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【アークナイツ大陸版】イル・シラクザーノ IS-4「雷雨の夜」行動後 翻訳

彼女にとって、自分の生活っぷりはいつだって同じだった。しかし、そのため他からは
こう言われることもある――
まるでシラクーザ人みたいだ、と。
私がまるでシラクーザ人?
分からない。
ただ昔、一回だけお爺様にこう話したことだけは憶えている――
「シラクーザでの暮らしのほうが上だとか、クルビアでの暮らしのほうが上だとか思ってる人間は、みんなもくだらない」と。
それを聞いて、お爺様は大笑いした。

???
ラジオ

本日、注目されるカラッチ部長暗殺事件に関する裁判がいよいよ開廷されます。

???
ラジオ

ただ安全面の考慮として、法廷内へ入れるのは招待された僅かな人たちだけとのことです。

???
ラジオ

ほかの方たちは法廷外で裁判結果を待つことになります。

???
ラジオ

えー今現在、裁判所には厳重な警備が張られておりますが、それでも多くの市民たちがここに集まってきています。

???
ラジオ

どうやら、カラッチ部長の死は多くの市民の心を揺さぶる事件だったことが見て取れるでしょう。

???
ラジオ

引き続き今回の裁判を追っておきたいと思いますので、チャンネルはそのままで。

ソラ
ソラ

……

エクシア
エクシア

ソラ、準備はいい?

ソラ
ソラ

うん。

ソラ
ソラ

あたしが出演した後あっちに行きたかったら、行ってもいいからね。

エクシア
エクシア

どうせ行っても入れないんだし、いいよ。

クロワッサン
クロワッサン

うん、ウチらも大人しく結果を待っとくわ。

エクシア
エクシア

舞台、頑張るんだよ!

ソラ
ソラ

大丈夫、心の準備はできるから。

女優
女優

ソラちゃーん、準備はいい?もう始めるわよー。

ソラ
ソラ

はーい。

ヴォルシーニ裁判所

ラヴィニア
ラヴィニア

静粛に、静粛に。

ラヴィニア
ラヴィニア

本日のこの裁判結果は、後ほど全市民に向けて公開されることになります。

ラヴィニア
ラヴィニア

では今回審理するのは、建設部部長カラッチの暗殺事件についてです。

ラヴィニア
ラヴィニア

被告人は前へ。

(テキサスが前に出る)

???
好奇的な傍聴人

あれが……テキサスなのか?

???
口うるさい傍聴人

あの髪色に瞳の色、間違いない!テキサス家の者だ!

???
???

……

???
???

Zzz……

???
好奇的な傍聴人

しかし、殺されたはずなんじゃ?

???
口うるさい傍聴人

彼女がカラッチを殺したのか?

ラヴィニア
ラヴィニア

静粛に!

ラヴィニア
ラヴィニア

……

テキサス
テキサス

……

ラヴィニア
ラヴィニア

チェッリーニア・テキサス、あなたは以前カラッチ部長殺害の現場に出現していましたね。

テキサス
テキサス

ああ。

テキサス
テキサス

爆弾を仕込み、建設部部長が通った際に起爆のは私だ。

???
好奇的な傍聴人

あっさりと認めたぞ!?

???
口うるさい傍聴人

最後のテキサス……こうも落ちぶれてしまったのか!

ラヴィニア
ラヴィニア

……動機はなんですか?

テキサス
テキサス

動機はない。

ラヴィニア
ラヴィニア

誰に指示されて行ったのですか?

テキサス
テキサス

誰にも指示されていない。

ラヴィニア
ラヴィニア

つまり、すべてあなた一人がやったことだと?

テキサス
テキサス

そうだ。

???
薄情な陪審員

そんなのありえない!爆弾はどこで仕入れたんだ?いつそれを仕込む機会があった!

テキサス
テキサス

そんなこと重要なのか?

???
疑い深い陪審

君はテキサス家のために、復讐しに来たのかね?

テキサス
テキサス

いいや。

???
疑い深い陪審

しかし……

テキサス
テキサス

ラヴィニア裁判長、私はこれですべてを自白した。

テキサス
テキサス

にも関わらず、傍の陪審員席に座っているファミリーの面々が些か騒々しいと思うのだが。

???
情な陪審員

口答えをするな!

テキサス
テキサス

他の余計な裁判の流れなんだが、もうスキップしてもいいんじゃないのか?

ディミトリー
ディミトリー

ん?

ディミトリー
ディミトリー

レオン、なんでここにいるんだ?

ディミトリー
ディミトリー

てっきり法廷に行ったのかと思ってたぞ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

本当に意外に思ってるのか、ディミトリー?

ディミトリー
ディミトリー

……なんか飲むかい?

ディミトリー
ディミトリー

朝に酒はオススメしないよ。その代わり目覚めのいいフルーツジュースを作ってやるから。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ウィスキーだ、一番強いヤツで頼む。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

それから、俺の質問にも答えてもらうぞ。

ディミトリー
ディミトリー

どうして分かったんだ?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

簡単な話だ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺への襲撃にしろ、カラッチへの暗殺にしろ、十二ファミリーを互いに争わせたいと企んでいる者がいるということになる。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

また、今回の事件におけるベッローネの代弁者がラヴィニアである以上、犯人を見つけ出さなければ事態もある程度は収拾がつかなくなってしまう。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

つまり、ラヴィニアがチェッリーニアを逮捕した後、相手はきっと彼女の裁判が行われることを良しとしないはずだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

となれば、ラヴィニアの身に一体何が起こるのは明白だろう。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だがまあラッキーなことに、お前は失敗してくれたがな。

ディミトリー
ディミトリー

あんたはまだ気付いちゃいないのかもしれないが、あの女は色々とあんたに悪影響を与えすぎなんだ。

ディミトリー
ディミトリー

おかげで今のあんたは、ますます芯がなくなってきちまってる。

ディミトリー
ディミトリー

んであんたに影響されて、ラヴィニアのほうも自分ならなんでもできるって過信し始めてきているんだ。

ディミトリー
ディミトリー

そんな非現実的な妄想を、俺は断ち切らなきゃならないんだよ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……よくもそんな憚らずに言えたものだ。

ディミトリー
ディミトリー

いいや、レオン。

ディミトリー
ディミトリー

俺は別に、納得してこういうことをしてるわけじゃないんだ。

ディミトリー
ディミトリー

何もかもが終わった後に、あんたにこれら事実を押し付けて無理くり受け入れさせるようなことも望んじゃいない。

ディミトリー
ディミトリー

だからあんたの言う通り、俺が失敗したのはラッキーだったよ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だが、それでもお前はやった。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

このツケについてだが、これからゆっくりと話し合おうじゃないか。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

話を戻そう。もしチェッリーニアが開廷前に死んでくれていたら、お前たちにとってもそれが安全策だったはずだ。だがそんなことはしなかった。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

つまり――相手はチェッリーニアの身分に恐れている。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

なんせ、彼女は最後のテキサスである前に、親父が連れて帰ってきた人間だからな。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

そんな機会を手放さざるを得ないのはファミリーの人間しかいない。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

そして昨日、事実としてチェッリーニアはいかなる襲撃も受けなかった。

ディミトリー
ディミトリー

もしそれがあんたの敷いた罠だと知って、相手がわざと手を出さなかったとしたらどうなんだ?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

もし相手がスィニョーラの権威に挑むと決心した場合、動きはそれなりに大きくなるはずだ。ならこちらも直近に、どこのファミリーの動きが大きかったのかと調べればいい。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

そして事実、ディミトリー、お前がそのすべてを動かしていた。

ディミトリー
ディミトリー

……

ディミトリー
ディミトリー

チェッリーニア嬢が自分から裁判を受け入れたとは想定外だったよ。

ディミトリー
ディミトリー

彼女が計画に巻き込まれようがいまいが大して影響は出ないだろうと思ってたんだが、彼女の存在も考慮しておくべきだったな。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……そう卑下するな。もしチェッリーニア本人が罪を背負うと言ってくれなかったら、俺にとっても今回のやり方は下策だったさ。

ディミトリー
ディミトリー

なら、彼女に感謝しておかなきゃだな。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

無論感謝はするさ、だがその前に一つ知りたいことがある。ディミトリー、なぜあんなことをした?

ディミトリー
ディミトリー

見りゃ分かるだろ、俺はファミリーの裏切者だよ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ほかの者が裏切者だと言えば信じてやれるが、お前に関してだけは信じたくもない。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

もしお前を信じてやれなかったら、俺はこれから誰を信じてやればいいんだ?

ディミトリー
ディミトリー

……

ディミトリー
ディミトリー

レオン、あんたは新しい移動都市についてどう思う?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……無論、新しい利益の分配だと考えている。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

最後に笑えたヤツが勝者だとな。

ディミトリー
ディミトリー

それはあんたの言う通りなんだが、俺にはスィニョーラの実験畑にしか見えないんだ。

ディミトリー
ディミトリー

新都市建造を名目に、十二ファミリーたちを争わせるための、な。

ディミトリー
ディミトリー

新しく生まれたオオカミの子供たちは、抑圧され続けてきた気性を発散することができ、ズル賢い爺さん連中もまた新しい目標を立てることができた。

ディミトリー
ディミトリー

いいことじゃないか。クルビアに移ったファミリーが帰ってきたことで、シラクーザという堰き止められた臭い水はまた流れを生むことができたんだ。

ディミトリー
ディミトリー

最後に誰が勝ったとしても、サラ・グリッジョの上でお高く留まってるスィニョーラからすれば悪い話ではないからな。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

お前……まさか……

ディミトリー
ディミトリー

ここ数年お前はよくやってくれたよ。ほかのファミリーをほとんど抑えつけてくれたし、建設部もしっかりと取り押さえていてくれた。

ディミトリー
ディミトリー

このまま続ければ、間違いなくベッローネが最後に笑う勝者になり得ただろう。

ディミトリー
ディミトリー

でも、それがなんだってんだ?

ディミトリー
ディミトリー

俺たちファミリーが新しい移動都市で絶対的な権力を握ったとしても、何も変わらないさ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……悔しいんだな、お前。いや、悔しがってるのは親父のほうか?

ディミトリー
ディミトリー

サラ・グリッジョが設立されてから、十二ファミリーの間で軋轢が生じるようなルールが設けられてから、悔しがっていないファミリーなんざどこにいる?

ディミトリー
ディミトリー

百年前まで、俺たちは怖いもの知らずのオオカミだったはずだ。いつまで経ってもファミリー同士で相争ってた。

ディミトリー
ディミトリー

それが今じゃ、新しく生まれた世代のオオカミたちはみーんな首輪に括りつけられているのに慣れてしまっている。

ディミトリー
ディミトリー

ファミリー同士と共存することにも、衝突した後は平和的に解決することにも、サラ・グリッジョとファミリー同士が目論んでいる利益の分配なんぞにもな。

ディミトリー
ディミトリー

そんなこと、本来の俺たちならする必要もなかったというのに。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

じゃあ、親父はサラ・グリッジョを転覆しようと企んでいるのか!そんなバカな?

ディミトリー
ディミトリー

スィニョーラは各ファミリーの勝手な振る舞いには目を瞑っちゃいるが、彼女が定めたルール――“各ファミリーは公然と相争ってはならない”というルールに反することだけは決して許しちゃくれない。

ディミトリー
ディミトリー

俺たちは勝利を掴む一歩手前だった。そういった前提があったからこそ、俺たちが急激に勢いを落とした際に、ほかのファミリーからの注目を集めることができたんだ。

ディミトリー
ディミトリー

争いはオオカミの性(さが)だ。あいつらに血の匂いを嗅がせれば、いくら飼い慣らされたオオカミだって抑えが効かなくなってしまうさ。

ディミトリー
ディミトリー

そっからはもう、お互い噛みついてくるだけだよ。

ディミトリー
ディミトリー

そうでもしなきゃ、スィニョーラがサラ・グリッジョから姿を見せてはくれないんでね。

ディミトリー
ディミトリー

んで、俺たちはそのタイミングをずっと待ってたってわけよ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……

静かな部屋の中で、“パリン”とガラスが割れる鮮明な音が鳴った。
だがこの幼きオオカミは、その破片で切られた傷口に気付いてすらいない。

ディミトリー
ディミトリー

最後に笑うのは俺たちさ、レオン。

ディミトリー
ディミトリー

そん時になりゃ、俺たちは新しい移動都市を一つどころか、シラクーザ全土を手中に収めることができる。

ディミトリー
ディミトリー

これがあんたの親父、一代でベッローネを十二ファミリーの中で最大のファミリーに築き上げた――ドン・ベルナルド・ベッローネの思惑だ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

いいや、まだだ。

ディミトリー
ディミトリー

ん?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

お前、まだ何か隠し持っているだろ?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

最初から、お前は自分の動きがバレると分かっていたから、わざとここで俺を待っていたんだろ。

ディミトリー
ディミトリー

俺がここにいるのは、あんたの怒りと向き合わなきゃならないって思っただけだよ。

ディミトリー
ディミトリー

あんたに罪を詫びなきゃな。友としても、あんたの部下としても。

ディミトリー
ディミトリー

俺のやったことは許されないことだ。だが少なくともあんただけには、俺は納得してこんなことをしたって思われたくはないんでね。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

勝ち誇ったかのように言うな!

ディミトリー
ディミトリー

……俺なら負けたよ。本当さ、レオン。

ディミトリー
ディミトリー

もしかしたら、シラクーザってのは元からこういう場所だったのかもしれないね。もしくはドンの野心も最初からああだったりして。

ディミトリー
ディミトリー

あいつらが現れちまったのさ、俺が自分の失敗を認めようとしたって時に。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

あいつ?

ディミトリー
ディミトリー

イカレた女が現れたのさ。

ラップランド
ラップランド

ねえガンビーノ、人を一番苦しめられる方法って何かな?

ガンビーノ
ガンビーノ

あ?そりゃ、首を半分だけぶった斬ってやることだろ。

ラップランド
ラップランド

カポネ、キミは?

カポネ
カポネ

そいつの親しい人間を探して、一人ずつ片付けてから本人にそいつらの写真を見せる。

ラップランド
ラップランド

はぁ、やっぱキミたちってば、この先ずっと上にのし上がれそうにないね。

ガンビーノ
ガンビーノ

ハッ、じゃあテメェはそういう高等テクニックでも思いついたのかよ?

ラップランド
ラップランド

信念だよ、信念。

カポネ
カポネ

その人の信念を砕くってことか?

ラップランド
ラップランド

砕く?いやいや、他人の信念を砕くことなんかできっこないよ。

ラップランド
ラップランド

軽く押してやればいいのさ。その人に、自分の信念が上から落っこちる様を見せつけてやればいい。

ラップランド
ラップランド

ヒューって落ちていって……バリーン!

ラップランド
ラップランド

木端微塵さ。

カポネ
カポネ

それこそ無理だろ、信念がそう簡単に自分から砕くようなもんか。

ラップランド
ラップランド

いやいや、キミはなーんも分かっちゃいないね。信念ってのはとても高潔なものだろ?却ってボクたちは薄汚いときた。

ラップランド
ラップランド

“そう簡単に自分から砕かれるもんか”だって?

ラップランド
ラップランド

実際そこまで難しいことかなぁ?

カポネ
カポネ

じゃあ……俺たちにトラックを一台用意させたのもそのためなのか?

ガンビーノ
ガンビーノ

ははぁ~、分かったぞ。つまりあの裁判官をトラックで轢き殺して、あのテキサスを動揺させるってことか?

ラップランド
ラップランド

彼女がそんな一人の人間の死で膝から崩れ落ちるような人に見えるかい?

カポネ
カポネ

じゃあどうするつもりなんだよ?

(回想)

ディミトリー
ディミトリー

サルッツォから除名されたラップランドだな、なんであんたがヴォルシーニにいるんだ?

ディミトリー
ディミトリー

いや、一体どうやってシラクーザに戻ってきた?

ラップランド
ラップランド

ベッローネとチェッリーニアに人知れぬ関係があるみたいに、ボクにだってサルッツォとかいうファミリーネームとは吐き気を催すぐらいの関係があるのさ。認めたくないけどね。

ディミトリー
ディミトリー

……じゃあ、サルッツォを代表してここに来たってわけか。

ラップランド
ラップランド

そう思ってもらっても構わないよ。

ラップランド
ラップランド

あと、バーカウンターの下に仕込んでる武器も仕舞っておいたほうがいいかな。

ラップランド
ラップランド

こんなとこで死んでも、キミの計画になんの得にもならないでしょ。

ディミトリー
ディミトリー

……

ラップランド
ラップランド

取引をしようじゃないか、ベッローネの子オオカミ。

ラップランド
ラップランド

裁判、止めたいんでしょ?

ラップランド
ラップランド

ならボクが手伝ってあげるよ。

ディミトリー
ディミトリー

それは……アルベルト・サルッツォの意思か?

ラップランド
ラップランド

ボクは誰よりもあいつのことを理解しているからね。だってボク、あいつの娘なんだもの。

(回想終了)

ラップランド
ラップランド

ボクが一体シラクーザに何しに戻ってきたのか、キミたちずっと気になってたんでしょ?

ラップランド
ラップランド

ボクが戻ってきた理由なら簡単さ、彼女に分からせてやりたいからだよ……

ラップランド
ラップランド

ここシラクーザは、足を踏み入れたら誰も抜け出すことのできない泥沼だってことをね。

ラップランド
ラップランド

そう、誰も抜け出すことはできやしないさ。

ラヴィニア
ラヴィニア

つまり、いま仰った供述はすべて事実であるということでよろしいんですね?

テキサス
テキサス

ああ。

ラヴィニア
ラヴィニア

ではここに、チェッリーニア・テキサスが建設部部長カラッチを殺害した罪が成立したことを宣言いたします。

ラヴィニア
ラヴィニア

よって判決は――

(車のエンジンが掛かる音)

???
薄情な陪審員

なんだ?

???
疑い深い陪審員

……これは、エンジンの音か?

???
疑い深い陪審員

しかしここは法廷だぞ、どこにそんな――

かつてのファミリーたちからすれば、暗黙のルールはすべてにおいて優先される。
スィニョーラ・シチリアはそんな法と名の付く首枷を、ファミリーたちの首に括りつけた。
それからしてシラクーザの各都市には必ず、一か所は裁判所が設けられることになったのである。
シラクーザにおいて、法廷はサラ・グリッジョの意志を反映する機関だ。
そしてその中にいる裁判官は、さらに言えばスィニョーラの意志の代弁者でもある。
裁判官は往々にして止むを得ずファミリーからの牽制を受け、あるいは服従せざるを得ない時がある。だが、それでもその者たちには決して忘れてはならぬ最低限の使命が――
十二ファミリー同士の闘争の監視、及び防止という使命が課されていた。
それを十二ファミリー側も、自分たちの一挙一動はすべてスィニョーラの監視下にあることを知っている。
そのため、ここ法廷を通じて、両者ともにとても奇妙な関係が築かれていったのだ。
しかしそこへ――
まるでスィニョーラを蔑むかのように。
まるでシラクーザの法そのものを嘲笑うかのように。
轟くエンジン音と、その中から聞こえてくる甲高い笑い声を伴って。

一台のトラックが法廷の壁を突き破って侵入してきた。
壁を突き破っても、トラックのエンジンはまるで止まる気配を見せてこない。
まるでこの場にいる全員に――
このトラックは偶然追突してしまったのではなく、わざとここへ侵入してきたことを、伝えているかのようであった。

???
薄情な陪審員

ヒィ――ッ!

???
疑い深い陪審員

な、何事だ!?なぜこんなところにトラックが突っ込んできたんだ!

ラヴィニア
ラヴィニア

運転手は誰ですか!直ちに車から降りてきなさい!

(ラップランドがトレーラーから降りてくる)

ラップランド
ラップランド

う~ん、いいねぇ~。その表情が見たかったんだ。

ラヴィニア
ラヴィニア

何者ですか!?

ラップランド
ラップランド

やぁ、御機嫌よう、敬愛なる紳士淑女諸君。

ラップランド
ラップランド

ここでボクに自己紹介をさせてもらおう。

ラップランド
ラップランド

ボクの名前は――ラップランド・サルッツォ。

ラヴィニア
ラヴィニア

サルッツォ!?

ラップランド
ラップランド

同時に、このボクがカラッチを殺した真犯人だ。

???
ラジオ

き、緊急事態です!

???
ラジオ

つい先ほど、一台のトラックが現在裁判が行われている現場へと衝突していきました!

???
ラジオ

トラックを侵入させた人物は、ラップランド・サルッツォ。

???
ラジオ

本人が供述するには、カラッチを殺害した真犯人でもあるそうです。

???
ラジオ

現在、ラヴィニア裁判長は現行の裁判を一時中断し、ラップランドを逮捕しました。

???
ラジオ

今後も新しい情報が入り次第お伝えしてまいりますので、引き続き――

ベン
ベン

誰もが血腥さを血の匂いと思わなくなってしまった時、血腥さもまた文明の一部と化す、か。

ベン
ベン

いやはや、警告にしては見事なものだよ。

ベン
ベン

こんな下水道すら陰謀と血腥さで満ち溢れてしまった街にも、まだこれほど面白いことが起こるとはね。

ベン
ベン

生まれながらにして荒野に相応しきオオカミよ、やはり君は人を飽きさせてくれないな。

ベン
ベン

だが果たして、君も自らの枷を外すことができるのかどうか……期待して見届けるとしようじゃないか。

(マフィア達が倒れていく)

十数ものファミリーのメンバーが地面で呻き声をあげている。
その場には、長弓を所持している一人の少女だけが立っていた。

ルナカブ
???

街のオオカミ、どいつもこいつも弱いヤツらばかりだ。

ルナカブ
???

アンニェーゼの言ってた通りだな。

彼女は少し立ち止まり、そしてふと、とある方角に向かって匂いを嗅ぎ始めた。
そこは裁判所がある方角だ。

ルナカブ
???

この街にも荒野からやってきた別のオオカミがいるのか?

ルナカブ
???

……いや、これは荒野の匂いじゃない。

ルナカブ
???

だが、似ている。

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