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【アークナイツ大陸版】イル・シラクザーノIS-8「危機一髪」行動前 翻訳

???
店員

ご注文のピッツァでーす。

ラヴィニア
ラヴィニア

どうも。

ラヴィニア
ラヴィニア

……

(レオントゥッツォが近づいてくる)

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

この席、空いてるか?

ラヴィニア
ラヴィニア

空いてません。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

じゃあ遠慮なく。

ラヴィニア
ラヴィニア

空いてないって言ったでしょ。

ラヴィニア
ラヴィニア

あなたはこのままファミリーのためにやるべきことを続ければいいじゃないですか、私みたいな一般人なんかは放っておいて。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

姉ちゃん……

ラヴィニア
ラヴィニア

……

ラヴィニア
ラヴィニア

別にあなたのことを責めるつもりはありませんよ、レオン。

ラヴィニア
ラヴィニア

ベルナルドのことも。

ラヴィニア
ラヴィニア

責めるべき対象を言うのであれば、それは私だけです。

ラヴィニア
ラヴィニア

こんな国に生まれてもなお、幻想を抱き続けてきた私が悪かった。だからあなたたちを責める資格なんて、私にはありませんよ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺もこんなところで、お前に理性的になれなんて言えたものじゃない。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

今のお前に慰めなんて与えても意味はないはずだから。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺がお前と同じ被害者だって言っても、お前が俺を加害者だと扱うのは至極当然だろうな。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だからここで、まだ一つだけ伝えてやれるのは……俺はまだ諦めちゃいないってことだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

それじゃ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

最近は街も物騒になってきている、お前も自分の身の安全には十分に気を付けるんだぞ。何かあれば、俺に電話してくれ。

ラヴィニア
ラヴィニア

……

(ラヴィニアの携帯に電話が掛かってくる)

ラヴィニア
ラヴィニア

はい、ルビオ部長。

ルビオ
ルビオ

裁判官殿、今お時間はあるかな?

クロワッサン
クロワッサン

なーんか街中えらいピリピリしとるなー。

ソラ
ソラ

昨日あんなことが起こればそうなるよ……

クロワッサン
クロワッサン

なあ、ホンマにあのディレクターんとこに行かなアカンの?

ソラ
ソラ

うん、きちんとディレクターさんと話さなきゃならいことがあるから。

クロワッサン
クロワッサン

せやかて――

ソラ
ソラ

大丈夫、クロワッサンはクロワッサンのやるべきことをやって。

テキサス
テキサス

私がついてる、心配するな。

クロワッサン
クロワッサン

……

エクシア
エクシア

……じゃあ、今日はアタシがクロワッサンのボディガードってとこかな。

ソラ
ソラ

うん、お願いね。

クロワッサン
クロワッサン

なんか起こったら、すぐに連絡するんやで。

ソラ
ソラ

はーい。

(ソラ達が立ち去る)

クロワッサン
クロワッサン

……

エクシア
エクシア

クロワッサン、テキサスのこと考えてるでしょ?

クロワッサン
クロワッサン

……分かる?

エクシア
エクシア

顔に書いてるもん。

エクシア
エクシア

まあ考えてるのはアタシも一緒だけどね。

エクシア
エクシア

ソラの考えてることは分かるよ。もしテキサスがここに残りたいって言ったら、きっとソラはそれを尊重するはず。

エクシア
エクシア

アタシもね。

エクシア
エクシア

でもさ――

エクシア
エクシア

アタシやっぱり、姉ちゃんにウチの仲間を会わせてやりたいんだ。

エクシア
エクシア

少なくとも、テキサスを無事シラクーザから脱出させるような方法はもう思いついたんじゃないの?

クロワッサン
クロワッサン

はぁ……あんたには誤魔化せられへんな。

エクシア
エクシア

あの二人にもきっと誤魔化せられてないと思うよ~。

エクシア
エクシア

アタシらがソラの考えを尊重するみたいに、向こうもきっとアタシらのことを理解してくれるって。

クロワッサン
クロワッサン

でも、なんたってここはシラクーザや……それにテキサスはんはこの国で一番おっかないとことつるんでもうてる、ウチにはどうにもならへんって。

エクシア
エクシア

えっ?てっきり思いついたのかと思ってたのに。

クロワッサン
クロワッサン

はぁ?

エクシア
エクシア

でもさ……この国のえらい人を言うんだったら、アタシらも昨日一人と会えたじゃん?

(ドアのノック音)

ベルナルド
ベルナルド

入りたまえ。

(ソラとテキサスが部屋に入ってくる)

ベルナルド
ベルナルド

おぉソラ殿、それにチェッリーニアも、ようこそ。

テキサス
テキサス

……

テキサス
テキサス

なぜソラたちを巻き込んだ?

ベルナルド
ベルナルド

ソラの履歴書が私の手元に届いたことなら、あれはただの偶然だったよ。

ベルナルド
ベルナルド

無論、ある種の必然とも言えるだろうね。

ベルナルド
ベルナルド

なんせこのルーチュ・デル・ジョルノ劇団は、シラクーザでも少しは人気のある劇団だからな。

ベルナルド
ベルナルド

だがそんな劇団のディレクターがまさかベッローネファミリーのドンが勤めてるとは思うまい、秘密にしているからね。

ベルナルド
ベルナルド

この街におけるベッローネの事業なら、すべて私の息子に任せている。私もあいつにいちいち口を出すつもりはない。

ベルナルド
ベルナルド

チェッリーニア、そしてソラ殿、私はこの劇団のディレクターを務めてもう六年になる。

ベルナルド
ベルナルド

だからせめてこれだけは信じてもらいたい、私のアートへの追及と愛好は、この身分となんら関係はないことをね。

ベルナルド
ベルナルド

できることなら、私もソラ殿には舞台上で大いに輝いてもらい、それから二人の再会をめでたいものにしてやりたいと思っているさ。

テキサス
テキサス

だが、彼女は巻き込まれた。それをお前はなんとも思っていないのだろう?

ベルナルド
ベルナルド

フフッ。

テキサス
テキサス

とぼけるな、ベルナルド。

テキサス
テキサス

確かに、ソラと出会ったことは偶然なのかもしれない。だがいくらキレイごとを言おうが、お前は本心からソラの安否を心配してやってはいないんだろ?

テキサス
テキサス

冗談も程々にしてもらいたいな。

ベルナルド
ベルナルド

シラクーザへやって来てから、初めてそういう怒った顔を見せてくれたな。悪くないぞ、チェッリーニア。

ソラ
ソラ

……ディレクターさん、一つ知りたいことがあります。

ベルナルド
ベルナルド

何かな?

ソラ
ソラ

あなたと交わした契約ですが、あれはまだ有効なんでしょうか?

ベルナルド
ベルナルド

それはあれだね――

ソラ
ソラ

こうしてテキサスさんと再会することはできましたが、引き続き劇団に所属させて頂きたいんです。

ベルナルド
ベルナルド

……ほう?

ベルナルド
ベルナルド

てっきりその契約の破棄を言い渡してくるのかと思っていたよ、ソラ殿。

ソラ
ソラ

……ファミリー同士の闘争なら、あたしは何も力にはなれません。

ソラ
ソラ

テキサスさんがもしこんな混乱した状況の中であたしたちを守ることになっても、きっとすごく難しいことでしょう。

ソラ
ソラ

それにあたし、ディレクターさんは少なくとも約束は守る人だって信じていますから。

ソラ
ソラ

ですので率直に言いますよ、ここに残ってあなたたちの人質になってあげます。

ベルナルド
ベルナルド

君の勇敢さにはいつも心を動かされてしまうな、ソラ殿。

ベルナルド
ベルナルド

だが、そう強張る必要もない。

ベルナルド
ベルナルド

ソラ殿、私は何も君を責め立てるつもりでここへ呼んだわけではない。実際あの劇場での騒動は、まあロッサーティへの挨拶みたいなものだ。

ベルナルド
ベルナルド

君が出した成果ならすでに十分、私の想像を遥かに超えるものだったよ。

ベルナルド
ベルナルド

だからだね――

ベルナルド
ベルナルド

私と君が交わした契約なら、ここでおしまいだ。

ベルナルド
ベルナルド

君はもう晴れて自由の身だよ。

ベルナルド
ベルナルド

チェッリーニアならもう、ベッローネの庇護を受けなくなった。

ベルナルド
ベルナルド

これで満足かな、ウォーラック君?

ウォーラック
ウォーラック

満足だと?

ウォーラック
ウォーラック

チェッリーニアを連れて帰ってきたことを忘れたとは言わせんぞ。

ウォーラック
ウォーラック

俺が知りたいのは一つだけだ。あんたは最初からそうするつもりだったんだろ?

ベルナルド
ベルナルド

君は私の息子に感謝すべきだよ。

ベルナルド
ベルナルド

君は話しの通じる相手だと、あいつから言ってくれたのだからな。

ウォーラック
ウォーラック

レオンのボン坊ちゃまがか。ハッ、なるほどそういうことね。

ベルナルド
ベルナルド

ロッサーティが発展していく勢いなら、私はずっと注目してきたさ。

ベルナルド
ベルナルド

チェッリーニアは所詮、今日この場で我々が協力できるように仕向けた土台に過ぎんよ。

ウォーラック
ウォーラック

つまり、レオンが俺のとこに来なかったとしても、いずれあんたがやって来るということか。

ウォーラック
ウォーラック

まったくこの親にしてこの子ありだな。

ベルナルド
ベルナルド

フフッ、息子にも君のその毅然とした態度を学んでもらいたいものだ。

ウォーラック
ウォーラック

だがよく聞けよベルナルド、ほかの連中だったらその手を食らうかもしれないけどな。

ウォーラック
ウォーラック

俺は違うぞ。

ベルナルド
ベルナルド

もちろんだ、ウォーラック。あんなことをやったのも、すべて君に分かってもらいたかったからだ。君にとっての障碍は一体どこの誰であるのか、とね。

ウォーラック
ウォーラック

ほう?まさか今俺の目の前に座ってるヤツがそうじゃないのか?

ウォーラック
ウォーラック

俺にドンを裏切らせようと思っているのなら、クソ食らえだ。

ベルナルド
ベルナルド

裏切らせる?それは誤解だ、私は単に気付かせてやりたいだけさ。

ベルナルド
ベルナルド

一番それをよく知っているのは君なんじゃないのかね、ウォーラック。

ベルナルド
ベルナルド

チェッリーニアが現れたことで、ジョバンナがどれだけ揺れ動いたことか。

ベルナルド
ベルナルド

シラクーザ人なら誰しもがサルヴァトーレのことを尊敬しているが、尊敬は盲信を意味することではないぞ。

ベルナルド
ベルナルド

サルヴァトーレの時代なら七年前に幕を閉じた。なのに君たちは、今も甘んじてジョバンナに付き添い、彼が残した遺産を守り抜こうとしているのかね?

ベルナルド
ベルナルド

君たちならもっと高く、遠くへ飛び立つことができたはずなのに。

ウォーラック
ウォーラック

……ドンは全体の利益を重んじる人だ。

ベルナルド
ベルナルド

その彼女が重んじている利益は、本当に君が求めている利益なのかね?

ベルナルド
ベルナルド

かつてのロッサーティならクルビアじゃ怖い者知らず、あのテキサスとも肩を並べる存在だった。

ベルナルド
ベルナルド

それが今じゃどうだ?ここシラクーザに戻った後、十一もの他のファミリーから見下されるがままだ。

ベルナルド
ベルナルド

君の思うロッサーティは、他のファミリーを凌駕し、スィニョーラをサラ・グリッジョから引きずり下ろすことができるような存在なのではないのかね?

ウォーラック
ウォーラック

まるで俺のことをよく理解しているような口ぶりはしないでもらいたいな、爺さん。

ベルナルド
ベルナルド

君のことなら理解しちゃいないさ。だが君のような人のことならよぉく理解している、その目つきもな。

ベルナルド
ベルナルド

生きる気力もない人間が、シラクーザと言う濁り切った水の中に適応できるはずもないだろう。

ベルナルド
ベルナルド

チェッリーニアが生きてあの家から出て来たところを見てもまだ分からないのか?

ウォーラック
ウォーラック

……だとしてもだ爺さん、あんたの言ってることが正しかったとしてもだ。

ウォーラック
ウォーラック

これも全部、自分らのファミリーのためにやっていることなんだよ。

ウォーラック
ウォーラック

あんたら古いファミリーってのは、そういう仁義から外れたことには歯牙にもかけないはずだろ?

ウォーラック
ウォーラック

なんだ?シラクーザ人のプライドも所詮はその程度だったのか?

ベルナルド
ベルナルド

まだ誤解しているようだな、ウォーラック。

ベルナルド
ベルナルド

私が君をここへ呼んだのは、君にも一つチャンスを共有したかったからだ。

ベルナルド
ベルナルド

今あるシラクーザの秩序を覆し、新しい秩序を建てる機会をね。

ウォーラック
ウォーラック

……

ウォーラック
ウォーラック

それがなんでロッサーティなんだ?

ベルナルド
ベルナルド

六十年前、スィニョーラはラテラーノから“銃と秩序”を持ち帰った。

ベルナルド
ベルナルド

今じゃ多くの人たちは、サラ・グリッジョは十二ファミリーが共に建てた組織だと思い込んでいる。

ベルナルド
ベルナルド

だがその十二ファミリーがスィニョーラに、如何にしてそこに座らされてしまったのかということは、すっかりと忘れたままだ。

ベルナルド
ベルナルド

我々はね、絶対的な力によってそこに座らされたのだよ。

ベルナルド
ベルナルド

アルベルトは時機の判断に固執し過ぎた、慎重になり過ぎたのだ。

ベルナルド
ベルナルド

スィニョーラに噛みつく際、私が欲しいのはそんな慎重な盟友なんかじゃない。私が欲しいのはね――

ベルナルド
ベルナルド

私と同じように、今ある秩序を覆そうと思っている友人らなのだよ。

ベルナルド
ベルナルド

それをよぉく考えてみてくれたまえ、ウォーラック。

ベルナルド
ベルナルド

今がその絶好のチャンスなのだからな。

ウォーラック
ウォーラック

……

(ウォーラックが電話を掛ける)

ウォーラック
ウォーラック

ドンはいるか?

???
ロッサーティファミリーのメンバー

部屋にいます。

ウォーラック
ウォーラック

……

ウォーラック
ウォーラック

なら伝えてくれ、これからチェッリーニアのあの友人らを誘拐してチェッリーニアを殺る。

???
ロッサーティファミリーのメンバー

……そこまでする必要はあるんですか?

ウォーラック
ウォーラック

ならあんたはこう聞くべきだな――

ウォーラック
ウォーラック

ロッサーティ、本当にこのままでいいのか、だ。

クロワッサン
クロワッサン

なあ、ホンマに昨日会ったあの人、そんなにすごい人なんか?

エクシア
エクシア

ホンマホンマ、多分そうだよ!

クロワッサン
クロワッサン

でもそんなすごい人、ホンマにこの街におるんやろか?

エクシア
エクシア

普通じゃない?アタシだったらそうするけど!

クロワッサン
クロワッサン

……あんたに言われたら妙に説得力を感じてまうわ。

クロワッサン
クロワッサン

でもなして裁判所におるって分かったんや?

エクシア
エクシア

それはね……あっ、いた。

エクシア
エクシア

だってほら、最後にああ言ったじゃん。えっとー、普段は教会にいないけど、裁判所にはいるよ、的な?

エクシア
エクシア

だよね、お爺ちゃん!

アジェニール
アジェニール

……

エクシア
エクシア

あれ、お爺ちゃん?

アジェニール
アジェニール

Zzz……Zzzz……

クロワッサン
クロワッサン

ウチらあんま……邪魔せんほうがええんやない?

アジェニール
アジェニール

ふがッ……んぅ?

アジェニール
アジェニール

おや、君たちか。

エクシア
エクシア

こんにちはー!

エクシア
エクシア

ちょ~っとだけ教えを乞いに来ましたー。

アジェニール
アジェニール

フフフ、おぉそうかそうか、まあ座りなさい。若者との会話なら大歓迎だよ。

クロワッサン
クロワッサン

ウチらのある友だちが、なんかとあるファミリーとの約束のせいで向こうに手を貸さなアカン状況にあるんです。

クロワッサン
クロワッサン

それでなんとかする方法がないか知りたくて。

アジェニール
アジェニール

君たちのその友人はテキサスという名前だね?

クロワッサン
クロワッサン

……うん。

アジェニール
アジェニール

聞く限りじゃ、ベルナルドは約束を守る男だ。

アジェニール
アジェニール

いちファミリーのドンとして、彼がそんな約束を破るとは思わないがね。

クロワッサン
クロワッサン

でも、今この街で起こってるのってスィニョーラ・シチリアに対する挑戦なんやろ?

クロワッサン
クロワッサン

ウチら……そこまで複雑なことに手を挟める余地とか方法がないっちゅーか、正直どうでもいい……

クロワッサン
クロワッサン

ただせめて、テキサスはんだけはスィニョーラの報復の対象にはなってほしくないねん。

アジェニール
アジェニール

……

アジェニール
アジェニール

あの時のスィニョーラは、それはもうとてもサルヴァトーレに一目を置いていた。だがそれぐらい、ジュゼッペの行いにも怒りを抱いていた。

アジェニール
アジェニール

これもすべて、彼女が定めた秩序へ極めて直接的な挑発を行ったからだよ。

アジェニール
アジェニール

シチリアーナは秩序内での挑戦ならなんであれ受け付けてくれるが、その秩序の破壊だけは断固として許さんのでな。

クロワッサン
クロワッサン

つまりそれって……秩序の破壊行為に対しては情け容赦がないってこと?

アジェニール
アジェニール

……私もかつてはそう思っていたよ。

アジェニール
アジェニール

だが所詮は人が建てた秩序だ、そこに絶対などというものはない。

アジェニール
アジェニール

チェッリーニアとまったく関係ない君たちの側面を見ることだってそうだ。

アジェニール
アジェニール

たまたまここで同族と出会えたこともな。

エクシア
エクシア

えへへ!

アジェニール
アジェニール

シチリアーナの統治よりも前に、ここシラクーザにも秩序は存在していた。

アジェニール
アジェニール

ただし、ファミリーたちが信奉していた秩序はすべて自分たちのものでな。みなそれぞれ異なる秩序を持っていたものだから、自ずとひたすらに相争ってきた。

アジェニール
アジェニール

シチリアーナがしたことは、そんな秩序を破壊することではない。

アジェニール
アジェニール

むしろファミリー同士の秩序を一つにまとめあげたのだ。

アジェニール
アジェニール

それぞれのファミリーもまた、みな一つのファミリーへとなった。

アジェニール
アジェニール

そして、シラクーザはシラクーザになったのだよ。

アジェニール
アジェニール

これがどういう意味なのか分かるかな?

クロワッサン
クロワッサン

えっとつまり……シラクーザがスィニョーラに支配されようがされていまいが……どっちもあんまり変わんないってことか?

アジェニール
アジェニール

その通り。

アジェニール
アジェニール

過去シラクーザに存在していた問題は消えたわけではない。私も私たちも、みなそのことをよく分かっている。

アジェニール
アジェニール

しかしそんな問題も、スィニョーラのところに赴けばすべて解決ということだ。

クロワッサン
クロワッサン

それってスィニョーラに会わなきゃならないってことやろ……ウチらには難しすぎるって。

アジェニール
アジェニール

この点に関してだけは、残念だが君たちの力にはなってやれない。

アジェニール
アジェニール

しかし彼女のこととなれば方法がないわけでもないよ。

アジェニール
アジェニール

ただ――

クロワッサン
クロワッサン

ただ?

アジェニール
アジェニール

ただ、少々その対価が大きすぎるのかもしれんな。

ジョバンナ
ジョバンナ

……

書記
ロッサーティファミリーのメンバー

あの、ドン?

ジョバンナ
ジョバンナ

……うん?

書記
ロッサーティファミリーのメンバー

昨晩から、ずっとそのネックレスを弄ってますよね。

ジョバンナ
ジョバンナ

ああこれ?これ、スィニョーラから貰ったものなの。

ジョバンナ
ジョバンナ

テキサスの一件の後始末と、クルビアのファミリーをシラクーザへ連れ戻してくれた際のお礼としてね。

書記
ロッサーティファミリーのメンバー

えっ、それってそんなに貴重なものだったんですか……

書記
ロッサーティファミリーのメンバー

もしかしてこのタイミングでそれを使うおつもりで?

ジョバンナ
ジョバンナ

……私もどうしようか迷ってるのよねぇ。

ジョバンナ
ジョバンナ

それでさっき、ウォーラックがチェッリーニアの友だちに手を出すって言ってたけどホントなの?

書記
ロッサーティファミリーのメンバー

はい、例の友人ら数人は今出かけているみたいでして。彼女らが帰ってくる際に、待ち伏せしていた人たちがやると。

ジョバンナ
ジョバンナ

……

(ジョバンナが上着を羽織る)

書記
ロッサーティファミリーのメンバー

ドン、どちらに?

ジョバンナ
ジョバンナ

チョコを買いに行ってくる。

カポネ
カポネ

やれやれ、やっぱりお前の言う通りだったな。

カポネ
カポネ

どこもかしこも、ロッサーティの人間はあちこちに潜んでいやがる。

カポネ
カポネ

ペンギン急便の連中、戻ってきたらひどい死に方をするんだろうなぁ。

カポネ
カポネ

しかし一つ不可解なところがある、ラップランド。

ラップランド
ラップランド

何かな?

カポネ
カポネ

ロッサーティがいずれテキサスに手を出すのは俺も分かっていたさ。

カポネ
カポネ

だがお前はサルッツォの人間だろ?なんでガンビーノにあのサンクタの後をつけさせて、俺たちはここでそいつらの家の留守番をしていなきゃならねえんだ?

カポネ
カポネ

お前が友情のためにここまでするような人間とは思わなかったぜ。

ラップランド
ラップランド

ボクがそんなことをする人間に見える?

カポネ
カポネ

まったく。

カポネ
カポネ

だから気になるんだ、お前一体何がしたいんだよ?

カポネ
カポネ

トラックで裁判所に突っ込んで、テキサスの罪を晴らすために自分から罪なんか認めて。サルッツォとベッローネの強硬手段も一緒に釣り上げてよ。

カポネ
カポネ

なんであの両家がおっ始めないで手を組んだのかは分からねえが、お前だったら絶対理由ぐらいは知っているはずだ。これがベッローネを、あの女を助けていることだって。

カポネ
カポネ

なんなら昨日の襲撃でも一度あの女に手を貸しただろ。

カポネ
カポネ

お前、あの女にシラクーザは泥沼で、誰も逃げられやしないことを証明してやりたいんだろ?

カポネ
カポネ

俺から見りゃ、今のお前は単にその泥沼からあの女を助け出しているだけだぜ。

ラップランド
ラップランド

もし、彼女が大事にしている人たちを何人か殺して、彼女が不快に思うようなことをしなきゃ、それを証明することができなければの話だ。

ラップランド
ラップランド

結局それはボクの変に偏った固執でしかなく、事実じゃない。

ラップランド
ラップランド

事実というのはね、たとえ横で見ているだけでも勝手に起こってしまうものなのさ。

ラップランド
ラップランド

でもそれだけじゃ全然足りないんだ。

ラップランド
ラップランド

ボクは必ず、彼女を邪魔しないと同時に彼女を助けてやらなきゃならないんだよ。そうしなきゃ、彼女に分かってもらえないんでね――

ラップランド
ラップランド

自分がしてきた足掻きがどれだけ無駄なことだったのかを。

カポネ
カポネ

……それでお前は満足するのかよ?

ラップランド
ラップランド

さあね。でもこれ以外に方法はないかな。

カポネ
カポネ

それはお前もどうすりゃいいのか分からないって、俺に言ってるようなもんだぜ。

ラップランド
ラップランド

そうだね、そこは否定しないよ。

ラップランド
ラップランド

でもねカポネ、キミもそろそろガンビーノみたいに一つの事実を認めるべきだよ。いくらボクからあれこれ聞き出そうとしても、キミらが欲しがってる答えは絶対に出ないよ。

カポネ
カポネ

……お見通しか。

ラップランド
ラップランド

彼はベッローネの一員になってもう一度成り上がろうとしているけど、キミはどうなんだい?

ラップランド
ラップランド

今もこんなとこで突っ立って、本当にボクのペットにでもなったつもり?

ラップランド
ラップランド

それとも、ボクの行く道を自分も辿りたいと思っているのかな?

カポネ
カポネ

……

ラップランド
ラップランド

そんな期待はやめときなよ、でなきゃキミをぶっ殺しちゃうからね。

ラップランド
ラップランド

ボクの道を歩いていいのはボクだけだ。

カポネ
カポネ

じゃあテキサスはどうなんだ?

ラップランド
ラップランド

テキサスは、もしかしたらこの道そのものなのかもしれないね。

カポネ
カポネ

フッ。

カポネはしばらくの間黙り込み、そして振り向きざまに立ち去った。

ラップランド
ラップランド

おや、これは予想外なサプライズだね。

(ジョバンナが通りかかる)

ジョバンナ
ジョバンナ

ここに来たことはないけど……でも間違いないわ。

ジョバンナ
ジョバンナ

ここがきっと、ペンギン急便のアジトね。

ジョバンナ
ジョバンナ

……

(ジョバンナの携帯が鳴る)

ソラ
ソラ

カタリナさん。

ジョバンナ
ジョバンナ

ソラちゃん……あぁ、そうだった、電話番号を渡したんだもんね。

ソラ
ソラ

もしかしてジョバンナさんって呼んだほうがよかった?

ジョバンナ
ジョバンナ

……カタリナでお願い。

ジョバンナ
ジョバンナ

この名前、結構気に入ってるから。

ソラ
ソラ

シラクーザのファミリーの人間って、なんでみんなして劇場で働きたがるんですか?

ジョバンナ
ジョバンナ

そりゃいつも殺しをやっているわけじゃないからね。

ジョバンナ
ジョバンナ

今そっちはみんな揃ってるの?

(マフィアたちがペンギン急便のアジトを取り囲む)

ジョバンナ
ジョバンナ

……

ソラ
ソラ

カタリナさん?

ジョバンナ
ジョバンナ

なんでもない。

ジョバンナ
ジョバンナ

ねえソラちゃん、あなたたちペンギン急便のことについて、少し教えてもらえないかしら?

ソラ
ソラ

え?

ジョバンナ
ジョバンナ

たとえば、ペンギン急便って会社はどうやって立ち上げられたのかとか、チェッリーニアはいつそこに入ったのかとか。

ソラ
ソラ

……あたしもよく分からないんだよね。あたしがテキサスさんに助けられた時には、もうペンギン急便はあったから。

ソラ
ソラ

ペンギン急便はテキサスさんと出会ってから、二人で相談して立ち上げたんだって、ボスから何回かは聞いたことがあったけど。

ソラ
ソラ

あっでも、あたしが入った後に起った出来事についてだったら、多すぎて全部教えられそうにないかな。

ソラ
ソラ

だってあたしたち、もう何年も一緒に過ごしてきたから。

ジョバンナ
ジョバンナ

そう……じゃあいつかじっくり、あなたたちと話しができるといいわね。

ジョバンナ
ジョバンナ

色々とチェッリーニアに関することを教えてあげられるわよ。

ジョバンナ
ジョバンナ

こっちも龍門に行ったチェッリーニアのことも知りたいし。

ソラ
ソラ

もしいつか龍門に来ることができたら、絶対あたしたちが色んなところに連れていってあげるね。

ジョバンナ
ジョバンナ

ホントに?

ジョバンナ
ジョバンナ

こんな正体の私でもいいの?

ソラ
ソラ

テキサスさんの昔の大親友だってことしか、あたし知らないからね。

ジョバンナ
ジョバンナ

……龍門であなたたちみたいな優しい友だちができて、チェッリーニアは本当にラッキーな人ね。

ソラ
ソラ

こっちこそ、シラクーザでカタリナさんみたいな友だちをいつまでも思ってくれる友だちができて、テキサスはすごくラッキーな人だと思うよ。

ジョバンナ
ジョバンナ

そうだ、ソラちゃん。

ソラ
ソラ

なに?

ジョバンナ
ジョバンナ

……ついさっき、インスピレーションが降りてきたの。

ソラ
ソラ

え?

ジョバンナ
ジョバンナ

私ってばずっと、盛大な幕引きの場面ばかりを考えてきたわ。

ジョバンナ
ジョバンナ

自分の物語の中ではせめて、彼女にシラクーザ人らしく自分の幕を引かせてあげたいって、そう思ってた。

ジョバンナ
ジョバンナ

狭い路地に囲まれて終わりを迎えるとか、車の爆弾で粉々に散っていくとか、色々ね。

ジョバンナ
ジョバンナ

でも、こういった現実でよくある場面を無闇に引用し過ぎちゃうと、逆にウソっぽくなっちゃうのよ。

ジョバンナ
ジョバンナ

だから私はそういうのを避けたかった。一番シラクーザ人らしくないシラクーザ人として、私の物語の中で彼女に演じさせたかったの。

ジョバンナ
ジョバンナ

色々と頑張ってその“シラクザーノ”としてのイメージを探ってきたわ。でも結局、自分の中で定義付けることはできなかった。

ジョバンナ
ジョバンナ

だからずっと筆が進まなかったのよ。

ジョバンナ
ジョバンナ

でも今、ちょっとだけ分かったかも。

ジョバンナ
ジョバンナ

シラクーザ人なんて、そんなもの最初から存在しなかったんだって。

ジョバンナ
ジョバンナ

チェッリーニア・テキサスは最後に、あの大火事の中で姿を消し、それ以降誰にも行方を知られずに幕を閉じたんだから。

ソラ
ソラ

……カタリナさん、まさか……

ジョバンナ
ジョバンナ

帰りは気を付けてね、あなたたちのために少しだけプレゼントを用意してあげたから。

(ジョバンナが携帯を切る)

ジョバンナ
ジョバンナ

ねえウォーラック、聞き間違えじゃなければ、あなたチェッリーニアの友だちを誘拐しようとしていたはずよね。

ジョバンナ
ジョバンナ

本人たちならまだ戻ってきていないわよ、なのにそこまで大掛かりに動く必要なんてある?

ウォーラック
ウォーラック

……もしあんたが帰ってこなかったらそうしていたさ。

ウォーラック
ウォーラック

まったく失望しちまったぜ、ドン。いや、ジョバンナ。

ジョバンナ
ジョバンナ

そんなに待てなかったのかしら、ウォーラック?

ウォーラック
ウォーラック

待てる待てないの問題じゃない。なんで俺たちは待たなきゃならないんだって話だ。

ウォーラック
ウォーラック

なんであんな老いぼれからの恩恵を、いつまで甘んじて受ける側でいなきゃならないんだよ?

ウォーラック
ウォーラック

俺たちがあんたと一緒にこの国に来たのは、いつかここの主になるためってだけだ。

ウォーラック
ウォーラック

そのチャンスが今ようやく来たんだ。

ジョバンナ
ジョバンナ

あなた本当に分かってるの?自分に勝つ目があるとでも思ってるのかしら?

ウォーラック
ウォーラック

確証は得ていないさ、あの老いぼれに勝てる自信もまだない……

ウォーラック
ウォーラック

だが分かるんだよ、ベッローネは本気で新しい時代を作り上げようとしているんだって。

ウォーラック
ウォーラック

だから俺はそれに賭けてみたいんだ。

ジョバンナ
ジョバンナ

うちの面子、どのくらいそっちについたの?

ウォーラック
ウォーラック

七割ぐらいは。

ジョバンナ
ジョバンナ

残りは?

ウォーラック
ウォーラック

あとでゆっくり俺から納得させる。

ウォーラック
ウォーラック

それかあんたに納得させてもらうとか。

ウォーラック
ウォーラック

なあジョバンナ、ここで考え直せ。そしたらあんたは俺たちのドンのままだ。

ジョバンナ
ジョバンナ

……どうやら私、本当に優秀な部下を持ったわね。

ジョバンナ
ジョバンナ

でも残念。それは無理な話よ、ウォーラック。

ウォーラック
ウォーラック

あんたにとって、テキサスはそこまで大事なのかよ?ロッサーティよりも?

ジョバンナ
ジョバンナ

私はただ、こんなこと起こるべきじゃないって思ってるだけよ。

ウォーラック
ウォーラック

俺から見れば、どうしようもなく起っちまったことだけどな。

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