(ラップランドが複数のファミリメンバー達を切り倒す)
下がれ、こいつは厄介だぞ!
無理して相手取るな!
ドンのいるボックス席に通じてる廊下と階段の出入り口は死んでも守り抜け!
やれやれ、ロッサーティの連中も中々しぶといね。
強行突破は現実的じゃないみたいだ。
ふむ……
……
アハッ、テキサスのヤツ、楽器に録音機を入れてるね。
あたかも弾けるようなフリをしちゃってまあ。
ん?
アハッ、そうだ。
正面突破がダメなら……自分で道を作っちゃえばいいじゃないか。
慌てんじゃねえお前ら!
何が何でもここを守り抜くんだ!
クソッ、こいつら死ぬのが怖くねえのかよ!
(ディミトリーがロッサーティのファミリーメンバーを切り倒す)
グフッ……あがッ……
他んとこの状況はどうなってる?
ジョバンナのボックス席に通じてる廊下と階段なら塞がれちまっています。
連中、用意周到でしたよ。
さすがはロッサーティと言ったところか……
だが、俺たちだって最初からジョバンナを甘く見ていたわけじゃない。
このまま数で押し通せ。今日、ジョバンナには何があってもここに残ってもらうぞ。
ジョバンナを甘く見ちゃいないのは分かったんだが、その代わり俺のことは舐めてかかっていないか?
(ウォールラックがベッローネファミリーのメンバーを切り倒す)
なっ――
あんたが……ウォーラックか。
フンッ、今日こんなにもいいショーをやるって知ってたら、わざわざドンのために酒を探す手間なことなんかしていなかったぜ。
ジョバンナ殿が酒に興味があるんだったら、こっちはいいものを持ってるぞ。
結構だ。
ドンはシラクーザの色んなものを好んじゃいるが、シラクーザの酒だけはどうしても飲み慣れなくてな。
シラクーザの酒はやわい。あんたらが武器を振り回す時と同じように、まったくやる気を起こしちゃくれないんでな。
なら、あんたらはまだシラクーザの本当のいい酒を味わっていないだけだ。
だからだよ、こりゃいい機会なんじゃないのか?
こっちはそんな機会をずっと待ちわびて来ていたんだぜ?
俺にも味わわせてもらおうか、ベッローネとサルッツォ。シラクーザのいい酒ってのは、一体どんな味をするのかを。
テメェ、ここから上がるつもりか?
そうはさせねえぞ、ヤツを止めろ!
ここから上がるなんて誰が言ったんだい?
なに、爆薬だと!?
逃げろォ!
(爆発音と崩壊音)
うわぁ!あっちの観客席がなんか崩れ始めたで!
ってあれ――ラップランドじゃん!?
おい、あっちを見ろ!
がはッ……
(ロッサーティファミリーのメンバーが倒れ、ベッローネファミリーのメンバーが集まってくる)
ま、まさかファミリー同士の闘争がここで……
そこをどけ。
あ、あの野郎!楽器に武器を仕込んでいたぞ!?
テキサスさん!
テキサスは言葉を返さず、ただ彼女のほうを一瞥して唇を少し動かしただけで、すぐに上の階へと駆け上がっていった。
しかしソラにはその唇を読めていた。
待っていてくれ、と。
ヒィ――に、逃げるんだよォ!
どうするエクシア、ソラはんが危険や!
でも――
た、助けてくれェ――
伏せてッ!
(瓦礫がエクシア達を襲いかかるも牧師風のサンクタが瓦礫を破壊する)
あ、ありがとうお爺さん!おかげで助かったよ!
私がそんなに老けて見えるのかね?
えっ……いやまあそこまででもないけど。
どうやら今日上映されるのは、『テキサスの死』ではなく『ロッサーティの死』であるようだな。
まあいい。さあ、君たちも避難しなさい。
……そうしたいのは山々なんだけど、アタシ達の友だちがまだ舞台上に残っているんだ。
でも舞台周りはもう滅茶苦茶や、このまま助けに行っても危険過ぎるて!
じゃあ裏から回ろう!
あいよ!
(ベッローネのファミリーメンバーが邪魔をする)
クソォ、邪魔するな!
(銃声と共にファミリーメンバーが倒れる)
へ?
お行きなさい、勇敢な子らよ。
ありがとう、お爺さん!
終わったらピッツァを奢ってあげるね!
おおきにー!
(エクシア達が走り去る)
ふふっ、若いというのはいつも活力に満ち溢れているものだ。
さて、君はこれからどうするつもりなのかな、ジョバンナ。
ドン、廊下も階段も全部俺たちが抑えています、今のうちにここから逃げてください。
どうしてよ?
せっかくこのショーを楽しめる席を取ったんだから、最後まで見てあげなきゃ損でしょ。
ソラちゃん、本当に彼女の友人だったのね……
そしてあなたは、そこから上がってくるつもりなのかしら、チェッリーニア?
でもね、いくら早道を見つけたからと言って、そう簡単に私のところまでは辿り着けないわよ。
しかしドン――
今逃げたら、あのベッローネとサルッツォが私たちを見逃してくれるとでも思ってるの?
これはもう戦争なのよ。
ベッローネとサルッツォはスィニョーラの命令を背いて、彼ら以外のファミリーに対して全面的に戦争を吹っ掛けてきたんだわ。
みんなに伝えてちょうだい、最後まで――戦いなさいって。今の私たちにはそれしかできないんだから。
分かりました。
(ウォーラックとディミトリーが切り合う)
……チッ。
どうやらシラクーザのいい酒とやらも所詮はこの程度か。
クルビアの寄せ集め連中どもが……調子に乗るなよ。
(ウォーラックがディミトリーに一撃を与える)
なっ――
(ウォーラックがディミトリーにもう一撃与える)
ああそうさ、あんたらシラクーザ人からすれば、俺たちクルビアのファミリーは所詮ぽっと出の成金連中さ。
クルビアじゃそういうバカなら確かに多い。
でもあんたらはどうなんだ?
“銃と秩序”のもとで暮らしてるあんたらは、今じゃどれぐらいの気骨しか残っていないんだ?
シラクーザのことなら、俺は一度だって下に見ちゃいないさ。
だが今、少なくともあんたらだけは、もうわざわざ俺が襟を正して相手するほどの価値もないな。
ウォーラック、舞台のほうでも事態発生だ!
何者かが観客席を崩落させ、チェッリーニアがそのまま三階まで上がっていったぞ!
……
おいあんた、五秒だけ遺言を残す時間をやる。
遺言だと?
フッ、残すつもりなんかないさ。
そんなことをする暇があるんだったら、俺とレオンに一言謝罪を入れてもらいたいね。
そうかよ。
なにッ――
(ウォーラックに複数の銃弾が飛び、レオントゥッツォが姿を現す)
レオン!?
あんたどうして……
これからは俺のやり方でやらせてもらうぞ、ディミトリー。
レオントゥッツォ、てっきり俺たちはまだ仲良くできると思っていたんだがな。
今からでもチャンスがないわけではないぞ。
ほら見ろよディミトリー、デカいファミリーの坊ちゃんは言うことが違うぜ。
上から見下ろしてきては、「まだ挽回するチャンスはある」ときた。
事態もここまで発展してきてしまったんだ。
俺たちで一つ賭けをしようじゃないか、ウォーラック。
賭け?
ハッハッハッハ!おいおいレオン、ここは宴会場でも執務室でもないんだぞ。
ここは戦場だぜ、ここにいる限りじゃお互いのどちらかが死ぬまで戦うってことしかねえよ。
この賭けならお前もきっと気に入ってくれるはずだ、本当さ。
クソッ、ロッサーティの野郎、なんてしぶといんだ。
(ラヴィニアが姿を現す)
って、ラヴィニアさん?あんたが今回の襲撃に加わっているなんて聞いちゃいないぞ。
言っておくが、介入しようとしても無駄だからな。
……今はそんな気分じゃないので、あなたたちを邪魔立てするつもりなどありません。
私は今、人を探しているだけです。
人を探してる?
今じゃ劇場内はしっちゃかめっちゃかだ、あんたの探そうとしてる人なんかはいないと思うぞ。
私の邪魔をしないで頂ければ、それだけで結構ですので。
でも……
私がここで死のうが、ベッローネにそのツケが回ってくることはないのでご心配なく。
……お好きにどうぞ。
(ダンブラウンが通り過ぎる)
見つけた。
待て、そこの。
おいおいおい、まあまずは落ち着けって。俺ァここのただの作業員だよ。
作業員だぁ?作業員ならとっくに俺たちが追い払っちまったよ!
もう、なんでもよりによってこんな時に。
気を付けてください、ダン――
(ダンブラウンがファミリーメンバーを斬り殺す)
血しぶきが飛び取り、そのうちの数滴がラヴィニアの顔へとへばりついた。
ラヴィニアさん。
……なんであんたがここにいるんだ?
(テキサスがファミリーメンバーを切り倒す)
……
ラップランドが作ってくれた“道”はとても効果的だった。ほんの僅かな距離を上れば、テキサスはすぐにでも彼女の旧友と会うことができるだろう。
その前にテキサスは、ほんの少しだけ息を吐く。
会場内は混沌を極めているが、自分のなすべきことだけはハッキリとしていた。
(ウォーラックが近寄ってくる)
やっぱりここに来たか、チェッリーニア。
……
今のあんたはいい目をしてるぞ、俺がまるで獲物みたいだ。
(テキサスがウォーラックに斬りかかる)
あんたがどれだけの腕っ節があるのかとくと見させてもらおうか、最後のテキサス!
その……ディレクター、この混乱とした場面ですが……これも演出の一環なんでしょうか?
混乱とした?
私からすれば、すべては秩序をもとに動いているように見えるがね、ルビオ殿。
ここからが正念場だぞ。
……なるほど。
さすがはディレクターが率いるここヴォルシーニで最も評判の高い劇団の一つでございますな、こんな生々しい演目は生まれて初めて見ますよ。
ここからはインバーバルに入る、今なら話してもらっても構わないぞ。それで、私に一体何をさせてほしいのかな?
要求は……そう難しいことではありません。
カラッチが亡くなって以降、建設部部長のポストはずっと宙ぶらりんの状態でした。
さしずめあなたもきっと、そこの適任者をお探しかと。
つまり、君がそこの適任者だと言いたいのかな?
実際、私以上の適任者はいないと自負しております。
(テキサスがウォーラックが切り伏せる)
……
(テキサスが走り去る)
ガハッ、ゲホッ、くぅッ……
こんな時にまだ手加減できる余裕があるとはな……まったく大したもんだぜ。
あんたは手出ししなくていいのかよ、サルッツォのイカレたオオカミめ。
最初から全力を出すつもりのないヤツなんかと、無意味な殺し合いをするつもりなんてないさ。
……フッ。
そういうキミは何をしていたのさ、なにやら期待していたようにも見えたけど?
俺はある人と賭けをしたんだ、そんで俺の予想には外れてもらいたいのさ。
ウォーラックはテキサスが去って行った方向に目を向ける。誰もジョバンナを殺そうとするテキサスを止めることはできない。
ジョバンナを除いては。
室内はもぬけの殻だった。
テキサスはすぐにここで何が起こったのかを察したが、時すでに遅し、一本のナイフが彼女の喉元に突きつけられた。
シラクーザにやって来てから、私は何度も自分が暗殺されるシチュエーションを考えてきたわ。
それがまさか、あなたが私の前に現れるなんてね。
けどそんなあなたは、よりによってこんな時に警戒感を緩めてしまっている。
あなたまさか――私に会えたら、私があなたに抱き着いて「よかったチェッリーニア、生きていたのね」なんてことを言うとでも思った?
それから一緒に座ってお酒でも飲んで、昔話に花を咲かせることができるかもって?
私はお前を殺しに来ただけだ。
フッ、よろしい。
そう言いながら、ジョバンナは手に所持していたナイフを引っ込めた。
そんなジョバンナの顔には笑みが零れており、まるで先ほどの殺意がただのジョークだったのではないかと思わせるぐらい、その表情は思いに溢れていた。
久しぶりね、チェッリーニア。
久しぶりだな、ジョバンナ。