんざあるか!
……オホン、別に地上にいる人たちのキテレツな発想に意見するつもりはないよ、でも……
前にも言ったように、もしオレたちの都市に危機的状況が起こったら、何もかもなくなっちまうぞ。
そん時になって、いくら遠大なヴィジョンを抱いたとしても全部ただのガラクタだ。
おーい、ズゥママ。
……ガヴィルか、同じ時間にロドスに戻ってきたとはな。
どうだった?あの感染者たちの病状は安定してきたか?
アタシを誰だと思ってんだ?感染者どころか、採掘場の警備員も、その付近の農民も、ついでにあのレム・ビリトンのジジイ連中も全員ひっくるめて片付けてやったぜ。
ジジイ連中って……あの協力先もか?
ああ、感染者への対応がちょっとアレだったもんでな、だから平和的に医者の観点からちょっとだけ意見してやったんだよ。“医者の観点で、ガヴィルのやり方”でな。
いやそんなことはいいんだ、それより手紙は読んだか?
まだ宿舎に戻っていないから読んではいないな……トミミからか?確か実家に戻ったと聞いたが。
ずっとイナムを通じてアカフラの連中と連絡を取っていたよ。
それでな、あいつが帰る前に、どうやらアタシらにも一緒に来てほしかったみたいだったんだ。
一緒にか……クロージャ師匠から何も仕事を振り分けられてないし、確かに帰ってみるのも悪くはなさそうだな。
しかしその程度の用事なら、私のところにわざわざ来ることもないだろ。
なんだよ、アタシらそんな他人行儀な関係だったか?
……まあいい、イナムはなんて言ってたんだ?トミミに何か問題でも起こったのか?
ああ、正確に言うとジャングル全体に問題が発生だ。
なに?
身支度しとけよ、これから大冒険が待っているぜ。
じゃ、ジャングルが地下に沈んじまうだと!?地盤沈下で!?
そうだ。
ドゥリンの都市の構造は……って言っても分かんないか。ともかく、このジャングルからそう遠くない地下にオレたちの都市があるんだ。
今ちょっとそこが厄介なことが起こってな……それで地上に助けを求めにきたんだ。
本当はあまり期待していなかったんだが、アンタらのやってることを見るに少しは役に立ってくれそうではあるな。
大問題じゃねえかよ……でも俺たちんとこの部族とはあんま関係ねえんじゃねえの?
でもこいつが言うドゥリンの都市が滅んだら、地上もその影響に巻き込んじまうって……じゃあ俺たちのヨギヨタタワーも……
もしオレたちに手を貸してくれたら、ドゥリンのテクノロジーで恩返ししてやらんでもないぞ。
アンタらのテクノロジーがどれ程のものかは知らないが……まあ見たところ、原始的にも程がある。
異種族に手を貸すってか?それは俺たちの一存じゃ決められねえな……
チッ、異種族とか……アンタら地上人だって……いやなんでもない。
でも、スティッチさんは“ジャングル三号”を改造する時すぐに問題点を見つけたぐらいにすごい人なんですよ?まあ大量の機能を削減はしちゃいましたけど……
こいつが!?
はい、だからイナムさんも色々考えた末……スティッチさんと一緒に地下に行って様子を見に行くとのことです。も、もちろん私もついて行きますよ、“ガヴィルウィル”の族長なんですから。
ですので私が留守してる間は、代わりにティアカウのみんなの面倒を見てやってくださいね。
それは別に構わねえが……んなことより、俺たちヨ……いや、“グレートアカフラゴールドオリジニウムジェイドグレートピラミット”のためにも、絶対に問題を解決してくれよな!
……グレート二回も言ってるぞ。
はい、必ず。
でも、どうやってそこに行くんだ?このジャングルを出た回数なんてたかが知れてるだろ、迷子にはならないのか?
それなら心配ご無用さ!
(エリジウムが近寄ってくる)
だってこのボクがいるからね。
え、エリジウムさん!
お前はロドスの……
ボクみたいな強かな人もたまにはバカンスで日頃から溜まった作戦時のストレスを解消しないといけないからね、その結果ドゥリン救出大作戦に巻き込まれちゃったけど……まあいいや、面白そうだし。
少なくともディランとブレイズが言ってた通り、休まることはないけどリフレッシュするにはちょうどいい場所みたいだね、ここは。
でも噂には名高いあの美味しいキノコ、ジャングル中を探し回っても見つからなかったのは残念だったけど……
まっ、あとはイナムさんに期待するしかないか、ボクの代わりに“アカフラに来たら必ずやっておきたい七つのこと”をやってくれるといいな。
エリジウムさんもスティッチさんの話を聞いて協力してくれるとのことですので、お二人の案内があれば、迷子にはなりませんよ……ってそう言っていました。
あはは、もしかしたらガヴィルやユーネクテスが来る前に、パパっとボクらだけで片付け終えちゃうかもしれないね。
……
前までせっかちなのは彼女のほうだったというのに、今じゃこっちが廊下で30分も待たされることになるとは……
それにあの新装備……ガヴィルは毎月こういった装備申請を出していたと思っていたんだが、クロージャ師匠の反応を見るにそうでもなさそうだな。
今度は“ハブられ医師”として向かうつもりはないということか、ガヴィル?
……
にしても遅すぎる!おいガヴィル、いつまで身支度しているつもりだ!?
そう急かすなって!お前らが作った装備が複雑すぎるのがいけないんだろうが!
製作するにも時間が必要なんだ、そうやって急に案件を言い渡されてもそういうなるもんだろ。文句を言うのなら、次はちゃんと各過程を踏んでからエンジニア部に頼み込むんだな。
分かった分かった――ったく面倒臭ぇな!カジミエーシュの騎士だってこんな邪魔くさい鎧なんか着ねえぞ!
ともかく、どこか分からない箇所があれば――
ああもう知らねえ!もうこれでいい、残りはもういらん!
おいそれはないだろ!せっかく作ったんだぞ!?
残ったあのゴチャゴチャした装備なら全部部屋ん中に残しておいた、アタシにゃ必要ない。この斧を手に取った時にピンときたからな。
……何がだ?
こいつがあれば十分だってことだよ。
これお前が作ったのか?
急いでな。
やっぱりか、こんなすげーモンを作れるのはお前だけだぜ、バランスから重量までドンピシャじゃないか。
でもこの飾りつけは……
姉さんが言ってた、病人だろうが装備だろうが、手にかけたものには愛を込めろとな。
Lancet-2がそんなこと言ってたのかよ、まあどうせクロージャに吹き込まれたんだろ、そうしたいのなら勝手にしな。
うし、そんじゃ出発すっか!
……ガヴィル!
なんだよ、今度はお前がギャーギャーうるさくなる番なのか?
……どうするつもりなんだ?トミミがドゥリン人からの救援を受け取ったと言うが、聞くにどうやら彼らの都市は危機的状況にあるらしいじゃないか。
天災……もしくは戦争が起こってるのかもしれないんだぞ。
手紙には「炎が天から降り注いで人々の布団を燃やし尽くした」とか、「巨大なキノコが地面から生えて日差しを遮り植物が生えなくなった」ってあるが、どれも抽象的過ぎて訳が分からん……
でもあそこで何が起こっていようが、アタシらにはそれを片付ける実力がある、違うか?それにイナムとエリジウムもついてるだろ?
どう片付けるんだ?
んなもん、お前がその答えをアタシに送ってきたようなもんだろ?この身なりを見てみろよズゥママ、正直言ってこっちは久しぶりにウズウズしてるんだぜ。
つまり、ゲンコツ制裁ってやつか。
おうよ、いつも通りにな!
……いつも通りか……
ほら、時間は人を待っちゃくれねえぞ、ズゥママ。
お前んとこの部族の連中が、ジャングルをどんな風に作り変えたか見てみたくねえか?
……フフッ、それもそうだな。
では行こうか。