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【アークナイツ大陸版】イル・シラクザーノIS-ST-2「切り開くは」 翻訳

ガードマン
過激なファミリーのメンバー

おい、こんなこと聞いてないぞ!?

ガードマン
忠実なファミリーのメンバー

私も聞いていないな。

ガードマン
過激なファミリーのメンバー

まさか、あいつの独断専行なんじゃ……

アルベルト
アルベルト

構わんさ。

アルベルト
アルベルト

私が許可したんだからな。

ガードマン
過激なファミリーのメンバー

旦那様!まさか前々からこうお考えだったんで?

アルベルト
アルベルト

敵に塩を送るのと錦に花を添えるの、お前だったらどっちを選ぶ?

アルベルト
アルベルト

ベッローネが天下を掴み取るなど、フンッ、そう簡単にはやらせんさ。

アルベルト
アルベルト

ベッローネから肉を一片でも多く削り取ってやれるのなら、多少の汚名を被ったところでどうとでもなる。

ガードマン
忠実なファミリーのメンバー

なるほど、理解しました。

ガードマン
忠実なファミリーのメンバー

では、これからどうしましょう?

アルベルト
アルベルト

車を用意しろ、娘に会いに行く。

ガードマン
忠実なファミリーのメンバー

分かりました。

アルベルト
アルベルト

あとそうだ、ダンブラウンは今どこにいる?

ガードマン
忠実なファミリーのメンバー

ダンブラウンですか?ヤツならいま洗車場で働いていますよ。

アルベルト
アルベルト

住所を寄越せ。

ガードマン
忠実なファミリーのメンバー

ヤツを……呼び戻すのですか?

アルベルト
アルベルト

ファミリーから抜けていいなんて許可した覚えはない。

ガードマン
忠実なファミリーのメンバー

……分かりました。

アルベルト
アルベルト

それと、パーティも用意してくれ。

ガードマン
忠実なファミリーのメンバー

それって……

アルベルト
アルベルト

ベッローネの坊ちゃんを招待する。

ガンビーノ
ガンビーノ

クソッ、放せよ!

ガンビーノ
ガンビーノ

ラヴィニア殿、ラップランドが提供した手掛かりからこの二名を逮捕することができました。

ガンビーノ
ガンビーノ

確認したところ、こいつらは確かにレオントゥッツォへの暗殺に関与していていましたよ。

ラヴィニア
ラヴィニア

……二人とも、彼女とは知り合いなのですか?

ラップランド
ラップランド

ハロ~。

カポネ
カポネ

チッ、ラップランドめ、やっぱテメェと関わってりゃロクな目に遭わねえぜ。

ラップランド
ラップランド

シラクーザで臭い飯を食わされるんだ、滅多にない機会とは思わない?

ラヴィニア
ラヴィニア

……

ラヴィニア
ラヴィニア

二人を収監してください。

ガードマン
ガードマン

分かりました。

(カポネとガンビーノが牢獄に入れられる)

ラヴィニア
ラヴィニア

現場でチェッリーニアさんを足止めし、なおかつ爆弾でカラッチを殺害した……

ラヴィニア
ラヴィニア

この自供について、今も認めますか?

ラップランド
ラップランド

疑い深いなぁ、裁判官さんは。

ラップランド
ラップランド

キミにとってもベッローネにとっても、さっさとこの一件を片付けたほうが得なんじゃないの?

ラップランド
ラップランド

やったのはボクかテキサスかなんて、そんなに気にすることかな?

ラヴィニア
ラヴィニア

……

ラップランド
ラップランド

正直に言うとさ、裁判官さん、さっさとボクを処刑したほうがよかったかもね。

ラップランド
ラップランド

ボクはファミリーから除名された捨て子だ、ちょっと頑張ればできることでしょ。

ラップランド
ラップランド

考えてもみなよ。ボクが死ぬことで、このシラクーザの司法と正義にどれだけプラスの面を与えることができるのやら。

ラップランド
ラップランド

試してみる価値があるとは思わない?

ラヴィニア
ラヴィニア

あなたが何を考えているかは分かりかねます。

ラヴィニア
ラヴィニア

しかし、もし仮にあなたが真犯人だった場合はそうしますよ、ラップランド・サルッツォ。

ラヴィニア
ラヴィニア

ですが今は、まだ会いに行かなければならない人がいるので、保留にしておきましょう。

ディミトリー
ディミトリー

ドン、お戻りですか。

ベルナルド
ベルナルド

お前はもう休め。しばらくの間、苦労をかけたな。

ディミトリー
ディミトリー

分かりました。

(ディミトリーが部屋から立ち去る)

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……

ベルナルド
ベルナルド

納得できないか?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

逆にどうすれば納得できるのか知りたいものだな。

ベルナルド
ベルナルド

……ついて来い。

ベルナルド
ベルナルド

お前にもそろそろ知ってもらう時が来たようだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

どうして俺をここに?

ベルナルド
ベルナルド

我が主よ。

(ザーロが姿を現す)

ザーロ
ザーロ

ベルナルド、自分じゃガキを躾けられないからと言って、今度は俺に押し付けてそいつを躾させようという魂胆か?

ベルナルド
ベルナルド

こいつには少し理解してもらわなければならない事柄があるだけです。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

なんなんだお前は――

ザーロ
ザーロ

俺は狼の主さ、幼子よ。

狼の主という言葉を耳にしたところ、レオントゥッツォは眩暈を引き起こした。
大量の情報と瑣末な断片が一瞬にして彼の脳裏に注ぎ込まれたからである。

狼の主、ないしは“獣の主”。
この大地に生きるすべての生き物とは異なった存在であり、この者たちは一度だって誕生したことはなく、ただそこに存在しているだけなのである。
そんなザーロは、狼の群れからやってきた獣の主だ。
彼と彼の同胞は荒野から、これまでの群れの行末を見届けてきた。
彼らは本能に従うまま、終わりの見えない殺戮に興じていたのである。
狼の主、ないし獣の主は不滅の存在だ。
そんな彼らは今や、同族との殺し合いでは満足しきれなくなってしまっていた。ゆえに狼の主たちは、とあるゲームを設けた。
内容は至ってシンプル、狼の主は一匹ごとに一人の人間を選んでは育て、そしてその人間同士で互いに狩りをさせる。
その者たちこそ、“牙”と呼ばれる存在であった。
そして一度も折れぬ牙を有した狼の主こそが、真に狼どもの主となることができるのである。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

狼の主、狩り、牙……

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

まさかッ!?

ザーロ
ザーロ

そうだ。お前の父こそが、俺が一番満足する牙だったのさ。

ガードマン
サルッツォファミリーのメンバー

おいルビオ、ドン・サルッツォが今日ベッローネの人間を招待してパーティを開くおつもりなんだ。

ガードマン
サルッツォファミリーのメンバー

だから一番いい食材を用意して送ってきてくれ。

ルビオ
ルビオ

……まさか、本当にサルッツォが?

ガードマン
サルッツォファミリーのメンバー

ルビオ、聞いてるのか?

ルビオ
ルビオ

あぁ、聞いているさ。

ルビオ
ルビオ

そうだなぁ、招待するお相手がベッローネとなれば、一番いい食材を用意するだけじゃ味気ない。

ルビオ
ルビオ

ドン・サルッツォにお伝えしてくれ。そのパーティにはこのルビオが直々に両家のために料理の腕を振るって差し上げましょうと。

ルビオ
ルビオ

ドンのご意向を聞いてくりゃせんか?

クルビアにおいて、ファミリーの面子がもし他者に施しを与えたとすれば、その施された相手は、往々にして最後には取引する際の交渉材料になり得る。
気に掛ければ掛けるほど、その者の価値は高まっていく。
そしてここシラクーザにおいて、そんな対象は最後に、雨の降る夜に殺されてしまうのかもしれない。
気に掛ければ掛けるほど、惨たらしく。
だからここに生きる場合、できることなら冷酷で情け容赦ない人間になったほうがいい。
テキサスはその点をよく理解していたのと同時に、とても嫌悪感を抱いていた。

ラヴィニア
ラヴィニア

本当に申し訳ありませんでした。

テキサス
テキサス

お前が謝ることはない。

ラヴィニア
ラヴィニア

もしここを出たいのでしたら、少しだけ手続きさえ済ませればすぐに出してあげますので。

ラヴィニア
ラヴィニア

手続き上、あなたの容疑はすでに晴れていますから。

テキサス
テキサス

いいんだ、むしろ牢屋にいたほうが何かと静かで助かる。

テキサス
テキサス

ところで、お前はまだ諦めないつもりでいるのか?

ラヴィニア
ラヴィニア

あなたのあの昔からのご友人ですが、本当に彼女が真犯人だと思っていますか?

テキサス
テキサス

……

テキサス
テキサス

あいつらしいやり方だが、あんなことをする理由は見えてこないな。

ラヴィニア
ラヴィニア

なら、私もまだ諦め時ではないということです。

ガードマン
ベッローネファミリーのメンバー

ラヴィニアさん、ロッサーティから人が来ています。何やらウォーラックがチェッリーニア嬢と少しだけ面会がしたいと。

テキサス
テキサス

……どうやら休みはおしまいみたいだな。

テキサスが過った時、ラヴィニアは自分のポケットに何かが入れられた気がした。
取り出してみれば、それは一枚の紙きれだった。
そこには番号らしき数字が羅列されていて、隅には文字がこう記されている――
ペンギン急便、雨降る風吹くなんのその。

(ソラが姿を見せ、拍手が起きる)

???
不満気な観客

ちょっとそこのあんた、寝るんだったらせめて足を乗っけないでもらえるか?

???
???

……んぅ?

洗車スタッフ
洗車スタッフ

呼んだか?

???
不満気な観客

あんた以外に誰がいるんだ?ここは劇場だぞ、寝に来るような場所じゃない。

???
不満気な観客

それに足を乗っけるなど、マナーがなってないにも程があるぞ!

洗車スタッフ
洗車スタッフ

けど、ミュージカルを見てるあんたの邪魔にはなってないだろ?

???
不満気な観客

なってはいないが、傍にあんたみたいな身なりの悪いヤツがいたら、こっちのミュージカルを鑑賞する気持ちも台無しだ!

洗車スタッフ
洗車スタッフ

分かったよ、足を引っ込めばいいんだろ?

???
不満気な観客

おいちょっと待て、食い物まで持ち込んできているのか?

劇場の支配人
劇場の支配人

……ちょっと君、ここは飲食が提供されていないはずだが。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

ああ、ポップコーンが売られていないもんだから、近くの店から買ってきた。

劇場の支配人
劇場の支配人

君、こういう場所に来るのは初めてかね?

洗車スタッフ
洗車スタッフ

ああ、ここならリラックスできるって友だちからオススメされてな。

劇場の支配人
劇場の支配人

なら……舞台はどうだったかね?

洗車スタッフ
洗車スタッフ

ずーっとここで見ちゃいたが、何を喋ってたのかさっぱりだったぜ。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

なんでこんなもんを演じているんだ?

劇場の支配人
劇場の支配人

……

(劇場の支配人が指パッチンをする)

劇場の支配人
劇場の支配人

このお客人をつまみ出せ。

劇場の支配人
劇場の支配人

ここは君みたいな人間は歓迎していないんでね。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

おいおい、チケットはちゃんと買ったぞ!

劇場の支配人
劇場の支配人

返金してやれ。

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

へい。

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

ご退場願おうか、スィニョーレ。

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

そら、さっさと出ていけ。

(ガードマンが洗車スタッフをはじき出す)

冷静なヒットマン
薄情なガードマン

そういやこいつ、舞台が始まってからずっといたな。

冷静なヒットマン
薄情なガードマン

てっきりどっかの金持ちが劇場を体験しに来たと思ってたんだが。

冷静なヒットマン
薄情なガードマン

まさかマジでミュージカルの分からねえ貧乏人だったとはな。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

舞台上でやってたアレ、あんたらは面白いと思ってるのかよ?

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

フッ、そりゃ面白いさ、演者らもみんな美人さんばっかだしよ。

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

それにあの楽曲もだ、感動モンだぜ。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

それが……芸術ってヤツなのかい?

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

ケッ、テメェなんかに分かるわけねえだろ。とっとと酒場にでも行って飲んだくれやがれ。

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

あぁそうそう、忘れてた。ほら、テメェのチケット代だ。

(ガードマンが小銭を投げる)

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

ぼったくった、なんて言わないでくれよ。

(洗車スタッフがガードマンに突っかかる)

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

なんだテメェ、歯向かうつもりか?

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

んなッ、この野郎ッ、結構チカラつえーぞ。

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

おい、はやく手を貸せ!

冷静なヒットマン
薄情なガードマン

……

冷静なヒットマン
薄情なガードマン

こいつの目、なんだか妙だ。

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

あっ、あだだだだだ!腕、腕が折れるッ!

洗車スタッフ
洗車スタッフ

……

(ガードマンが洗車スタッフから急いで離れる)

冷静なヒットマン
軽はずみなガードマン

……ん野郎、後で憶えとけよ!

冷静なヒットマン
薄情なガードマン

まあよせ、もうその辺にしておけ。あいつも金を拾おうとしただけだろ、貧乏人なんかにいちいち突っかかるな。

冷静なヒットマン
薄情なガードマン

ほら帰るぞ、あとで手当してやっから。

(ガードマン達が立ち去る)

洗車スタッフ
洗車スタッフ

……ラヴィニアさん、すまねえな。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

どうやら俺、ああいう娯楽はてんで分からねえや。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

やっぱ俺は酒場で飲んだくれて、ストリップショーでも見て夜を過ごしたほうが気が合うね。

???
???

なら、君も一緒に飲むかい?

洗車スタッフ
洗車スタッフ

……?

ダンブラウンが声のするほうへ振り向けば、そこには路地の壁に寄りかかった男の姿がいた。
彼は傍若無人ながらも、自分に向けて手に持っている酒瓶を振ってくれている。

アルベルト
アルベルト

ラップランド、説明しろ。

ラップランド
ラップランド

パパの欲しがっていた結果はこれでしょ?

ラップランド
ラップランド

ベッローネが一番弱まった時に手を貸して、掌握して、そして最後には彼らを消滅させるんじゃなくて支配する。

アルベルト
アルベルト

教えたはずだ、ラップランド。

アルベルト
アルベルト

お前はこういう時にどうすればいいのかを。

ラップランド
ラップランド

あぁ、忘れちゃってたよ。なんせあの家を出てもう何年も経っちゃったからね。

アルベルト
アルベルト

お前のことだ、色々と大目には見てやっている。私から言い渡されたことを完遂させてなくても構わん、私の意志に背くことだって。

アルベルト
アルベルト

何を言おうとお前は私の娘だからな、ラップランド。

アルベルト
アルベルト

それぐらいなら大目に見てやってもいい。だが私がファミリーのために下した決断を覆す行為だけは何があっても許さん。

アルベルト
アルベルト

お前が私の考えを理解していてもだ。

アルベルト
アルベルト

なぜならば、このファミリーを取り仕切っているのはこの私だからだ。

アルベルト
アルベルト

七年前、お前はそういったことをしたせいで私に勘当された。そして今回、お前はまたわざと同じようなことを繰り返した。

アルベルト
アルベルト

そうすれば私が怒ると知っていながら、いや、そうすれば私を怒らせることができると知っていながら。

アルベルト
アルベルト

なぜだ、我が娘よ。教えてくれ、なぜそんな真似をするんだ?

ラップランド
ラップランド

それ以外になーんも面白みを感じられないからだよ、パパ。

ラップランド
ラップランド

パパにとって、一家の主の席はすべてにおいて優先されるのかどうか……ボクはそれが知りたいんだ。

ラップランド
ラップランド

ずっとずっとね。

(アルベルトがラップランドを強打して突き飛ばす)

ラップランドはよろめきながらも、地面から立ち上がった。
まるでこの瞬間、やっとシラクーザに戻れたんだと実感したかのように、彼女はとても嬉しそうな笑顔を見せていた。

???
外にいるファミリーのメンバー

旦那様、そろそろお時間です。

アルベルト
アルベルト

今日はここまでにしておいてやる。

ラップランド
ラップランド

続けないの?

アルベルト
アルベルト

お前が私に背いた事実は変わらない。

アルベルト
アルベルト

だが、お前が私の娘である事実も変わらない。

アルベルト
アルベルト

誰よりも私のことを理解していることもな。

アルベルト
アルベルト

お前は少し教養に欠けている。

アルベルト
アルベルト

これも私の教育の失敗か。

アルベルト
アルベルト

まあいい、時間ならまだまだたんまりとあるんだからな。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

つまり、狼の主たちはみんな俺たちの暮らしに潜んでいるということか?

ベルナルド
ベルナルド

いや、彼は狼の主の中で、唯一人間の社会と関わり合いを持っている者だ。

ベルナルド
ベルナルド

ほかの狼の主たちなら、今も荒野に暮らしている。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

なぜだ?

ベルナルド
ベルナルド

人間の権力もある種の力であると、彼はそう思っている。

ベルナルド
ベルナルド

その力でほかの狼の主たちに勝つことも、一種の勝利だと考えているからだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

つまり、親父にスィニョーレを転覆させ、シラクーザを権力で掌握する人間になって、あいつの言う同族同士の殺し合いにあいつを勝たせようとしているわけか?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父も、俺も、ひいてはファミリーも、結局はあいつの勝つための道具だったというわけだな。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

そんな理由をすんなり受け入れられるわけがないだろ!

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父はそれでいいのかよ!一生ただの操り人形として扱われるなんて!

ベルナルド
ベルナルド

お前は一つ勘違いを起こしているな、レオン、私の息子よ。

ベルナルド
ベルナルド

彼は私に権力の奪い方を教えてくれた、私がお前に教えたように。

ベルナルド
ベルナルド

権力を使って彼の代わりにほかの“牙”たちを打ち倒すことなど、私にとっては一つの過程に過ぎん。

ベルナルド
ベルナルド

ここまで下してきたどの決断も、ましてやこの時に手を出したことも、すべては私の意志によるものだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……

それが自分の意志だなんて、どうやってそんなことが分かるんだ?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

(いいや……親父は本気だ。)

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

(そうだ、操り人形に成り下がった人間に、親父みたいな気質は出せるはずがない。)

ベルナルド
ベルナルド

私たちは互いに道具として、互いの勝利を約束し合った、ただそれだけのことだ。

???
外にいるファミリーのメンバー

ドン、サルッツォから招待状が届いています。

???
外にいるファミリーのメンバー

ドン・サルッツォから、坊ちゃまをぜひとも招待したいと。

ソラ
ソラ

はぁ。

エクシア
エクシア

ソラ、そのため息もう何回目?もう数えきれなくなっちゃったよ。

クロワッサン
クロワッサン

仕方あらへんがな、今日裁判所であんなことが起こってもうたんやし。

エクシア
エクシア

なんならさ、アタシで刑務所にカチコミに行こっか。

クロワッサン
クロワッサン

アホかいな。

エクシア
エクシア

少なくとも顔ぐらいは見れるでしょー。

ジョバンナ
カタリナ

その考えはやめておいたほうがいいわよ。

ソラ
ソラ

カタリナさん!どうしてここに?

ジョバンナ
カタリナ

それはこっちのセリフよ、ソラ。ここら辺は危ないのに、どうしてここで散歩なんかしてるの?

ソラ
ソラ

あたしここの近くに住んでるの。

ジョバンナ
カタリナ

ウソ、まさか人に騙されたこんなところに住まわされちゃったとか?

クロワッサン
クロワッサン

ウチとエクシアはんがおるやさかい、大丈夫やて。

エクシア
エクシア

ソラ、この人は?

ソラ
ソラ

あっ、この前劇場で知り合ったカタリナさん。

ジョバンナ
カタリナ

まあ……頼りになるお友だちがいるんだったら、少しは平気なのかな。

ソラ
ソラ

カタリナさんこそ、どうしてここに……

ジョバンナ
カタリナ

あっ、気にしないで。私こういった雑多とした場所のほうが、創作しやすいタイプなの。

ソラ
ソラ

創作って……あっ、確か『テキサスの死』の作者もカタリナって名前だったはず。って、まさか……

ジョバンナ
カタリナ

ふふっ、そのまさかよ。

ソラ
ソラ

えぇホントなの!?どうりでテキサスファミリーについて詳しいと思ったら!

クロワッサン
クロワッサン

あっ、その脚本ウチも読ませてもらったで!ありゃウチでも分かるわ、えらい脚本が生まれてもうたって!

クロワッサン
クロワッサン

その~、カタリナはん、よかったらサイン貰えへんやろか?

ジョバンナ
カタリナ

もちろん、まだ金になるような名前じゃないけど。

クロワッサン
クロワッサン

いえいえ~、『テキサスの死』はきっとバカ売れ間違いなしや!

ジョバンナ
カタリナ

ふふっ、ありがと。

ソラ
ソラ

それよりも、さっき――

ジョバンナ
カタリナ

あなたたち、見たところそれなり腕っぷしはあるみたいなんだし、シラクーザのほかの刑務所だったら本当に殴り込めちゃったりできるかもしれないわね。

ジョバンナ
カタリナ

でも、ヴォルシーニにはラヴィニアって人がいる以上は、そう簡単にやらせてはくれないわよ。

ジョバンナ
カタリナ

それに今はどこもかしこもそこの刑務所に注目が集まっているんだから、下手に動くと危ないわよ。

クロワッサン
クロワッサン

あはは、さっきのはただの冗談やて。

ジョバンナ
カタリナ

あなたたちの目を見る限りは冗談を言ってるとは思えないんだけどね。

ジョバンナ
カタリナ

……ところで、一つ聞いてもいいかしら?

ソラ
ソラ

なに?

ジョバンナ
カタリナ

あなたたちはその……チェッリーニアのことをよく知ってるの?

ベン
ベン

まあ、かけてくれ。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

……

ベン
ベン

知ってるか、むかし芸術関連にはある種の暗黙のルールというのが存在していたんだ。

ベン
ベン

ファミリーに関する創作は許されているが、決してファミリーの名前だけは出してはならないルールだ。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

聞いたことはあるな。

ベン
ベン

しかし今、『テキサスの死』が堂々と世に出された。

ベン
ベン

これはきっと、最初にファミリーの名前を冠した作品になるだろうな。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

それがどうしたんだ?

ベン
ベン

つまり、ファミリーたちはもう自分たちの身分を憚ることがなくなり、むしろ進んで舞台に上がろうとするようになったということだ。

ベン
ベン

これもすべて、クルビア人のおかげだな。

ベン
ベン

クルビアがシラクーザの芸能界隈に進出してきてから、色んなものが変わってしまった。

ベン
ベン

より稼ぐために、弁えられない一部の芸術家たちは――あぁ、今は細工師と呼んだほうがよかったか、彼らの作品もますます見るに堪えないほど醜くなってしまったものだよ。

ベン
ベン

人々の暮らしを観察することもせず、ただひたすら虚偽の暮らしを作り上げていく。観客に金を払わせるような暮らしをな。

ベン
ベン

技術や思考が磨き上げられることもなく、ただただ流行りの文化に乗っかるだけ。昨日流行ったものも、今じゃ翌日にはすぐ劇場で鑑賞することができるようになってしまった。

ベン
ベン

そして最後、真に秀でた作品は尽く埋もれてしまい、浮かび上がってきたゴミみたいな作品が、人々の目にする芸術のすべてに成り代わる。

ベン
ベン

なんとも恐ろしいことだ、そう思わないかい?

洗車スタッフ
洗車スタッフ

もし全員がそういう類のものが好きだっていうのなら、あんたの言うその芸術ってやつは捨てられて当然だと思うけどな。

ベン
ベン

確かにこれは一種の意見に過ぎないが、誰しもがそう思っているわけでもないのだよ。

ベン
ベン

佳作と称されるべきものが埋もれてしまわないようにする人たちもいるにはいるんだが、彼らはどうにもこの潮流に抗える術を知らなくてな。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

……いくら昔のミュージカルのほうがよかったとは言え、俺には何がいいのか分からないね。

ベン
ベン

だが君も過去からは逃れられないでいる、違うか?

洗車スタッフ
洗車スタッフ

あんた一体誰なんだ?

ベン
ベン

ベンソンネキソス、週刊『ヴォルシーニのアート』の評論のページに私の名前が少しだけ載っている、探してみるといい。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

ベン……なんだ?

ベン
ベン

ベンでいい。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

ベン……

洗車スタッフ
洗車スタッフ

俺は……分からねえんだ、今のシラクーザが。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

上の偉い連中が言うには、もっと文明的なやり方で問題を解決しなきゃならないらしい。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

でも、俺がその文明的なやり方で事にあたった際、昔となんら変わってねえことに気が付いちまったんだ。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

さっぱりなんだ。こんなことしなくていいのに、なんで自分たちにウソをついてまでこんなことをしなきゃならねえんだ?

ベン
ベン

ファミリーも多かれ少なかれ、これは時代の流れだと気付いてはいるが、誰も自分が獲得したものを手放そうとしないからだよ。

ベン
ベン

一杯どうだい?

洗車スタッフ
洗車スタッフ

その酒、確かいい値のするやつだったろ。

ベン
ベン

まあ、それなりには。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

でも、ここは安いピッツェリアだぞ。

ベン
ベン

そうだな。

洗車スタッフ
洗車スタッフ

なんでそんな高い酒で、こんな安いピッツァに合わせるんだい?

ベン
ベン

私にとって、この酒もここのピッツァも、価値は同じだと考えているからだよ。

ベン
ベン

この酒の出来は確かに素晴らしい。だがこのピッツァに使われている小麦も、それに勝るとも劣らない。

ベン
ベン

なのに、この二つにこれほどまでの価格の差が開いていいものなのだろうか?その内には本当に、文明と名の付く虚飾が含まれてはいないのだろうか?

ベン
ベン

君はどう思う?

洗車スタッフ
洗車スタッフ

……文明という名の虚飾をか?

ベン
ベン

この酒のラベルのように、こいつを貼り付ければ、文明の旗印を掲げて、騙した相手のすべてを奪い取りことができるのだよ。

ジョバンナ
カタリナ

そう……チェッリーニアは龍門に逃げたのね。で、あなたたちがまさか彼女の友だちだったなんて……

ソラ
ソラ

えへへ、信じられないとは思うけど。

ジョバンナ
カタリナ

……ううん、信じるわ。

ソラ
ソラ

ホントに?

ジョバンナ
カタリナ

まず、あなたたちはこんなことで私を騙す必要がない。それに私も、彼女は生きてるってずっと信じてたから。

ジョバンナ
カタリナ

それにあなたたちが教えてくれたおかげで、私もようやく理解できたわ。なんで彼女が突然この街に現れたのかって。

ジョバンナ
カタリナ

おそらくあの清算の時に交わしたベッローネとの取引のツケを返すために、ここに帰ってきたんでしょうね。

ソラ
ソラ

……そう言われると、確かにあの人らしいかも。

ジョバンナ
カタリナ

にしても、運がいいんだか悪いんだか、よりによってルーチュ・デル・ジョルノ劇団に入っただなんて……(小声)いや、これも必然だったのかも?

ソラ
ソラ

劇団がどうかしたの?

ジョバンナ
カタリナ

……ううん、なんでもない。

ジョバンナ
カタリナ

芸能関係でベッローネとお近づきになりたいのなら、あそこの劇団を選んだのは正解だったわね。

ジョバンナ
カタリナ

でも……そうだ、少しついて来てもらえないかしら?

エクシア
エクシア

ここって……

ジョバンナ
カタリナ

私の住んでいるところよ。

クロワッサン
クロワッサン

うわ~、そこら辺に本と紙ばっかやな。

ジョバンナ
カタリナ

うふふ、ごめんなさいね。思いついて誘っちゃったものだから、片付けられてなくて。

ジョバンナ
カタリナ

ソラ、はいこれ。

ソラ
ソラ

これは、鍵?

ジョバンナ
カタリナ

そっ、ほら外って危ないじゃない?もし練習する場所を探してるんだったら、ここを貸すわ。

ジョバンナ
カタリナ

ここなら色んな脚本があるから参考資料にどうぞ、なにより静かだし。

ソラ
ソラ

そんな、悪いよ……

ジョバンナ
カタリナ

いいのいいの、友だちだと思って、ね?

ソラ
ソラ

……うん、ありがとう!

 

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