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【アークナイツ大陸版】12章 驚霆無声 12-1「陽炎」 翻訳

新しい赤麦の種もみ、そして駄獣の鞍
粉ひき用の駆動ユニット、中古の輸入品であれば可
首のマッサージ機?それなら通販で買ったほうがいいかもしれない
ベルベッドのコートは二着、スィンドンの仕立て屋で。父に送るやつは裾を短めに
『アイビスのロマンス物語』は(線が引かれている)(忘れたことにしておこう)
それと普通のキャンディも忘れずに。あの子供たちはこれで妥協してもらおう。
ジョージのやつに勲章を借りることも忘れずに!

ベテラン士官
ベテラン士官

ピアース。

若い兵士
若い兵士

はっ、長官!

ベテラン士官
ベテラン士官

君の休暇なんだが、何やら許可が下りたようじゃないか。

若い兵士
若い兵士

はっ、順調に取得することができました、長官。これもすべては……

ベテラン士官
ベテラン士官

すべては君のそのベビーフェイスのおかげだ、青二才め。

ベテラン士官
ベテラン士官

上にいる人たちは時折そうやって部下へ気配りする様子を見せてくる、彼らが言うにはイメージ戦略だそうだ。

若い兵士
若い兵士

あはは、それはきっと長官らのご機嫌がちょうどよろしかったからだと思います。

若い兵士
若い兵士

]実家の製粉所が崩れてしまって、おまけに町の大工も足を折ってしまったものですから、ママが手伝いに戻ってこいと言ってくるものでして。

若い兵士
若い兵士

十日分の休暇、往復にかかる八日分を除いた一日半。それだけあれば、半壊してしまった文化財もどきの相手をしてやれるはずです!

若い兵士
若い兵士

念のため、半日くらいの時間的余裕は残しておきました。長官、もしかすれば父の代わりに少しだけ畑を耕してやれるかもしれません。

若い兵士
若い兵士

あっ、そうだ、作業用の手袋も買っておこう。さっさと実家が使ってるやつと交換してやらないと。

ベテラン士官
ベテラン士官

ふむ、それは……購入予定のリストか?

若い兵士
若い兵士

はい、長官。買い忘れ防止のためにも書き残しているであります。次回いつ休暇を頂けるかまったく分からないものですから。

ベテラン士官
ベテラン士官

その時はきちんと本物の勲章を何枚かもらっていることを切に願っているよ、君自身のな。

若い兵士
若い兵士

もちろんであります!これもすべては我らがヴィクトリアのためであります、長官!

ベテラン士官
ベテラン士官

ふふ、野心家なヤツめ。

ベテラン士官
ベテラン士官

知り合いにトッドというヤツがいる、私と共に辺境で塔の術師どもと相手をしてきた戦友だ。彼は純金製の記念勲章を一枚獲得しているぞ。

ベテラン士官
ベテラン士官

本当に美しい勲章だったよ。胸元につけてキラキラと、まったく目が離せなかった。

ベテラン士官
ベテラン士官

我らが敬愛するウィンダミア公爵閣下自らが叙勲くださった勲章でな、あれは軍人たちの最高の栄誉だよ。ただその後行われたパーティなんだが、トッドのヤツ、なぜだかずっと苦い顔をしていてな。

ベテラン士官
ベテラン士官

それは一体なぜだったのか、分かるかね?

若い兵士
若い兵士

自身の武勲に満足しきれていなかった、ということでしょうか?

ベテラン士官
ベテラン士官

いいや、そんなものじゃないさ。それよりもさらに酷いものだ。

ベテラン士官
ベテラン士官

木製の義手を二つも装着していたせいで、あいつは酒を飲むためのジョッキすら持ち上げられなかったのだよ、はッ!

ベテランの士官が口を開ければ、一列に並んだ黄ばんだ歯をあらわにする。
それにつられて若い兵士も愛想笑いを返してやるが、彼には分かっていた、これも所詮は長官のくだらない笑い話の一つにすぎないのだと。
甲板では猛烈な勢いで風が吹き荒れている。兵士らは自分たちの軍帽のつばを掴んで抑えつけながら、軍人としての体面を損なわないほどの小さなくしゃみをしてしまう。
たとえ季節や天候がどうであれ、疾走する高速戦艦の甲板上はいつだってコートに包まれたくなるものだ。
今日はウェルシュのヤツが調理担当だ。あのハゲデブ野郎、一体どれだけ軍用缶詰をこっそりと平らげたものやら、と若い兵士は密かに思う。
しかしあいつが作るシチューは絶品だ、願わくば今日、シチューにたっぷりと羽獣肉を入れてくれるといいんだがな、とも。
そうして若い兵士が思いを馳せ、日が暮れて夕食を済ませば、いよいよ彼も出発の頃合いだ。
彼らが搭乗している移動要塞はすでにロンディニウムの付近まで辿り着いている。もし天気がよければ、地平線の彼方からザ・シャードの尖塔部分が見えるかもしれない。
駐屯地に戻り、後方支援中隊の輸送車に乗った後は、まず一番近い町に寄るとしよう。そこの酒場で二杯くらいは酒を注ぎこむことができるはずだ。
早朝になれば、商品を仕入れになめし職人が郡へ出発するはず。タバコ二箱もあれば、十分行き先まで自分を乗せていってくれるだろう。
そうやって若い兵士は、実家にある倉からいつまでも発せられる、もみ殻堆肥の発酵した臭いを思い出した。
あの臭いは今になってもたまに夢の中で襲いかかってくることがある。思わず鼻をつまみたくなるが、それは実家の村とのある種の繋がりをも意味していた。
もしたまたまだったのであれば、いや、若い兵士はこっそりと眉を顰めながら、もうこんな無節操な気持ちで自分にウソをつきたくはないと、そう誓った。
たとえたまたまであったとしても、あんな臭いはもう二度とゴメンだ。これこそが毎度実家へ帰る際の最大の障害となっていることを、彼は認めざるを得ずにいた。

ベテラン士官
ベテラン士官

まったく、また霧が発生したか。このロンディニウムのクソッタレな天気はいつになっても慣れないものだよ。

ベテラン士官
ベテラン士官

私たちがリターニアの辺境へ駐在した時の天気もいいものではなかったが、少なくとも午後になれば日光浴くらいはできたものの。

ベテラン士官
ベテラン士官

おい、艦長に知らせろ。こんな天気じゃ観測所は何も見えないだろうし、レーダーも影響を受けるかもしれん。そろそろ帰航すべきだ。

ベテラン士官
ベテラン士官

カスターの部隊は大人しく自分たちの前線を張っていたが、ゴドズィンによってまた奥まで撤退させられてしまっている。面識があるあの前哨部隊を除けば、ウェリントンの主力も未だ顔を見せてはいない。

ベテラン士官
ベテラン士官

我らが敬愛するウィンダミア公爵閣下を除いたほか七名の公爵の方々は相変わらず傍観しておられるご様子だ。以上がパトロールの報告だ。

若い兵士
若い兵士

しかし長官、あのサルカズたちは……

ベテラン士官
ベテラン士官

そんなことは我々とは関係ない。上におられる方たちが自ずとそれについてご考慮してくださるはずだ。

若い兵士
若い兵士

しかし聞いた話では、近頃ロンディニウムの中で……

ベテラン士官
ベテラン士官

ピアース、私はもうすでに十何年も軍に所属してきた。酒飲みとカード遊びを除いて、軍の中で学んだ一番重要なことというのはだな――

ベテラン士官
ベテラン士官

そんな根拠のないくだらんデマを信じないことだ。そういうことは後ろで地図と睨めっこしている長官らがすべてやってくれる。私たちは自分たちの責務を全うすればそれでいい。

若い兵士
若い兵士

しかし我々の責務は……ヴィクトリアを守ることではないのですか?

ベテラン士官
ベテラン士官

ヴィクトリアがなんたるかは彼らが決めることだ。若いの、我々の責務は命令を遵守することだけだなのだよ。

ベテラン士官
ベテラン士官

さっ、そろそろ帰りたまえ。平和な一日は終わった。

ベテラン士官
ベテラン士官

私はひとっ風呂浴びてくることにするよ。この霧のせいで骨が――

もしかすればこの頃あまりにも疲労が溜まっていたこともあって、若い兵士はいいタイミングで休暇を申請してやった自分に感謝することにした。
戦場はいつだって精神を削がれる。とりわけ何が起こるのか起こらないのか、あるいはいつどこで何が起こるのか、誰であれば信頼できるのかが分からない戦争はなおさらだ。
少し熱いな、若い兵士はそう思った。
そうして腕を曲げ、シャツの第一ボタンを外そうとする。彼の親愛なる長官はつい先ほど平和な一日は終了したことを教えてくれたのだ。であれば、少々風紀を無視しても大事にはならないだろう。
やがて彼は実家にある暖炉のことを思い出す。数年前、彼は新しく仕立てられた軍服を着こんだまま家に帰り、汗だくになるまで暖炉に焼かれてもボタンの一つとて外そうとしなかったことがあった。このことは、後々シェリーのやつに長い間笑い話にされるのであった。
しかし若い兵士はニヤリと口角を上げる。

若い兵士
若い兵士

ヘッ、だからだよ。お前なんざに、あんなバカっぽいロマンスものを持って帰ってやるもんか。これは俺からの報復だ、ざまあ見ろ。

(砲撃音と共に高速戦艦が射抜かれる)

マンフレッド
マンフレッド

……

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

主砲、出力は正常値のまま。目標の破壊を確認。

マンフレッド
マンフレッド

よろしい。

マンフレッド
マンフレッド

では次の準備に取り掛かれ。大公爵たちはすぐにでも反応してくるはずだ。

マンフレッド
マンフレッド

……

(テレジアが近寄ってくる)

マンフレッド
マンフレッド

テレジア殿下。

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

で、殿下……!

テレジア
テレジア

あら、新顔?

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

は、はい……!殿下!先日、将軍が傭兵隊から抜擢していただいた者です!

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

と、とても光栄に思います……あなた様はずっとオレの……

テレジア
テレジア

私もあなたと知り得て光栄だわ、名はなんて言うの?

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

お、オレは……

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

……

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

(小声)ちゃんとした名前なら、持ってません。周りからはいつも“ヒジ”って呼ばれています。

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

……クソ、こんなことがあれば本の中からもっとまともな名前を取っておけばよかったのに。

テレジア
テレジア

“ヒジ”……どうしてヒジなの?

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

前にスープを飲む時、火傷をしてしまって……いや、そんな大した話じゃないんです、殿下がご心配される必要は……

テレジア
テレジア

きっとお椀を持ち上げ過ぎちゃったんじゃないのかしら?

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

違います!“サイコロ”の野郎がオレにぶつかってきたからああなったんです!あの野郎、今度会ったら絶対に……

マンフレッド
マンフレッド

殿下。

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

あっ、オレ……すいませんでした、将軍、テレジア殿下。

テレジア
テレジア

いいのよ。さっ、まだお仕事が残っているでしょうし、はやく行きなさい。

テレジア
テレジア

聞いた話じゃ飛空船軍の今日の夕食はシチューみたいよ、食事の時間に遅れないようにね。

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

……

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

感謝いたします、テレジア殿下。

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

オレたち……

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

“戦場を終えるたびに、サルカズたちは帰れる家を持つことになる。”

王庭軍の兵士
王庭軍の兵士

オレたちって、もうすぐカズデルに戻れるんですよね?

テレジア
テレジア

……

テレジア
テレジア

もちろん。

テレジア
テレジア

王庭の主たちと比べて、彼らと一緒に過ごすほうが私は好きだわ。

テレジア
テレジア

サルカズの魂たちはいつだって私に俯くことを迫ってくる。私たちの長く苦痛に満ちた歴史の中へ埋めてくるのだから。

テレジア
テレジア

けど彼らは……新しく成長してきたあの子たちは、ある種の確実な未来を実感させてくるの。

テレジア
テレジア

私たちは……未来をどこに置いてやればいいのかしら?再び大地を席巻する戦争の中に?

テレジア
テレジア

私たちの目の及ぶすべての場所が焦土と化した時、彼ら新芽は本当に私たちが願ったようにすくすくと成長してくれるものなのかしら?

テレジア
テレジア

希望というものはいつに変らず重苦しいものだわ、マンフレッド。

マンフレッド
マンフレッド

……殿下。

マンフレッド
マンフレッド

軍事委員会の取り決めにより、一部の区画はすでにロンディニウムから離脱しました。現在は指定のポイントまで進入し、ダウンタウン区画と大公爵の包囲網の間に停泊しております。

マンフレッド
マンフレッド

あそこはこれから我々の攻勢と支援の拠点へとなり得ましょう。この飛空船もしばらくはそこに停泊する予定です。

マンフレッド
マンフレッド

ウィンダミア公のほうも、すぐにでも自身の高速戦艦が破壊された報せを受けることはずです。とはいえ飛空船の脅威を無視することもできません、このことはきっとナハツェーラー様が戦線を展開する際の助けとなりましょう。

マンフレッド
マンフレッド

私たちもこれから、摂政王の指示に従って……

テレジア
テレジア

マンフレッド、窓の外を見てみなさい。

そう言われて、マンフレッドは窓の外へ顔を向ける。
認めざるを得ないが、こうして計画という炎が目の前で轟々と燃え盛っていたとしても、彼はどうも……想像していたよりもあまり心躍ることはなかった。

マンフレッド
マンフレッド

……目が見開けないくらいの火の光。

マンフレッド
マンフレッド

ようやく、我々の戦争が勃発したのですね。

マンフレッド
マンフレッド

軍事委員会の推測通りであれば、今から十六時間以内に大公爵たちが慎重に軍事行動を展開してくるはずです。我々のほうも、すでに用意はできております。

テレジア
テレジア

いいえ、戦争なら今まで一度だって止んだことはないわ。

テレジア
テレジア

戦線同士が引き裂かれない限り、戦争の名を冠することができないわけではない。あのカーテンの奥に隠れた目、そして夜に聞こえる小声で発せられた呪詛の言葉とすすり泣く声、あれらも戦争よ。

テレジア
テレジア

荒野でひとり斃れてしまった私たちの同胞たち。式典で引きずられていく黒くて長いマント。コレクターによってガラス箱へ入れられた、いずれかの時代のカズデルから取ってきたであろうレンガの欠片。それらもまた戦争そのもの。

テレジア
テレジア

戦争はずっと私たちの一部だった。ただ私たちは……そんな戦争をもう一度人々の前へと押しやっただけ。

マンフレッド
マンフレッド

たとえヴィクトリアから燃え広がった戦火であっても、カズデルが戦争の一部でなかったことはありません。この点については、私と将軍のほうで多くの計画が……

テレジア
テレジア

いいえ、マンフレッド。それを聞いているわけではないわ。

テレジア
テレジア

見えるのよ。私たちの足元、この飛空船の下で誰もが平等に影に覆いかぶせられていくところが。

テレジア
テレジア

それを終わらせましょう、将軍。それがサルカズであることを証明できる唯一の方法であれば……

テレジア
テレジア

涙で涙をそそぎ、苦難で苦難を埋め立ててあげましょう。

マンフレッド
マンフレッド

……

マンフレッド
マンフレッド

それが……たった一つの方法というのであれば。

マンフレッド
マンフレッド

あなた様が望むがままに、殿下。

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

……

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

なあ、見えるか?

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

ああ間違いねえ、まるであの伝承からそのまま出てきたような感じだぜ。

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

災いの兆し、動乱の前奏、悪夢の化身……

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

それじゃあ……

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

香水でぎっしりの宝箱を引きずった、山みたいにデカい鉗獣は見えるか?

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

ああ、赤っ鼻のハンバートが言ってた通りだ。

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

……

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

お前は身体がよくないんだ。これ以上の飲酒は控えるようにって、ナインにも言われただろ。

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

ちょっとくらい飲んだだけじゃねえか!俺ァもう長くねえんだ、最後の希望まで捨てさせないでおいてくれよ。

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

オメーだって憶えてんだろ。雪原にいたあの日の夜、みんな凍え死にそうだってのに、赤っ鼻のハンバートが俺たちに話してくれたあいつん村に伝わる奇妙な伝承の話を――

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

……すまないが、俺はヴィクトリアからお前らに加わったんだ。

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

そうかい、俺ァてっきり……

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

そうだったな、赤っ鼻のハンバートはウルサスで死んじまったんだった。あいつァすげーヤツだったよ、少なくとも監視隊を四つも道連れしてやってくれたんだからなァ。

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

クソッタレがァ、オメーならきっとあいつとあいつの話を気に入ってくれるはずだのによォ。この一杯はあいつに捧げるぜ!

ナイン
ナイン

ロマーヌィチ、また酔っ払っているな?前にも言っただろ、そのスキットルをはやく渡すんだ。

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

嬢ちゃん、俺ァもう長くは生きられねえんだよ。だからもう……

ナイン
ナイン

まだまだこれからだ、医者の言うことを聞いてやればな。

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

い、医者なんざクソ食らえだ!あいつらはみーんなペテン師なんだよォ!俺ァこの液体が必要不可欠なんだァ……俺には見える……(むにゃむにゃ)……

(足が不自由なレユニオンの戦士が倒れるように眠る)

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

まーた眠っちまったよ。

ナイン
ナイン

毛布をかけてやれ。

ナイン
ナイン

私たちなら、すでにロンディニウムからそう遠くないところまで来ているはずだ。

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

ああ、運がよけりゃ、あと一週間であの城壁が目に入るかもしれねえな。あのオンボロ車を直せていたら、もっとはやく着いただろうに。

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

ロンディニウムの周りはあんまし天災が発生することはない。だが昨今の情勢だと、運悪くどっかの大公爵の部隊と鉢合わせする可能性もある。あいつらは全員友好的なヤツらとは言えねえ。

度量が小さいレユニオンの戦士
度量が小さいレユニオンの戦士

それに、サルカズだっていることだし……

ナイン
ナイン

これからは今まで以上に慎重に行動しよう。

ナイン
ナイン

とはいえ、あの閉じ込められている仲間は探し出さなければならない。たとえ彼らが今でも私たちの一員であることを認めていなかったとしてもだ。

ナイン
ナイン

もう一度団結することは困難なことだ……が、私たちは今でも同じような苦しみを感じ、同じような悲しみを背負っている。そういった感情が私たちをいつまでも足を止めぬように駆り立てているんだ。

ナイン
ナイン

これは償いだ、なんてことを私は言うつもりはない。ただ、落ち着いて取り掛かれるのも……今のところはこれしかないだろう。

ナイン
ナイン

絶望の淵に立たされている感染者たちに知らしめるんだ。彼らにもまだ仲間はいる、穀潰しなどではないことをな。

(何者かが近寄ってくる)

ナイン
ナイン

……

ナイン
ナイン

言われた通りの場所にいろと言ったはずだが?

ナイン
ナイン

タルラ。

タルラ
タルラ

……

タルラ
タルラ

ナイン。

タルラ
タルラ

少し息抜きに出てきただけだ。

ナイン
ナイン

それは構わない、だがお前のことは私が見張っておく。

タルラ
タルラ

……遠くに、明かりが見えるな。

ナイン
ナイン

燃えだしてしばらくは経つ。雷による森林火災であればいいのだが。

ナイン
ナイン

私たちの部隊なら、そこを迂回する予定だ。

タルラ
タルラ

そうか、雷か……

ナイン
ナイン

お前、キャンプ地で粥を作っていたのか。

ナイン
ナイン

調理担当を手伝っていただけだ。本人が言うには、まだ二箱ものジャガイモを片付けなければならないらしい。

ナイン
ナイン

味見してみたが、悪くはなかったぞ。

タルラ
タルラ

アリーナ……昔の……ある友人が、私に教えてくれたんだ。

タルラ
タルラ

料理の腕前、もうとっくに忘れてしまっていたと思っていたのに。

ナイン
ナイン

お前自身の裁きが下される前に、私たちのために力を尽くしたいのであれば止めはしない。

ナイン
ナイン

だが今のお前の立場というものを忘れるんじゃないぞ、タルラ。しっかりと見張っておくからな、全員が。

タルラ
タルラ

……もちろんだ。

ナイン
ナイン

では荷物を片付けよう、そろそろ出発だ。

(足が不自由なレユニオンの戦士が起き上がる)

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

……俺ァ眠っちまっていたのか?クソォ。

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

おーい、ナインさんよー!この歳を食っちまったどうしようもねえヤツを憐れんでやってくれねえか?一口だけでいいんだ、さもなきゃ俺ァ今日でおしまいだよォ!

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

おい、お前ら見ろよ!向こうの空が真っ赤に燃え上がってらァ!赤っ鼻のハンバートも言ってたぜ……

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

あいつが言うには、これはいい兆しらしい……いい兆しだってよ!

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

それと、これは……彼岸?勝利?とも言ってたっけ?まあ、もうよく憶えちゃいねえが……

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

多分、多分って話だ……

足が不自由なレユニオンの戦士
足が不自由なレユニオンの戦士

もしかすれば……単に明日はいい天気になるだけなのかもしれねえなァ。

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