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【明日方舟】理想都市:常夏の狂宴祭 IC-6「逃げるか戦うか」行動後 翻訳

イェギー
イェギー

地上へ向かう?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

何を仰いますの!ドゥリンたちは一度も地上に上がったことがないんですのよ!

ガヴィル
ガヴィル

でもスティッチは上がってきただろ?図書館にある本だって地上の人が持ってきたものだろ?

ガヴィル
ガヴィル

っていうか上がっちゃダメって決まり事もないはずだよな?

ガヴィル
ガヴィル

お前らが言ってたトンネルも新しい避難所に避難するのも、聞いてて危なっかしいぜ。

ガヴィル
ガヴィル

だったら地上に上がって、アカフラんとこでしばらくの間避難するのが一番いいはずだ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

しかしあのエレベーターがあんな大人数を収容できるはずが……

アヴドーチャ
アヴドーチャ

……

ガヴィル
ガヴィル

どうした?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

言い返したいことは山々ですが……

アヴドーチャ
アヴドーチャ

まずは説明しておきましょう。まだゼルエルツァでは見かけていないはずですが、ドゥリンの社会において列車は極々一般的な交通手段です。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

確かに、エレベーターは真上に移動するものですからすぐにでも地上に到達できるでしょう……

アヴドーチャ
アヴドーチャ

しかしドゥリンの都市は移動もできず、建設当初から滅びのリスクと向かい合わなくてならないため、彼らにとってエレベーターよりも列車のほうが遥かに実用的なんです。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

それに一部のドゥリンの探検家からも、ドゥリンの都市は通常地上から1000mから1500m下に位置しており、この範囲外に存在する都市はないと結論付けています。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

つまり、ドゥリンの探索は横ばい形式ですわ。ある都市から一二百メートル垂直に下ったところにもう一つの都市があるという状況はあり得ません。

ガヴィル
ガヴィル

えーっと……つまりそれとエレベーターになんの関係が?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

あなたに説明しても無駄なのは分かりますけど、それでも妾なりにも責任を負わなければなりませんの。

ガヴィル
ガヴィル

んだよ、じゃあつまりドゥリンからすれば列車を作ったほうがいいって言いたいのか?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

はぁ、まあそういうことにしておきましょう。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

ではそういった状況を鑑みて、エレベーターの存在意義というのは何なのでしょう?

エリジウム
エリジウム

分かった、資源獲得でしょ?

エリジウム
エリジウム

なぜドゥリンの都市が横に発展していくのかは分からないけど、まあある種の習性かな?

エリジウム
エリジウム

でもそれって彼らの資源探索も水平に広がっていくとは限らないって意味だよね?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

あら、随分と理解が早いんですね?てっきり色んな場所を見てきたと言ってもただのウソだと思っておりましたわ。

エリジウム
エリジウム

わ~お。

エリジウム
エリジウム

ほらガヴィル、アヴドーチャさんのほうがキミよりもボクの価値を理解してくれているぞ!

ガヴィル
ガヴィル

だからなんだよ。

エリジウム
エリジウム

アヴドーチャさん、もし今度ガヴィルと争うことがあったら、必ずアヴドーチャさんに味方してあげるね。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

……結構ですわ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

ともかくあなたの言う通り、ドゥリンたちが探索を水平に展開していくのは、鉱物資源に並々ならぬ情熱を抱いているからですわ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

都市に関わる計画諸々は多くの人たちが共同して策を決する必要がありますが、穴掘りに関して各々の自由。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

ですので、ついうっかり自分たちの都市のてっぺんあるいは地下数百メートルまでの場所を掘り進めてしまうこともしばしば。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

実際、少なからず一部のドゥリンの歴史家たちはこう思っておりますわ……

アヴドーチャ
アヴドーチャ

初めて作られたエレベーターは都市の真上に鉱脈があることを発見し、直接真上に穴を掘ったほうが早いと気が付いたために設計された。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

しかし、地上に興味を持ち始めたドゥリンたちが増えていくにつれ、あのエレベーターも徐々に地上へ向かうために利用され始めたと。

ガヴィル
ガヴィル

うーん……つまり、本来は鉱石採掘のためのエレベーターだったが、たまにスティッチみたいなガキが地上へ向かうための手段としても利用されてるってことか。

スティッチ
スティッチ

ガキって言うな!オレはアンタとほぼ同い年だよ!何度言えば分かるんだ!

ガヴィル
ガヴィル

それは分かった。でもよ、結局なにが言いたいのかまったく理解できないんだが。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

はぁ……

エリジウム
エリジウム

つまり、ドゥリンのエレベーターはほとんどが工業向けに設計されていて、とても頑丈な造りになっているんだってアヴドーチャさんは言いたいんだよ。

エリジウム
エリジウム

ボクもトミミちゃんと一緒に降りる時に気付いていたよ、あの規模のエレベーターなら一気に数十人は載せられるってね。

エリジウム
エリジウム

だからガヴィルの提案も悪くはないってこと!

エリジウム
エリジウム

そうだよね、イェギーさん?

イェギー
イェギー

そうそう。

イェギー
イェギー

超便利ビッグエレベーター一号なら確かに、昔どこぞの手持ち無沙汰なヤツが真上に鉱脈があることを発見し、みなで投票した後に建設されたものだ。

イェギー
イェギー

しかしその後もっと近場に鉱脈があることを見つけてな、それでそのまま放置されてしまったというわけだ。

ガヴィル
ガヴィル

へぇ、どうりであの洞窟は誰かが掘ったものだって言われてるわけだ。もしかしてあの洞窟もお前らが掘ったものなのか?

イェギー
イェギー

それは分からんが、可能性はある。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

また、数々のシチュエーションを考慮して、ドゥリンたちはエレベーターを設計する際、この先の拡張に対応するため多くのゆとりある空間をも確保してきましたわ。

エリジウム
エリジウム

つまり、一番合理的に時間を使うのなら、今からそのエレベーターを拡張工事して、ドゥリンたちを地上へ送り届けるってことだね。

ガヴィル
ガヴィル

なんだよ、だったら最初からそう言えばいいじゃねえか。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

作られた経緯を理解しなければいつかはヘマをやらかすことになってしまうではありませんか。

ガヴィル
ガヴィル

それは分かってるけどさ。

ガヴィル
ガヴィル

でもなアヴドーチャ、アタシは医者だ。

ガヴィル
ガヴィル

それにこれに関してはお前のほうが物知りだ。

ガヴィル
ガヴィル

そんなお前をアタシは信用したい。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

いつからあなたに信用されるほど仲良くなったのかしら?

ガヴィル
ガヴィル

アタシはとっくに仲良くなったとは思ってるぜ?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

……

イェギー
イェギー

ともかく、ワシはガヴィルの提案に賛成だ。

イェギー
イェギー

残りの細かい点はお前たちで相談してやってくれ、ワシは引き続き測定に戻らせてもらうよ。

エリジウム
エリジウム

じゃあボクも手伝うよ。ボクのアーツは情報伝達に長けているからね、もし何か発覚したらすぐみんな知らせてあげるよ。

イェギー
イェギー

いいだろう。

(イェギーが立ち去る)

スティッチ
スティッチ

……

(エリジウムがアヴドーチャに近づく)

エリジウム
エリジウム

あっ、そうそう忘れてた。

エリジウム
エリジウム

アヴドーチャさん、過去にイヤなことがあったから地上に戻ることに抵抗があるのは理解できるよ。

エリジウム
エリジウム

でも今のキミだってゼルエルツァの住民だ、ドゥリンたちを突き動かしてくれる。

エリジウム
エリジウム

それにきっと、今はこんなことを言ってる場合じゃないと理解してくれる人でもあるはずだ、違うかい?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

……はぁ。

エリジウム
エリジウム

それじゃあ、みんながいい案を出してくれることに期待してるよ。

(エリジウムが立ち去る)

スティッチ
スティッチ

オレもイェギーを手伝いに行く、今ランドマークのデザイン云々を考えていても仕方がないからな。

ガヴィル
ガヴィル

えっ、お前が手伝いに行っても役に立ちそうにないだろ?

スティッチ
スティッチ

自分の都市を心配することぐらいはできるだろ?

(スティッチが立ち去る)

ガヴィル
ガヴィル

そうか、まあ勝手にしな。

ガヴィル
ガヴィル

そんでアヴドーチャ、お前はどうなんだ?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

すぅ……ハァ……

アヴドーチャ
アヴドーチャ

もしそれでゼルエルツァの人々を救えるのなら、妾はなんだってかまいませんわ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

しかしですね、ガヴィルさん。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

あなたは強い、妾が見てきたどんなウルサスの戦士たちよりも強い。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

けど、これは強いからといって片付けられる問題ではありませんの。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

この都市には数十万ものドゥリンたちが住んでいる。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

もしサルゴンのとある地域に、突如と数十万もの人々が現れれば、どれだけのパニックが起こることか……あなたは考えたことがおありですの?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

あなた方のジャングルなら、それだけの人数なら収められるという話ではありません。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

こんなことが起これば、その地を統治してる長は何を考えるとお思いですか?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

サルゴンという国も、はたして何を考えると思いますか?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

ドゥリンたちはあなたを信じて地上へ上がった、しかし彼らを待ち受けるのはより残酷な真実だった……そうだった場合、あなたは何をしてくれますの?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

本当に、これがたった一つの方法だって言えるのでしょうか?

ガヴィル
ガヴィル

……

(回想)

イナム
イナム

あなたがアカフラの首長を務めてくれたらいいんだけどねぇ……あそこをまとめ上げれるのはあなたしかいないんだから。

イナム
イナム

みーんなあなたの帰りを待っているわ。

イナム
イナム

でないといずれ、アカフラ首長の座にはサルゴン宮廷の人がつくことになるかもしれないわよ?

イナム
イナム

その時になったら、アカフラは今みたいに自由を謳歌することもできなくなっちゃう。

(回想終了)

ガヴィルは少し戸惑った。
いつの間にか、そういった選択肢が自身の目の前へとやってきたからだ。
その責任を背負いたくないわけではない。
ジャングルを出て彷徨っていた時も、ロドスに加入した時も、一度たりともアカフラと自身の部族にいる人々を忘れたことはない。
しかし――
アカフラから離れる際に下した決心も、決して忘れたことはない。
医学を学び、鉱石病に罹った人たちを救う。
この二つの選択はこれほど困難なものだったとは彼女自身でさえ思いもしなかった。なぜなら二つとも正しく、彼女自身が追い求めてきたものなのだから。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

どうやらまったく考えたこともないほど単純な人でもなさそうですわね、あなた。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

もしこの問題を解決してくれるのでしたら、妾も喜んでドゥリンたちを説得しに参りますわ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

さあ、あなたの答えをお聞きしましょうか。

ガヴィル
ガヴィル

……

だが、まさしくアヴドーチャの言う通り、もしこれがゼルエルツァを救える唯一の方法だったとすれば……
もし彼女が王の首長になれば解決できる問題なのであれば……
もしこれで自分の考えに従った結果なのであれば――
アタシは――

ガヴィル
ガヴィル

アタシは――

トミミ
トミミ

わ、私がアカフラの首長になって、その責任を背負います!

ガヴィル
ガヴィル

トミミ!?

スティッチ
スティッチ

……

スティッチ
スティッチ

ゼルエルツァは……滅びてしまうのか?

スティッチ
スティッチ

ふっ、ふふ……笑えない冗談だ。

スティッチが顔を上げてドームを見上げる。
彼はずっとドームの修繕を、あるいは新たに設計することを避けてきた。
ずっと、自分にはまだ時間があると、考えてきた。
だが今となって、そんなことはなかったと、気付かされてしまった。

スティッチ
スティッチ

師匠、どうやら俺には……もうアンタを超える機会はないのかもしれないな。

(スティッチが船に乗る)

スティッチはある小船に飛び乗り、向こう岸まで去っていった。
少しだけ冷静になりたい。

ガヴィル
ガヴィル

トミミ、なんでお前までここにいるんだよ?

ユーネクテス
ユーネクテス

イェギーから頼まれた装備と人手を連れてきたんだ、ついでにそちらの様子見しておこうと思ってな。

イナム
イナム

まっ、来て正解だったわね。

ガヴィル
ガヴィル

お前らまで……っていうか待て、おいトミミ、お前本当によく考えてからそれを言ったのか?

トミミ
トミミ

もちろんです!

トミミ
トミミ

アヴドーチャさん、アカフラはずっと首長のいない状態が続いてきました。

トミミ
トミミ

あなたの言う通り、こんなたくさんのドゥリンが地上に現れたら、きっとサルゴンの目を惹いてしまうでしょう。

トミミ
トミミ

だからその前に……わ、私がアカフラ地区を管理する首長になって、大事にしないようにしてみせます!

アヴドーチャ
アヴドーチャ

首長がいないですって?だとしたら、首長になるのは……

イナム
イナム

私はサルゴン側からアカフラに送られてきたトランスポーター……兼スパイなの。

イナム
イナム

だからもし政府が目を惹く前にアカフラに首長を置くよう手を加えておけば、この一件も揉み消すことができるわ。

イナム
イナム

これなら安心?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

……

ガヴィル
ガヴィル

でもトミミ、お前……

トミミ
トミミ

いいんです、そうすればガヴィルさんも悩まずに済みますから!

ガヴィル
ガヴィル

それはそうだが、でも……

ユーネクテス
ユーネクテス

お前が気に病むことではないぞ、ガヴィル。

ユーネクテス
ユーネクテス

トミミは自ら首長になると決めたんだ。彼女がならなかった場合でも、私がそうしていた。

トミミ
トミミ

はい!

ガヴィル
ガヴィル

ズゥママ……

ユーネクテス
ユーネクテス

それとも怖気づいたのか?自分がやってきた選択は全部誤りだったと?

ガヴィル
ガヴィル

……

ガヴィル
ガヴィル

誤りだとは思っちゃいないさ、ただなんか変な感じがして……

ガヴィル
ガヴィル

どう言葉で言い表せば……

ガヴィル
ガヴィル

そう、そうだ、この感覚はまるで……アタシの目の前にバカでかい岩が置かれた感じだ。

ガヴィル
ガヴィル

その岩を打ち砕くにはどうしても力任せじゃないといけないと思っていた。

ガヴィル
ガヴィル

でもやってみたら、案外簡単に砕けることに気が付いたんだ。

ガヴィル
ガヴィル

でも、なんでかは分からない……バカでかい岩のはずなのに。

ユーネクテス
ユーネクテス

なあガヴィル、お前のために作ってやった大斧の使い心地はどうだ?

ガヴィル
ガヴィル

ああ、正直思ってたよりもずっと手に馴染む、気に入ってるよ。

ユーネクテス
ユーネクテス

お前に装備一式を揃えてやるために、何日も徹夜したものだ。使ってる素材も現時点で一番いいヤツを選んでいる。

ガヴィル
ガヴィル

あ?なんだよそれ、早く言ってくれよ、なんか申し訳ねえだろ。

ユーネクテス
ユーネクテス

お前に感謝されたいから言ったわけではない。

ユーネクテス
ユーネクテス

ただ――

トミミ
トミミ

ガヴィルさんはガヴィルさんだから、ですよ!

ガヴィル
ガヴィル

どういう意味だそりゃ?

ユーネクテス
ユーネクテス

簡単な話だ――

ユーネクテス
ユーネクテス

お前のゲンコツはお前が想像するよりもずっと大きいということだ、ガヴィル。

ユーネクテス
ユーネクテス

なぜならこの私がいるからな。

トミミ
トミミ

私もです!

ユーネクテス
ユーネクテス

ロドスの面々も、お前に救われた人たちも、アカフラのみんなだっている。

ユーネクテス
ユーネクテス

なぜならお前がやってきたことは全部正しかったからだ、ガヴィル。

ユーネクテス
ユーネクテス

お前に打ちのめされ、結果的にお前を認めた人たちも、お前が正しいと気が付いたからそうした。

ユーネクテス
ユーネクテス

ガヴィル、お前が正しいと思ったことが誤っていたことなど一度もない。

トミミ
トミミ

私たちはずっと信じてますよ、ガヴィルさん。

ユーネクテス
ユーネクテス

私たちのゲンコツはお前のゲンコツでもある。

ユーネクテス
ユーネクテス

だからお前は、お前のゲンコツを信じてやれ。

トミミ
トミミ

ガヴィルはただ前へ進むことだけを考えていれば大丈夫です、私たちが背中を押してあげますから!

ガヴィル
ガヴィル

お前ら……

トミミ
トミミ

あっ、でもでも――

トミミ
トミミ

ズゥママさん、今度ガヴィルさんに装備を作ってあげる時は、私にも手伝わせてくださいね!

ユーネクテス
ユーネクテス

いや、そこは私一人で十分だ。

トミミ
トミミ

それだとズルいです、ズゥママさんだけストラップを付けるなんて!私もドリームキャッチャーとか、あと“ガヴィルウィル”のマークを描いてあげたいです!それからそれから……

ガヴィル
ガヴィル

いや、多すぎるから何個かに絞ってくれ。

トミミ
トミミ

うぅ、じゃあ三つだけ!私に描かせなきゃ、ガヴィルさんの尻尾は太くなっちゃいますからね!

ガヴィル
ガヴィル

アタシの尻尾に呪いをかけんじゃねえ!

(ガヴィルがトミミを弱く叩く)

トミミ
トミミ

あいった!うぅガヴィルさん、叩かないでください……

イナム
イナム

……

アヴドーチャの傍にいたイナムは、このループスが目の前で起こってる情景に理解が及んでいないことに気が付く。
しかしイナムにとって、これは当たり前の日常の一幕だ。
そんな彼女も、僅かながらに小さくため息をつく。
自分もとうとう決心したからである。

イナム
イナム

はいはい騒がないの。私にもっといいアイデアがあるわ。

ユーネクテス
ユーネクテス

イナム?

イナム
イナム

アカフラの首長には……私がなる。

ガヴィル
ガヴィル

はぁ?

イナム
イナム

政府のトランスポーターとして、あなたたちと長年つるんできたことだし、何より私自身にも首長選に参加する権利があるからね。

イナム
イナム

以前はそんな考えがなかったってだけよ。

イナム
イナム

ロドスからトミミを呼び戻すよりも、ずっとアカフラに残っていた私のほうが適任でしょ?

イナム
イナム

これなら安心してくれるかしら、アヴドーチャ?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

それはそうですけれど……しかしあなた方は、一体なにを考えて……

イナム
イナム

まっ、彼女たちは……いや、私たちはジャングルの中で生活してるバカな連中だからね。

トミミ
トミミ

イナムさん、本当にいいんですか?

イナム
イナム

いいのよ。それにこうすれば、あなただってガヴィルと離ればなれにならなくて済むでしょ?

ガヴィル
ガヴィル

……

イナム
イナム

ねえガヴィル、私たちも友だちになれるんじゃないかしら?

ガヴィル
ガヴィル

……あははは、当たり前だ!

ガヴィル
ガヴィル

そこまでするってんなら、アタシも遠慮はしねえぜ!

アヴドーチャ
アヴドーチャ

……

アヴドーチャ
アヴドーチャ

分かりましたわ。ともあればこちらも納得してしまったものですし、あなた方に従いますわ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

しかしガヴィルさん、喜ぶにはまだ早いですことよ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

都市全体の人口が地上へ向かうなど、ドゥリンの歴史においては前代未聞のできごとですわ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

必ずやドゥリンたちの意思にお伺いを立てなければなりません。もしイヤだと彼らが言うのでしたら、妾とてどうしようもありませんから悪しからず。

ガヴィル
ガヴィル

分かってるって、だからお前にそいつらを説得してもらいたいんだよ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

……ご安心を、こちらが従うと言った以上は尽力致しますわよ。

ガヴィル
ガヴィル

はは、助かるぜ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

(小声)感謝すべきなのはこちらのほうですわ、ゼルエルツァの全員に代わって。

ガヴィル
ガヴィル

ん?なんか言ったか?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

帰って準備をする必要がありますわね、と言ったんですの。

ガヴィル
ガヴィル

そっか、んじゃアタシは――

アヴドーチャ
アヴドーチャ

そこでガヴィルさん、一つスピーチ原稿の作成に手を貸して頂けませんこと?

ガヴィル
ガヴィル

それは無理だ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

ならご自分の得意とすることをしてくださいまし。もし助けが必要な場合は、改めてお伝え致しますわ。

ガヴィル
ガヴィル

おう、分かった。

ガヴィル
ガヴィル

そんじゃあズゥママ、すまねえが今すぐイナムと一緒に上に戻ってくれ、老人とガキを連れてアカフラ圏外まで避難するんだ。

ガヴィル
ガヴィル

その後は――

ユーネクテス
ユーネクテス

若い衆を連れて来てエレベーターを拡張させる、だな?

ガヴィル
ガヴィル

ああそうだ。

イナム
イナム

分かったわ。

トミミ
トミミ

私は何をすればいいですか、ガヴィルさん?

ガヴィル
ガヴィル

お前は私の傍にいろ、トミミ。

ガヴィル
ガヴィル

アヴドーチャのほうならしばらく助けは必要ないと言ってたから、イェギーたちのほうが人手を必要としていないか見に行こうぜ。

トミミ
トミミ

はい!

ガヴィル
ガヴィル

んじゃ、先に行ってるぜ。

(ガヴィルとトミミが立ち去る)

イナム
イナム

……そういえばさ、ズゥママ。

イナム
イナム

あなたとガヴィルがここまで降りてきた際のルートを戻るのは非現実的よね?

ユーネクテス
ユーネクテス

ああ、不可能だな。

イナム
イナム

ならガイドが必要になるわね、エレベーターの上の洞窟は相当複雑な造りをしていたものだから、まったく覚えられなかったわ。

イナム
イナム

私たちを下まで案内してくれたスティッチに……いや、エリジウムのほうがいいかもね。彼ならスティッチよりもあの洞窟の道をよく知っていることでしょうし。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

……必要ありませんわ。まだ時間はあるんですし、妾が案内致します。

ユーネクテス
ユーネクテス

え?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

スティッチさんが生きてあの複雑な洞窟を出られたのは、正直言って運がよかったとしか言いようがありませんわ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

エリジウムさんもイェギーさんの手伝いがありますし、彼はここに残しておきましょう。

イナム
イナム

アヴドーチャは道を知っているの?

アヴドーチャ
アヴドーチャ

ゼルエルツァであそこの道を知っているのは、おそらくはもう妾ぐらいでしょうね。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

しかし、探検家精神に富んだドゥリンの冒険家たちは、いつも冒険を終えた際には喜んで自分が見聞きした物事を本に記録して同胞たちにシェアするんです。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

だから昔、図書館の中でとある冒険を記録した本を読んだことがありましてよ。中にはどうやってエレベーター上にある洞窟から地上に辿りついたかを記録しておりましたわ。

アヴドーチャ
アヴドーチャ

しかも今となっては行方知らずになってしまったその冒険家、ご親切にそこの地図を残してくださいましたのよ。

 

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