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【アークナイツ大陸版】我が身は灯火に FC-ST-1「荒地の鐘の音」翻訳

八年前
1090年
オーク郡

ユーモアな貴族
ユーモアな貴族

伯爵様、こちらの次なる計画を理解しておきたいと、伯爵様をお尋ねになられていた方々がたくさんおられましたよ。

ユーモアな貴族
ユーモアな貴族

私たちの演目も大成功を収められました、これもすべて貴方様のご支援があってこそです。

ユーモアな貴族
ユーモアな貴族

ターラー人の劇場で、ターラー人の歴史を。初公演でも二百人あまりがご観賞しにいらしてくださいました。とても喜ばしいことです。

ユーモアな貴族
ユーモアな貴族

つきましては、マケナニー男爵のご領地内にある工場らと協力関係を築いたり、あるいはあの銀行家らが連名で送って頂いた招待状を受けることもできますが、如何致しましょう……

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

その話ならパーティが終わった後にしてくれたまえ、パース夫人。それかタイピストに任せてやってくれても構わん。なに、そうミスは起こさんさ。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

今日のパーティでは、できることなら先ほど終えたばかりの演目の話や、ターラーの文化の話だけにしてくれ。ヴィクトリア人の煩わしい礼儀作法や私利私欲ならこの場には必要ない。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

ご来場の皆様も、我々のこういった身分や礼儀作法、いま話してる優雅な言葉遣い、そして思想を交わす上で必要な体面的な語彙というのは、すべてヴィクトリア人から教わったものです。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

こういったものはさながらヴィクトリア人が作り出した機具と同じように、ターラー人らの心身を現代病に染め上げてきました。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

我々の内に潜む、生まれつきの高潔さと勇敢さ、そしてゲール王から受け継いだ好戦的な血のみを知る我々は……

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

今やヴィクトリア人の利口さと虚栄を学ぶも、その多くの者たちは一部の正しいことや理想に感化され、利益の駆け引きに興じることしかできなくなってしまいました。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

それは何も我々だけではありません。我々がよく街中で見かける、小市民のターラー人たちも同じです。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

彼らもまたヴィクトリア人の悪徳に染まり、鉱石病を患ってしまったがために、無頼漢ないしは暴徒へと変わってしまったのです。

ユーモアな貴族
ユーモアな貴族

まったくその通りでございます、伯爵さ――

(ガラスの割れる音)

質素な恰好をした詩人
質素な恰好をした詩人

――申し訳ありません、手が滑ってグラスを割ってしまいました。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

どうやらそちらのグラスは、何か物申したいらしいな。

質素な恰好をした詩人
質素な恰好をした詩人

私もちょうどそちらがどうお考えなのか気になっていたところですよ、伯爵様。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

……失礼、この歳になると物覚えが悪くなってしまうものでね。君は……?

質素な恰好をした詩人
質素な恰好をした詩人

ウィリアムズ、詩人をやっていまして、今晩のあの演目の執筆者でもあります。しかし私の名前は憶えて頂かなくても結構です、界隈では所詮ただの無名の文字書きに過ぎませんから。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

こちらこそ、そう遠慮せずとも結構だ、ミスター・ウィリアムズ。言ったはずだ、ここではヴィクトリア人のああいった世辞は無用だと。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

なんなりと聞いてみてくれたまえ。

質素な恰好をした詩人
質素な恰好をした詩人

……伯爵様は先ほど、ターラー人は病に侵された者だと仰いましたが、では私たちはどうやってそれを癒せばよいのでしょう?どうすればほかのターラー人を救えるのでしょうか?

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

我々がいくら努力したところで、この身を蝕んで久しい病を取り除くことは不可能だろう。濁りきった水が、自らを清められぬのと同じようにな。

質素な恰好をした詩人
質素な恰好をした詩人

ならその無頼漢や暴徒らはもう、私たちでは救えないと思っておられるのですね。

質素な恰好をした詩人
質素な恰好をした詩人

しかし、もし仮に我々はただ知識と教養に乏しかっただけで、それを備えた我々の筆ならその者たちを救うことができる、とはお考えになりませんか?

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

過ぎた知識こそが、まさに我々の敵なのだよ。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

無論、我々も文字を綴り、声を上げ、ターラーの理想郷を夢に描いたりはする……我々の血の中に眠る、ターラーの記憶を呼び起こそうとも試みているさ。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

しかしだね、いくら呼び起こそうとしても、君や私が次の時代まで生きることはできない。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

私は君の演目をとても気に入っているよ。しかし、だとしても私たちはヴィクトリアの言葉を使わざるを得ないではないか。

質素な恰好をした詩人
質素な恰好をした詩人

……

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

「ターラーの地を再び赤く染め上げないために、ドラコの同族が再び互いに刃を向け合わなくていいように、私はここで戦士としての誇りを棄てよう。」

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

「赤き龍の炎が、熔炉の中から黄泉の戦士らを蘇らせるその日まで。」

質素な恰好をした詩人
質素な恰好をした詩人

お気に召して頂いて光栄に思います。しかし、これらは元々民謡に残された我々の軌跡でして、私はただ少しだけ韻を踏ませる程度の脚色を施しただけですよ。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

いや、そうじゃないんだ。ただ……

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

この先ターラーは再び赤き龍を有することになるかもしれん、と思ってな。

ワーウィック伯爵
ワーウィック伯爵

なんせ今の我々は誰もドラコを見たことがない。ならば通り過ぎた者がヴィーヴルであるとも言い切れんだろう?

1098年
ハイストーン平原、レッドスパイン町

リード
リード

……

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

見つけた、この二人だ。さっき大通りで窓ガラスを石で割ったのもこいつらだろう。

(リードが立ち去る)

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

おい、二人とも大人しくしろ。じゃないと次は腕じゃなくて首に縄を縛り付けるぞ。

ターラーの流民
ターラーの流民

ペッ!やれるもんならやってみやがれってんだ!

ヴィーン
ヴィーン

おい、突っかかるんじゃない……!

ヴィーン
ヴィーン

す、すいません、本当にすいませんでした!兵隊さん!も、もうしませんから!

巡察隊の隊長
巡察隊の隊長

ダブリンと関わっているという指名手配犯がこいつらか?

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

はっ!一人は指名手配通りの者ですが、もう一人は新顔です。

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

フッ、新顔ね。まあそうだろうな、ターラー人ってのは芋づるみたいに繋がっているもんだ、どいつもこいつもロクなヤツがいない。

(巡察隊がヴィーン達を殴る)

ヴィーン
ヴィーン

痛い痛い!暴力だけはどうかご勘弁を……

ヴィーン
ヴィーン

私たちが取ったものなら、もう全部調べ尽くしたじゃないですか……ほかに何か聞きたいことがあれば、全部正直に言いますのでどうか……

(巡察隊がヴィーン達を殴る)

巡察隊の隊長
巡察隊の隊長

黙ってろ。で、仲間はどうした?どこに消えた?どうせダブリンに報せに行ったんだろ?

ヴィーン
ヴィーン

で、ですので、それは本当に知らないんですってば……

ヴィーン
ヴィーン

これ以上仲間なんていませんし、ダブリンとも会ったことはありませんって!

ターラーの流民
ターラーの流民

テメェらはただ人をしょっ引いて、上にいる貴族たちにいい顔を見せたいだけだろうが!

(巡察隊がターラーの流民を殴る)

ターラーの流民
ターラーの流民

あだッ!テメェ……このヴィクトリア人のクソ野郎どもが!

(巡察隊がターラーの流民を殴る)

 

巡察隊の隊長
巡察隊の隊長

そのザマでまだ口答えをするつもりか?

巡察隊の隊長
巡察隊の隊長

もういい、こいつらを室内に連れて行け。こんな街中でギャーギャー騒がれては近所迷惑になる。

巡察隊の隊長
巡察隊の隊長

まずはこのバッグを掛けてるヤツから尋問しろ。大人しくしていたら手加減してやれ。

ヴィーン
ヴィーン

う、ウソは付いてませんってば!本当です!本当に何も知りませんって……

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

待ってください隊長。

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

近くにまだ誰かがいるみたいです。

(リードが裏で小細工をし始める)

ヴィーン
ヴィーン

あれ?え、はえ……?

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

なんだこいつ?急にどもりやがって?

ヴィーン
ヴィーン

……ひ、火だ!

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

うるせえぞテメェ!そんな幼稚なやり口で仲間を庇おうが――

ヴィーン
ヴィーン

――ち、違うんです!本当に、本当に後ろで火が!

(急に火が昇る)

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

……なっ、倉庫のあたりだ!

巡察隊の隊長
巡察隊の隊長

※ヴィクトリアスラング※、隊の者たちを全員呼び寄せろ!まずは消火だ!

(巡察隊達が火の元に駆け寄っていく)

ヴィーン
ヴィーン

あれ、私たちをほっぽり出したぞ?

ターラーの流民
ターラーの流民

おいヴィーン、はやく縄を解いてくれよ!

ヴィーン
ヴィーン

ほ、解くって、私も縛られてるのにどうやって……

(リードがヴィーン達の縄を解く)

ヴィーン
ヴィーン

……だ、誰です?

リード
リード

……はやく行って。

ヴィーン
ヴィーン

はぁ、君まで巻き込んでしまって本当に申し訳ない。まったく関係ないっていうのに。

リード
リード

……平気、あの人たちならもう撒いたよ。

ターラーの流民
ターラーの流民

おーいヴィーン、ラジオはどこに置いてるか知らないか?

ヴィーン
ヴィーン

ここにあるよ。多分まだ使えるんじゃないかな、あんまり音は出なくなってしまったけど。

ターラーの流民
ターラーの流民

それでもいいよ、音がデカくても見つかっちまうだけだし。

ヴィーン
ヴィーン

じゃあ何か言ってないか聞いておいてくれ。私はあっちの水溜まりのところで顔でも洗って、頭を冷やしてくるよ。

ヴィーン
ヴィーン

あっ、ヴィーヴルさん、もし危ないと思ったらいつもで先に逃げていいからね。必要だったら、私が道を案内するよ。

リード
リード

大丈夫……私ならここで待っているよ、周囲も警戒しておくから。

ヴィーン
ヴィーン

……そうか、ありがとう。君はいい人だね。

ヴィーン
ヴィーン

(深呼吸)

ヴィーン
ヴィーン

焦ることはない、ヴィーン、大丈夫だ。目に入れなきゃ何も怖くはないさ。

ヴィーン
ヴィーン

君が触っているのは血じゃない、血じゃないんだ。ただ沼地の泥だ、洗っておけばキレイになる……

ヴィーン
ヴィーン

……いッ。

ヴィーン
ヴィーン

はぁ……

(ラジオから雑音のみが流れる)

ターラーの流民
ターラーの流民

ああもうクソ……なあおい!こいつ本当にまだ使えるのかよ?

ヴィーン
ヴィーン

……頼むから声を抑えててくれ!哨兵がまだ近くにいるかもしれないだろ!

ヴィーン
ヴィーン

とりあえず叩いたり、振ってみたりすれば直るはずだから!

(ラジオを叩く)

???
ラジオからの声

……今夜9時30分頃に……

ターラーの流民
ターラーの流民

おっ、直った直った。

???
ラジオからの声

トロント郡付近で火災が……(ザザ)……の手口は、ダブリンの反乱分子と酷似して……

???
ラジオからの声

(ザザ)……容疑者と思われる三名は、依然逃走……(ザザ)……

???
ラジオからの声

ダブリンと関連する反乱分子を……(ザザ)……まった者は、反乱分子と同罪処分となるため……

???
ラジオからの声

……ここでもう一度繰り返しま……(ザザ)……消灯の鐘の音が鳴った後の外出、及び採掘場と工場以外の地区での点灯、火起こしは一切禁止で……

???
ラジオからの声

反乱分子と結託する活動を断絶させるためにも、ぜひご協力を……(ザザ)……

(ラジオを叩く)

???
ラジオからの声

(ノイズ)

ターラーの流民
ターラーの流民

※ターラースラング※、マジで夜九時を超えたらここしかラジオが流れねえぞ。

ターラーの流民
ターラーの流民

なんなんだよこの※ターラースラング※なルールは?

リード
リード

……

ターラーの流民
ターラーの流民

……あぁすまねえ。今ターラー語の悪口を言ったんだが、あんたまさか分かるのか?

リード
リード

うん……でも平気。

ターラーの流民
ターラーの流民

……

ターラーの流民
ターラーの流民

でも、やっぱすまなかったな。あんたみたいなよそ者も巻き込んじまって。

リード
リード

大丈夫……ターラーの人は、どこに行っても同じだから。

リード
リード

私も昔、ここハイストーン平原に来たことがある。でも、あの時はまだ消灯の規則はなかったはず。

ターラーの流民
ターラーの流民

あぁ、ならあんた都市に住んでた人間だろ?

ターラーの流民
ターラーの流民

この鐘を鳴らす規則なら前々からあったもんなんだ。平原でしか聞こえないもんでな、もっぱら夜中に伯爵とか子爵らの狩場に入り込んで密猟しに来る連中用なんだ。

ターラーの流民
ターラーの流民

鐘が鳴ったら、周りにある灯りとか火を全部消す。そしたら、もし荒野で明かりを点けて獣を追いかけようものなら、遠くからでもすぐに見つけられるだろ?

ターラーの流民
ターラーの流民

ただ新しく定められたヤツがこれまた厳しいものでな、そのせいでこんな面倒なことになってるんだ。夜中に街を巡回してるあの連中も、見かけたら誰それ構わずしょっ引ていくんだよ。

(ヴィーンが近寄ってくる)

ターラーの流民
ターラーの流民

おう、ヴィーン、落ち着いたか?

ヴィーン
ヴィーン

まあね……

ヴィーン
ヴィーン

……あれ、薬はどうしたんだ?もうまったく残っていないのか?

ターラーの流民
ターラーの流民

残ってると思うか?

ヴィーン
ヴィーン

……はぁ、私の万年筆が……おかげで帳簿もつけられなくなってしまったよ。

ターラーの流民
ターラーの流民

俺たちは物資を奪ってんだから、そんないちいち交換する必要なんてねえだろうが。

ヴィーン
ヴィーン

私たち、もう逃げて何日になるんだ?

ターラーの流民
ターラーの流民

深夜0時を過ぎてなきゃ、今日で12日目だ。

ヴィーン
ヴィーン

そうか、12日目、なのにまだここなのか。もし天気が晴れていたら、ここから村で炊飯してる時の煙が見えるはずだよな。

ヴィーン
ヴィーン

毎日兵隊に追われているってのに、いつまでも同じ場所をただグルグルと……

ヴィーン
ヴィーン

なあ、私たち本当に逃げ切ることができるのか?

リード
リード

……何か追われる事情でもあるのか?

ヴィーン
ヴィーン

……

ヴィーン
ヴィーン

実は巡察隊と少し揉め事があって、それで指名手配されたんだよ。

ターラーの流民
ターラーの流民

おいヴィーン!

ヴィーン
ヴィーン

いいじゃないか、フェガール。この人はきっといい人だ、私には分かる。

ヴィーン
ヴィーン

あの時巡察隊に捕まえられて、私は罪を犯したことがある人たちをみんな呼んでやってきたんだ。そしたら急に暴力を振るうものだから、私たちもつい……

ターラーの流民
ターラーの流民

あんたはやっちゃいねえだろ、ヴィーン。してやった顔はやめてくれ。

ヴィーン
ヴィーン

あっ、うん。

ヴィーン
ヴィーン

ただ私たち、大した罪は犯してないんだ、税が払えずに逃げた人とかがいてね。まあその人の親戚、巡察隊の厄介になってたけど。フェガールは密造酒で、私は密輸ってだけで。

ヴィーン
ヴィーン

以前ならみんな大人しく罪を認めて反省してはいたんだけど、あの日はとうとう我慢ができなくなってしまって。

ヴィーン
ヴィーン

巡察隊と暴力沙汰になった時に、逃げ出したのは私たち二人だけじゃなかったんだ。十数人はいたよ、あの時巡察隊に名前を呼ばれた人たち全員だった。

ヴィーン
ヴィーン

でもあの兵隊さんたちにしょっ引かれたら、一巻のおしまいだよ。必死に潔白を口で証明しても、まったく聞く耳を持ってくれないんだ。

リード
リード

つまり、人を殺したってこと?

ヴィーン
ヴィーン

……

ターラーの流民
ターラーの流民

ああ、二人殺った。一人は油断してた時に鍬で頭を、もう一人は乱闘騒ぎになった時にな。

ターラーの流民
ターラーの流民

でも結局、一人は逃しちまった。さもなきゃさっきの連中にバレるはずもねえだろ。

ヴィーン
ヴィーン

もしもう一晩ぐらい逃げる時間があったら、私たちもこんな苦労はせずに済んだのに。

ヴィーン
ヴィーン

……なあフェガール、この際もう兵隊さんらに自首してみたらどうだ?いやだったら私だけでもいい。もうこんな逃げるだけの日々には耐えられないよ。

ヴィーン
ヴィーン

薬はもうないし、オーランの傷口もただ腐っていくのを見てやることしかできない、本人だって……もう見てられないよ。

ターラーの流民
ターラーの流民

言っておくが、自首なんてことは考えるんじゃねえぞ。自首して“はいもう結構ですよ”で終わるとでも思ってんのか?

ターラーの流民
ターラーの流民

んなわけねえよ。あいつらはまず、あんたをいたぶって、あんたに脅しをかけるんだ。

ターラーの流民
ターラーの流民

んであんたみたいな人なら、二分足らずで俺たちのことを全部吐いちまうだろうよ。

ヴィーン
ヴィーン

で、でももう薬もないし、このまま傷に苦しめられても仕方がないじゃないか?

リード
リード

……キミたち、薬が足りないの?

ヴィーン
ヴィーン

あはは……実は私たち、薬を調達させられにここに来たんだよ。調達するように言った人たちなら、まだ遠くで私たちの帰りを待っているんだ。

ヴィーン
ヴィーン

本当なら薬を買うつもりだったんだよ、本当さ。

ターラーの流民
ターラーの流民

けど消灯の鐘が鳴ったら、どこの店舗も店を閉めちまう。鐘が鳴る前に店に辿りつくなんて無理だ。

ヴィーン
ヴィーン

だから私たちは、巡察隊が交代する時間を見計らって、その、薬店の窓ガラスを割ったんだ……あの時は気付かれないと思っていたんだけど。

ヴィーン
ヴィーン

……まあいいや。

ヴィーン
ヴィーン

……それで、君は?都市から来たように見えるけど、どうしてこんな何もないところに?

リード
リード

……探し物をしているんだ。

リード
リード

そこでなんだけど、“ダブリン”について何か知らない?

ターラーの流民
ターラーの流民

……

ヴィーン
ヴィーン

……

リード
リード

……そう、分かった。

リード
リード

止血剤と包帯なら、少しは持ってる。

リード
リード

ヴィーンさん、怪我をしているようだから……私が手当してあげるよ。

ヴィーン
ヴィーン

あれ、見られちゃった、のかな?でもまあ、そんな大したことはないから……

ヴィーン
ヴィーン

それよりも、少しだけ医薬品を分けてもらえると、すごく助かるかな。

ヴィーン
ヴィーン

仲間が重傷なんだ、彼らを助けてやりたい。

ヴィーン
ヴィーン

……その、鉗獣に噛まれちゃって。

リード
リード

じゃあ、私も一緒について……

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

こっちだ!泥に足跡が残ってる、こっちの方向に続いているぞ!

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

あの放火したターラーのゴミクズどもならきっとまだ近くにいるはずだ!

ヴィーン
ヴィーン

――は、はやく隠れて!

ヴィーン
ヴィーン

部隊の……半分ぐらいが来てる。まずい、こっちにライトが向けられた!

ターラーの流民
ターラーの流民

はやく、腰を低くしながらこっちに来るんだ!こっちは地面がしっかりしてるぞ!

リード
リード

大丈夫だよ……あの兵士たち、沼じゃそう素早く移動はできない。

リード
リード

――シッ。

(リード達が身を隠し、巡察隊達が沼に入ってくる)

ターラーの流民
ターラーの流民

(小声)おいヴィーン、こっちにも歯がガタガタ震える音が聞こえてるぞ!少しは抑えろってんだ!

ヴィーン
ヴィーン

(小声)で、でも……

リード
リード

……

ライトがこちら側に向けられてきた。
リードは手に所持している長槍を握りしめ、金属でできた槍は徐々に温度を上げていく。

(ダブリン兵の格好をした女が巡察隊を背後から殴り飛ばす)

セルモン
ダブリン兵?

このクソ野郎が!なんでテメェらだけは明かりを点けることが許されるんだよ!見てるだけで腹が立っちまうぜーッ!

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

だ、ダブリンだと!?

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

あの女を捕まえろ!きっと有益な情報を持っているはずだ!

セルモン
ダブリン兵?

アタシを捕まえるだァ?寝言は寝てから言いやがれってんだこのタコォ!

(ダブリン兵?が走り、巡察隊に泥を投げつける)

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

ぶへっ!あいつ、泥を投げつけてきやがった!

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

うわっ――

ターラーの流民
ターラーの流民

行くぞヴィーン、あいつを助けるんだ!いつまでもビビってんじゃねえ!

(ターラーの流民が走り出す)

ヴィーン
ヴィーン

あっ、うっ、うん……

(ヴィーンが走り出す)

巡察隊の隊員
巡察隊の隊員

うぐッ――!

(巡察隊が殴られ気絶する)

セルモン
ダブリン兵?

ハッ、新兵の甘ちゃんが。別にそう大したこともねえな。

セルモン
ダブリン兵?

おいヴィーン、フェガール!テメェら一体何をしてたんだ?アタシがここに来なかったらテメェらな、もう死んでいたはずだぜ!

ヴィーン
ヴィーン

そ、そうだね。助かった、命拾いしたよ。

ヴィーン
ヴィーン

でも前からずっと言ってただろ、私にこんな強盗紛いことはできないって……

ヴィーン
ヴィーン

……おい、ちょっと待てセルモン、なんのつもりだ?この人たちなら気絶させただけで十分だろ、まさかここでみんな殺すつもりか?

ヴィーン
ヴィーン

やめてくれ!そんなことしたら、罪が重くなるだけだぞ!?

セルモン
セルモン

まだンなもんに拘ってんのかテメェは?こいつらがターラー人をしょっ引くのにな、罪の重さなんかどうだっていいんだよ。しょっ引いたら生きて返さねえ連中だぞ。

ヴィーン
ヴィーン

でも他人はそう思ってなくても、せめて自分で弁えてなきゃダメだろ。

セルモン
セルモン

ハッ、腰抜け野郎が。よく見ておけよ、アタシがこのヴィクトリアのクズどもの息の根を――

リード
リード

……そこまで、もうやめて。

セルモン
セルモン

んだテメェは?

リード
リード

……

セルモン
セルモン

ハッ、なんだよ?まさかほかの連中に報せるつもりか?いいぜ、やれるもんならやってみやがれ。

リード
リード

報せる?いや違う、キミはそもそもダブリンの者ではない。どうして……そんな恰好をしているの?

リード
リード

どうして、亡霊(ゴースト)の真似事なんかをしているの?

セルモン
セルモン

――なんでテメェなんかにそんな口を利かれなきゃならねえんだ?テメェこそダブリンの何を知ってんだよ?

リード
リード

……

ヴィーン
ヴィーン

ちょっ、ちょっと落ち着いて、セルモン。

ヴィーン
ヴィーン

彼女はただの医者だ、ついさっき私たちと一緒に逃げて来ただけで……

ヴィーン
ヴィーン

……彼女、いい人だと思うよ。だから私たちのこと、全部教えてあげたんだ。

ヴィーン
ヴィーン

そうだ、あの、先生……さっき言ってた、ケガ人を見てくれるって話だけど、あれはまだ、その、いいかな?

ヴィーン
ヴィーン

ほらセルモン、君も少しは落ち着いて……薬を奪えなかったのは謝るよ。でもこちらの先生が手を貸してくれるって言ってくれているんだ、だったら一先ず彼女に頼るしかないだろ。

セルモン
セルモン

……ペッ、勝手にしろ。こいつ、アタシのこの格好に見覚えがあるみてぇだしな。

リード
リード

……

リード
リード

……申し訳ないけど、私は医者ではない。

リード
リード

それでも、できるだけキミたちの力になろう。

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