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【アークナイツ大陸版】イル・シラクザーノIS-10「狼の主」行動後 翻訳

(ザーロが暴れまわる)

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ザーロ、人間のやり方には関わらないと、狼の主の間で約束を交わしたんじゃなかったのか!

ザーロ
ザーロ

気が変わった、これもすべてベルナルドが俺の計画をぶっ壊してくれたからだ!

ザーロ
ザーロ

俺はヤツを六十八年も苦心しながら育ててやったのに。

ザーロ
ザーロ

なのにヤツは、自殺なんて下らねえことをして俺の勝利をふいにしやがった!

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

今……なんて言った?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父が……自殺した?

レオントゥッツォの脳裏では瞬時に、狼の主とこのゲームに対する父の考えが過った。
そして彼はハッと気づく。父が教会で自分に話してくれたことは即ち、自分を認めてくれたことでもあり――
同時に遺言でもあった。
父は最初から自死を選ぶつもりであったのだ。

ザーロ
ザーロ

狼の主を侮辱したツケはデカいぞ。

ザーロ
ザーロ

本人が死んだというのなら、代わりの対価としてそいつの血筋をこの大地から消し去ってやる。

ザーロ
ザーロ

ベルナルドの倅よ、今ここで、貴様の父がしでかしたツケを払ってもらうぞ。

ザーロ
ザーロ

ヤツの血筋、貴様の命がそのツケだァ!!!

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ツケだと?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

確かに、親父は間違っていたのかもしれない。だが親父の理想は、いつだってこの時代を変えることだった。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父はずっとファミリーのいないシラクーザを夢見て、そのために生涯を費やしてきた。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

最初の頃、親父は自分のファミリーを手段としていたんだと思っていた。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

あの時に手を出したのも、ただただタイミングが良かっただけだったんだとも。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だが今、ようやく分かったよ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父には時間がなかったんだ。このチャンスを逃せば、親父はもう二度と自分の理想を叶えることも、お前へ復讐してやることもできないと悟っていたんだ。

ザーロ
ザーロ

俺はヤツの短い人生の中で、あれだけのものを授けてやったというのに、ヤツは恩を裏切りで返してきやがったんだぞ!

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……お前には分からないさ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

お高く留まって、何もかも手中に収めたと思い込んでいる狼の主よ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父は自分の命をも駆け引きの手段にしたんだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

自分の命を代償にしてでも、お前みたいな驕り高ぶる存在に抗ってでも、自分の理想を現実するために!

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

その代償を支払うべきなのはお前のほうだ!

ザーロ
ザーロ

何も知らねえ小童が!

(ザーロとレオントゥッツォによる戦闘音)

エクシア
エクシア

よっ!テキサス、お帰り~!

エクシア
エクシア

そっちは片付いたの?

テキサス
テキサス

ああ。

テキサス
テキサス

そろそろこっちのほうも片付けておこうか。

ザーロ
ザーロ

最後のテキサス。

ザーロ
ザーロ

忘れたか、あの時シラクーザの支配から貴様を逃してやったのが誰だったのかを。

ザーロ
ザーロ

なのに貴様、今ここで俺に歯向かうつもりか?

テキサス
テキサス

私はすでにベルナルドとの約束を果たし終えた、お前にはなんの借りもない。

ザーロ
ザーロ

チッ、どいつもこいつも間抜けなヤツらばかりだ!

(爆発音)

ラヴィニア
ラヴィニア

……ベルナルドが、自殺?

ラヴィニア
ラヴィニア

どうして……?

ベルナルド
ベルナルド

 遊びはもうおしまいだ、ラヴィニア。

ラヴィニア
ラヴィニア

私にかけたあの時の言葉の意味は、そうこうことだったんですね……

ラヴィニア
ラヴィニア

ファミリーのいないシラクーザが、あなたの本当の理想だった。

ラヴィニア
ラヴィニア

どうして、それを私に教えてくれなかったんですか……

(爆発音とラップランドのアーツ音)

ラップランド
ラップランド

ちょっと裁判官さん、戦ってる時は気を逸らさないでもらえないかな。

ラップランド
ラップランド

ラップランド――

ラップランド
ラップランド

やれやれ、こんな面白い戦いがあるってのに、ボクを呼んでくれないだなんてつれないなあ、テキサス。

テキサス
テキサス

呼ばなくてもどうせ勝手に来るだろ。

ラップランド
ラップランド

ヒヒッ、まあね。

ザーロ
ザーロ

群れを離れたイヌっころが、そこをどけ!貴様には関係ない!

ラップランド
ラップランド

一ついいことを教えてやるよ、狼の主だかガキだかなんだかは知らないけど。

ラップランド
ラップランド

今このシラクーザにあるものすべてが、このボクの敵だ。

ラップランド
ラップランド

キミみたいな超常的な存在だろうと、例外ではないよ。

ザーロ
ザーロ

自惚れやがって!

ディミトリー
ディミトリー

ドン……あんたもそうだったのか?もしあんたが俺の前にいたら、あんたもレオンと同じように、キッパリと自分の理想を選ぶつもりだったのか……?

ディミトリー
ディミトリー

俺はもう……何がなんだか分からなくなっちまったよ。

(矢が複数飛んでくる)

ルナカブ
ルナカブ

死にたくなければ集中しろ。

ディミトリー
ディミトリー

あんたは――

ザーロ
ザーロ

アンニェーゼの……フッ、所詮は脆い牙だ。

ザーロ
ザーロ

俺の牙が死んだからといって、俺に歯向かえるとでも思っているのか?

ルナカブ
ルナカブ

私はベルナルドと約束したんだ、あいつのガキに手を貸すって。

ザーロ
ザーロ

ハッ、アンニェーゼも役立たずの牙を育てたもんだ。

ザーロ
ザーロ

ならばヤツにもこのゲームから退場させてもらおうか。

(爆発音)

ザーロ
ザーロ

貴様らがいくら歯向かってこようが、この俺を滅ぼすことは不可能だ。

ザーロ
ザーロ

俺に傷一つ付けることすらできていないじゃねえか。

ザーロ
ザーロ

人間ども、貴様らは都市を築き、自らをそこに閉じ込め、あたかもこの大地の主であるかのようにふんぞり返っていやがる。

ザーロ
ザーロ

たかだか道具を少し使えた程度で、調子に乗るんじゃねえぞ。

ザーロ
ザーロ

荒野を征服できたこともねえ弱っちい虫けら風情が!

エンペラー
エンペラー

レディ~~ズ、ア~ンドジェントルメ~~ン。

エンペラー
エンペラー

これからお前らが目にするのは~、龍門でのスーパスター、あっ即ちこの俺様、エンペラー様で~あらせられるぞ。

テキサス
テキサス

ボス!?

(エンペラーが近寄ってくる)

エンペラー
エンペラー

テキサス、お前の休暇はそろそろおしまいだ。

テキサス
テキサス

……なんでボスまでここに。

エンペラー
エンペラー

なんで俺がここにだって?

エンペラー
エンペラー

お前が行っちまった後、ソラたちもこぞってお前を追いかけに出て行きやがったんだ。

エンペラー
エンペラー

おかげでこの一か月、俺がどうやって過ごしてきたのか教えてやろうか?

エンペラー
エンペラー

三千年も生きてて、ここまで退屈な日々はなかったと思っちまうぐらいだよ、こっちはなァ!

エンペラー
エンペラー

誰もパーティを開いちゃくれなかったんだぞ、誰もッ!

テキサス
テキサス

……

ザーロ
ザーロ

エンペラー――

エンペラー
エンペラー

まあ待てって、ザーロ。

エンペラー
エンペラー

俺はシラクーザでテメェに指図する資格なんざねえ、なんてことが言いたいんだろうが。

エンペラー
エンペラー

ぶっちゃけ、テメェらのいざこざにはこれっぽっちも興味がねえんだ。

エンペラー
エンペラー

だがよく考えたらよ、テメェと無意味な殺し合いをするよりもだ。

エンペラー
エンペラー

テメェらのルールでテメェを打ち破ってやったほうが、清々するんじゃねえのかなって思ってな。

エンペラー
エンペラー

だからよ――

黒い影が一つまた一つとエンペラーの足元から伸びていき、次第に形あるものへと化けけていく。
ザーロはこの影たちをよく知っていた。この者たちはすべて、このゲームで敗れた狼の主たちであるからだ。
この者たちがここへ現れた理由はただ一つ。
ザーロがルールを破ったからである。
ザーロのゲームは受けて立とう、だがルールを破ることだけは断じて許されないのだ。

エンペラー
エンペラー

テメェのために、ほかで死ぬほど暇してる狼の主たちを連れてきてやったぜ。

エンペラー
エンペラー

ここで一ついい知らせがある。

エンペラー
エンペラー

Dear my friend、テメェの負けだ。

エンペラー
エンペラー

完膚なきまでに、な。

狼の主に滅びは存在しない。しかし悠久とした歳月の中、この者たちはすでに互いを牽制し、圧制し、さらにはいたぶる手段を見つけていた。
己と等しい存在たちを目の前にした時、自分の行いはすべて無意味と化したのだとザーロは悟る。
彼はしばらく黙りこくった後、ついには高らかに掲げていた首を垂れ下げたのだ。

エンペラー
エンペラー

正直さ、ザーロ。

エンペラー
エンペラー

テメェが権力のことを知り尽くして弄んでる様は、マジで見てて全身痒くなっちまうぐらいなモンだぜ。

エンペラー
エンペラー

だが今、自分を裏切ったものを全部引き裂いてやらんとばかり、あちこち当たり散らして様子を見ると――

エンペラー
エンペラー

まだ本性は残っていたんだなって、そう思っちまうよ。

エンペラー
エンペラー

でもよ、お前らほかの狼もそうなんだが、何千年もこんな下らねえゲームを遊んでて飽きたりしねえのかよ?

エンペラー
エンペラー

そろそろ俺と一緒に龍門に来て、ポーカーの一つや二つぐらい学んでみたらどうなんだ。

エンペラー
エンペラー

あぁそうそう、マージャンも悪くはねえぞ。

エンペラーの皮肉に、ザーロは耳を傾けなかった。
彼は最後に、深々とレオントゥッツォのほうを一瞥するが、身体は次第に朦朧と、曖昧となっていき、ついには風の中へと消えていった。
まるで最初から存在していなかったかのように。

テキサス
テキサス

助かったよ、ボス。

エンペラー
エンペラー

礼ならいらん。

エンペラー
エンペラー

実際俺が手を出さなくても、ほかの誰かがやっていただろうよ。

エンペラー
エンペラー

俺は彼女からいいとこを譲ってもらったってだけだ。そうだろ、べっぴんさん?

(シシリア夫人が近づいてくる)

穏やかな老婦人
シシリア夫人

べっぴんさんなんて、そう呼ばれたのも随分と久しぶりね。

穏やかな老婦人
シシリア夫人

そっちさえ良ければ、もうしばらくシラクーザで遊んでいってもいいのよ。

エンペラー
エンペラー

俺のことならエンペラーとでも呼んでくれや。

穏やかな老婦人
シシリア夫人

まあ、面白い名前ね。それにあの狼の主みたく、傲慢で無知蒙昧でもない。歓迎するわ、エンペラー。

エンペラー
エンペラー

シラクーザなら、きっと俺のことをいたく気に入ってくれると思うぜ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

す、スィニョーラ――!

シシリア夫人
シシリア夫人

狼の主たちが催したゲームはホント、見ていて滑稽だったわ。

シシリア夫人
シシリア夫人

ベルナルドの子、レオントゥッツォ。

シシリア夫人
シシリア夫人

安心してちょうだい、もう彼からちょっかいを掛けられることはないわよ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……!

レオントゥッツォは動けなかった。
この夫人がここに現れた瞬間、彼はすぐに今回の一件は――終わったんだと察しがついた。
それは何も狼の主がもたらした茶番劇だけではなく、自分たちの抗いも、ここで終わりを迎えてしまうのだと。
目の前にいるこの夫人はとても温厚そうに見えるが、レオントゥッツォの心中では予感めいたものが込み上がっていた――もしここで下手に動けば、次の瞬間には思いつく限りの最も悲惨な死に方を辿るだろうと。
しかし、もしここで縮こまっていたら、今まで貫いてきた努力と信念はすべて水の泡と化してしまうことも分かっていた。
彼はラヴィニアに目を向けるも、ラヴィニアの目からも同様の考えが見て取れる。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

見苦しいところをお見せした、スィニョーラ。スィニョーラとご対面できる場面はほかにも色々と考えてきたのだが、まさかこういった形でお会いできるとは。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

さしずめ夫人のほうは、すでにこの一連の事態を把握し、さらにはご決断をなされているかと思われる。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ただそれでも、どうか俺やラヴィニアにもう一度チャンスを与えて頂きたいんだ。

シシリア夫人
シシリア夫人

チャンスとは、どういったチャンスなのかしら?

ラヴィニア
ラヴィニア

対話のチャンスを、です。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺たちがいずれは必ず死を迎えると決まっていたとして、それでも死ぬ前に、俺たちの考えを聴いて頂きたいんだ。

シシリア夫人
シシリア夫人

……

シシリア夫人
シシリア夫人

うふふふ。

シシリア夫人
シシリア夫人

若い人たちの考えにはたくさん触れておきなさいって、よくアジェーニルに口うるさく言われてきたわ。

シシリア夫人
シシリア夫人

まったくあの人ったら、私はそこまで老いちゃいないわよ。

シシリア夫人
シシリア夫人

まあいいわ、ついてらっしゃい。そのチャンスなら、すでにあなたたち自身が勝ち取っているもの。

ラヴィニア
ラヴィニア

……あの、少し待っては頂けないでしょうか?

シシリア夫人
シシリア夫人

あら、何かしら?

ラヴィニア
ラヴィニア

その前に、ベルナルドに会っておきたんです。

シシリア夫人
シシリア夫人

ええ、構わないわよ。

ソラ
ソラ

エクシア、テキサスさん!

クロワッサン
クロワッサン

みんな大丈夫か!?

エクシア
エクシア

平気平気~!

テキサス
テキサス

……ああ。

テキサス
テキサス

お前たち、なんでこっちに来たんだ?

ソラ
ソラ

心配だからですよ。それにジョバンナさんの容態も安定してくれましたから、クロワッサンと加勢しに来たんです。

クロワッサン
クロワッサン

せやせや。でも、なんかもう終わったような雰囲気しとるな?

テキサス
テキサス

まあそんなところだ。

エクシア
エクシア

ふぃ~……なーんか物足りないって感じはあるけど、でもこれやっと心置きなくパーティを開けそうって感じかな?

テキサス
テキサス

そうだな。

テキサス
テキサス

どんなパーティを開くかは、先にそっちで話し合っていてくれ。

ソラ
ソラ

テキサスさん、どっか行くんですか?

テキサス
テキサス

トイレだ。

ラップランド
ラップランド

トイレならそっちの方向じゃないよ。

テキサス
テキサス

分かってる。

ラップランド
ラップランド

もしかしてこれで一件落着、ホッとしたって感じなのかな?

テキサス
テキサス

まだ目の前にこのデカいのが詰まっているだろ。

ラップランド
ラップランド

フッ、ちょっと歩こうか?

テキサス
テキサス

ああ。

ラップランド
ラップランド

そうそう、テキサス。

ラップランド
ラップランド

キミがシラクーザに戻る前、実はスィニョーラから手紙を受け取っていたんだ。

テキサス
テキサス

そうなのか。

ラップランド
ラップランド

何が書かれていたと思う?

テキサス
テキサス

興味ない。

ラップランド
ラップランド

つれないな~。「ボッカ・ディ・ルーポに入らないか」ってお誘いが来ていたんだよ。

テキサス
テキサス

ボッカ・ディ・ルーポ……

ラップランド
ラップランド

ボクに首輪を括りつけたいんだろうねぇ。

ラップランド
ラップランド

でもあの手紙、ボク燃やしちゃった。

ラップランド
ラップランド

これでまた、シラクーザのほうから面倒なのがやって来るのかな~とは思っていたんだけど。

ラップランド
ラップランド

まさかキミが突然シラクーザに戻ることになるとはね

ラップランド
ラップランド

キミがすでにシラクーザへ行っちゃったって聞いた時、ボクがどれだけ驚いたか分かる?

テキサス
テキサス

はぁ……

ラップランド
ラップランド

で、もう決まったの?

テキサス
テキサス

ああ。

テキサス
テキサス

ここに残って、レオントゥッツォとラヴィニアに協力する。

テキサス
テキサス

そっちはどうなんだ?

ラップランド
ラップランド

ボクも決まったよ。

テキサス
テキサス

お前、自分の家で大暴れしたようだな。

ラップランド
ラップランド

父親と別れの挨拶を済ませただけさ。

ラップランド
ラップランド

……ねえテキサス、本当はボクがキミに何を求めているのかを分かっていないんじゃないの?

テキサス
テキサス

……分かる時はある。

テキサス
テキサス

でも、分からない時もある。

テキサス
テキサス

まあ少なくとも、今のお前が達観してることぐらいは分かるさ。

ラップランド
ラップランド

へぇ、ボクに気を掛けてくれる時もあるんだね?

テキサス
テキサス

邪魔臭いのは相変わらずだけどな。

肩を並べて歩いていた二人であったが、何やら心が通じたかのように、二人していつの間にか広々とした空間の両端に向かった。

ラップランド
ラップランド

少しは落ち着いてブラブラしたってのに、結局はこうなっちゃうんだね。

テキサス
テキサス

そうだな。

ラップランド
ラップランド

まだ憶えてるかな、テキサス?

ラップランド
ラップランド

七年前、火に包まれた豪邸の前で、今あるすべてから逃れようと、キミはボクのところへ歩み寄ってきたんだ。

ラップランド
ラップランド

あの日、ボクは完膚なきまでに負けてしまったよ。

ラップランド
ラップランド

それが七年後、雨の降る公園の中で、キミはまた同じようにボクに近づいてきた。今度は無謀にもシラクーザとかいう国に挑むためにね。

ラップランド
ラップランド

だから今日、ここでキミをぶっ殺しあげるよ。

テキサス
テキサス

そのセリフ、そのままこっちに返してやろう。

公園の中で、刃の交わる音が何度も響き渡る。
両者ともに、動きにはまったく無駄がなく、その一つ一つが相手の命を奪うために繰り出されている。

ラップランド
ラップランド

詩的に表現するんだったら、ボクは言うなればキミの過去だ、テキサス。

ラップランド
ラップランド

誰もこの泥沼から逃れることはできないって、ボクはそう堅く信じているからね。

ラップランド
ラップランド

キミは一度逃げたんだ、自分の過去から。でも再びここシラクーザに戻ってきて、徹底的に過去と見切りをつけると決心した。

ラップランド
ラップランド

そして全員に、自分ならこの泥沼から抜け出す能力と資格があると証明してくれた。

ラップランド
ラップランド

挙句の果てにはあの幼いオオカミのために、この泥沼を変えるために自らここに残るなんてことを言い出すとはね。

テキサス
テキサス

私はお前が言ってるほど偉い人間じゃない。

テキサス
テキサス

私の夢は最初から一つだ、仲間たちと一緒に普通の暮らしを過ごす。

テキサス
テキサス

もしそれを壊そうとする者が現れれば、私はそれを守るだけだ。

テキサス
テキサス

何も難しいことじゃない。

[

ジョバンナ
ジョバンナ

ずっと、私は本当の意味であなたを理解できてはいなかったのね、チェッリーニア。

ジョバンナ
ジョバンナ

シラクーザに嫌気が差していたあなたも、クルビアに反感を覚えていたあなたも、私は気付いてあげられなかった。

ジョバンナ
ジョバンナ

今思うと、私はまるで自分の祖母みたいね。

ジョバンナ
ジョバンナ

お婆ちゃん、ずっとサルヴァトーレのお爺様が考え直してくれるのを待っていたのよ。

ジョバンナ
ジョバンナ

でもその間、一度も本人に気持ちを聞こうとはしなかったし、諫めようともしなかったわ。

ジョバンナ
ジョバンナ

その点で言えば私も同じね。私もさも当然みたいに、昔のひと時がずっと続いて行くんだと思っていた。

ジョバンナ
ジョバンナ

でも今考えると、なんて図々しかったんだろう。

ジョバンナ
ジョバンナ

私があなたの傍に残っても、あなたはきっとまったく意に介さないでしょうね。私ももう少しは、ソラちゃんとも話がしたいし。

ジョバンナ
ジョバンナ

でも、今の私にまだそんな資格はないと思う。

ジョバンナ
ジョバンナ

だからせめて、いい加減この『テキサスの死』の第三幕に、チェッリーニア・テキサスの終わりにピリオドを付けさせてあげないとね。

ジョバンナ
ジョバンナ

あなたは自由よ、チェッリーニア。

ジョバンナ
ジョバンナ

誰だってあなたを決めつけられはしないわ。

ラップランド
ラップランド

そうかい。なら言い方を変えよう。

ラップランド
ラップランド

テキサス、キミはボクの悪夢だ。

ラップランド
ラップランド

キミはいつだってボクの予想を裏切ってきた。

ラップランド
ラップランド

いつだってボクよりも先を進んできた。

ラップランド
ラップランド

いつだってボクにはできない決断を下してきた。

ラップランド
ラップランド

こうして思いを吐き出すことができたのも、今ボクもキミみたいに一歩を踏み出せたからだよ。

ラップランド
ラップランド

ああ、キミの言う通り。

ラップランド
ラップランド

何も難しいことじゃなかったよ。

ラップランド
ラップランド

シラクーザのすべてを憎んでいるのなら、ボクはそいつをぶっ壊してやるべきだった。

ラップランド
ラップランド

でも結局、ボクにそうさせたのもやっぱりキミだったよ。

テキサス
テキサス

だからああして父親と別れを告げ、私の前に立ちはだかってきたんだな。

テキサス
テキサス

自分の過去とケリをつけるために。

ラップランド
ラップランド

そうさ、キミと一緒だ。

テキサス
テキサス

……

テキサス
テキサス

なら、何もこうして殺し合う必要はないはずだ。

ラップランド
ラップランド

でもこうやって起こってしまったのだから仕方がないじゃないか。

ラップランド
ラップランド

昔からずーっと、今に至るまで。ボクたちは口に出さずとも、相手を殺すことが自分にケジメを付けることだってのを分かっていた。

ラップランド
ラップランド

それが相手に対する餞別であり、一番の別れを告げる方法であるということもね。

ラップランド
ラップランド

で生き残った側は、それを経てより強い存在になれるんだって。

決してラップランドの実力がテキサスに勝っているわけではなく、かといってテキサスの腕が鈍ったわけでもない。
七年前のあの対決も、決してラップランドがテキサスよりも弱かったから敗れたわけではない。
この両者の実力は、あの時からずっと互角であったのだ。
ならばこの両者の勝敗を決する要素とは即ち、多少の運を除けばただ一つ――意志のみである。
七年前、ラップランドは意志において敗北を喫した。
だがファミリーと決別した後、彼女はテキサスに勝るとも劣らない強い意志を手にした。
そのためどちらが勝っても負けても、決して驚くようなことではない。

(テキサスがラップランドから一撃を受ける)

テキサス
テキサス

くッ……

ラップランド
ラップランド

おしまいだ。

(ソラが駆け寄ってくる)

ソラ
ソラ

テキサスさーん!

テキサス
テキサス

……来るな、ソラ。

テキサスはソラに一瞥し、またすぐさまゆっくりと目を閉じた。
ボクはすでに十分テキサスのことを理解できていると、この時ラップランドはそう思っていた。
ほかに理解できていない箇所なんてどこにある?
シラクーザに嫌気を差していたテキサスも、この国と戦うと決意したテキサスも見てきた。
いつもいつも、テキサスは自分の予想を裏切ってくる。
しかし今回ばかりは、いよいよ裏切ってくることもないだろう。
生きるか死ぬかに、第三のエンディングなんてものはないのだから。
だが今回、ラップランドがテキサスの目から屈しない意志を読み取った時、彼女は気付いてしまったのだ。ボクはまた間違ってしまったのか、と。
最後の最後に、ラップランドという名の存在が自身のために設けたエンディングの中、テキサスはまたもや自身の予想を裏切ってきたのだ。

ラップランド
ラップランド

……ハッ、そういうことね。

ラップランドは今回の殺し合いを、ある種の決別として、ある種の解放として見ていた。
もし自分が負けたら、素直に自分の死を受け入れよう。
だがもし自分が勝てば、もはや何者にも束縛されることはなくなる。
“テキサス”という名の軛が彼女の内側から外れてしまった際、“ラップランド”という名の狂人もまた、この世に生まれてきてしまうだろう。
だが、今語ったことは何も起こりはしなかった。
なぜならば――

ラップランド
ラップランド

テキサス、やっぱりキミはテキサスだったんだね。

テキサス
テキサス

当たり前だ。

テキサス
テキサス

そういうお前はどうなんだ?

ラップランド
ラップランド

どうやらボクも、ただのラップランドでしかないみたいだよ。

そう言って、ラップランドはテキサスに手を伸ばす。
その手をテキサスは握り返す。

ラップランド
ラップランド

ねえテキサス、ボクはキミの友だちなのかな?それともキミの敵なのかな?

テキサス
テキサス

敵、だが友だちでもある。

ラップランド
ラップランド

そっ、じゃあ行こうか。

ラップランド
ラップランド

その友だちらしいことを、ボクにもさせてよ。

テキサスは傍にいる三人に向けて頷いた後、ラップランドと一緒にサラ・グリッジョが構えている方向に向かっていった。
とても自然体で、あたかも最初からそうしようとしていたかのように。

ラヴィニアが教会へと入り、静かにベンチに座り込んでいる遺体を目にした時、彼女はようやく気付いた――
ベルナルドは死んでしまったのだ、と。

ラヴィニア
ラヴィニア

……

この厳しい父でもあり、長兄でもあり、自身の生涯に多大な影響を及ぼしてきた人の傍で、ラヴィニアはしばらく静かに佇んだ。
結局のところ、彼女は何も言葉をかけなかったのである。
しかし彼女はベルナルドの垂れ下がってしまった手を握る。まるで彼に何かを伝えたかのように、また彼から何かを受け取ったかのように。
そしてクルリと、身を翻して立ち去っていった。
ベルナルドは去った。であれば彼女は、ただ前へ進み続けるのみ。

シシリア夫人
シシリア夫人

知り合いから聞かされているわ、あなたのやってること。

シシリア夫人
シシリア夫人

そこで一つ聞きたいことがあるの。

シシリア夫人
シシリア夫人

今、この大地にある多くの国々は時代に順応し、変化を求めている。

シシリア夫人
シシリア夫人

その変化を求める理由も、最初はみんな己の至らぬ部分や一皮剥けなければならないことと気付いてしまったからよ。

シシリア夫人
シシリア夫人

なら、ここシラクーザもそんなことをする必要があるのかどうか。シラクーザは本当に、変化を遂げる必要があるのかしら?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

スィニョーラは……ファミリーは存在して然るべきだとお考えなのだろうか?

シシリア夫人
シシリア夫人

存在して然るべきものなんてないわ。しかし、ファミリーは私が生まれるよりもずっと前、すでにこの地に幾百幾千年は存在し続けてきた。

シシリア夫人
シシリア夫人

歴史を否定することなんて、ましてや存在した物事を否定することなんて私たちには無理よ、違う?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だからあなたはサラ・グリッジョを創り上げた時、ファミリーの存続を選んだ。たとえすべてのファミリーを自分の手に委ねることになっても。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺は何も、あなたのその選択を否定するつもりではないんだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

むしろあの時代なら、あなたの選択は一番正しいとさえ思っている。

シシリア夫人
シシリア夫人

じゃあ今は違うのかしら?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ああ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

クルビアのファミリーを帰属させたことで、先進的な技術と思想がこの国に持ち込まれた。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ファミリー形式の統治はそれにより、すでにクルビア人によって穴だらけにされてはいるが、誰もそのことを察し付いてはいない。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父のやり方なら、過激な面があったのは否めないさ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父の思想の原点は俺のとは違う。だから俺と親父のやり方も、大きく差が開いてしまった。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だが、少なくとも一つのことだけは同じだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺も親父も――

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

シラクーザにファミリーはもう必要ないと思っている。

シシリア夫人
シシリア夫人

なら、あなたはどうするの?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……一番簡単な方法は、ここであなたと雌雄を決することだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だがそれは俺の親父のやり方だ、俺のじゃない。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺だったら……

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

スィニョーラから一つ、ぜひとも都市を貸して頂きたいんだ。

シシリア夫人
シシリア夫人

魅力的な提案じゃないの。

シシリア夫人
シシリア夫人

新しい都市となれば当然、そこに新しい血を注いでやらなくちゃね。

シシリア夫人
シシリア夫人

でも、今のあなたは独りよ。

シシリア夫人
シシリア夫人

それでどうやって、あなたは自分の目標を達成できるって信じてやれるのかしら?

スィニョーラが言い終えるや否や、サラ・グリッジョの大扉が突如と開かれた。

シシリア夫人
シシリア夫人

あらあら?

シシリア夫人
シシリア夫人

チェッリーニア、最後のテキサスじゃないの。

シシリア夫人
シシリア夫人

こちらへいらっしゃい、よく顔を見せてちょうだい。

シシリア夫人
シシリア夫人

……ホント、あなたのお爺様にそっくりね。

テキサス
テキサス

……どうも。

シシリア夫人
シシリア夫人

どうやらジョバンナがそのネックレスをあなたに譲ったみたいじゃないの。

シシリア夫人
シシリア夫人

望みは何かしら?

シシリア夫人
シシリア夫人

もし龍門に帰りたいのであればそれでも構わないわよ。シラクーザは今後二度とあなたに関わらないと約束するわ。

テキサス
テキサス

……

テキサス
テキサス

ロッサーティファミリーを見逃してやってほしい。

シシリア夫人
シシリア夫人

あら、予想外の返答ね。

シシリア夫人
シシリア夫人

ウォーラックはジョバンナに暗殺をしかけ、あなたもすでに何度も何度も彼に殺されかけてきた。

シシリア夫人
シシリア夫人

なのに彼を見逃してやるつもりなの?

テキサス
テキサス

あいつらもただ、自分たちのやり方で必死に生きようとしていただけなんだ。

シシリア夫人
シシリア夫人

彼らのことなら、私も最初から手を出すつもりはなかったわよ。だからこのネックレスは、まだ取っておいても構わないわ。

シシリア夫人
シシリア夫人

シラクーザとは永遠に関わらない権利、今からそれと交換してやっても遅くはないわよ。

テキサス
テキサス

……

テキサスはレオントゥッツォの傍へ近づき、そしてその横の席に腰かけた。

テキサス
テキサス

それなら今はまだ必要ない、もう少しだけ休みを延長しようと思っているんだ。

シシリア夫人
シシリア夫人

そう。じゃああなたはどうなの、ラップランド?

シシリア夫人
シシリア夫人

群れから離れた一匹オオカミ、サルッツォの裏切者よ。

ラップランドもまた、ニコニコしながらテキサスの傍へと近づいていく。

ラップランド
ラップランド

ヒヒッ、ボクの考えならそこまで難しいものじゃないさ。

ラップランド
ラップランド

こいつらと一緒に、今のシラクーザをぶっ壊す。

ラップランド
ラップランド

ただ、ボクのやり方はこいつらよりもちょっと乱暴なもんだから、そこだけが違いかな。

(ラヴィニアが部屋に入ってくる)

シシリア夫人
シシリア夫人

まあまあラヴィニア裁判官、私の意志の代弁者。あなたの考えも、私に聞かせてもらえないかしら?

ラヴィニアは堂々と、席に座るレオントゥッツォの後ろに寄り添っていく。

ラヴィニア
ラヴィニア

あなたのご意志は、ここシラクーザのすべてでありました。

ラヴィニア
ラヴィニア

けど今から、私はそれを変えようと思っております。

シシリア夫人
シシリア夫人

私は間違っていたと、そう思ってるのかしら?

シシリア夫人
シシリア夫人

正しい人間は存在し得ないと、そう思っているだけです。

目の前にいる四人の若者を見やるスィニョーラ・シチリアーナ。
一人は、シラクーザ最強のファミリーの出であり、周囲の環境に影響され、文明というものに憧れを抱くも、その身分に囚われてしまったがために自らを欺いた。
一人は、その出は平凡でありながらも、機運に恵まれファミリーからの支持を得られて生き残ることができたが、そのせいもあって己に疑いが生じてしまい、また同じく自らを欺くことを選んでしまった。
一人は、シラクーザ最古のファミリーの出でありながらも、その身にこの地のすべてを強いられたことで、さながら狂乱に抗い続けた。
そして一人は、クルビアで栄華を極めたファミリーの出でありながらも、ファミリーというものに倦厭し、誰にも知られることなく静かに姿を晦ました。
この者たちのシラクーザを変える理由はどれも異なってはいるが、それでもこの者たちはここへ一堂に会した。

シシリア夫人
シシリア夫人

私の寿命にも限りはあるけれど、それでもまだ数十年もの猶予は残されているわ。

シシリア夫人
シシリア夫人

私が目を閉じるその瞬間まで、シラクーザは私がもたらした安寧を享受し続けることができるでしょう。

シシリア夫人
シシリア夫人

そこで若者よ、あなたはどうするのかしら?

シシリア夫人
シシリア夫人

あなたは父を土台に、より効率的で、より公平な体制を追い求めようとしているけれど。

シシリア夫人
シシリア夫人

あなたが選んだ道は、果たして本当に正しいと言えるのかしら?

シシリア夫人
シシリア夫人

私がここでシラクーザをあなたに渡したら、あなたはシラクーザをより良く導き、よりよい国にしてやれると、この私に約束をしてくれるのかしら?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……約束はできない。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だが今、あなたがここに座って、俺たちの考えに耳を傾けてくれているのと同じように。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

もしその時、何者かが俺のやり方に疑問を呈してきたのであれば。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺もここに座って、そいつの意見に耳を傾けてやりたい。

それを聞き、スィニョーラは微笑んだ。

(テキサスがエクシア達に近寄ってくる)

エクシア
エクシア

ほら~言ったじゃん、中でドンパチしてるような音が聞こえていないんだから絶対大丈夫だって。

ソラ
ソラ

そうやって呑気でいられるのもエクシアだけだよ。相手はこの国の指導者なんだからね……

テキサス
テキサス

みんなすまない、心配をかけた。

ソラ
ソラ

ううん、平気です。

ソラ
ソラ

あれ、ラップランドは……?

テキサス
テキサス

あいつは……

とある方角に視線を向けるテキサス。

テキサス
テキサス

あいつなら友だちとしての使命を終わらせた。次はどんなニヤケ面を見せてくるのやら……

テキサス
テキサス

ただまあ、一つだけ確かなのは――

テキサス
テキサス

あいつは必ずまた現れてくるだろうな。

クロワッサン
クロワッサン

ひぃ~、もうホンマ勘弁してほしいわぁ。

ソラ
ソラ

まあまあ。それより、まずはジョバンナさんのとこに戻って様子を見に行ってあげようよ。

テキサス
テキサス

そうだな。

ソラ
ソラ

ジョバンナさーん、帰ったよー!

しかし部屋には誰もいなかった。
喜んだのも束の間、困惑してしまったソラである。
だがすぐさま、彼女は綺麗に重ねられた用紙が机に置かれていることに気付く。
それは脚本であった。
ソラは1ページ目を開くと、そこには――
私の大好きな親友、チェッリーニアにこの脚本を捧げます。
それと新しい友だち、ペンギン急便のみんなにも――と、綴られていた。

ソラ
ソラ

これって、ジョバンナさんがずっとうんうん唸って筆が乗らなかったっていう、『ラ・モルテ・ディ・テキサス』の第三幕……

ソラ
ソラ

ジョバンナさん、これがあたしたちに残したかったものなの……?

ソラ
ソラ

ジョバンナさんも、別に行っちゃう必要なんてなかったのに……

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