またあの岩だ。
これで何度目だ?
えーっと、七度目だな。
私たちはずっとこの場所をグルグルと回っているだけだ、どの方向に進もうが必ずこの場に戻ってきてしまう。
もし行動を記録することができれば、あるいは……装備の中には十分な長さの紐は入っているか?
今後はそれも申請して……あっそうだ!
職人ネコ……ってあんたなにやってんだ?
掘り掘り、掘り掘り、鉱脈を掘ってるニャ。
あんた……確かほかにも色んなものを隠し持っていたはずだよな、ちょっと探らせろ。
ニャ――ニャハハ!
よっと、ここかな……おっ!これなら使えるんじゃねえのか?
黒い粉末か、確かに目印には使えそうだ。君たちはここで待っていてくれ、私が使ってみよう。
(ヤトウがノイルホーンから離れるもののすぐに戻ってくる)
ヤトウ……
あんたの姿が見えちまってるぜ。
言わなくても分かってる、私も地面の痕跡を見つけた。
また戻ってきてしまったか……
ああ。
最初は訳も分からず狂った獣の群れに追いかけられて、その後にはリオレウスの痕跡も見失ってしまい、挙句の果てには崖のところで囚われてしまったとは。
位置情報発信機もすべて使い物にならないし、マップも表示できない……この森は一体どうなってるんだ?
……このままではダメだ、もう一度試してみよう。こんなところで足止めを食らうわけにはいかない。
ヤトウ……少しは落ち着け。
これはおそらく一種の特殊な自然現象なのかもしれねえ、脅威でもなんでもない。
もう少しだけ待ってみようぜ?しっかりと観察してみりゃ、もしかしたら俺たちが見逃しちまってるところが見えてくるかもしれねえ。解決する方法ならきっとあるはずだ。
それにさ……俺たちの傍からまた誰かがいなくなっちまっていねえか?
ヤトウ――
ノイルホーン――
職人くーん――
どこにいるニャー?
分かったからもう出ておいでニャ。イタズラなのはもう分かったからニャ。
ノイルホーン、そこの木の後ろに隠れているんだろニャ?
職人くん、そこの岩の後ろに隠れてもバレバレだニャ。
ヤトウ、はやく木の上から降りてくるニャ。
いない……誰もいないニャ……
参った、とてもとても参ったニャ……
ちょっと木に刻まれた変な紋様を観察していたら、みんないつの間にかいなくなってしまったニャ。
結局その紋様も、なんの価値もないただの損壊してしまった樹皮に過ぎなかったし……
ボクのせい……ってそんなわけないニャ!学者が真面目に観察していたら、助手たちは大人しくその場で待機しているのが鉄則ニャ!
全部彼らのせいニャ、ボクがいなかったらリオレウスなんか見つかりっこないのに!彼らがボクをまったく大事にしないからこんなことになったんだニャ。
今じゃボクがいなくなって、ボクの重要性に気付いて、きっと慌ててボクのことを探し回っているはずニャ。特にノイルホーンと職人くんのおバカさん二人は。
ヤトウは……いつもおっかないけど、それでもボクとの約束が残っているニャ。彼女がボクを放っておくはずがないニャ!
な、なにをビビる必要があるニャ?この場で大人しく彼らが来るのを待っていればいいだけの話ニャ。
(獣の唸り声)
ウニャー!助けてくれニャ!
森……森の中に……
まさかこの堂々たる元書士隊の生態学者、未来におけるテラ一の専門家……ボクの栄光に満ちたネコ生(じんせい)はここで終わってしまうのかニャ?
そんなのあり得ないニャ!ボクならきっと――
(獣の唸り声)
ニャ……もうはぐれたりしないニャ。
ノイルホーン、もう君のことをバカだなんて言わないニャ。職人くん、これからはたまに……いやいや、いっぱい!いっぱい褒めてあげるニャ!
ニャウ~……誰でもいいから助けにきてほしいニャ……
(ノイルホーンと職人ネコが近寄ってくる)
学者ネコ、あんたなにやってんだ?
ニャ?
ニャ……なぜ君が……
ってノイルホーン!この大バカ者!鈍感!のろまの角付き変人ニャ!
はぁ!?なんだよいきなり?なんであんたにそんな風に言われなきゃならねえんだよ!
君ってヤツはホントに……元王立古生物書士隊の優秀な学者の生態調査の邪魔をするじゃないニャ!
ちょっと待て……今なんつった?
二人とも状況を確認しろ、私たちはこの場で二時間も迷い込んでしまっているんだぞ。
日も直に沈んでしまう、口を動かす労力があるのならここから脱出できる方法を探してくれ。
……学者ネコ、ほらはやく言えって!今なんの調査をしたって?
ウニャー!君に教える筋合いはないニャ!
もういい自分で見る……おいヤトウ!この木に字が彫られてるぞ!
“この崖の区域で発生する異常現象の記録……”だってよ。
“ここでは電子機器は使い物にならない、風に従うんだ。未来”
たぶん前にここへ来た人が残していったものみたいだ。字面通りの意味なら、風の向きに従って進めってことか?
ニャ?それは君たちのところの文字なのニャ?
学者ネコ、あんたがこれを発見したのか?すげーじゃねえか!見直したぜ!
ボクは……ウニャー!“見直した”って、それどういう意味ニャ!
風か……
さっきの粉塵を使おう。高いところから撒けば風の向きが分かるはずだ。
いいアイデアだ、すぐに向かおう。
その前にもう少しだけ見させてくれ。この文字、彫られてからそこまで時間は経ってないはずだ……それに“未来”ってのはどういう意味だ?
あっ!ちょっ待てよ!
やっと抜け出せたな。
湖ニャ!どうりで風が吹き込んでくるはずニャ!
まだ渡るんじゃないぞ。畔になんだかキャンプらしきものが設置されている、人がいるかどうかは確認できないが。
君たちは少し待っててくれ、私が調べ……
(ネコ達が走り去る)
キャンプ!焚火!肉焼き!はやく向かうニャ!
ニャ!
よし――ふぅ、やっと火がついた。
ここのキャンプ、遺棄されて随分時間が経つな。たぶん昔の狩人が残していったんだろう、だが物はまだ使えそうで助かったぜ。
……仕方ない、君からのアドバイスなんだが、今はそれに従っておこう。確かに夜での行動は昼間よりも効率が落ちるし、それによりリオレウスの追跡もままならない。
しばらくはここで体力を回復しても構わないが、回復したらすぐにまた出発するぞ。
分かってるって。
フッ……フフフ。
なにを笑っている?
いや、その……フフ、あんたは相変わらずだなって。いっつも後ろから追っ手が追いかけてきてるみたいに、急いで道を進もうとするものだから。
俺もあんたも、もうこんなに長い間ドクターの傍で働いてるってのにさ。ドクターのあの危機に対してまったく動じない落ち着き、あんたは全然ものにできていねえなって。
私たちになるべくはやく任務を済ませてもらいたいとも思っているはずだ。
へいへい、おっしゃる通りで。あんたには口じゃ敵わねえよ。
前にも言ったが、今は少しでも目を閉じてひと息ついておいたほうがいい。出発する際は、少しは気分がサッパリするはずだ。
俺は……そうだなぁ、キャンプに置いてあるものを漁ってみるよ。ほかにもまだ使えそうなものがあるのかどうかをな。
それは休め……と言ってるのか?
ここの状況から見て、少なくとも村長が言っていた狩猟についてのことはウソじゃないってのが分かった。あの柏生の爺さんを除いて、今じゃ誰も狩人はやっていないが。
その状況と、俺たちが入っていったあのでかい洞窟は切っても切れない関係にあると思うんだ。もしかしたら柏生の爺さんがカッとなった原因も……
リオレウスを見つければすべて分かることだ。そんな無意味なことを考えている暇があるのなら、今すぐにでも出発したほうがいいとは思うがな。
分かったよ……ふーっ、この箱、埃まみれだな。鎖も錆びちまってる、どれどれぇ。
おっ、見ろよヤトウ、中身は狩人の昔の装備だ……刀に小刀、組み立てられた罠と、縄も入ってるぞ、しかも結構頑丈そうだ。
使えそうなものはできるだけ持って行こう。
おっ、ここに矛が立て掛けられているな。見たところ柏生の爺さんが背負っていた矛と同じタイプみたいだ。
このような矛は私もここでしか見たことがない。おそらくこの地に住まう者たちが狩りを行うために作り出したものなのだろう。
俺が持ってる矛は半分しか残っちゃいねえな、箱の中にも矛先は見つからなかった。ほら、見てみろよ。
これは……
どうした?
驚いた。想像よりもかなり精巧な造りをしているぞ、この矛。
柄の中心に穴が開けられていて、埋め込まれているこれは……弓の弦か?どうやらある動物の毛を編んで作られたものみたいだな、とても頑丈だ。
なるほど、柄に取り付けられてるこのスイッチはこの弦を制御するものだな。これで矛先が付けられた矢を発射することができる。この弦の長さから察する、なかなかの威力が出るはずだ。
先が折れてしまった部分は滑車だな。残された構造から察するに、少なくとも一つの向きに旋回させる機能と矛先をロックする機能があったらしい。これなら多種多様な戦闘状況に対応することができるな。
……この武器を設計した人はプロだよ。
武器のことに関してはやっぱりあんたのほうが上だな。俺は手入れすることくらいしか能がねえよ。
返す、戻しておけ。私たちじゃ扱えそうにない。
えっ――いやちょっと待て、柄になんか書かれてるぞ……
柏生……柏生明?この矛の持ち主かな?
あの狩人の爺さんも柏生義岡って名前だったし、どうやらこの名前はあの爺さんとも関係がありそうだ。ほかに何かないか探してみよう。
ノイルホーン、もうその辺に……ん?地面にあるこれはなんだ?
どれどれ?見せてくれ。
一枚の写真だな、おそらく君が箱を開ける時に落ちたのだろう。
ここで撮った狩人たちの集合写真だな。右下の端を見てみろ、今から九年前のものだぜ。
右にいるのは……これ村長か?村長も当時は狩人だったのか?
おそらくはな。
狩人の衣装を着てると、今と比べてまったく雰囲気が違うな。村長の右手側にも小さい女の子が立ってるぜ。
あーッ!この人!
急に大声を出すんじゃない。
写真の真ん中にいる人、この人だけ矛を背負ってるぞ。この折れちまったやつか?
この人が……柏生明なのか?見たところすげー若いな、今から……九年前だろ、中年まではいってないはずだ。
でも、村でそんな人まったく見かけなかったぞ。なあヤトウ、あんたは見た記憶はあるか?
私もない。
これ狩人の集合写真なのに、柏生の爺さんが映ってないぜ。
おそらく単に撮影に参加していなかっただけなのだろう。写真をもとの場所に戻しておきな。
瀧居の村長も若ぇーな!
上の世代の狩人は、もうこの時からここにいる狩人たちと反りが合わなくなって同行しなくなったとか?でもこの柏生って人、村長とかなり仲が良さそうに見せるぜ。
村にも確か狩人の彫像があったよな、結構荒んじまってるけど。あと村長も、あの人も当時は狩人だったのか?おかしいな……この柏生明って人がいたからなのか?
ノイルホーンッ!
えっ……
そこまでにするんだ。
写真に誰がいるとか、柏生家にはどんな人がいて何匹の駄獣が映っているのかなど、そんな無駄な労力を費やして無意味な個人の経歴を想像したところで、私たちの任務のなんの役に立つというんだ?
君は無駄なことを色々と考え過ぎだ、ノイルホーン。
そうやっていちいち要らぬことで集中力を切らしているから、いつも任務時間が引き延ばされてしまうんだ。
結局のところ、あの爺さんの家庭事情を知ったところで何になる?
まさか時間を費やしてまで彼にメンタルケアをしてやらなければならないのか?そのほかにも人がいたらどうするんだ?その一人ひとりに私たちの博愛精神を示してやらなければならないのか?
村にいる人たちのこと……あの人たちの様子なら君も見ていただろ、あの子供のことも……
ここにいる人たちは何も知らないまま、少しずつ深淵へと足を踏み入れてしまっているんだぞ。私たちにできることはそんな彼らを救助してやれるだけ、ほかには何もできないんだ。
いちはやくリオレウスと接触できれば、いちはやく関連している真相に近づくことができ、なおかつ村中で蔓延っている鉱石病の悪化を防ぐこともできる。
私たちは努力しなければならないんだ……もっと努力して、全力を尽くさなければ彼らの安全を確保してやれることはできない。それが私たちの責務だろ。
ノイルホーン……君はそれをしっかりと認識しておくべきだ。
分かってるよ、そう激になるなって。
はぁ、それはそうなんだが、俺はやっぱどうしても柏生の爺さんの様子が気になっちまうんだ。
爺さんが言っていたこと、やったこと……まるでナニかから逃げ出そうとしていたかのように、手の付けようがないくらい頑固になって、独りですべてを背負いこもうとしていた
忘れちまったのか?あの時……
いや、やめておこう。
俺は爺さんが任務とはなんの関係もないとは思えねえんだ、今はまだその証拠が見つかっていないだけなんだよ。
そうか、ノイルホーン。ならロドス行動隊A4の隊長として君に命令する。
今回の任務を遂行するにあたって、その証拠とやらが発見されるまで、一切任務以外の事象に関わることを禁止する。
俺は……ラジャー。
ふんっ……
……なあヤトウ。
俺は……あんたが心配なんだよ。
……
……周囲の脅威を排除しに行く、休憩が終わったらすぐに出発するぞ。
ノイルホーンのヤツ、自分は焚火を焚き上げるからってボクに魚釣りなんかをさせて!
魚じゃなくて鱗獣ニャ。
君に何が分かるニャ?彼らの描述とボクの豊富な知識を結合させて推察するに、鱗獣と魚は一緒だニャ。
♪ウキを投げて、プカプカと、ウニャニャ♪
♪叩いて叩いてガンガンガン、ニャ♪
職人くん、ボクが昼頃に言ったことはまだ憶えているかニャ?
ボクが記録したテラの生態ノートを見返してみたんだけど、やっと違和感の正体を突き止めたニャ。
この森の中には……モンスターがいないニャ!
ボクたちの大陸なら、こういった環境には少なくとも超すごいモンスターたちがうじゃうじゃいるニャ。あの学者はなんて言ってたっけニャ……
そう、調和、彼らには調和の作用があるニャ。
でもボクたちはここに来て、今まで一度もそういった生物と遭遇していないニャ。これはあまりにもおかしいニャ。
それにあの駆け回っていた角獣も、彼らが通り過ぎた場所を調べてみたんだけど、樹皮までもがキレイさっぱり食われていたニャ。これが何を意味してるか分かるニャ?
ニャニャ?
バカな職人くん、つまり最初はそんなことはなかったということニャ。さもなきゃ木々はまったく生えてこないはずニャ。
この森の生態系は……昔とあるタイミングで変わってしまったんだニャ。
ナニかが……消えてしまったんだニャ。
ニャ、でも心配することはないニャ。ボクと君のサポートさえあれば、彼らがいくら弱くたって、しっかり準備すればリオレウスともやり合えるニャ!
こら職人くん、ちゃんと話は聞いているニャ?
♪叩いて叩いてガンガンガン、ニャ♪
はぁ、こんなことなら君に釣りなんか任せるんじゃなかったニャ!
♪叩いて叩いてガンガンガン、ニャ♪
ああもう!まったくウキがピクリとも動かないニャ、一体いつになったら釣れるんだニャ!
(ノイルホーンが近寄ってくる)
学者ネコ、釣れてるか?
ノイルホーン、ちょうどいいタイミングに来たニャ。こっちに来て座ってほしいニャ。
これあげる、持っててニャ。
釣り竿なんか渡してなんの……
ジッとしてるんだニャ。
そのままニャ!
おい……何がしたいんだよ?
君が釣ってるところを見ておきたいニャ。
おい学者ネコ、あんたって――うおッ!
ウキが――ウキが沈んだニャ!
重い――どうすりゃいいんだこれ!?
思いっきり、思いっきり引っ張り上げるニャ!
彼女たちは死んだのだ……君のせいで……
もう逃げてはダメだ……ヤトウ……
君のせいであの人たちは……
ッハァ、ハァ……どうしてこんな……昔のことを思い出して……?
ノイルホーン!
肉焼きは四回だけ回せば十分ニャ!
んなわけねーだろ、俺がちゃんと見てるから。肉だって色味がまだ変わって……ってうわァ!
急に肉の色味が変わったぞ?
やべっ、焦げちまった……
ボクの言うことを聞かないからそうなるニャ!それは自分で食べるニャ!
また俺のせいにしやがって!あんたが俺にいちいち話しかけてきたからこんな風に……
ウニャニャニャー!
おい、何するんだ!?俺の角を引っ掻くんじゃねえ!
ぜぇ……ぜぇ……
ニャ……
こんなことをしてる気力があるのなら、それをリオレウス討伐に使ってもらったほうがありがたいってモンだぜ。遭遇したらすぐに一人だけとんずらこくんじゃねえぞ。
前にも君たちに言ったニャ、リオレウスをやっつける方法ならあるって。彼の弱点は全部ボクのノートに書き記しているニャ。
君たちの武器が弱すぎるからダメなんだニャ。けどボクに先見の明があってよかったニャ、もっと強いヤツを職人くんに作るよう頼んでおいたニャ。
リオレウスか……あいつの肉ってどんな味がするんだろ……
フンッ、教えてやるニャ、リオレウスのキモこそが一番おいしい部位ニャ!
はぁ……
(何者かの足音)
――!誰だ!
(ヤトウが足音を追いかける)
ヤトウ!どこに行くんだ!
先ほど一瞬だけ過った影はこっちに向かっていった。
誰なんだ!はやく姿を見せろ!
そこにいるのは分かっている!
(どこに消えたんだ?)
ウニャ……
(向こうのほうか!)
チャンスをやる、はやく自分から姿を見せるんだ。
(ゆっくり近づいていく)
君は……
出てこいッ!
ニャ!ヤトウ!
職人ネコ?君だったのか?
ニャ?
いや、そんなはずがない。さっきあの影は……
いなくなった?
(ノイルホーンが駆け寄ってくる)
ヤトウー!
あんた、消えるのはやすぎだって。死ぬほど追いかけたぞ。
なにか見つかったのか?
ああ、だが逃してしまった。
ていうか職人ネコ、あんたこんなとこで何やってるんだ?
ニャ、素材を加工していたニャ。
これは……武器と防具?俺たちがリオレウスと戦う用にか?
勝手に触っちゃダメニャ!
ニャ、石がないニャ。だったらこれで代用するニャ!
そんな勝手に素材を代用していいのかよ?
甲殻を……がっしりとはめ込んでニャ。
完成ニャ!二人の装備ニャ!
それは着替えろという意味か?
着替えるニャ!これならもっとリオレウスの相手がしやすくなるニャ!
分かった。
俺もすぐに着替えるよ、なんだか待ちきれねえぜ!
……君はあっちで着替えてくれ、ノイルホーン。
これは……どうやって着るんだ?
腕をここに通すのか?
ん?これは一体どういう……
こんな装い……一度も着たことがないぞ。
本当にこんなものでいいのか?確証が得られないんだが……
重い……すごく兜が窮屈だ、こうやって被るのか?
いってッ!すげーチクチクする、なんでこんなとこにもトゲがあるんだ?俺の角よりもでけーぞ。
これ……本当に人が着る装備なのか?
(だが材質は非常に軽いうえに、驚くほどの強靭度も兼ね備えている。)
(職人ネコが言うには、この防具は彼が持ってきたリオレウスの素材で作ったものらしい。さすがはヤトウですら斬れなかった素材だな……)
(それよりも……この箇所の材質、触った感じなんか馴染があるな。)
(どこで触れたことがあったんだっけ?思い出せねえ、一体どこだったんだ?)
おーいヤトウ!こっちは着替え終わったぞ、どこにいるんだー?
そっちに向かうからな!おっとっと……
コケて頭をぶつけちまった、いっつッ~……これじゃなんも見えねえ。
こうやって装着するのか?おっ、どうやら合ってるみたいだ。
(ヤトウのいる方に振り向く)
わぁ……
「軽やかで、素早く、加えて強靭。」
あれからこの奇妙な新装備を語ることがあった時、私はいつもこのように感心していた。
「そこじゃねえ!」
それにも関わらず、ほかのオペレーターたちはいつもこのように返事をする。
彼らが一体何を伝えたいのか、私は未だに理解できないでいた。
この装備……少し肌の露出が多すぎないか?本当にこんなもので防御効果が生まれるのだろうか?
だが……不思議と皮膚にビリビリとしたような感覚がする。光に照らされる不快感もなくなっているな。
キリン派生武具、効果テキメンニャ!
キリン派生武具?それはこの装備の名前か?
そうニャ。
……帰ったら一度レイズに聞いてみるか。
テラの素材!悪くないニャ!よく替えが効くニャ!
……(ボソッ)オリジムシに感謝ニャ。
新しい武器で戦闘経験を積まなければならないな……って、ノイルホーン?
なんでそんなところで倒れてるんだ?
ゲホッ……いや、まだこの新装備に慣れてなくて、コケちまった。
あっ、それよりあんたマスクは……
外したよ、どうやらマスクはもう必要ないらしい。身軽になったほうが動きやすいしな。
それより君……なにをジロジロ見ているんだ?
な、なんでもない!
……それならはやく起きてくれ。危機的状況はいつだって発生する可能性がある、さっさとこの装備に慣れておかなくては。
お、おう!そうだな!
(学者ネコが駆け寄ってくる)
ヤトウ!ノイルホーン!
あのおかしな爺さんが……来たニャ!
君たちの装備を取ってしまったニャ!