
12時の方角――いや違う、4時の方角からだ!

今度は7時の方角に!クソッ、また飛んできやがった――

はやく盾を構えるんだ!
(空を飛ぶ怪物が3回攻撃を放ってくる)

大丈夫か!

平気だ。

あいつ今……火を噴いたのか?

どう見てもそうだ。

石までもが丸焦げだ。あんな威力の炎、ブレイズのアーツで見たのが最後だったぜ。

ブレイズならきっと喜んであいつとやり合ってくれるだろうね。

そんなことよりはやく避けろ!また来やがったぞ!

うわッ!

はぁ、はぁ……これではダメだ。

動きのフリが大きすぎる。近づいて反撃するにしても振り撒かれるか、空に飛んでいかれるだけだ……

このままでは防戦一方。なんとかあいつに近づく方法を考えないと。

ヤトウ、避けろ――

見えてる、私なら平気だ。

あいつの動きを見極めるんだ……地面に降りてる時は左右に尻尾を振り、突進して噛みついてくる……

猛突進してくることも忘れるな!飛び上がる際に火を噴くこともな!

尻尾を振って、噛みつき、突進してきて、火を噴き出す……ッノイルホーン!尻尾が来るぞ!
(ノイルホーンが尻尾による攻撃を防ぐ)

おっしゃ――!防いでやったぜ!

せめてあいつに近づかなきゃ。

ならアレを試してみるか?チャンスはそうそうないぜ?

私もちょうどそれを思っていた……こっちだ、ノイルホーン!

あいつの身体は鈍重だ……ふッ――見ろ、攻撃した後には必ず体勢を整えようとする。

ああ、ならその隙に近づくことができるな。

あいつの首の上にまで私を飛ばしてくれ、なるべく一撃で仕留めよう。

来るぞ――今だ、避けろ!

上がった!
ノイルホーンも私も、この場合はどうすればいいのかが分かっていた。なぜなら私たちは何度もコンビネーションを組んだことがあるからだ。
彼の盾を踏みしめたその瞬間、足元から強烈な推進力を感じ、私の身体は高く宙へと飛ばされる。
剣先は空中で鋭利な弧を描き、そして躊躇なく突き刺していく。

ッ!どういうことだ?

刀だ、弾かれた!

気を付けろ!

あいつが飛ぶぞ!
(化け物が咆哮を放つ)

うわッ――この咆哮――

頭がグラグラして――動けねぇ――

(あの動きは……火を噴き予備動作!両側に回避しなければ!)
(化け物がヤトウに襲いかかる)

がはッ――

ヤトウッ!

怪我をしちまってる!大丈夫か!?

腕を掠っただけだ、問題はない。まさかいきなり急降下してくるとは、油断した。

ヤトウ……あんた、刀を落として……

刀が……掴めない。

私の手は一体……どうしてしまったんだ?

あいつがそっぽを向いた、何かに気を取られているみたいだぜ。

今のうちに撤退するぞ、ヤトウ!

どいたどいた!ネコタクの到着だニャ!

二人を乗せてさっさと退散するんだニャ!

どこに行けばいいんだニャ?

知らないニャ!とにかく逃げるのが得策だニャ!

おいヤトウ、あの変なフェリーンが今にもバラバラになりそうな荷車みたいなものを押してきたぞ……

おい!あんたらなんのつもりだ!ヤトウから離れろ!

言っておくが、彼女をそんなモノに乗せるんじゃねえぞ!

角付きの“ハンター”、さっきからリオレウスのために爪とぎをしているつもりなのかニャ?

今の君たちじゃリオレウスには敵わないニャ!いいからはやく乗るんだニャ!

敵わないニャ!

警告したはずだ……こっちに来るんじゃねえ!

おい、俺に触るな!やめっ、そこに触れるんじゃ……降ろせ!

とっとと乗るんだニャ!

やめろつってんだろ――

職人くん、これは本当に荷車と呼べるものなのかニャ?どうしてさっきからずっと激しく揺れているんだニャ?

ニャ?ほかのアイルーたちがこうして押してるところしか見たことがない、ニャ?
(ノイルホーンが起き上がる)

ここは……どこだ?

俺は一体何に乗せられて……?これは丸太を括りつけただけの荷車……なのか?なんだか今にもバラけてしまいそうなぐらいボロボロだぞ。

つッ……頭が……ここに来るまで後頭部をずっとぶつけちまっていたのか。

そうだヤトウ……ヤトウ!ヤトウは?

おい、角付きの“ハンター”!漢方薬はどこに置いてるんだニャ?

カンポウ……って、何を言ってるんだ?

ないのかニャ?じゃあ解毒薬は?

持ってねえよ……

ならアオキノコぐらいは持っているはずニャ?こっちはちょうどげどく草(げどくそう)を持っているニャ。

きのこ……?なんできのこなんか持ってなきゃならねえんだよ……

なんてことニャ、君たち新大陸の“ハンター”はどいつもこいつも君みたいにおっちょこちょいなのニャ?

おっちょこちょいニャ!

あんたらは……一体なんなんだ?この地に暮らしているフェリーンなのか?

本当に失敬なヤツニャ!出会いがしらボクたちに変な呼称を付けるなんて!

ボクは元王立古生物書士隊の生態研究員ニャ!ベルナ村から来た、正真正銘の学者ネコだニャ!新大陸の研究を志して旅路を始め、ここに辿りついたニャ!

ウニャニャ!ニャ!

そうそう、それと彼も。彼はポッケ村から来た職人くん、たまたま来る道の途中で出会ったニャ。ボクと一緒に行動したいって言うから、一緒にいさせてあげてるニャ!

ニャニャ!ボクは武器職人だニャ!

ボクたちはみんな――アイルーと言うニャ!

アイルーだニャ!

アイルー……聞いたことがねえ……

そんなことはいいニャ!それよりもこの女の子はリオレウスの毒を食らってしまっているニャ、解毒薬がないと倒れてしまうニャ!

ヤトウ……ヤトウがどうなるって?毒を食らったのか?

今はまだ気絶してるだけニャ。ボクが少しだけ応急処置をしてやったが、それでも毒はまだ完全に解かれていないニャ。

だから解毒薬がないとダメなんだニャ!リオレウスの毒を舐めないでほしいニャ、こ~~んな大きなアプケロスも命を落としてしまうニャ!

だったら俺を……俺をこっから下ろせ!

この“ハンター”ちょっと頭がおかしいニャ!新大陸の“ハンター”はどれも精鋭だって聞いてるけど、こいつはまるっきりそうには見えないニャ。

おまけに解毒薬すら持っていないだなんて、一体どうすればいいニャ?この女の子の毒状態は軽視できないのに、この森の中にはそれらしいキノコすら見つからないなんて……

それなら村に向かうニャ!

そうニャ、手っ取り早い方法は村に行って借りればいいニャ!職人くん、この前遠くから見えたあの村のことはまだ憶えているニャ?

そこにいる“ハンター”たちならきっとこういった基本素材を持っているはずニャ!ボクはなんて賢いニャ!

ニャ?

おい!頭が悪い角付きの“ハンター”!アオキノコをもらって解毒薬を作りにいくニャ!

君たちは近くにある“ベースキャンプ”で休憩しているといいニャ、ボクたちの帰りを大人しくそこで待っているニャ!

“ベースキャンプ”?どこにあるんだそんなモン……っておい、あんたら……

……なんだっていいニャ!ともかく善は急げ!行ってくるニャ!

行ってくるニャ!

あの日、くらい夜の空には炎が燃えひろがっていて、大きなモンスターが森からやってきて、炎で村を焼きつきそうとしていたんだ!

けどその時、村にいた狩人がみんなの前に立ちふさがってこう言った!“おれは狩人だ、村はこのおれが守る”って!

“ほう、小さな狩人よ。おまえごときがこの私のほろびの炎を防ぐつもりなのか?”

“このバケモノめ。おれがここにいるかぎり、一歩も村に近づけると思うなよ!”

そうして狩人は武器を取って、村をおびやかすバケモノと最終決戦をするのだった。

くらえ!超巨大火の玉だ!

よっ!ほっ!

(取っ組み合いの動きをする)

うわー!

はっ!

おれの勝ちだ!

おれが前に言ったこと、これで信じるようになったか?狩人はぜったいに負けないんだ!

いいや――わたしはまだ負けてなどいない!

あー!ズルいぞ!今ぼくに倒されたじゃんか!

どんな狂暴なけものでも、すごい邪悪なバケモノと立ち向かっても、狩人はぜったいに負けないんだぞ!

それはちがうよ……

おとうが言ってた、狩人はもうとっくにいなくなったって。

ウソだ!村の南に住んでる柏生(かしわい)のおじいちゃんがそのすごい狩人なんだからな!

でもおとうが言ってたよ、柏生のじいちゃんは頑固ジジイだって。

村は狩人を必要としなくなったから、狩人はもういらない。だからバケモノこそ負けないんだ!
紅葉は地に落ち、露枯れる。
家屋が整然と立ち並んでいる村は静寂に包まれていた。
侘しい彫像もどこか遠くを望んでいるばかり。
傷負って道に迷う旅の者よ、君たちはきっと歓迎されることはないのかもしれない。
狩人もとっくに、歓迎されなくなったのだから。

ヤトウ、はやく起きろ。

あの……アイルーとか言う生き物が、あんたは中毒症状になってるらしいんだが……身に覚えはあるか?毒を食らっちまったのなら、なおさら意識を保たなきゃならねえぞ。

分かったから揺らさないでくれ……聞こえている。

具合はどうだ?

頭が少し重い、腕も痛みを感じる。おそらくは毒で間違いない。

だが少しはよくなった、彼らの応急処置のおかげだな……

あの大型な飛行生物の爪には毒が含まれていたが、避けられなかった……完全に私の落ち度だ……

そんなことァねえさ。

あの二匹……自分たちのことをアイルーと呼称していたが、もしかすれば現地に住まうフェリーン独自の呼び方なのかもしれない。

彼らを逃してはダメだ。話を聞くに、どうやらあの生物に関する知識を持っている。先に色々と聞いて情報を入手しておかないと。

あいつらさっきは確か……“ゲドクヤク”を探しに行っちまったらしいな?すまねえ、俺がすぐ追いかけておくから、あんたはここで休んでいてくれ。

いいや、私たちもはやく村に向かわなければならない。今すぐ出発しよう。

え?でも怪我をしてるんだぞ、あいつらもここで待っていろって……

森の中であんな巨大な生物が現れたんだぞ、いちはやく向かわなければならないんだ。それにあいつが村を脅かす確証があるにしろないにしろ、あの痕跡は明らかにあの生物が残していったもの……

あのバケモノは大方鉱石病となんらかの関係があるはずだ。それにあれだけ広範囲の移動、完全に私たちが抑えつけられる範疇にない。これが今何よりも切羽詰まっている緊急事態だ。

村があのバケモノを認知してるかどうかはともかく、今はその情報を村人たちに伝えておかないと。なるべき人員を避難させ、さらなる源石の感染拡大を防ぐことが急務だ。

でもあんたも安静にしておかなきゃならねえだろ。

任務が優先だ、村の住民たちの安全を確保しなければならない。

分かった……地図は憶えてる、俺が連れてってやるよ。
(ノイルホーンが腰をかがめる)

ノイルホーン。

あ?

おんぶは必要ない……自分で歩けるから。

職人くん、なんだかこの村少し変だとは思わないかニャ?

ニャ?

過去に、ボクは書士隊と王国にあるほとんどの土地を共に渡ってきたことがあったニャ……

シュレィド城の城壁に攀じ登ったことがあるし、モガの村から広い海を見たり、ほかにも無数ものキレイな景色を見てきたニャ……

けどこんな村、ボクは一度も見たことがないニャ!

ここにいる村人たちが見えるかニャ?彼らは人間そっくりなのに、頭には獣の耳が生えていて……ボクたちと同じような尻尾までもが生えてるニャ!

確信できるニャ。ドンドルマのおびただしい量の蔵書の中でも、絶対に彼らに関する記述は載っていないはずニャ。

それに……ボクたちの知る“ハンター”すらまったく見かけないニャ!

リオレウスはすぐ森の中にいるのに、村には“ハンター”がいないし、集会所もない。そんな村がどうやって森の中にいるモンスターと戦えるって言えるニャ?

もしここが新大陸の古龍調査団が建てた拠点じゃなければ、ここはもしかしたら新大陸そのものでもないはず……理解できないニャ、ここは一体どこなのだニャ?

ワクワクするニャ!

な、なんでワクワクなんかしていられるんだニャ?
(職人ネコが立ち去る)

待つニャ、職人くん!ボクたちが途中で遭遇したあのリオレウス、ほら、森の中から急に現れて、ずっとボクたちを追いかけていたあのデカブツのことだニャ。

その後急に――パァーって――光が輝き出して!これってもしかして……って職人くん?

職人くん!どこに行ったニャ?

村についたぜ、ヤトウ。具合はどうだ?

言っただろ……ゲホッ……平気だ。

(ヤトウのおでこ、すげー熱だ……)

もう歩かないほうがいい、ひとまずここで休んでおこうか?

俺、人を呼んでくるからよ。

おーい、誰かいねえかー!ここにケガ人がいるんだ、手を貸してくれねえか?

おーい、誰かー!

(遠くから)*極東スラング*、あいつを捕まえろ!あの黄色いヤツだ!

(遠くから)はやく!あっちに逃げたぞ!

この村に住んでる連中は一体どこに消えちまったんだ?

(遠くから)あっちだ!あっちにコソ泥が逃げたぞ!

ノイルホーン……

意識が、ぼやけてきた……村人たちを避難させたのか?

いいや、俺はなんもしてねえぜ。

本当に助かるよ……ゲホッ。

もう喋るな、少しは気力を残しておけって。

なんだか……笑えてくるな。任務はまだ始まったばかりなのに、もうおしまいといった雰囲気じゃないか。

おい、そんな縁起でもねえことを言うんじゃねえ!

ヤトウ……おいヤトウ!なんか喋れよ!

クソッ、誰かいねえのか!

おにいちゃん!

そのおねえちゃん……助けが必要なの?

ああ、そうだ!怪我をしちまってる……ヒドイ怪我だ。

傷、見して……獣にやられたの?

そうだ!

こういう傷を手当してくれる場所なら知ってるよ、案内するよ!

――!マジで助かるよ!

こっち!
(職人ネコが走り回る)

これすごいピカピカしてるニャ!

これも欲しいニャ!

全部見たことがない素材、見たことがない道具!どれも大好きニャ!

*極東スラング*、どこに行きやがった?あの黄色いコソ泥が!

あっ!あいつ今俺の足元をくぐって逃げて行ったよ、あっちのほうだ!

追うぞ!

ニャ!職人くん!こっちに来るニャ!

君は一体何をしてるニャ?どうしてこんなにも追いかけれられているニャ?

これを見て、見たことがないものがたくさんニャ!

ウニャアアア!勝手に人のものを盗んじゃダメだニャ!

こっちにいたぞ!

ん?なんか一匹増えてないか?

もう、まったく!森のほうに逃げるニャ!

コソ泥があっちに逃げたぞ!

森に入る入口が封鎖されてしまってるニャ!遠くに見えるあれは……“ハンター”の小屋ニャ?

“ハンターハウス”だニャ!

職人くん、あちこちに行くんじゃないニャ!

こっちに来るニャ!この下に穴を見つけたニャ!

あの二匹のフェリーンめ、どこに行った?

シッ――

あれは柏生家の家だ、あのジジイの……中に入れるはずがない。

*極東スラング*、向こうを見て回るぞ!あいつらを逃がしちゃならん!
(村人達が走り去る)

行った?危なかったニャ!

ウニャアアアア!

急に驚いてどうし……

ってウニャアアアア!

こ、これは……ってなんだ!壁にかけられたただの毛皮じゃないかニャ!

にしてもこの小屋、“ハンターハウス”にそっくりだニャ。

上を見るニャ!あの瓶詰の中身!キノコが入ってるニャ!

どこにあるニャ?ボクが見てみよう……棚の上かニャ?ふむ、確かに見た目はアオキノコそっくりニャ。

これは試してみる価値があるニャ!もしかしたら解毒薬と同じように調合できるかもしれないニャ!
(足音が近づいてくる)

シッ……隠れるニャ、足音がするニャ!

先にここから出るニャ!

ニャ――穴が!木の板に挟まれてしまったニャ!

どうしようニャ……なんとかしなければ、どこか隠れられる場所は……

(金槌を振り回す)ニャ!

そ、それも方法ではあるけどニャ。

ニャ、足音がどんどん近づいてきた、もうこうするしかないニャ……

……職人くん、よく聞いてほしいニャ。誰かが入ってきたら、一番近くにいる人の頭に飛び移るんだニャ。

そしてその金槌でこんな風に――えいって――

それからそいつらの股下から逃げるニャ、しっかりとボクについて来るんだニャ!分かったかニャ?

ワクワクしてきたニャ!

ちゃんとボクの指示に従うニャ!

三!

二!

一!

ウニャアアアア!

大丈夫、もうすぐだよ……ほらあそこ、あの家がぼくたちの行くところだ、柏生のおじいちゃんの家だよ。

おじいちゃんはこの村の狩人、すっごく優しいおじいちゃんなんだよ。

あとで見たらわかるけど、おじいちゃんの家には傷をなおす薬とか道具がたくさんおかれてるんだ。けものにやられた傷をなおす知識も持ってるから、きっと助けになってくれるよ。

助かるぜ、んでボクちゃんは……

いいよいいよ、ぼくのことは和也(かずや)でいいから。

おじいちゃんはね、よく山に入って狩りをするんだけど、たくさん獲物を獲って山をおりてくるんだ。ちょーすごいんだぞ。

それにながい時間をかけて村の周りに柵を作ってくれたんだ、けものが村に入ってこないために。おじいちゃんはすっごく村のみんなのことを気にかけてくれてるんだよ。

そいつはすげーな!

ヤトウ、あと少しの辛抱だ。もうすぐ着くからな。

うッ……

あっ、おじいちゃん留守みたいだけど、扉にかかってるこの棒をおろしてやれば開けられるよ。

でも、家主がいないとなりゃ……

大丈夫、おじいちゃんはよろこんで人助けしてくれる人だから。もし今いたらきっと部屋を借りて休ませてくれていたはずだよ、ぼくが保証する。

じゃ、じゃあいいか。

ヤトウ、ここで待っててくれよな。俺は扉を開けてくるから。
(ノイルホーンが扉を開ける)

こいつか?扉を開けてっと……ってうわッ!

ウニャニャニャ!ニャ―!
(ノイルホーンが職人ネコに殴られる)

いってッ!頭がァ!

職人くん!ストップニャ!

君は……角付きの“ハンター”ニャ?

ル……ルールー?

アイルーだニャ!ちゃんと覚えておけニャ!

振って、振って……よし、これで完成ニャ。

おい君、こっちに来るニャ。これを女の子に飲ませてあげるニャ。

これは?

解毒薬に決まってるニャ……たぶん。アオキノコがなかったからこの部屋に置いてあったらそれらしいキノコを使わせてもらったけど、きっと効果は出ると思うから、とにかく飲ませてあげるニャ。

そうだ、思い出したニャ!

職人くん、何を思い出したニャ?

最新の調合だと……解毒薬に、アオキノコは必要ないニャ。

なに?それならはやく……あっいや、ボクの調合だとアオキノコは必要不可欠ニャ、君は黙ってるニャ!

ヤトウは……これでよくなるのか?

げどく草すら知らない角が生えたハンターだなんて……

もし君の知恵もその角みたいに長く伸びていたのなら、そんな問題を聞くこともなかったはずニャ。

テラでゲドクソウなんてものは聞いたことねえよ。それにしてもヤトウの熱が……下がってきてるな、よかったぜ。

さっきの話に戻るけど、ここはテラという場所で、新大陸ではないのかニャ……?

それに君たちもボクたちが知る“ハンター”ではないと……

角付きの変人でもねえこともな!俺たちは任務を遂行するためにここに来たんだ!

まさか、本当に異世界にやってきてしまったなんて……

これは……もう完璧におしまいだニャ!ボクの新大陸研究計画がアアアア!

本当なら新大陸一の学者になって、誰からも尊敬されるはずだったのに……まさか出発初日から失敗してしまったニャ!

失敗してしまったニャ!

あー……そのーなんだ、自己紹介しておこうか。

俺はノイルホーン、んで彼女は……

ヤトウ、ニャ。耳の毛が抜けてしまうぐらい呼んでいたから知ってるニャ。

じゃあもう一度確認するが、あんたらはフェリーンではなく……アイルーって言うのか?ここに来る前は、俺たちとよく似た違う人類と一緒に暮らしていたと。

……あんたらが言う“ハンター”とモンスターが共存してる大陸で。

君たちのいるこの場所とはまったく違うニャ。

あの火を噴く飛行生物もあんたらんとこからやって来たのか?

リオレウスのことニャ?ここにも彼の同類がいるかどうかはまだ分からないけど、あの一頭はきっとボクたちと一緒にこっちにやって来た一頭ニャ。

ボクたちのほうでは火山や森の中で、雌のリオレイアと一緒に暮らしているニャ。すごくおっかない飛竜種のモンスターニャ!

なるほど。だから森にいた時は必死こいて俺たちに呼び掛けていたのか、その飛行生物がやって来るって。リオなんとか……覚えられねえな。

何度も言ってるニャ!彼の名は……

“リオレウス”ニャ!

リオレウス……?確かになんだか威圧感のある名前だ。

あんな高いとこを飛んで、あんなでかい火の玉を吐いて、爪には毒があって、おまけに刀ですら斬れない甲殻に覆われて……その名に相応しいモンスターだな。

確かに彼は恐ろしいが、相手にする方法ならなくはないニャ……

なんだって?

しかし君たちは弱すぎるニャ。持ってる武器もまったく見るに堪えない、リオレウスを討伐する考えなら諦めたほうがいいニャ。

もしボクたちベルナ村にいるあの伝説の“ハンター”だったら、こんな感じで――よっ――そしてあんな風にしちゃえば!

見事リオレウスを討伐することができるニャ。

討伐してやれれば……問題解決ってことなのか?

討伐できるニャ?

職人くん、君たちの村にもリオレウスを討伐できる凄腕の“ハンター”がいるはずニャ。君はきっとまだその人に会っていないんじゃないかニャ。

ニャ!とにかくひとまずリオレウスのことは置いておいて、今はボクと職人くんがどうやって戻ればいいのかを模索しなければならないニャ!

ノイルホーン……

おう、ここにいるぜ。ちょっとは良くなったか?

目が覚めてしばらく経つよ。その間に君たちの会話を聞いたんだが……村人たちの避難は完了してるのか?

それは……まだ知らせてはいない。

……

実は今こう考えてるんだ。俺たちはまだあのリオレウスと少ししかやり合ってはいないだろ?だからあいつがなぜ源石と関係があるのかがさっぱりなんだ。

……パニックを起こしたり、あるいは大規模な避難を実行しても、不必要な混乱を生じさせちまうだけだ。それで源石粉塵を拡散してる発生源も隠れられちまったら、完璧に除去することができなくなっちまう。

理解はできる。だが鉱石病感染が発生するリスクが存在する限り、できるだけ対策を実行して状況にあたったほうがいい。今度からは注意しておこう。

熱はまだあるか?ここに毛布があるから、俺が拭いてやるよ。

必要ない。

あっ、おねえちゃん起きたんだね、あれ?

おにいちゃんとおねえちゃんってさ、もしかして……

バッ……!適当なこと言うんじゃねえよッ!

ん?なんの話だ?
(年老いた狩人が部屋に入ってくる)

……

……

……

お前たち……一体何者だ?

言え!さもなければ、今日は床をキレイに掃除してやらなければならなくなるぞ!

ま、待った!待ってくださいって!

おじいちゃん、このおねえちゃんが山の中で獣にやられて、治療が必要だったからぼくがここに連れてきたんだ。

やられた……怪我をしたのか?

毒が入った爪に引っ掻かれてしまったんです。その際そちらが置いてあった素材をお借りして解毒薬を作らせてもらいました。感謝します。

とはいえ、勝手にお邪魔して大変申し訳ございません。今すぐ出ていきますので。

あの*極東スラング*のケダモノどもめ。

構わん、怪我をしたのならここで休んでいきなさい。

えっと……

柏生(かしわい)義岡(よしおか)。

儂の名だ、好きに呼ぶといい。

狩人として営んでいる。この近くにある森には獣がうじゃうじゃ潜んでおるからな、お前たちよそ者は下手に入っていかんほうがいい。

助けていただき本当に感謝しています、私たちは……

お前たちが何者なのかを知る必要はない。

それからお前、こっちに来なさい。

俺ですか?

娘っ子が怪我をしてるのだぞ、その子に湯を沸かしてやることも知らんのか?

それと、その手に持ってる雑巾を置いておきなさい。

……今すぐ沸かしてきます!

それと和也、この傷薬をすり潰して彼らに持って行ってあげなさい。水で薄めた後に、傷口に塗っておくんだぞ。

わかった。

学者ネコ、一つ聞きたいんだが、君たちは君たちが住んでいた大陸に戻りたがっているのか?

当然だニャ。

君たちとあのリオレウスがどうやってここに来たのかは分からないが、君が先ほど述べたことによれば、本当に戻れる確証はあるのか?

いい質問ニャ。ボクも職人くんもここに来たばかりの間は探し回っていたんだけど、樹木以外には何も見当たらなかったニャ。来た方法で戻ることは不可能だけど、森の中にはほかの方法もあるのかもしれないニャ。

ではまた森に入って探してみるとしよう、だがあまり期待はしないほうがいい。

そこで一つ、私たちと手を結ぶつもりはないかな?

ニャ?

君たちがどうすれば元いた場所に戻れるのか、助けになってくれるところを知っている。

それはどこニャ?

私とノイルホーンが所属している企業、ロドスだ。私たちは……よく異常事態を対処することがある。

一時的に帰還が困難だった場合でも、そこならしばらく身を置くのに悪くはないはずだ。私やノイルホーンがそのいい例だよ。

ただその見返りとしてなんだが、リオレウスと再び対峙する可能性が消えたわけではないから、君たちの知識が欲しい。

それと……君たちが言ったように、リオレウスも討伐しておきたいんだ。

リオレウスの討伐ニャ!

ニャ……そのまま受け入れることはできないニャ、しばらく考える時間がほしいニャ。

君たちがいた場所にも村はあったみたいだな?仮に君たちの村の周りに脅威が出現した場合は、そのまま放っておくつもりなのか?

リオレウス、あの前代未聞の生物がこの大地に降り立った後、私たちは一度そいつを交戦したんだ。あいつは放っておくわけにはいかない存在だと、あの戦いで確信したよ。

何より重要なのは……あいつはテラではよく知られているもう一つの危機と密接な関係にある可能性が極めて高い。

君には理解できないかもしれないが、今のところ集まった証拠からして、リオレウスの対処は私たちにとって眉に火がつくほどの緊急事態なんだ。

鉱石病の要因になり得ることもそうだが……火を噴くことができて、なおかつ爪には毒液が含まれている巨大生物。そんなヤツが村からあれほど近い森の中を自由に飛び回っていること自体、とてつもない脅威と言えるだろう。

今なんと言った?

火を噴けて……空も飛ぶことができて……なおかつ爪には毒があるだと?お前たち、あの畜生を見たのか?

あなたも森の中であのリオレウスを見たことがあるのですか?

私たちも森の中であの生物と出くわしたんです。今の段階では、あいつはこの地域に生息してる生物ではなく、かつ非常に危険な存在だと判断しています。後程さらに一歩踏み込んで接触を試み、状況次第でヤツを討伐するつもりではいますが。

あれは儂の獲物だ。

それは何よりです。あなたはこの村における狩人、きっと森のことも熟知していることでしょう。それに狩猟経験も豊富、大きな助けになります。

同じ目標を持っているとなれば、今後は一緒に行動したほうがベストでしょう。これからは私たちがあなたの安全を確保いたします。

お前……儂の言ってることが分からなかったのか?あれは儂の獲物だと言ったのだ。

申し訳ございません、理解が及ばなかったところがあったのかもしれません。もしかして、私たちの戦闘能力について不安を覚えているのでしょうか?

ロドスのオペレーターはみな専門的な訓練を受けており、豊富な危機管理能力を有しております。特殊な生物の対処も、私たちの業務における一環です。

今回失敗してしまったのは単にこちらの準備不足によるものでした。ここでしっかりと準備を整えておけば、今度こそスムーズに対処することができるはずですので。

ばか者!儂の獲物であれば、そいつを狩っていいのはこの儂だけだ!儂自らの手で……討伐することがな。

そんな儂の獲物を横取りするつもりとは、よくもそんなことができるものだな?

リオレウスは未知の生物です、厳粛に対処しなければなりません。そう簡単にあなたの所有物として認めるわけにはいきませんよ。

貴様ら……そんな満身創痍にやられて戻ってきたくせして……どのツラ下げて戦闘能力うんぬんを語れると思っているのだ?

軟弱で、無能なケムシ風情が……貴様らなどオリジムシにも及ばぬわ……

おい貴様!どうせまだ何か企んでいるのだろう……ふんッ、そうはさせるものか!

気分を害してしまって申し訳ありませんが、それでもあなたには私たちのリオレウス調査を阻害する権利はないはずです。こちらも責務というものがありますので。

言っておくが、貴様らがどういう輩なのかは知ったこっちゃない、だがこれからは二度と森の中で貴様らのツラを見せるでないぞ!

儂の獲物に……近づくことは断じて許さんからな。

であれば、そうしないほうが賢明かと。もし私たちの任務執行を妨害してくるのであれば、こちらもあなたを障碍と見なさなければならなりません。

こちらとしても、そういうことは不本意ですので。

そうかそうか!

……ならさっさとここから出ていけッ!

この*極東スラング*どもが、さっさと出ていけ!儂の家から!今すぐに!

出て行かんかッ!

お湯を持ってきたぜ!ってあれ……二人ともどうしちまったんだよ?

おじいちゃん、なんで……

ノイルホーン、行こう。
(ヤトウが立ち去る)

ちょっ待って!やめてくださいってば、柏生さん!
(ノイルホーンに対して物が飛んでくる)

も、ものを投げないでくださいよ!そっちもお身体を大事に……って分かった、出て行きます、今すぐ出て行きますから!

ニャ!
(和也が駆け寄ってくる)

おにいちゃん、おねえちゃん!待って!

本当にごめんなさい……なんでおじいちゃんが急にあんな怒りだしたのか、ぼくにもよくわからなくて……

本当はすごくいい人なんだよ?いつもだったら絶対あんなこと……

ありがとう、おかげで助かったよ。

さあ、私たちなら平気だから、君は早く帰って年配の方に付き合ってあげなさい。

うん……
(和也が立ち去る)

分からねえな、なんであの狩人さんはあんな急に怒り出しちまったんだ?俺たちもリオレウスが目当てだからか?

一人で村から離れたところに住んで、傍には家族もいないし、家に置いてあるものもボロボロだし。

村の中にあるあの狩人の彫像は見ただろ?本当なら、狩人はここの人たちから尊敬される存在のはずだってのに。

あまり気にする必要はないよ、ノイルホーン。私たちの任務にはなんの影響もないさ。

この村についてもある程度は理解が及んだはずだ、これからは源石感染と関連がある手掛かりを捜索してみよう。

おじいちゃん……ごめんなさい。ぼく、ただあの二人を助けてあげたかっただけで……

あいつらはもう行ったか?

うん……

娘っ子の具合、少しはよくなったみたいだな。

はぁ……