
いや~助かったよ、トミミちゃん、この恩は是非ロドスに帰ったら返させてくれ。

み、見張り番は得意じゃありませんが、頑張ります!

よし、じゃあまずはひと口試してみるか!うん、やっぱスグリ酒は変な味がするね、でも……

エリジウムさん、エリジウムさん!

ど、どうしたの?あの飲兵衛たちに見つかってしまったのかい?なら彼らが敵対してるとこの酒は飲んでないよって君から言ってやってもらえないかな――

スティッチさんです!

はぁ、やっと見つけた。

ていうか、なんでコイツがここにいるんだ?

やあ、スティッチ。

何年ぶりかな?ボクの“大水溜まり”はまだ見ていないんじゃないのかい?まったく面白みのない人だね。

ここに来たからには、一緒に遊ぶかい?サーフィンエリアはもう最高ったらありゃしないよ!

君たちはお客人だから、特別にこっそりウォーターコースターの堰き止めを開いてあげるよ。本物のウォーターコースターってやつを体験させて……

いい、こっちは今急いでるんだ。

そろそろオレのところにも来てもらおうか。もうそれなりに遊んだだろ、これからは仕事の話だ。

スティッチ、キミが急いでるのは分かるが、まだまだ時間は十分にある。今はのんびり……

いいや、オレにはもう“時間”がないんだ。デザイナーチーフであるアンタは健康体で元気溌剌だろうが、感染者であるオレはもう長くは生きてられないのでな。

あっ、すまない、そういう意味で言ったわけじゃないんだ!

ボクはただ、今度こそじっくりと話し合って、あの頃の誤解を……

よく聞け、カチ。

もし許しを得たいのならゼルエルツァのみんなにでも頼め、オレの許しがなくても十分だろ。

もし自分の存在をまだアピールし足りないのなら、もっとバカでかい水鉄砲とかを作ってみるといいさ、赤だったりピンクだったり派手な色と付けるといい、止めはしない。

ただここでオレの時間を無駄にすることだけはやめろ。オレがアンタのその、フッ、“建築作品”たちにいい言葉を連ねるとは思わないことだな。

さあアンタら、さっさと行くぞ。これからオレの計画の打ち合わせをしてもらうから……

待ってくれスティッチ、まずは話を――

今アンタにやれるアドバイスはたった一つだけだ、カチ、オレの前から消えろ。

お互いいい人生をな。

スティッチ、今度機会があったら是非とも先ほどキミが言ったバカでかい水鉄砲とやらの話を聞かせてくれ、とても興味が湧いたよ。

けどその前に……何か音が聞こえてこないか?

どうせあの酔っ払いどもがバカなことをおっ始めたんだろ。

いや……

まさかドームから……?

それはあり得ない、ボクの工学構造における実力を見くびらないでくれ。

あ、あれは!
落ちていく感覚。
風が耳元をかすめていく、とてもうるさい。
ロドスにはこういった感覚をこよなく愛しているヤツがいると聞くが、まったく理解できねえ。
アタシか?アタシが高い箇所から飛び降りる理由は、そうしなきゃ片付けられねえことがあるってだけだ。
ゲンコツを使うにしろ、アーツロッドで殴るにしろ、斧でぶった斬るにしろ。
問題と直面し、悪いヤツらを見つけたら、ソイツらを片付ける。なにも難しいことはない、そうだろ?
だからこれから何を目にしようが――
斧が欠けても、アーツロッドが折れても、拳を握り締められなくなったって構わねえ。
とにかくやりゃいいんだよ。

陰謀だろうが獣だろうがキノコだろうが火の雨だろうが、そのほか気色悪ぃモンだろうが!

全部このアタシがぶちのめしてやるよ!

おいガヴィル、なんか様子がおかしい、前を見ろ!

あ?
(ガヴィル達がゼルエルツァに着地する)

ちょっと!そろそろ妾を下ろしてくださいまし!

おっと、すまんすまん。

……なんだこりゃ?滝?いや滑り台か?
(遊び回るドゥリン)

イヤッッホォォォオオォオウ!
(遊び回るエリジウム)

あれ、ガヴィルじゃないか!遅いよ!

ようこそ、ドゥリンの“大水溜まり”へ!

なんじゃこりゃああああ!?

うぅ、ごめんなさいガヴィルさん~!

ったくお前なぁ!

つまり、バケモノは存在しないし、空から降ってくる火の雨も日差しを遮るぐらいのデカいキノコもないということか?

こういうのはそうやって書くものだって、エリジウムさんが……

あとでそいつをタコ殴りにしてやるわ。

でもトミミの言ってることも間違いではないと思うわよ、ドゥリンたちは困っているんだし。

そういう風には見て取れないけど、少なくともスティッチはそう言ってたわ。

……そりゃオレなりにも困ってるからな。

結局あなた方は何を考えてここにやってきたんですの!!自己中にもほどがありますわ!

有無も言わずそんな大斧を担いでゼルエルツァにやってきて!ドゥリンを助けに来たですって?

冗談もよしてくださいまし、ドゥリンたちなら自分たちでなんとかできますわ、偉大なる地上の方々のお力を借りるほどでもありませんわよ!

何より、あなた方が地上から持ち込んだ穢れと醜悪は、この穏やかな小さな都市を汚してしまいます!

えーっと、あなたループスよね?あなたは地上から来た人じゃないの?

妾はもう地上の一切を捨て去りましたの。だから今の妾は、同じくゼルエルツァの住民ですわ。

ですのでゼルエルツァの市民として、即刻この町から立ち去ることを要求しますわ!

もし頑なに立ち去らないと言うのであれば、ほかの手段を行使することも辞さない所存ですことよ!

おいアヴドーチャ、こいつらはオレが呼んだ人たちだ。

スティッチさんが……連れて来た人たちだったのですか?

あなたが何を考えてるかは存じ上げないけど、かつて彼女らと同じ一員だった者として、今すぐ帰してあげたほうがいいですわ。地上の力を借りても却ってゼルエルツァに傷をつけるだけです。

ゼルエルツァの住民たちは一度だってホンモノの“強欲と陰謀”なるものを理解しておられませんから。

アヴドーチャ、彼女らならすでに市民の投票を経てここに……

ならもう一度投票でそれを否決にすることをオススメ致しますわ、ドゥリンたちの意思に委ねます。

もしそれでもダメで、あなた方地上の者が最も得意とする流血を伴い方法で問題を解決しようと言うのなら、妾は徹底的に抗戦してみますわ。

はぁ、ったくよく分かんねえ人だな、どうやら誤解しちまってるようだ。

アカフラの地下に住まうお隣さんが困ってるって聞いたから、ちょっくら手を貸しに来ただけだよ。これはお互いのためでもあるんだぜ。

ハッ、チェーンソーを引っ下げてお隣さんの手伝いに来ただなんて、それはもう良心の塊ですことね。その大斧で妾たちのために果物の皮でも剥いてくれるんですの?

そんなウソをついたって無駄ですわよ、善意を見せびらかす者がすぐに凶悪な一面を曝け出すところは何度も見てきましたの。利益への追及と略奪は地上人の本性ですからね。

善良なドゥリンたちを騙せても、妾のことは騙せられませんわよ。あなた方の言い分はよく分かっておりますからね。

はぁ、信じるかどうかは勝手だが、この斧はその……ただの護身用だよ。

もしステゴロでしか解決できねえって言うのなら、アタシは喜んで受けて立つぜ。

……

おい、そこの大斧を持ってる人。

お前さんマジでかっけえな!

え?あぁ……どうも。

アヴドーチャ、あんたすごいわね!

いつもメモ書きにつらつらと文字を書いてるだけだったから想像もつかなかったけど、あんたこんな一面もあったのね!

い、いや妾は……

あれどんぐらい高いんだ?降りてきた感覚はどうだったんだよ?

なんで思いつかなかったのかしら!滝の頂上から飛び降りるなんて!

この二人はお前さんの友だちかい?こんな友だちがいただなんて初耳だぞ、このこの~!

いやこの人たちは危険人物です、ここに残しておいては……

ねね、もう一回さっきのやってくれないかお願いできない?

ななアヴドーチャ、今回のピクニックでなんか面白いもんは持って帰ってきてねえか?前回の野生の果物みたいなものとかさ!

何時間ぶりってとこね!私たちの再会に、ひとまず乾杯しましょうか!
(感激したドゥリンがアヴドーチャを連れ去る)

ちょっ、ちょっと待ってくださいまし!

ねえお姉さん、あんたガヴィルって言うのね?その斧、触ってみてもいいかしら?もしかしてすっごい重いんじゃないの?

えっ、まあまあかな?

今暇してるか、ガヴィルの姉ちゃん?“大水溜まり”に超面白い秘密の遊び方があるんだ!あんたならきっと大盛り上がりにしてくれるはずだぜ!

ここアタシんとこの住所ね!もし暇だったら、明日アタシのシュワシュワ麦酒の飲んだくれパーティに参加してよ!

何が明日だよ、もう今始めちまえばいいじゃねえか!

それいいね!

そりゃいい!カチく~ん、もっとお酒ちょうだ~い!

……このドゥリンたちはどうしちまったんだ?エリジウムが移っちまったのか?

どうしたのよトミミ、そんなニヤけちゃって?

ガヴィルさんはやっぱりガヴィルさんですね、どこにいってもみんなの輪の中心です!

……はぁ。

私からしたら、バカな連中が一番バカなヤツの後をついてってるようにしか見えないけどね。

そうやってみんなを惹きつける人がいるのは確かだけど。

なるほど、こいつがそのアカフラ人たちが口を揃えて言ってた“無敵のガヴィル”ってヤツだな。

ていうかなんで滝の上から落ちてきたんだ?まさかアンタら、それを示し合わせていたんじゃ……

……それはきっと、似た者同士だからってヤツでしょうね。

おーいトミミー、囲まれちまった、ちょっと助けてくれ!

はーい――

ああもう人が多すぎる、一先ず場所を変えるぞ。

んで、お前が例のドゥリンだな。

アカフラにいた時は随分とアンタの名前を耳にしてきたよ、ガヴィル。

そんで、ゼルウェルツァの危機ってのはなんなのか教えてくれ。それがどうアカフラにも影響を及ぼすんだ?

正直に言うと……今回の一件は非常に複雑なんだ。地理学や地質学、社会形態などなどの様々な専門分野の知識が盛り込まれている。

まあまあ、話してみろよ。

何より厄介なのが、この問題には少なからず文学に関する分野も含まれていてな……

……だからトミミみたいに、オレも少しだけそれらしい言葉で形容させてもらった。

つまり私たちに言っていたこともただの誇張だったってこと?

誇張なんかじゃない!オレはただ、その、少し歴史的な観点を拡大解釈しただけだ。

まあ、地殻変動に伴い、高い確率でジャングル全域が地盤沈下で沈むことは起こる、数百万年後の話にはなるが……

こいつ殴っていいか?

お好きに。

ちょっ待て、待てってば!アンタの力を必要としてるのは本当だ、今回の一件がゼルエルツァと関わってることも!

ひとまず商売目線からこの問題を考えてみよう!アンタらも見ての通り、ドゥリンのテクノロジーは必ずアンタらのジャングルの大きな役に立つはずだ!

そしたらアンタらアカフラも、今後型落ちした旋盤装置なんかをお宝扱いする必要もなくなるぞ!

まあ、そのテクノロジーが本当に役に立てればの話だけどね。

もし今後テクノロジーに関しての疑問が生じたら、なんでも俺に聞いてくれても構わない!それだけは約束する!

(小声)まっ、アンタらが理解できればの話だけどな。

今なんか言ったか?

り、理解できなくてもなるべく分かりやすく説明してやろうって言ったんだ。

なら本題に入らせてもらうけど、一体なにを手伝ってもらいたいのかしら?

簡単な話だ、オレと一緒にここのみんなを説得させて、以前地震で倒壊してしまった都市の外と繋がってる鉄道橋を再建してもらえればいい。

そうすれば、この都市はあのクソドームを弄らないで源石測量装置をもう一回設置することができるし、オレも耳障りなどっかのジジイに煩わせられることもなくなる。

ついでに鉄道橋のルートを塞いでるスライダーも吹っ飛ばせるし、一石二鳥、いや一石三鳥だ!

じゃあなんで直接ドームを直さないで橋をかけ直すんですか?スライダーを吹っ飛ばすなんて勿体ないですよ!

あの穴を残して“大水溜まり”を作り上げることは当時ここにいたみんなの総意だったからだよ。

それとドームを修復するには非常に奥深い技術の問題が関わってくるから無理だ、アンタらに説明したって理解できないよ。

だからもう一度投票を促して、オレたちの計画を遂行させる必要があるんだ!

あんまり乗り気じゃないね、あのスライダー結構気にいってたのに、吹っ飛ばしちゃうなんて……

あなたたちドゥリンってば高い技術力を持ってるんでしょ、それなのになんでアカフラに橋の修復を手伝わせるのさ?

……まあ、この際教えてやってもいいか。

鉄道橋修復計画の出案者として、もしこの案が通ったら、必ずオレがその責任者になる。

しかしだ!鉄道橋の設計図は見たことがあるか?昔まだ学校に通っていた頃に見たことがあるんだが、あれはまったくオレのシンプルさを美とする設計理念と相反してる!

チマチマと複雑に絡まったレール、そして醜い鉄骨構造!

だからああいった橋梁鉄道の設計に関する授業は、全部すっぽがした。

……つまり、鉄道建設だけはできないと?

認めたくないが、そういうことだ。

だからオレはそれについて深い造詣を有しているアカフラのみんなに頼み込んで、この重大なプロジェクトを任せたということだ!

どうだ、完璧な計画だろ。

ドゥリンの世間ってのは寛容だなぁ、こーんなガキもすくすくと成長できるんだからよ……

おい、それどういう意味だ!

まあ安心しろ、ズゥママも来たことだし、鉄道橋修理の件なら楽勝だろ……

あれ?ズゥママは?

やはりか、私の見間違えじゃなかった。

……警戒。

……そこのチビ助、こっちに来てくれないか。

怪シイ、危険!逃ゲル!
(奇妙な機械が走り去る)

コラ、逃げるな!




