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【明日方舟×羅小黒戦記】久しぶりだね「あっちこっち」翻訳

昼に一日中降りしきった雨は、夜になると晴れはしたものの、空気は依然と幾らばかりか湿っていた。
空を覆っている暗い雲はまるで無情な防壁のように、静かに照らしてくれる月光が降りることも、街の灯火が空へ届かせることすら許してはくれない。

シャオヘイ
シャオヘイ

ホントいやな天気、へっくし――

シャオヘイ
シャオヘイ

ちょっとだけ寝ようと思ってたのに、屋上がびしょ濡れだよ。

シャオヘイ
シャオヘイ

(くんくん)ん?この箱の中、まだ濡れてないな。

シャオヘイ
シャオヘイ

(箱に入り込む)

シャオヘイ
シャオヘイ

みゃふ……でもこの天気でひと眠りするのも悪くはないかな。

???
下の階にある広告

本日も大特価、一つお買い上げいただけたらもう一つおまけで付けちゃいます!龍門の中でも最安値、ぜひともお見逃しなく!

シャオヘイ
シャオヘイ

(左に寝返り)みゃッ――

???
下の階の住民

何度言ったら分かるのよ!ご飯を食べ終わったらはやく宿題をしなさい!もう、こんな怠け者のペッローはあなたぐらいよ!

シャオヘイ
シャオヘイ

(右へ寝返り)むぅ――

???
下の階のテレビ

近頃は湿った天気が続いており、湿った空気で電化製品が火災事故を起こしやすくなっているので、家電を定期的にチャックするなどの対策を怠らないようにしましょう。

シャオヘイ
シャオヘイ

(猛然と起き上がる)ああもううるさいな!そんな早口で喋られたら何言ってるのか分かんないだろ!

シャオヘイ
シャオヘイ

……

再び箱の中に潜り込むシャオヘイ。頭上は相変わらず陰鬱とした夜空が広がっており、耳元には様々な噪音が聞こえてくる。だがその中には、彼が求めているような内容は含まれていなかった。

シャオヘイ
シャオヘイ

シャオバイ……アグン……今どこにいるの?

???
???

シャオヘイ、屋上にいるのか?そろそろ晩飯だぞ!さっき雨が降ったばかりだからほらはやく降りてきなさい、風邪を引くぞ!

シャオヘイ
シャオヘイ

(無造作に目を拭う)

シャオヘイ
シャオヘイ

わかった!すぐ行く!

シャオヘイ
シャオヘイ

ウン兄、食器運ぶの手伝うよ、今日は何人来るの?

ウン
ウン

食器ならワイフ―がもう運んでくれたから大丈夫だ、ありがとう。

シャオヘイ
シャオヘイ

じゃあほかに手伝えることってない?

ウン
ウン

ん……?

ウン
ウン

シャオヘイ、なんか濡れてないか?

ウン
ウン

もしやまた屋上に上がったな?どうりでさっきから見つからないと思ったら……ア、キレイな毛布を持ってきてくれ!まったく髪も濡れているじゃないか。

ア

ほらよガキンチョ、しっかりキャッチしろよ、礼ならいらねえぜ。

(シャオヘイが濡れている箇所を拭く)

シャオヘイ
シャオヘイ

フンッ、お前に礼なんか言うもんか!

ウン
ウン

はいはいケンカはよしな。シャオヘイもはやく髪を拭いておきなさい、ご飯だ。

???
ワイフ―

シャオヘーイ、はやくこっち来なさーい!デカいパイクーをお椀によそってあげましたよー!いっぱい食べてくださいね、成長期なんですから。

シャオヘイ
シャオヘイ

あっ、ボクがドアを開けるね、ワイフ―姉。

(リーが近寄ってくる)

リー
リー

おー、シャオヘイじゃないか。

リー
リー

おっ、しかも今日は粉蒸排骨(フェンゼンパイクー)か?廊下までいい匂いがしてきてるな。

シャオヘイ
シャオヘイ

うん、ウン兄が朝っぱらから市場に行って買ってきてくれたんだ。

ワイフー
ワイフー

さすがはリーおじさん、鼻が利きますね。でも生憎、それは私も同じですよ。さあ白状しなさい、後ろに隠してる瓶はなんですか!

ア

そうだぜ、大人しくそいつを渡しな。そしたら容赦してやらんでもねえぜ?

リー
リー

いやね、仕事終わりにソンの酒屋を通ったら、どうしてもお礼にと黄酒を持たせてきたんだ。断るわけにもいかないから持って帰ってきたのさ。

リー
リー

言っておくが、おれが買ったわけじゃないからな。

ウン
ウン

それはソンさんに感謝しなきゃな、ちょうど今日で料理酒が切れてしまったんだ、いいタイミングに持ってきてくれたよ。シャオヘイ、そのお酒をキッチンの下のタンスに仕舞っておいてくれ。

シャオヘイ
シャオヘイ

わかった。

リー
リー

おいおい、こっちはまだ一口も飲んじゃいないんだぞ?バカ正直に仕舞ってくれるなよぉ……それにチビ助も乗っからんでいい。

ワイフー
ワイフー

あはは、いい子ですねシャオヘイ!

リー
リー

いや~図体はちっこいのにいい食いっぷりだね~。いいことだ、しっかり飯を食う子供に悪い子供はいない。

シャオヘイ
シャオヘイ

(夢中にかっ食らう)

リー
リー

そうだ、シャオヘイ……

シャオヘイ
シャオヘイ

(お椀を置く)

シャオヘイ
シャオヘイ

なにか手がかりが掴んだのかリーさん!?

リー
リー

あーいや、お前から頼まれたことはまだ目星がついちゃいないんだ……

シャオヘイ
シャオヘイ

そっか……

ウン
ウン

(小声)先生、食事してる時に言っていいことじゃないだろ!

リー
リー

いやね、実は別件でシャオヘイに頼みたいことがあるんだ、手伝ってくれるかい?

シャオヘイ
シャオヘイ

手伝いか?なんでも言ってくれ!

リー
リー

実はユエン家のお嬢さんがペットをなくしてね、色々あってウチんとこに回ってきたのさ。色々調べた結果、南坪湾(ナンペンワン)のグルメ街で目撃情報があった。

リー
リー

だが最近リーさんは色々と忙しくてな、手が回らないんだ。だから一つ手を貸してくれたらすごーく助かるんだけど、どう?

シャオヘイ
シャオヘイ

わかった、ボクに任せて。

リー
リー

そいつは助かるよ。ほれ、ペットの写真だ、持っておきな。

シャオヘイ
シャオヘイ

これ、なんの動物なの?今まで見たことがないんだけど……

リー
リー

見たことがないって?変な子だな……

リー
リー

こいつは雲獣って言うんだ。ここじゃビンボーもボンボンもみんな一匹は飼ってるぐらいメジャーなペットなのさ。

ウン
ウン

俺にも見せてくれないかシャオヘイ?全身真っ黒……これは烏雲獣だな、この毛色はかなり珍しいぞ。

シャオヘイ
シャオヘイ

烏雲獣?

ウン
ウン

大炎じゃそう呼んでいるのさ。あまりにもこいつを飼ってる人が多いから、みんな色で種類を分けているんだ。

ウン
ウン

白い種類は雪雲獣。紅いのは丹雲獣。ほかにもカラフルな種類もあるが、まあとりあえず色んな呼び名があるってことを知っていればいい。

シャオヘイ
シャオヘイ

ふーん、そうなんだ。

リー
リー

シャオヘイ、さっき見たことがないって言ってたが、もしかしてお前の故郷じゃこいつはあんまり飼われていないのか?

シャオヘイ
シャオヘイ

ううん!み、見たことはあったけど、ド忘れしちゃった。

リー
リー

へー――

シャオヘイ
シャオヘイ

あっ、リーさん、ウン兄、ごちそうさま!もう寝るね!

リー
リー

おいおい、もう寝ちまうのか?明日は南坪湾のグルメ街に連れて行くんだから、忘れないでくれよー。

シャオヘイ
シャオヘイ

わかった!

(シャオヘイが走り去る)

リー
リー

おいウン、なんだしかめっ面は?

ウン
ウン

先生……身内の仕事をお客さんに振っちゃダメだろ。

リー
リー

人手は多いほうに越したことはないだろ。

ウン
ウン

先生!

リー
リー

悪かった悪かった、まったく事務所の先生なのに躾られてばっかりだ。

リー
リー

ところで、あの子今日も屋上に上がってたのか?

ウン
ウン

……そうだが、なんで知ってるんだ?

リー
リー

家に入った途端湿った匂いがしたからだよ、屋内で雨が降るわけもあるまいし。

リー
リー

まだ付き合いは長くはないが、見て分かるよ。あの子は何か思ったことがあればすぐ屋上に引き籠もる。きっとホームシックなんだろうな。

リー
リー

それかもしくは、ここに居座ってもやることがないから面目次第もないって思っちゃってるんだろ。

ウン
ウン

だからといって仕事を振るわけにもいかないだろ、まだ子供だよ?

リー
リー

フッ、子供だけど子供じゃないさ。ウン、あの子と手合わせしたことは?

ウン
ウン

なっ、まさかそれほどの実力があるって事!?

リー
リー

ああ、大人顔負けさ。あの子と初対面した時に、警戒するあまりおれに何発か襲い掛かってきたことがあったんだが、どれも中々なもんだったねぇ。

ウン
ウン

それはまた珍しい、一体どういった場所ならあんな子が育つんだろう?

リー
リー

いい質問だね、おれも知りたいよ。

???
市内放送

現在時刻は午前2時45分です、ようこそ龍門へ。税関手続きをお受けする際は、お互いの間隔を空けて、列にお並びください。

ロックロック
ロックロック

ここが龍門?こんな深夜になっても灯りがついてるなんて、キレイな街ね。来てよかったかも。

スズラン
スズラン

ロックロックお姉さんも初めてここに来るんですか?

ロックロック
ロックロック

そうね、まさに異郷って感じ。

スズラン
スズラン

どこか違う点でもあるんですか?

ロックロック
ロックロック

うーん……とても若くて、活気に溢れてる感じがするかな。

ロックロック
ロックロック

税関を通る大勢の人たちを見てると、なんだか……数年前に起ったあの騒ぎも実はなかったんじゃないかって思えてしまうぐらいには。

スズラン
スズラン

それはきっと街も人も、自分で傷を癒せるだけの力を持ってるからだと思いますよ。

ロックロック
ロックロック

そうだね、生き生きとした都市ってのはどんな重傷を負っても、すぐに治り切ってしまうものなのかも。

ロックロック
ロックロック

でも、いくら表面の傷が癒えたとしても、内側に残った傷はどうなんだろうね?

スズラン
スズラン

それは……それもいつかはよくなりますよ、だって人はすぐに物事を忘れちゃいますから。

ロックロック
ロックロック

……どうだか、記憶ってのは消したいと思って消えるようなもんじゃない。ただその出来事が過ぎ去って、みんなもう口にしなくなったってだけだよ。

スズラン
スズラン

よく分かります。大人たちはいつも口に出さないで、ゆっくりと自分の中で消化しなきゃならないことを抱え込んでいますからね。

ロックロック
ロックロック

スズランちゃんって……色々と物分かりがいいんだね。

???
???

ロックロック姉さーん、待ってよ~!

???
???

(ねえお兄ちゃん、ここってば不思議な場所だね、こんな移動する都市なんて見たことがないよ。)

???
???

(あはは、だね。ボクもこんな動物みたいにあっちこっち動き回る都市なんか見たことないよ。)

ロックロック
ロックロック

シャオバイ!アグン!どこに行ったの?もうすぐ私たちの番だよ、自分たちの書類は用意できた?

アグン
アグン

ごめん、待たせちゃった。シャオバイがトイレに行きたいって言ってたから、色々と探し回ったよ。

ビジュー
ビジュー

ピヨ!

シャオバイ
シャオバイ

すっごい人だかりだったよ、さっきだって――

アグン
アグン

そのことはまた後でだ、とりあえず列に並ぼう。

ロックロック
ロックロック

なんかあったの?

スズラン
スズラン

もしかして危ない目に遭ったんじゃ!?

アグン
アグン

いやいや、そうじゃないよ。

ロックロック
ロックロック

アグン、君は落ち着いてる子だし、アーツもスバ抜けてる。しっかりと自分とシャオバイのことを守ってやれるから、その点は安心してるよ。

ロックロック
ロックロック

でも危ない目に遭ったらちゃんと言ってね?じゃないと心配しちゃうから。

アグン
アグン

ロックロック姉さんがボクたちをここまで連れてってくれただけでも感謝してるよ。

アグン
アグン

なんせあの時は姉さんがボクとシャオバイを助けてくれたからね。いくらボクにアーツの腕があったとしても、シャオバイをあの狂暴な“銓(セン)獣”から助けてやれなかったよ。

スズラン
スズラン

“センジュウ”?

シャオバイ
シャオバイ

お兄ちゃん、また間違えてるよ、あれは“鉗獣”だってば。

アグン
アグン

あはは、ごめんごめん。でも、もうすでに姉さんたちには色々と迷惑をかけっぱなしなんだから、これ以上心配させちゃ申し訳ないよ。

ロックロック
ロックロック

じゃあ龍門に入った後、住居の宛てはあるの?

アグン
アグン

あー……今のところはまだ。

ロックロック
ロックロック

やっぱり。じゃあしばらくはロドスの事務所に置いてもらうといいよ。

アグン
アグン

じゃあ……またご厄介になっちゃうかな。もし何か手伝えることがあったら、遠慮なく言ってね。

ロックロック
ロックロック

もう、ここまでずっと一緒に過ごしてきたのに水臭いよ。

スズラン
スズラン

そうですよ、アグンお兄さん、今回はそんな重要な任務でここに来たわけじゃないんですから。主に龍門で感染してしまった患者さんを本艦に移す作業ってだけですよ。

ロックロック
ロックロック

こう見えてスズランちゃんってば、すっごく頼りになるでしょ?これでも私よりも先にロドスへ加入したセンパイなんだよ。

アグン
アグン

あちこち行って人々の命を救うか……ロドスってのは立派な会社なんだね。

シャオバイ
シャオバイ

そうだね、お注射は怖いけど、働いてくれれてるお医者さんや看護師さんも大変だよね。

スズラン
スズラン

実はそれだけが私たちのお仕事じゃないんですよ、ほかにも……あっ、もう私たちの番ですね。大丈夫、事務所についたら分かりますよ。

ロックロック
ロックロック

そうね、じゃあシャオバイにアグン、行こっか。

(ロックロック達が立ち去った後に近衛兵達が集まりだす)

ヴィクトリアの商人
ヴィクトリアの商人

あれ、なんか急に近衛局の人が増えてないか?

ボリバルからの観光客
ボリバルからの観光客

さっき通った時に見てなかったのか?密入国しようとした手配犯がアーツで手すりに凍らされてたぞ。

ヴィクトリアの商人
ヴィクトリアの商人

なんだと!?冗談だろ!

ボリバルからの観光客
ボリバルからの観光客

冗談じゃないし、その開いた口も閉じときな、あんたの番が来たぞ。

ヴィクトリアの商人
ヴィクトリアの商人

え?あぁ……すまない。奇妙なことも起こるもんだな……

シャオバイ
シャオバイ

お兄ちゃん、ここがロックロック姉さんたちの働いてる場所なのかな?あのおじさん、胸に石が生えてる、苦しそう……

アグン
アグン

あんまりジロジロと見るもんじゃないぞ、失礼だ。

シャオバイ
シャオバイ

あっ!ごめんなさい、おじさん、悪気はないんです。

???
患者

はは、いいんだよ。好奇的な目線を向けられることにはもう慣れてるさ、お前に悪気がないのは分かっているよ。

アグン
アグン

おじさん、ついでで申し訳ないんだけど、ロックロック姉さんがどこに行ったか分かる?

???
患者

あー、この先にあるゲンちゃんの病室かな?この先を進んで左に曲がったらそうだよ。

アグン
アグン

ありがとう。

シャオバイ
シャオバイ

じゃあねおじさん、はやく治るといいね。

???
患者

治るね……あははは、いや、ありがとう。気持ちは嬉しいよ……

シャオバイ
シャオバイ

(ねえお兄ちゃん、私なんか悪いことでも言っちゃったのかな?おじさんなんだか無理して笑ってるみたいだよ?)

アグン
アグン

(首を振る)とりあえずロックロック姉さんたちを探そう。

ゲンちゃん
ユエンちゃん

お姉ちゃん、本艦に行きたくない、あたしまだ平気だもん。ここにいさせて、お願い。

ロックロック
ロックロック

事務所での医療措置じゃもうキミの今の症状は抑えられないの、本艦に行かないとよくならないんだよ。だからお願い、ね?いい子だから。

スズラン
スズラン

本艦にはあなたと同い年の患者さんもたくさんいますから、きっと向こうでも新しい友だちをたくさん作れるはずですよ、ゲンちゃん。

ゲンちゃん
ユエンちゃん

でも……リュウスーチーが戻ってきてからじゃないとイヤだよぉ!うえぇぇん……

ロックロック
ロックロック

リュウスーチーって?

ゲンちゃん
ユエンちゃん

いなくなったの。だからあたしだけ本艦に行くのはイヤ。も、もうちょっとだけ待ってたいの。

ロックロック
ロックロック

ピンさん、もしかしてその患者さんがいなくなったの!?

事務所オペレーター
事務所オペレーター

いやいや、リュウスーチーはこの子のペットだよ。去年どっかいなくなっちゃってね、ゲンちゃんずっと探してるんだ。

ゲンちゃん
ユエンちゃん

だからおねえちゃん、ここにいさせて、お願いだから。もうちょっとだけ時間ちょうだい、絶対見つかるからぁ、うぇぇぇん……

ロックロック
ロックロック

泣かないでゲンちゃん、ほら、とりあえず涙拭こ?

事務所オペレーター
事務所オペレーター

俺たちも探してはみたんだけどね、ほら龍門ってデカいからさ、簡単にはいかないんだよ。それにいつも人手が不足してるもんだから、途中で切り上げちゃって……

ロックロック
ロックロック

どうしよう……このまま無理やり連れて行くわけにもいかないし。

ゲンちゃん
ユエンちゃん

(わんわん大泣きする)

ゲンちゃん
ユエンちゃん

イヤだイヤだ!ここを離れたくない!連れて行かないでぇぇ!

スズラン
スズラン

だったら、もう一度私たちで探してみませんか?

ロックロック
ロックロック

でも人手が……まだ本艦へ患者を移す作業だって残ってるし……

ロックロック
ロックロック

それに来週には戻らなきゃならないんだよ?じゃないと患者のスケジュールが全部めちゃくちゃになっちゃう。

スズラン
スズラン

どうしましょう……なにか打開策は……

シャオバイ
シャオバイ

お兄ちゃん、私たちで手伝ってあげられないかな?

アグン
アグン

知らない街での捜索で、ボクたちが役に立つかどうか……

シャオバイ
シャオバイ

うーん……

アグン
アグン

手伝ってあげたいのか?

シャオバイ
シャオバイ

だって……ロックロック姉さんたちはこんなにも手伝ってくれたんだし、お返しをしなきゃ悪いよ。

アグン
アグン

確かに、そろそろボクたちでも恩返しをしなきゃだね。じゃあ、やれるだけやってみよう。

アグン
アグン

ロックロック姉さん、ボクとシャオバイにそのことを任せてもらってもいいかな?

ロックロック
ロックロック

でも……

アグン
アグン

やらせてよ、ロックロック姉さん。

シャオバイ
シャオバイ

お兄ちゃんならできるよ、だから心配しないで。

???
後方支援オペレーター

ロックロックさん、いますかー?診察室の撮影装置が故障しちゃったんで、診てもらってもいいですか?

ロックロック
ロックロック

分かった、今行く!

ロックロック
ロックロック

……じゃあ分かった、でも何かあったらすぐアタシに伝えるんだよ?

アグン
アグン

うん、わかった。

アグン
アグン

こんにちはゲンちゃん、ボクはアグン、こっちは妹のシャオバイ。

ゲンちゃん
ユエンちゃん

(止まらないしゃっくり)

アグン
アグン

まずは落ち着いて、ボクの話を聞いてほしいな。

シャオバイ
シャオバイ

泣かないでゲンちゃん……私たちがちゃんと見つけあげるからね!

ゲンちゃん
ユエンちゃん

……ごべんなさい……わたし、わがままで、みんな忙しいのに、いっぱい探してくれたのに、迷惑かけちゃダメだのに……

アグン
アグン

気にしなくていいんだよ、お友だちと離れ離れになるのはイヤだもんね……

アグン
アグン

うん、だからなるべくボクたちで探してあげるよ。

ゲンちゃん
ユエンちゃん

ほ、ホントに!?これあの子の写真なの、とっても可愛くて大人しい子なんだよ。きっとどこかに隠れちゃってるはずだから……

アグン
アグン

写真ありがとう、必ず見つけ出すよ。でも……あんまり期待はしないでほしいかな。

ロックロック
ロックロック

そうだよゲンちゃん、別れはいつか必ずやってくるものなの。だから勇気をもってそれを受け入れなきゃ。絶対そんなことで自分を傷つけちゃダメだよ、いい?

ゲンちゃん
ユエンちゃん

(すすり泣く)うん、最後、これで最後だから。もしこれで見つからなかったら、あたし……もう諦める。いい子にして……ロックロックおねえちゃんと一緒に本艦に行く。

アグン
アグン

分かった、じゃあ明日シャオバイと一緒に聞いて回ってみるよ。

ロックロック
ロックロック

手伝わせちゃってゴメンね、今日はもうしっかり休んでおくといいよ。じゃ、私は先に帰ってるから。

シャオヘイ
シャオヘイ

大人しくしてろ。

烏雲獣
???

みゃお!

シャオヘイ
シャオヘイ

こら、暴れるな!

烏雲獣
???

シャーッ!

シャオヘイ
シャオヘイ

(通信を受け取る)

(無線音)

烏雲獣
???

みゃあ――

シャオヘイ
シャオヘイ

リーさん?ボク、シャオヘイ。例の烏雲獣を捕まえたよ、今事務所に戻るね。

シャオヘイ
シャオヘイ

え?

シャオヘイ
シャオヘイ

そのペットならもう見つかった?

シャオヘイ
シャオヘイ

でも……うん、わかった、すぐ戻る。

シャオヘイ
シャオヘイ

おっかしいなぁ、じゃあお前はどっから来たんだ?写真に映ってるヤツとそっくりじゃん……

後ろっ首を摘み上げられた黒い雲獣はジタバタと暴れ回り、牙や爪をむき出しにしてシャオヘイから逃げ出そうと試みる。だが同時に、痩せこけたあばら骨をシャオヘイの前に晒すのであった。

シャオヘイ
シャオヘイ

お前しばらく全然メシが食えてないだろ?うーん……とりあえず連れて帰ってメシを食わせてやるか。

シャオバイ
シャオバイ

すっごい賑やかな街だね~、こっから探すの?

アグン
アグン

うん、グルメ街の付近には野良の小動物が結構集まってるかもしれないからね。料理屋が多ければ、食べ物も多いってわけだ。

シャオバイ
シャオバイ

でも動物が人間の食べ物を食べても平気なの?

アグン
アグン

平気じゃないかな、でも動物たちはそんなの構ってられないよ。腹をこしらえなきゃ死んじゃうからね。

シャオバイ
シャオバイ

……シャオヘイもこっちでお腹を空かせてなきゃいいんだけど。

アグン
アグン

大丈夫、あいつなら自分でなんとかするさ。

アグン
アグン

ほら、とりあえずそれは一旦置いといて、朝ご飯を食べよう。お前もお腹空いたはずだろ?街に入った後ロックロックさんからここのお金をくれたから、何か買っておこっか。

シャオバイ
シャオバイ

うん……

アグン
アグン

親父さん、豆乳二つ、テイクアウトで、どうも。

???
露店の大将A

はいよ、豆乳二つね。

アグン
アグン

それと親父さん、ここって野良の小動物がたくさんいるの?

???
露店の大将A

ああいるよ、毎日汚らしいのがあっちこっち走り回るもんだから、うんざりだよ。

アグン
アグン

じゃあ最近黒い雲獣は見かけなかった?

???
露店の大将A

憶えちゃいねえな、朝っぱらから忙しいもんだからそんなこと気に掛けてるヒマなんかないよ。

???
露店の大将B

その通り、しかもそいつら全身ばい菌と寄生虫まみれでばっちぃったらありゃしねえ、殺さないだけ優しいもんだよ俺たちは。

シャオバイ
シャオバイ

(アグンの裾を握る)殺すって……

???
露店の大将A

おいあんた、子供の前で言うことじゃないだろ!

アグン
アグン

いやいいんだ、気にしないで。行こっかシャオバイ、ほかを当たってみよう。

???
露店の大将C

搾りたてのフルーツジュース!今なら二割引きだよー!

アグン
アグン

大将さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、ここ最近黒い雲獣は見かけなかった?

???
露店の大将C

ないない。買わないのなら店の前に立たないでくれ、商売の邪魔だ。

アグン
アグン

あっごめん、ジュースっていくら?

???
露店の大将C

一つ120龍門ドルだよ。

アグン
アグン

うーん……ちょっと高いな。

シャオバイ
シャオバイ

いいよお兄ちゃん、ほかのとこを聞いてみよ?

???
露店の大将D

できたての饅頭だよ!どんな具も揃ってるよー!

シャオバイ
シャオバイ

こんにちは!あの、黒い雲獣は見かけませんでしたか?

???
露店の大将D

やあお嬢ちゃん、生憎見てないねぇ、ほかを当たってみたらどうだい?

シャオバイ
シャオバイ

そっか……お邪魔しました。

アグン
アグン

落ち込むことはないよ、次いってみよう。

???
露店の大将D

野良の動物を探してるのならスラム街にある救助ステーションに行ってみるといいよ、あそこはよくこの街にいる野良の動物を連れて帰ってるからね。

シャオバイ
シャオバイ

本当ですか?ありがとうございます!

???
露店の大将D

でもそこを運営してる人、最近すっかり顔を出さなくなったからなぁ……

アグン
アグン

ありがとう大将さん、じゃあ熱々の肉まんを二つ頼むよ!

???
露店の大将D

はは、七龍門ドルね、毎度アリ。

アグン
アグン

あれ、饅頭の皮しか食べてないよ?

シャオバイ
シャオバイ

お腹を空かせてる小動物たちに残してあげたいの。

アグン
アグン

あはは、そっか、じゃあ後でもう少し饅頭を買っておくよ。それはもう食べちゃいな。

シャオバイ
シャオバイ

いいよお兄ちゃん、お金はとっとこ?あとでリュウスーチーを探す時も使うかもしれないから。

アグン
アグン

わかった。

シャオバイ
シャオバイ

お金が残ってたら、シャオヘイに会った時も買ってあげられるしね!ちゃんと食べてるか心配だよ。

シャオヘイ
シャオヘイ

へっくし――おっかしいなぁ、くしゃみが出ちゃった……

烏雲獣
???

(暴れ回る)

シャオヘイ
シャオヘイ

もう、暴れないでよ。お前をとっ捕まえるために、こっちは朝飯も食べられてないんだから。

アグン
アグン

シャオヘイなら、きっとボクたちよりも運よくどっかで美味しいご飯にありつけてるはずだよ。

シャオヘイ
シャオヘイ

もうすぐお昼かなー、ウン兄もうご飯用意してくれるかも?

シャオバイ
シャオバイ

じゃあ安心だね!

シャオバイ
シャオバイ

はやくシャオヘイにも会いたいなぁ。

シャオヘイ
シャオヘイ

シャオバイもアグンも、今頃どこにいるんだろ……

アグン
アグン

きっと見つかるさ。

シャオヘイ
シャオヘイ

いつになったら会えるんだろ……

シャオバイ
シャオバイ

うん!はやく会えるといいなぁ!

シャオヘイ
シャオヘイ

考えててもダメだ!きっといつか必ず会えるはずだよね!

烏雲獣
烏雲獣

(キョロキョロ)

烏雲獣
烏雲獣

(あちこち探り入る)

シャオヘイ
シャオヘイ

何を探してるの?

烏雲獣
烏雲獣

ウミャアア!!

シャオヘイ
シャオヘイ

怖がらないで、ボクはお前を連れて帰った人だよ。これはボクの別形態なの。

シャオヘイ
シャオヘイ

もしここから出る通路を探してるんだったら、あっちにある避難階段から降りられるよ。

烏雲獣
烏雲獣

(不安げに尻尾を振る)みぃ……

シャオヘイ
シャオヘイ

おっかしいなぁ、違う世界の動物なのに、お前の言いたいことも大体分かっちゃってる。

シャオヘイ
シャオヘイ

どうして行っちゃうの?ここに残ればいいじゃん?リーさんもなんちゅうもんを拾ってきたんだって言ってたけど、別にお前を追い出すつもりはなかったよ?

シャオヘイ
シャオヘイ

(首を振る)みゃう。

シャオヘイ
シャオヘイ

外じゃメシにはありつけないし、挙句の果てには追い掛け回されるだけじゃん。どうしてそれでも外に行きたいのさ?

烏雲獣
烏雲獣

みぃ……みぃ……

シャオヘイ
シャオヘイ

お前……お前も人を探しているのか?

シャオヘイ
シャオヘイ

こっちおいで、大丈夫、どうにもしないからさ。

烏雲獣
烏雲獣

(寝そべる)

シャオヘイ
シャオヘイ

その人、ボクも一緒に探してあげるよ。

烏雲獣
烏雲獣

(顔を上げる)

シャオヘイ
シャオヘイ

……ここに来てから、ずっと誰にも言えないままでいるんだ。ボクは違う世界からきたヤツだって。

シャオヘイ
シャオヘイ

あっちにいた頃は、最高の師匠と、最高の友だちがいたんだ。

シャオヘイ
シャオヘイ

二か月前に森の中で変な生き物を探しててね。あっ、こっちにいるオリジムシってヤツ、それがなぜかあっちの世界に現れたんだ。

シャオヘイ
シャオヘイ

アグンが手分けして探そうって言ったから、ボクは一人でそのムシを追っかけてたんだけど、気が付いたら来た道が消えてたんだ。

シャオヘイ
シャオヘイ

そしたら足を滑らせて、パァッと目の前が真っ白になって、ずっと落っこちていって……

シャオヘイ
シャオヘイ

そして目を開けたら、こっちの世界に来てたんだ。

シャオヘイ
シャオヘイ

アグンもシャオバイもこっちに来てるかどうかは分からないよ?会いたいなぁ、でもこっちの世界では会いたくないかも。

烏雲獣
烏雲獣

(耳をピコピコ)みゃう?

シャオヘイ
シャオヘイ

こっちの世界は危険がいっぱいだからね、ボクとアグンならまだなんとかなるけど、シャオバイは……それに石が生えてくる恐ろしい病気もあるしさ……こっちには来てほしくないよ。

烏雲獣
烏雲獣

(シャオヘイの背中に腕を乗っけようとする)

シャオヘイ
シャオヘイ

慰めてくれてるの?

烏雲獣
烏雲獣

みぃ!

シャオヘイ
シャオヘイ

……ありがとう。

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