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【アークナイツ大陸版】12章 驚霆無声 12-3「善意の裏切り」行動後 翻訳

レト中佐
レト中佐

入りたまえ。

(ゴールディングが部屋に入る)

ゴールディング
ゴールディング

……

レト中佐
レト中佐

来てくれたか、ゴールディング。

ゴールディング
ゴールディング

レト……思っていた以上に私たちのことを把握しているのですね。

レト中佐
レト中佐

なんのことかな?

ゴールディング
ゴールディング

ロンディニウム自救軍のことを言えばお分かり?

ゴールディング
ゴールディング

どこでその情報を知ったのですか?

レト中佐
レト中佐

そんなこと重要かね?

レト中佐
レト中佐

まあ座ってくれ、まずはリラックスしたまえよ。

レト中佐
レト中佐

なにも私と君との間に起こった戦争ではないのだから。

ゴールディング
ゴールディング

答えてください、レト中佐。

レト中佐
レト中佐

君がここへ来た理由は分かっているよ、ゴールディング。時間稼ぎしに来たのだろう。

レト中佐
レト中佐

私と示談するだけの、自分の友人らを助けてやれるだけの交渉材料があると、そう君は思っている。

レト中佐
レト中佐

しかし残念だよ、ゴールディング。まさか君がここまで考えの甘い人間だったとは。

ゴールディング
ゴールディング

……ついこの間、あなたと話したことがありましたね。

ゴールディング
ゴールディング

ロンディニウムをリンゴネスと同じようにしてやりたくはないと、あなたは仰いました。

ゴールディング
ゴールディング

ではよく私たちの周りを見てやってください。その深淵へ向かっていくロンディニウムを。

ゴールディング
ゴールディング

これがあなたの仰っていた、“自らがしでかした選択への責任”というものなのですか?

レト中佐
レト中佐

……ゴールディングよ、それはもうすでに答えが出ているであろう?

レト中佐
レト中佐

そうとも、確かに我々はその深淵へと向かっている。戦争は始まってしまったのだよ。その戦争はかつてのガリアを、我々の故郷を滅ぼした。

レト中佐
レト中佐

だが今度、そいつは何を滅ぼしていくのかな?サルカズかもしれないし、ヴィクトリアかもしれない。

ゴールディング
ゴールディング

それがどれだけの災いをもたらしてくるか、あなただって分かっていることでしょう!数十万、もしかしたら数百万もの人々が――

レト中佐
レト中佐

血を流し、死んでいく。そしてこの時代に葬られてしまう。そう言いたいのだろう。

ゴールディング
ゴールディング

分かっているくせに!

レト中佐
レト中佐

そう、はっきりと分かっているとも。だがそれは君が私をそう導き、再び私自身に自らの選択を顧みるように迫ったのだよ。認めたくはないがね。

レト中佐
レト中佐

もし今も私自身の内心に問いかけてきているのであれば――

レト中佐
レト中佐

正直に言って“どうでもいい”、とでも答えておこうか。

レト中佐
レト中佐

ゴールディング、“人間”や“文明”などに向けられたああいった偽りの嘱望など捨てておこうじゃないか。

レト中佐
レト中佐

若かりし頃、我々はそういったものを語り合い、憧れを抱きながら、歴史から傑出した人物たちを賛美していたものだ。

レト中佐
レト中佐

“人よ、万物の霊長なる存在よ!我々の知恵と勇気によって、我々は獣とは違う存在であることを自認し、この大地でこれほどまでに輝かしい奇跡を創造するに至った”とな。

レト中佐
レト中佐

だがそういったおとぎ話が書かれた書籍から顔を上げ、現実と対比してみれば――その現実がどれだけおとぎ話と似通った結末を迎えていたかということに気付かされてしまう。

レト中佐
レト中佐

堕落し、腐り果てていき、自滅していく。どれも似通り過ぎていた。

レト中佐
レト中佐

もし我々があつく讃えていたものが、最初から一瞬にしか存在しない泡影だとしたら?もしそんなものを永久に存在しうると信じていた我々こそが浅はかな存在であったとしたら?

レト中佐
レト中佐

もし滅びこそが我々の本性であったとしたら、どうすればいいというのかね?

ゴールディング
ゴールディング

以前のあなたなら、そこまで悲観的ではなかったはずですよ。

レト中佐
レト中佐

……悲観的ではなかった、か。

レト中佐
レト中佐

優しい言葉を選んでくれるのだね、ゴールディング。よもや私のこういった戯言を単に“悲観的”と称するとは。

レト中佐
レト中佐

もっと鋭い批判が飛んでくるのかと思っていたよ。

ゴールディング
ゴールディング

……

レト中佐
レト中佐

どうやら……君も私が思っていた以上に意志は強くないようだ。

レト中佐
レト中佐

しかしだね、私はもう……疲れてしまったのだよ。

レト中佐
レト中佐

だから現実と向き合うことにした。とても辛いことではあるが、私にはそうするしかなかった。

レト中佐
レト中佐

だからあの日の対話も、今なら君に新しい答えを返してあげよう。

レト中佐
レト中佐

私はね、自分にいかなる使命とて見出したことはなかったし、それを選択してやったこともなかったのだよ。

レト中佐
レト中佐

……

レト中佐
レト中佐

私はただ……次から次へとやってくる滅びの中で、生き長らえたいだけだ。

レト中佐
レト中佐

たとえ哀れで弱々しく、矮小で見ずぼらしくあっても。それが私の出した答え、唯一導き出せる答えなんだ。

レト中佐
レト中佐

ほかにどうすればいいというのかね?

ゴールディング
ゴールディング

あなたは軍人なのでしょう!ならあなたは……!

レト中佐
レト中佐

命令に従うべきだ、とでも?誰の命令に従えばいいというのだ?国王はとっくに死に、議会はサルカズたちに掌握され、大公爵らも今は我欲しか目に映ってはいないではないか。

ゴールディング
ゴールディング

あなただったら――

レト中佐
レト中佐

英雄になれたかもしれない、と?

レト中佐
レト中佐

では、その対価はなんなのだね?

レト中佐
レト中佐

もしその対価を……私では背負いきれないものだったとしたら?

レト中佐
レト中佐

ここへ入ってくる時、門番をしていた衛兵の目は見たかね?

レト中佐
レト中佐

私の下についてくれている、迷える若き士官らのことだ……そのうちの一人のティルには五人の子供がいる。ササンの母親は三年も寝たきりだ。トートの弟は鉱石病に罹ってしまっている。

レト中佐
レト中佐

……もし逆らえば、あのブラッドブルードが彼らの血を吸い尽くしてしまうだろう。

ゴールディング
ゴールディング

屈したところで、それを避けられるとは限りませんよ。

レト中佐
レト中佐

だが少なくとも……今日はそれが起こってはいない。

レト中佐
レト中佐

ゴールディング、実を言えばね、私個人としては君にも生きていてほしいのだよ。

レト中佐
レト中佐

根っこを見れば、私たちは同じタイプの人間なのかもしれん。私は諦めてしまったが、君は今も諦めずにいる。

ゴールディング
ゴールディング

私とあなたが同類なわけ……

レト中佐
レト中佐

先ほど私に聞いてきたね、どこでロンディニウム自救軍の情報を入手したのかと。

レト中佐
レト中佐

まあ、答えてあげるとしよう。とあるか弱い学校の教師から情報を入手していたのだよ。

ゴールディング
ゴールディング

……どういう意味?

レト中佐
レト中佐

君自身を見返してみれば分かることだ、ゴールディング。君から漏れ出し、畏怖によって取り残された痕跡がそれなのだよ……

レト中佐
レト中佐

諜報員というのは、センチメンタルな人間には適さない仕事だ。君も最初から分かっていたことだろ?

ゴールディング
ゴールディング

そんな……ウソよ!

レト中佐
レト中佐

私の通信機はもう長い間鳴りっぱなしだ、聞いてみるといい。

(無線音)

???
自救軍の戦士

サルカズが突如……カルダン区のセーフハウスを襲……こちらは……ヤツらの部隊が……

???
自救軍の戦士

こちらオークタリッグ区のセーフハウス……!

???
自救軍の戦士

応答を願う!応答をねが……!マグナ区のセーフハウスが襲撃をうけ……!

ゴールディング
ゴールディング

これは……!

レト中佐
レト中佐

彼らは君のせいで死んでいったのだよ、ゴールディング。

レト中佐
レト中佐

君が彼らを火口へと突き落とした。

レト中佐
レト中佐

これが君の“戦い”がもたらされた結果だ。

 

レト中佐
レト中佐

彼らには哀悼の意を表さねばならんな、私からのせめてもの弔いだ。

 

(サルカズの戦士達がアスカロンに斬られて倒れる)

アスカロン
アスカロン

連中、数が多いな。装備も整っているし、コンビネーションも完璧だ。

アスカロン
アスカロン

たかが傭兵がここまで洗練されているわけがない。こいつらは正規軍の精鋭なのだろう。

アスカロン
アスカロン

注意しておけよ。こいつらは一人ひとりが、幾度となく戦いの中から這い出てきた戦闘マシーンみたいなものだ。

インドラ
インドラ

どけやオラァ!

(インドラがサルカズの戦士に襲いかかる)

[モーガン]インドラ、後ろ!

(モーガンがサルカズの戦士を倒す)

シージ
シージ

こちらが抑え込まれている、これではらちが明かないぞ!

アスカロン
アスカロン

私が連中の指揮官を探す。アーミヤ、このまま陣形を維持しておくんだ。足を止めるんじゃないぞ。

アーミヤ
アーミヤ

わ、分かりました!

ダグザ
ダグザ

クソッ、路地の向こう側もぎっしりだ!

シージ
シージ

私についてきてくれ、ドクター!ここを突破する!

“三百メートルを前進、左側最初の小道に向かってください。”

シージ
シージ

シージ
シージ

誰だ!?

“はやくそこを突破してください、屋上に待ち伏せがいます。”

アーミヤ
アーミヤ

ドクター、聞こえましたか?今の声は……

ダグザ
ダグザ

あのアーツに気を付けろ!この危険地帯を突破するぞ!

アーミヤ
アーミヤ

ドクター、しっかり私に掴まってください!

“そこを左へ。”

ドクター
ドクター

・声に従おう。
・いちかばちかだ。

インドラ
インドラ

人に指図されるのは一ッ番嫌いなんだが……クソッ、今は仕方ねえ!

“五十メートル先、右側へ。”

インドラ
インドラ

ちくしょう、壁だぞ!

シージ
シージ

いや……

シージ
シージ

なにかの幻術か?ともあれ、今は中に入るしかない!

インドラ
インドラ

ぜぇ……ぜぇ……

インドラ
インドラ

俺ァこそこそしてる野郎が一番嫌いなんだ、出てこい!

“そちらの女アサシンが追撃してくる者たちの指揮官を仕留めてくれました、今しばらくは安全でしょう。”

インドラ
インドラ

言っただろ、出てきやがれ!

“彼女の名は確かアスカロンでしたね?とても見事な腕前でした。”

アーミヤ
アーミヤ

ッ!

アーミヤ
アーミヤ

ドクター、私の後ろに。

アーミヤ
アーミヤ

あなたは誰なのですか?

“そう緊張ならず、ロドスの方々。こちらの同僚らが、以前アレキサンドリナ王女殿下とご挨拶を申し上げに行ったことがありましたよ。生憎、うまくはいきませんでしたが。”

シージ
シージ

貴様は……アラデルの背後にいた者か。

シージ
シージ

出てこい!

シージ
シージ

二度は言わんぞ!

???
???

そのハンマーは下ろしてくださいませ、殿下。体力を無駄にするだけですよ。

???
???

あなたはある意味における“王位継承者”なのです、もう少し辛抱というものを覚えてくださいませ。

???
???

以前も仰っていたではありませんか。我々とよく“話し合い”をしたい、と。

シージ
シージ

……自救軍を監視していたのか。

???
???

ご安心を、彼らの撤退作戦なら成功することでしょう。これは肯定的な言葉であって、なにも皮肉を言っているつもりではありません。そこをお間違えなく。

“グレイハット”
???

お初お目にかかります、ロドスの方々。できることなら、我々の目的が一致していることを切に願っておりますよ。

ダグザ
ダグザ

灰色のハット帽……?

“グレイハット”
???

おや、鋭いですね、イザベル・モンタギュー嬢。さすがはマンチェスター伯爵家の娘。周りからはよく“グレイハット”と呼ばれております。

“グレイハット”
???

もし機会がございましたら、あなたのお母上に私からのご挨拶をお伝えくださいませ。

ダグザ
ダグザ

なっ――

“グレイハット”
“グレイハット”

おっと、そう強張らずに、モンタギュー嬢。こちらは今しばらくあなた方と敵対するつもりはございませんので。

アスカロン
アスカロン

なら、向こうにあるアーツトラップもお前がよかれと思って仕掛けたものなのか?

アスカロン
アスカロン

爆発物の隣で他人と話をすることには慣れないものでな。

“グレイハット”
“グレイハット”

あれは念のために設置しているだけですよ。

アスカロン
アスカロン

そうか、念のためというのなら――

“グレイハット”
“グレイハット”

武器を収めてください、アスカロンさん。そんなことをする意味などございませんよ。

“グレイハット”
“グレイハット”

医療組織ロドス・アイランド、“採掘場工業装備回収機関”という名目で通行と停泊の許可を得て、今はゴドズィン公の領域内に身を潜めている。

“グレイハット”
“グレイハット”

ロンディニウムから六百三十一キロ離れた場所で。

アーミヤ
アーミヤ

……

アーミヤ
アーミヤ

目的はなんですか?

“グレイハット”
“グレイハット”

そちらの回収作業は今のところ順調なのではないでしょうか、アーミヤさん?

ドクター
ドクター

・ロドスのことをよく理解しているな。
・……
・どうやらヴィクトリアの大物たちは我々をまったく理解していないわけでもなさそうだ。

“グレイハット”
“グレイハット”

私たちは必要分の仕事をしているだけですよ。

“グレイハット”
“グレイハット”

仔細に航路を選定し、艦を囲むように裏で補給網を敷設したところを見るに、ヴィクトリアの目を惹きつけたくないのでしょう。とても慎重に行動してるのが伺えます。

“グレイハット”
“グレイハット”

我々すら危うく見逃してしまうほどに。

“グレイハット”
“グレイハット”

その動機が善意によるものなのか、はたまた悪意によるものなのか……統治者側からすれば、ひた隠す行為は何よりも悪質な手口に見えると思うのですが、いかがでしょう?

ドクター
ドクター

誰に奉仕してるのか聞いてもいいかな、ミスター“グレイハット”?

“グレイハット”
“グレイハット”

ここは“ヴィクトリアに奉仕している”、とでも答えておきましょうか。

“グレイハット”
“グレイハット”

ただ残念ながら、実際はその一部にしか奉仕しておりません。とはいえその一部だけをとっても、十分こちらは忙殺されてしまいましょう。

ドクター
ドクター

となれば、君はとある大公爵の人ということか。

ドクター
ドクター

仮にだ。ウェリントン公が我々を脅威と認識していたのなら――

ドクター
ドクター

ロドスはとっくに襲われているはずだ。

ドクター
ドクター

ウィンダミア公の支配力も、今はまだゴドズィン公の領地内には及んでいない。

ドクター
ドクター

ノルマンディ公に至っては、権力闘争よりビジネスのほう好むと聞く。

ドクター
ドクター

そのほかの公爵たちについては、しょせん日和見主義者たちだ。

ドクター
ドクター

つまり結論として、君はあのカスター公についている者なのだろう。

“グレイハット”
“グレイハット”

ロドスの作戦指揮官、通称“ドクター”……あなたに関する資料は数えるほどしかないものですから、本来ならそこまで重要度の高い人物ではないと思っていましたがね……

“グレイハット”
“グレイハット”

どうやら、あなたのことを再評価してやらねばならくなりました。

ドクター
ドクター

君の言う“部分的なヴィクトリア”にロドスはどんな価値があるんだ?

“グレイハット”
“グレイハット”

廃品回収をするだけの“製薬”会社なら、そこまでの興味はありませんよ。

“グレイハット”
“グレイハット”

しかし、あなた方のオペレーターのうちの一人はとても特殊な身分にいる。それに加えて、彼女は非常に重要な品を手に入れました。

シージ
シージ

……貴様らはすでに一度失敗しているだろ、なのにまだ諦めていなかったのか。

“グレイハット”
“グレイハット”

それが私の仕事ですからね、アレキサンリアナ王女殿下。ここでお互いを困らせる言動はよしとしましょう。

“グレイハット”
“グレイハット”

その剣についてですが、今あなたがお持ちになられても所詮はお荷物のなまくらにしかなりません。なんの役にも立たないでしょう。

“グレイハット”
“グレイハット”

そんなものに何を期待しておられるのです?本当に頭上を覆っている天災を切り開いてくれると信じておいでですか?

“グレイハット”
“グレイハット”

そんなものは所詮ただの作り話にすぎませんよ。あなたにその真価を発揮させる力はございません。

シージ
シージ

では逆に聞くが、貴様らのカスター公は何に使うつもりだ?

“グレイハット”
“グレイハット”

約束を果たすため、でございますよ。

シージ
シージ

約束?

“グレイハット”
“グレイハット”

彼女の支持者らに平和と安寧をもたらす、という約束です。

“グレイハット”
“グレイハット”

その剣の真価を発揮させる力であれば……我々なら持っております。それこそ、その諸王の息吹がかつてロンディニウムを守ってくれたのと同じように。

“グレイハット”
“グレイハット”

閣下はその剣を、一致団結へのきっかけにしたいとのお考えなのですよ。

シージ
シージ

なら、貴様らを支持しない者たちは天災に呑み込まれてもいいというのか?

“グレイハット”
“グレイハット”

それがあってこそのきっかけでしょう。

アスカロン
アスカロン

(小声)ドクター、そろそろここから離脱したほうがいい。三秒数える、その後に動くぞ。

アスカロン
アスカロン

(小声)本艦に残っているオペレーターたち……あいつらなら、この先の危機的状況にも対処してくれるはずだ。難しい状況かもしれんが、ここは突破するしかない。

アスカロン
アスカロン

(小声)ではいくぞ。三。

アスカロン
アスカロン

(二。)

アスカロン
アスカロン

(一。)

???
???

なんだかピリピリした雰囲気ね。来るタイミングじゃなかったかしら?

アスカロン
アスカロン

お前は――

アスカロン
アスカロン

いいや、ちょうどいいタイミングに来てくれた。

アスカロン
アスカロン

イネス。

イネス
イネス

ミスター“グレイハット”、なかなか用意周到だったわね。

イネス
イネス

十三もある小型の通信所のうち、四か所はタイム制限式だった。十分以内にあなたの通信が入ってこなければ自動で指令を出すようにプログラムされている。

イネス
イネス

どういう指令を出すのかなんか考えたくもなかったから、そのままガラクタにさせてもらったわ。

イネス
イネス

“自分勝手な振る舞い”、なんて風に私を責め立てないでもらえると助かるのだけれど。

イネス
イネス

ところであなたの部下なら、どれもしっかりとしていたわよ。ブラッドブルードの名前を聞いても粗相をすることはなかったし。けれどね……

イネス
イネス

サルカズの王庭以外にも、街に籠ってるほかの連中はきっと彼らに強い興味を持っているはずよ。

イネス
イネス

ねぇ、ミスター“グレイハット”。そんな彼らを、どこに送りつけてやればいいのかしら?

“グレイハット”
“グレイハット”

イネス、元サルカズの傭兵……あなたがまだ生きていたことなら、そこまで驚きはしませんよ。これまでのロンディニウム内で小細工を起こしてる者がいることは分かっていたのですから。

“グレイハット”
“グレイハット”

これまでずっと、悪くない働きをしておりましたね。

“グレイハット”
“グレイハット”

軍事委員会から脱却したいと考えているサルカズがそれなりにいることはこちらも把握しております。とはいえ、それなりの代償を払うことにはなるはずでしょう?

“グレイハット”
“グレイハット”

ですのであなたのあのお仲間も、きっと今はあまりよろしくない状況に身を置いているのではないでしょうか?

イネス
イネス

……

イネス
イネス

そうね、ならもう少し腹を割ってお話しましょう。

イネス
イネス

お互いまだ打ち明けてない手段や手札を持っていることは分かり切っていると思うわ、あなたも私たちも。けどそういった探り合いはもうやめにしましょう。

イネス
イネス

あなたの影が私に直接訴えかけているわよ、あなたは今迷っているって。

“グレイハット”
“グレイハット”

……

“グレイハット”
“グレイハット”

分かりました、ならここで一つ取引をしましょう。

“グレイハット”
“グレイハット”

今こちらは一つ面倒な仕事を抱え込んでいましてね。ただご覧の通り、私はあまり荒事やリスクを冒すようなことはしたくないものですから……

イネス
イネス

つまり、その仕事における身代わりになってほしいということね?

“グレイハット”
“グレイハット”

あなた方の実力は信用に置けます。

“グレイハット”
“グレイハット”

例の飛空船のことなら、あなた方もきっと目にしたことはあるでしょう。その飛空船は今、独り都市から切り離されてしまったノーポート区に停泊しています。

“グレイハット”
“グレイハット”

そこであなた方には、そこに潜入して飛空船の見取り図を入手していただきたい。

ドクター
ドクター

見返りは?

“グレイハット”
“グレイハット”

見返りとして、今しばらくはあなた方を見逃して差し上げましょう。

“グレイハット”
“グレイハット”

あなたや、あなたのお仲間たち。あなたの盟友やあなたが抱えている負傷者たち。そしてあなたの艦も。

“グレイハット”
“グレイハット”

ヴィクトリアからすれば、あなた方を消すことなど至極容易いこと。しかしあなた方からしてみればどうなることやら……よくお考えになられたほうがよいかと。

ドクター
ドクター

……

ドクター
ドクター

いいだろう、取引成立だ。

 

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