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【アークナイツ大陸版】12章 驚霆無声 12-15「ハチの巣」行動前 翻訳

Logos
Logos

今度はイベリアか。

”イベリア人”
”イベリア人”

まあもう少しだけ付き合ってくれ、バンシー。ここでの日々が一番印象深かったんだ。

Logos
Logos

この地のことは嫌っていると思っていたのだがな。

”イベリア人”
”イベリア人”

確かに、あの災いが起こる前までは好きではなかったさ。ここにいる者たちの自惚れも尊大さも飽き飽きしていたよ。

”イベリア人”
”イベリア人”

まるで怖いもの知らずな人たちだったからな。

Logos
Logos

なら、あの災いが起ったおかげでうぬは満足したのか?

”イベリア人”
”イベリア人”

俺はあの赤目ナルシストみたいな変態趣味は持ち合わせちゃいない。災いなんて、この大地じゃいつもどこかで起こっている。特筆するものでもないだろ?

”イベリア人”
”イベリア人”

しかしだな、俺を夢中にさせたのはあの生物たちだったのさ。

Logos
Logos

噂程度でしか耳にしたことはないが、率直に言ってあれらには不穏を覚える。

Logos
Logos

我らとはあまりにも異質な存在だ。

”イベリア人”
”イベリア人”

そういう俺はどうなんだ、バンシー?俺もお前とは違って異質な存在なのか?

”イベリア人”
”イベリア人”

お前も知ってるはずだろ。どの姿も本当の俺じゃない。

”イベリア人”
”イベリア人”

源石はこの大地に住まう者たち全員に消えぬ烙印を押したんだ。そのせいでお前たちは今その姿でこの大地を練り歩いている。

”イベリア人”
”イベリア人”

だがな、源石は俺たち変形者だけを除け者にした。

”イベリア人”
”イベリア人”

俺たちだけが原初の姿のまま取り残されたんだ。

Logos
Logos

その純粋無垢なる姿を誇りにでも思っておるのか?

”イベリア人”
”イベリア人”

いいや、ないさ。この世界はもうこんな有り様になっちまったんだ、今さら純粋無垢なんて言えたことじゃないだろ?

”イベリア人”
”イベリア人”

俺は源石がもたらした変化を、お前たちの後を追うことしかできないのさ。お前たちが創り出したすべてを。

”イベリア人”
”イベリア人”

あらゆる方法を試し尽くしたよ。イベリアで荒んでしまった小さな町を見つけてそこに移り住んだ時も、色々と試してみた。

”イベリア人”
”イベリア人”

俺“たち”が、な。

”イベリア人”
”イベリア人”

仕事やら交流やら、商業やインフラ……あらゆる方法を尽くしてその町を蘇らせた。

”イベリア人”
”イベリア人”

そしていつしかその町は、二百人もの俺たちから成り立つようになった。

Logos
Logos

それで今日に至るまで発狂することなく過ぎて来れたとはな。運がいいのやら悪いのやら……

”イベリア人”
”イベリア人”

フッ、どうだか……

”イベリア人”
”イベリア人”

まあとにかく、おかげで思い出深い日々をそこで過ごしたよ。色々とやらなきゃならないことが多かったからな、毎日が充実していた。

”イベリア人”
”イベリア人”

俺たちの日々は有意義なものだ、そんな錯覚すら覚えてしまうほどに。

”イベリア人”
”イベリア人”

とはいえ、飽きはいつか必ずやって来る。瑣末なことに没頭するのは面白いが、いくらそれをまとめたところで、俺が求めていた答えは出てこないまま。

”イベリア人”
”イベリア人”

だがそれも、周りが“シーボーン”と呼んでいるものと出会うまでだった。

”イベリア人”
”イベリア人”

かなり興味深い存在だったから、じっくりと観察しまくったよ。

Logos
Logos

うぬ自身を思い起こさせたのではないか?

”イベリア人”
”イベリア人”

いや、意識の統一というヤツを比べるのなら、俺ははるかにシーボーンとその群れの先を行っている。

”イベリア人”
”イベリア人”

どれだけ姿形が変わろうが、俺たちは“全”であり“一”の存在だ。だがシーボーンは、群れで“全”を成すしかない。

”イベリア人”
”イベリア人”

でもな、俺はそんなヤツらが羨ましかったんだ。分かるか?

”イベリア人”
”イベリア人”

あいつらは本能に従うだけでよかったからな。

”イベリア人”
”イベリア人”

食べ物を探し、養分を摂取し、繁殖して進化を遂げる。それだけをすりゃいい。

”イベリア人”
”イベリア人”

もしかしたらお前がさっき言っていた“純粋無垢”って言葉は、そいつに使ってやったほうが正しいのかもしれないな。

”イベリア人”
”イベリア人”

……とまあ俺は、その場に残ってすべての経緯を眺めることにした。多種多様な生物たちが、徐々に海草を取り込んでいくところとかな。

”イベリア人”
”イベリア人”

あいつらは何も考えていなかった。ただ身体に刻まれた本能に従うだけ。

”イベリア人”
”イベリア人”

そこで思ったんだ、じゃあ俺たちは?俺たちの本能はなんだ?俺たちは何をすべきなんだだろうか?

”イベリア人”
”イベリア人”

なあバンシー、何かいいアドバイスはないか?

”イベリア人”
”イベリア人”

って……お前笑っているのか?

Logos
Logos

失礼、別にうぬを嘲笑っていたわけではない。

Logos
Logos

王庭の主の中で最も古い一柱である変形者が無我夢中に生きる意味を探してるとは、と思ってな。

Logos
Logos

確かに、それは大事なことだ。ただ、我の目の前に立っているこの人が彷徨える哲学者だとは考えもしなかった。

”イベリア人”
”イベリア人”

フッ、哲学者を言うのなら、ヴィクトリアの大学で何年か教授を務めたこともあったぞ?

”イベリア人”
”イベリア人”

お前たちからすれば、意味を探し当てることは簡単なことだろう。ごく一部の者たちを除いて、ほとんどは短命に終わる存在だからな。

”イベリア人”
”イベリア人”

自分探しで、人生の時間を費やすことは難しくもしないさ。

”イベリア人”
”イベリア人”

だがな、俺たちにはそれができないんだよ。

変形者たち
変形者たち

君がくれたアドバイス、それかテレジスが思い描いている未来。ボクたちからすればどれも興味はないね。

変形者たち
変形者たち

所詮は時間潰しにしかならないからさ。

変形者たち
変形者たち

そんな瞬く間に消え去ってしまうものに思い入れを込めることなんて、ボクたちにはできないよ。

変形者たち
変形者たち

ボクたちはもうあらゆる可能性と、娯楽を試し尽くしてしまったからね。

Logos
Logos

……だんだん哀れに思えてきたぞ、変形者。

変形者たち
変形者たち

何にでも無気力になってしまった老いぼれ、みたいに?

変形者たち
変形者たち

そんなことを知ってる人はそう多くはないよ。

Logos
Logos

以前、我の友人たちから幾つかバカげたゲームを教わったことがあったのだが……

Logos
Logos

いや、やめておこう。

変形者たち
変形者たち

まあいいじゃないか、教えてくれよ。君が思ってる以上に興味は持っているからさ。

変形者たち
変形者たち

いや……それはまた後にしてもらおうかな。やれやれ、面倒臭い仕事がまた舞い込んできちゃったよ。

 

変形者たち
変形者たち

この近くではないね……だったら、少しだけ向こうに意識を向けておかないと。

 

アーミヤ
アーミヤ

ないって……どういう意味ですか?

ダフネ
ダフネ

そのまんまの意味だよ!

ダフネ
ダフネ

そこに通信設備は一つもなかった、誰かに先を越されたんだよ!

アーミヤ
アーミヤ

もしかして……あのダブリンの部隊でしょうか?

ダフネ
ダフネ

いや、机に被ってた埃からして、ノーポートがロンディニウムから切り離された時にはもうすでに奪われてたんだと思う。

“グレイハット”
“グレイハット”

となれば、急いでほかの方法を考えたほうがいいですね。通信が送られていないことが、すぐにでもあのヘマタイトの隊長に気付かれてしまいます。

“グレイハット”
“グレイハット”

これでまたスタートラインに立たされてしまいましたね。ふむ、悪くない。少なくともまたボーナスを稼げるチャンスが舞い戻ってきましたよ。

ダフネ
ダフネ

カスター公に仕えてるあなたも、ダブリンの亡霊たちも……

ダフネ
ダフネ

裏からコソコソとこの区画に潜りこんできた、ということは……あなたたちはノーポートの現状を維持しておきたいってことだよね?

ダフネ
ダフネ

公爵たちの主力部隊に動いてもらわない限り、私たちの作戦も実行しようがない。一体どうすれば……

イネス
イネス

その話はもうよしなさい、ダフネ。

イネス
イネス

あなたがまだここにいるってことをウィンダミア公が知ったら、きっとなんとかしてあなたを助けに来てくれるはずよ、そうでしょ?

ダフネ
ダフネ

……

ダフネ
ダフネ

どう、かな……

イネス
イネス

母親とのいい関係を認めることは恥ずかしいことでもないわよ。

ドクター
ドクター

イネス、何か方法はないのか?

イネス
イネス

面倒極まりない、とだけ言っておくわ。

ドクター
ドクター

つまり、あるってことだな。

イネス
イネス

……あなたのそういうところ本当嫌いだわ。

イネス
イネス

まあ、やれるだけやってみるけど。

イネス
イネス

でもあんまり期待しないことね。じゃあ、とりあえず高いところを探しに行ってくるから。

アーミヤ
アーミヤ

イネスさん、その際どのくらいかかりますか?

イネス
イネス

日の出までかしらね。

イネス
イネス

それまでの間に、シージもほかの人たちも準備を済ませておいて。

コルバート
コルバート

もう出立されるのですね、ご武運を。また機会がございましたら是非ご利用くださいませ。

コルバート
コルバート

ここで働いているうちに、わたくしは素敵な日々を過ごし、素敵な方々と知り合いました。

コルバート
コルバート

そんなノーポートは活気に溢れた街だったのです、このまま思い出や廃墟に留めるには勿体ない。

アーミヤ
アーミヤ

ええ、必ず。

アーミヤ
アーミヤ

陰謀も紛争も、きっといつかは消えてなくなりますよ。

アーミヤ
アーミヤ

以前……とても、とても私が会いたい人がこう言っていましたから……

アーミヤ
アーミヤ

いつかこの大地に生きる人たちは……みんな穏やかな夢を見ることができるはずだって。

(アーミヤ達が立ち去る)

コルバート
コルバート

やれやれ、またホテルがめちゃくちゃになってしまった。困ったものだ。

コルバート
コルバート

自分で掃除をしないような人たちに、清潔を保つことがどれだけ困難なことなのか分かるはずもないか……

コルバート
コルバート

パーシヴァル!パーシヴァル!

コルバート
コルバート

まったく、またどこをほっつき歩いているのやら……

コルバート
コルバート

まあいい、少しここで待つとしよう。

そうしてこの年老いたホテルのマネージャーは同じように年代物となってしまった椅子を手繰り寄せ、楽な姿勢で腰を下ろした。

コルバート
コルバート

あのコータスの子が……魔王……

コルバート
コルバート

やれやれ、自分でも驚いてしまうほど変化について来れなくなってしまったよ。

コルバート
コルバート

変化か……もしかしたら、それを追わなくなってしまったボクたち自身の怠惰に問題があるのかもしれないね。

コルバート
コルバート

だが、変化が必ずしも前へ進んでいるとは限らないよ。

コルバート
コルバート

……さて、ここにいる友人たちともそろそろお別れを告げるとしよう。本当に……大好きな場所だったよ、ここは。

コルバート
コルバート

あと二か月の辛抱だったのにね、コルバート。サルカズがここへやって来た後、ただの清掃員だったサルカズの君がホテルのマネージャーになれたんだからさ。

コルバート
コルバート

やっぱり、よく分からないものだよ。

そう言い終えてサルカズの老人は立ち上がり、ぐるっとホテルの広々としたロビーを見渡す。ここに置いてある品の一つひとつが、この老人にとって思い出深いものとなっている。

コルバート
コルバート

あのイネスってキャプリニーが言っていたね。どんな飾り立てた言葉であっても、それを戦争に使っていいものではないって。

コルバート
コルバート

だったら、ボクたちが戦争を本来の姿に戻してあげよう。

これまで多くの要人や貴族たちが踏みしめた精巧な絨毯に、サルカズの老人は火の着いたライターを投げ込んだ。
そして瞬く間に、轟々と炎が燃え上がる。

パプリカ
パプリカ

こ、ここにいる兵士たち……みんな殺されてる!?

パプリカ
パプリカ

も、もしかして敵!?ウチがもっとはやく気付いていれば……

マンフレッド
マンフレッド

……

マンフレッド
マンフレッド

後程この者たちの家族に弔慰金を渡す手続きをしておこう……いればの話だが。

パプリカ
パプリカ

急いで対処したほうが……!

マンフレッド
マンフレッド

必要ない。

パプリカ
パプリカ

……まさか。その顔、最初から知ってたんすか?

パプリカ
パプリカ

こ、これも……あんたの計画の一部ってこと……?

マンフレッド
マンフレッド

軍事委員会の計画だ。

マンフレッド
マンフレッド

犠牲は至るところで発生し、かつ避けては通れないものだ。お前の隊長からとっくに教わっていると思っていたのだがな。

パプリカ
パプリカ

でも!あんたは将軍で、こいつらはあんたの兵士なんでしょ!

マンフレッド
マンフレッド

そうだ。私は将軍であり、そしてこれが私の務めだ。

マンフレッド
マンフレッド

たとえ敵であろうが私たち自身であろうが、やるべきことはただ一つ。一人ひとりの人間を、この戦争という名のバケモノがかっ開いた大きな口に放り込み――

マンフレッド
マンフレッド

我々が求めた結果を吐き出してくれるように祈ることだ。

マンフレッド
マンフレッド

これこそが、今の私の立場で為せることのすべてである。

パプリカ
パプリカ

こ、この野郎――

マンフレッド
マンフレッド

だからこそ、そのすべてを見届けるためにここへやって来た。この一人ひとりの、若くして死んでいった者たちの顔を目に入れるために。

マンフレッド
マンフレッド

私が下した判断の結果がこれなのだと、心に焼き付けるために。

マンフレッド
マンフレッド

これはサルカズが支払うべき対価と言うつもりはない。

マンフレッド
マンフレッド

この者たちはヴィクトリア人に殺された……そう私が仕向けた。

パプリカ
パプリカ

どうして、こんなことを……?

マンフレッド
マンフレッド

火を灯すためさ。

マンフレッド
マンフレッド

この大地のすべてを焼き尽くす火を。

マンフレッド
マンフレッド

我々サルカズは……こういった争いが溢れる大地でしか、自分たちの居場所と生き残る空間を見つけ出すことができないからな。

マンフレッド
マンフレッド

それをしっかりとお前にも理解しておいてほしい。

マンフレッド
マンフレッド

よく理解し、憎み、そして最後には受け入れるのだ。

マンフレッド
マンフレッド

それしか方法はないからな。

封鎖エリアの奥で眩い炎が猛然と立ち込み、古いビルを燃やし尽くしていく。

パプリカ
パプリカ

また……火災っすか?

マンフレッド
マンフレッド

いや、あれが最初の火種だ。

マンフレッド
マンフレッド

私たちもそろそろ飛空船に戻ろう、ついてきたまえ。

マンフレッド
マンフレッド

客人らのご到着だ。

 

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