(ノイルホーンとヤトウが武器を手に取り、リオレウスが咆哮を放ち、近づいてくる)
職人くん、はやく!ボクがこれから話すことを記録しておくんだニャ!おそらくこのテラの大地で唯一――リオレウスを討伐した資料になるはずニャ!
ニャ!
ニャ!こちらはテラ大陸調査団の一期団!その団長の学者ネコニャ!
ニャニャ?
どうした職人くん?ボクが団長を務めるのは至極当然のことではないのかニャ?不服かニャ?それなら君は首席職人になるといいニャ!
なにはともあれ!今ボクたちは狩猟の最前線……の岩の後ろにいるニャ!
ボクたちの目の前では今まさに、魂が打ち震えるほどの究極対決が繰り広げられているニャ!
片方は空の王者リオレウス!そしてもう片方はついさっきなりたてのテラの“ハンター”!そして自称百戦錬磨のオトモアイルー!
ここまで聞く限りじゃリオレウスが勝つように思えるかもしれないけど……でも、今の状況は想像を超えるほど熾烈なものに!もうすでに白熱した段階に突入しているニャ!職人くん、ちゃんと全部記録しているかニャ?
ニャ!
(リオレウスがオトモアイルーに火球を放つ)
今、オトモアイルーがリオレウスの攻撃を避けたニャ……よし!リオレウスの注意がそっちに向いたニャ!
(ノイルホーンが太刀を構えてリオレウスに向かって走り出す)
その隙にノイルホーンがリオレウスの尻尾に向かっていき、太刀を振り上げたニャ!そしてそして!
そしてニャ!
(リオレウスがノイルホーンを吹き飛ばす)
吹っ飛ばされてしまったニャ!
ひどい有り様ニャ!
ノイルホーンは……比較的鈍くさい動きを見せてくれたけど、もう一人のほうを見てみようニャ。ヤトウはリオレウスがノイルホーンを攻撃した時の隙を利用して、側面からリオレウスに攻撃を仕掛けたニャ!
(ヤトウがリオレウスの火球を避ける)
絶妙にリオレウスの攻撃を回避していく!そして彼女はついにリオレウスの下に潜り込むことに成功し、狙いを定めたニャ!そこはリオレウスの右翼ニャ!
(リオレウスが飛翔する)
しかーし!リオレウスのほうも突如と飛び上がり、大きな炎を吐き出したニャ!彼女の攻撃もそれで避けられてしまった、実に惜しいニャ!
ニャ!
(ノイルホーンが太刀を構えてリオレウスに向かって走り出す)
あーっと!ノイルホーンがまたもやリオレウスに攻撃を仕掛けていったニャ!今度は外すことなく、しっかりと情け容赦なくリオレウスの尻尾に太刀が振り下ろしていったニャ!
(ノイルホーンがコケる)
けれど……どうやら力加減を間違えてしまったみたいで、本人はコケてしまったニャ……あっ、リオレウスが尻尾を振り出したニャ。
(リオレウスがノイルホーンに攻撃を仕掛ける)
ノイルホーンがまた吹っ飛ばされてしまったニャ……
しかし!彼は再び立ち上がるニャ!今も不屈の魂をふつふつと燃やしながら!そしてノイルホーンがまたもや仕掛けていったニャ!
ノイルホーン!
俺は平気だ、ちょいと息切れが……ゲホッゲホッ――
こっちを心配する必要はねえ!平気だ!
リオレウスなら先ほどよりも重い傷を負うことになってはいるものの、明らかに手強くなってきているニャ……
彼の周りに纏っている源石粉塵の密度も高まってきている。そのせいで炎の威力は倍増し、攻撃パターンも予測しづらくなっているニャ。
反応速度もますます速くなってきているだけでなく、攻撃欲求も度が過ぎるほど強烈だ。気を引かせることができないせいで、まったく隙ができない。攻撃のしようもないぞ。
*極東スラング*、これじゃまた最初の状況に逆戻りだ――近づくことすら難しい。
(リオレウスが別の方向へと歩き始める)
ニャ!リオレウスがそっぽを向き始めたニャ!
ヤツの視線の先は……
臨時避難所のほうに目を向けている、村人たちがまだそこで待機しているニャ。
ふぅ――ふぅ――気で刃を制する、気で刃を制する……
ノイルホーン、ぼさっとするな!はやくヤツを止める方法を考えないと!
君の太刀……方向をうまく制御することはできないが、それを踏み台にしてリオレウスへ急接近することならできるかもしれない、前回のように。今度はしっかりとヤツの弱点を狙い撃つ、私が足止めしておこう!
しかし今のリオレウスの暴れっぷりだと、彼の攻撃範囲内に身を晒すようなものニャ。真正面から彼の攻撃を受けてしまう可能性だって……
そんなことを気にしてる暇はない!ノイルホーン、私に合わせろ!
ヤトウ……
なんだ?今は急いでいるんだ。
聞いてくれ、あいつは頭部にひどいケガを負っているんだ。今は治っているように見えるが、下顎の動きが前と変わっている。
適切なタイミングを捉えて、そいつの頭部に攻撃を食らわせてやれば、きっとこれまでで一番重い一撃を与えることができるはずだ。
だが今の状況だと、適切な角度から攻撃できるチャンスなんてほぼゼロだぞ。
そのチャンスを俺が作り出してやる!オトモアイルー、お前が言ってたアレをやるぞ!難しいことに変わりはねえが……
俺を信じてくれ!これは俺にしかできねえことだ!
だからヤトウ!お前のことも信じる!お前でしかこのチャンスは掴み取れねえ!
ああ、必ずものにしてみせる。
よぉし。
(ノイルホーンが駆け出す)
気で刃を制し、練気で目標に攻撃を命中させてこそ、より強力な攻撃を生み出すことができる。
練気、練気、目標に命中させて……
ああクソ!はやく思い出せってんだ!アレだよアレ……
オトモアイルーから教わって、昔だって教官からも似たようなやつを学んだ、ものを斬るのに最適なあの技!
(ノイルホーンがリオレウスに2回攻撃を当てる)
ノイルホーン殿!リオレウスは傷を負ってる、今のうちにわしが教えた気刃斬りを放つニャ!
(ノイルホーンがリレレウスに6回攻撃を当てる)
うるせぇうるせぇ、って、そうだ!次は攻撃の最中に刀を鞘に戻して……
(ノイルホーンが太刀を鞘に収める)
そして――抜刀する!
(ノイルホーンが居合抜刀気刃斬りを放つ)
居合抜刀気刃斬りニャ!
ヒット!
ノイルホーン殿!今がチャンスだニャ!
分かってる!太刀の一番強力な攻撃だろ!俺もその力に呼ばれているような気がするぜ!
その名も――
うおおおおおおおお!
(ノイルホーンが高くジャンプする)
気刃兜割りだあああああ!おりゃあああああ!
ノイルホーンは勢いに乗じてリオレウスの身体を踏み台に、一気に飛び上がる。
まるで目に見えないロープにでも繋がっているかのように、彼の身体はぐんと空中へ高く放り上げられた。
絶え間なく貯め込まれた気は、頂点に達した時に最も微小な点へと収束する。
そして迸り――
一太刀、リオレウスの身体を斬り下ろしていった。
(ノイルホーンが気刃兜割りを放ち、リオレウスが倒れる)
すごい灰だ……なにも見えないぞ!ノイルホーン、無事か!?
(ヤトウが駆け寄る)
俺なら……平気だ!でもしばらく動けそうにねえ……
この短時間で気刃兜割りを繰り出すとは、驚きニャ!
しかしリオレウスのほうも勘が鋭い、すぐ反撃に転じてしまった。
どいたどいた!職人くん、再びボクたちネコタクの出番だニャ!さあここニャ!はやくノイルホーンを乗せるニャ!
職人くん、なにを乗せているニャ?それはノイルホーンじゃないニャ!
あれは……ニャ!
リオレウスの尻尾!ノイルホーン殿が斬り落としたのか!リオレウスも倒れているニャ!
これはまたとないチャンス!
ならここで戸惑っている暇はなさそうだ……私がいこう。
ああもう――はやくノイルホーンを乗せるニャ!ボクたちの記録をしなきゃならない大事な時間を無駄にするんじゃないニャ!
(リオレウスが咆哮を放つ)
ヤトウ、後のことはお前に任せるぜ……
傷を負ってるとは言うが……それはどこにあるんだ?下顎の辺りだろうか……)
(クソ、ヤツが大量の灰を巻き上げているせいで視界が……)
(そこか!見つけたぞ!)
ここでお前を片付けてやる!
(ヤトウが駆け出す)
ヤトウ殿!待つんだニャ!
(リオレウスが火球を放ち、ヤトウの攻撃を阻む)
ッ――クソッ!またとないチャンスだったのに!
なんと……尻尾を斬り落とされた状態でもすぐさま回復したとは。このリオレウス……実に不思議な個体だ。
(リオレウスが飛翔すつ)
なっ……
飛んだぞ!方向は……依然そのまま!臨時避難所の方向ニャ!
ヤツを叩き落す方法はないのか?オトモアイルー、なにか方法はあるはずだろ?
この場合使える手段といえば閃光玉だけだ。しかしわしの閃光玉はここへ来る前に壊されてしまったニャ。
今ここにある素材だけとなると、彼がこちらに攻撃を仕掛けてこない限り、彼と顔を合わせることは無理ニャ。
ならこのままヤツがすべてを破壊し尽くしていくところを見ていろと言うのか?これまで積み重ねてきた努力がすべて水の泡と化すんだぞ?
そんなこと……ここで終わらせるわけにはいかない!
“ハンター”たちは長きに渡って我が身一つでこのモンスターたちと対峙してきた。そこで何よりも重要なのが彼らを自分たちの狩場へ引き寄せるための経験。それがあってやっと、この想像を超えるモンスターたちと同じ土俵に立つことができるニャ。
しかしリオレウスは空の王者、空こそが彼の縄張り……
だから今のリオレウスを……残念ながら止める方法はないニャ。
こら、職人くん!そっちに行っちゃダメニャ、危ないニャ!
(リオレウスが火球を3回放つ)
閃光玉の代わりとなるアイテムなら、ここにあるニャ!
何を言って……
作り出したと言うのか?
これニャ。
臭い鳥の巣の中から見つけたオリジムシ、この地に生息するこいつは強い光を発することができるニャ!
ほかの素材と一緒に混ぜこぜすれば、閃光玉と同じようなアイテムのできあがりニャ!
ニャ!ヤトウ殿!これならリオレウスを叩き下ろすことができる!キーアイテムニャ!
必ずリオレウスの頭を目掛けて投げるんだ。爆発したら目が眩むほどの強力な光を発するから、目を閉じることを忘れるでないニャ!
スタングレネードと同じ用法と考えればいいんだな?分かった。
こいつのことなら閃光グレネードとでも呼ぶニャ!
ああ。
貸せ!
(狙いを定める)
落ちて、こいッ!
(閃光グレネードが炸裂し、リオレウスが落ちてくる)
成功ニャ!リオレウスが落ちてきたニャ!
オトモアイルー、私が持ってるこの双剣なんだが、今リオレウスにもっとも効果的なダメージを出せる技は……なんだ?
それなら空中回転乱舞ニャ!その前にヤトウ殿はまず鬼人化の状態に入らなければならない。それから攻撃する方向を定めて、高い箇所から飛び降りる必要が……
要点はなんだ?
今までで一番激しく双剣を振り回し、空中で舞を踊るように旋回することニャ!
舞を踊るように旋回すること……
(リオレウスが立ち上がる)
(チャンスを……チャンスを掴むんだ……)
空中で舞うように……
(リオレウスが威嚇をする)
これでも食らえ、ウニャニャニャ!
(オトモアイルーがリオレウスに攻撃を仕掛け、リオレウスが咆哮を放つ)
リオレウス!
ここでお前を!
討つ!
(ヤトウが鬼神化する)
真っすぐリオレウスへと突進していくヤトウの目には、この獲物を除いて何一つとして映り込んではいなかった。
(ヤトウが3回斬撃を放つ)
双剣は翻り、空を斬る斬撃を繰り出し、舞い上がる粉塵を振り払う。
(ヤトウが3回斬撃を放つ)
やがて彼女の姿は空中で回転し、さながら舞を踊っているかのようであった。
(ヤトウが空中回旋乱舞を放ち、リオレウスが咆哮を上げた後に倒れる)
と、捕った……!縄でモンスターを拘束する方法、東にある集落で習得しておいた甲斐があったニャ……
これで、倒したのか?
ようやく……私たちの勝ちだな。
(リオレウスが咆哮を放つ)
ヤトウ殿!いつまでも彼を拘束することはできないニャ、今はいか素早く彼を仕留める方法を考えてくれ!
……分かっている。
以前ならリオレウスを討伐対象に入れるべきではないとわしは考えていた。しかし貴殿と共に狩猟を行ったあと、考えが変わったニャ。
わしは貴殿らが住まうこの土地のことについてまだ理解しきれていない。源石という存在もあって、今後リオレウスが貴殿らにどのような脅威をもたらしてくるかは未知数ニャ。
ここは貴殿らの住処、ならば決定権は貴殿らにある。
ヤトウが目線をこの大きな身体に向ければ、無数もの灰燼がこの生物の藻掻きによって巻き上げられている。
鱗は剥がれ落ち、そこかしこに傷を負ってはいるものの、この生物の威勢は未だに衰えることなく恐怖を煽り立ててくる。
なんてすさまじい生命力……
今後の人々の安全のためにも、私は脅威を根本から排除する必要がある。これは私の責務だ。
……トドメを刺そう。
待ってくれ、ヤトウ!
どうした?
ゲホッ……話を聞いてくれ、こいつを……
なんだ?
ゲホッ、思わず咳き込んじまった……こいつにトドメを刺す必要ならないさ。
理由を聞こうか。
理由は……ゲホッ……
ニャ!ボクが説明するニャ!
ヤトウ、これを見てほしいニャ。この源石結晶が付着してる部位を。
職人くん、金槌を渡してくれニャ!それっ!
剥がれ落ちたぞ?
ノイルホーン、こいつを検査するニャ。
以前あの学者から知ったことなんだけど、リオレウスは源石に感染しているわけではなかったんだけど、源石粉塵をまき散らしてしまうくらい源石の影響で情緒が不安定になってしまったんだニャ。
けれど、これだけだと君たちの疑惑を解消させるにはまだまだ不十分だと思うニャ……そこでボクは採掘場の中でとても気になるものを見つけたニャ。それをたくさんの記録と比較してみたら、一つの事実を見つけたニャ……
リオレウスの身体にこれだけの源石結晶が付着しているのは、彼が今までずっと源石と抗ってきた証拠。いうなればこれは彼が源石と抗った際に発生した源石の副産物ニャ。
ボクと同じ結論ということでいいのかニャ、ノイルホーン?
ああ、つまりこの源石は非活性状態だ。
彼に付着したのは活性源石の粉塵だけれど、長期間源石の環境下に滞在しない限り、リオレウスが活性源石粉塵をまき散らすことはないということニャ。
だがこいつがほかの源石の採掘場に現れない保証なんてない、危険性は変わらないままだろ。まさか今ここでこいつを捕獲して移送する方法でも考えてくれ、とでも私に言いたいのか?
いいや……彼ならもう遠くには行けないニャ、ボクが保証する。
元々この個体はかなり歳を食っていたし、飢えで身体も衰えてしまっている。加えて今回の狩猟で……彼の活動能力も弱まってしまったニャ。
彼がこの源石の採掘場へやって来たのは、体力を回復するためだったんだと思うニャ。リオレウスが巣を作る環境の一つとして、ボクたちのところの火山地帯とここの環境はとてもよく似ているからニャ。
そういえば確かに、わしが初めて彼を発見した時はちょうど火山に向かっていた。
今思い返せば、彼はおそらく自分の故郷に帰りたがっていたのだろう……ニャ。
それで……君はどう判断するんだ、ノイルホーン?
意図的に人を襲うつもりもないし、これ以上の脅威にもなり得ないしなぁ……
リオレウス……
リオレウスの未だに激しい息遣いにより、口や鼻から灼々とした火花が飛び散る。彼の口角には、また新しい焼き痕を付け加えられていた。
大きな身体のほうも依然と震えは止まらず、必死に縄の束縛を振り解こうと最後の力を振り絞る。
ニャ!ビックリしたニャ!拘束されているんだから動くんじゃないニャ!
天災は……徐々に近づきつつあるな。
……天災を目の前にしてみれば、私たちはみんなどうしようもなくちっぽけな存在に見えてしまう。
オトモアイルー、この点については君の言う通りだ。
ニャ。
空の下にあるものは、一度だって私たちのものになったことはない。この大地に生まれたすべての命は、あらゆる手を尽くしてでも生き残ろうとしているだけだ……
ほんの僅かな生きるチャンスを掴み取るためなら、相争うことだって厭わない。たとえ……
熾烈な死に様を迎えることになったとしても。
ヤトウ、どこに行くんだ?
支援がそろそろ到着する頃だろ。避難所にいる村人たちが無事に避難できるよう手を貸しに行く。
じゃあリオレウスは?
任務に指定されていないことで時間を無駄にするつもりはない。そういうことはお節介な誰かがやってくれることだろう。
五回目の録音を行う。こちらはロドス行動隊A4、隊長のヤトウだ。
露華村の源石粉塵を拡散させる発生源は片付き、脅威を無事排除することに成功した。これからは天災から村人たちを避難させてやるための締めの作業に取り掛かる。
任務はおおよそ完遂した。では録音を終了する。
おねえちゃん見て!バケモノが飛んで行っちゃったよ!
ああ、リオレウスが?
まあまあ、想定内のことだよ。
あのすごいおにいちゃんとおねえちゃんでも、リオレウスには勝てなかったのかな?
いんや、あの二人ならちょーすごい人だよ。わんさかいるオリジムシの大群だってやっつけちゃうんだから。
オリジムシとあのバケモノを比べるのは……
あの二人なら、きっと正しい選択をしてくれたはずだよ。
飛んで行っちまった……俺の家財も、何もかも……
いいからさっさと車に乗りなさい。お前がしでかしたツケなら、これからゆっくりと返してもらうぞ。
(刀を拭く)
明、生きていたらお前もこうしていたんだろう?
私は見ていたからね。あの時お前が、あの犰爪獣の幼子を助けたところを……
飛んで行っちまったな。
本当に飛んで行ってしまったニャ。
飛んだ!飛んだニャ!
なにをボーっと空を見上げているんだ君たちは?はやく手を貸せ!