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【アークナイツ大陸版】空想の花庭 HE-2「いのちの水の河」行動後 翻訳

クレマン
クレマン

……

クレマン
クレマン

ジェラルドも一緒に鐘を鳴らしに行くのかい?

ジェラルド
ジェラルド

何かおかしなところでも?

クレマン
クレマン

うん、おかしいね。前に一回、君に鐘衝きをお願いしたことがあったけど、嫌がっていたから、結局代わりとしてレイモンドに頼んだじゃないか。

ジェラルド
ジェラルド

そんなこともあったかな。

クレマン
クレマン

君は確か、鐘の音は好きじゃなかったはずだね。

ジェラルド
ジェラルド

これだけここで過ごしてきて、好きも嫌いもないさ。

クレマン
クレマン

でも、最後まで鐘の音に慣れることはできなかったじゃないか。

ジェラルド
ジェラルド

鐘の音にいい思い出はないからな……すまない、こんなことを言ってしまって。

ジェラルド
ジェラルド

……なあクレマン、アイリーンのことはまだ憶えているか?

クレマン
クレマン

アイリーンか……

クレマン
クレマン

忘れるわけないだろ?もしあの時、君とアイリーンに助けられていなかったら、私は強盗らに突き落とされて谷底へまっ逆さまだったよ。

ジェラルド
ジェラルド

ははは、あれは彼女が助けようとしていたことだ。私はむしろ、余計なことはしたくないとばかり考えていたがね。

クレマン
クレマン

それを本人の目の前で言うかい?

ジェラルド
ジェラルド

ははは、すまんすまん。

ジェラルド
ジェラルド

……

ジェラルド
ジェラルド

昨日の夜、外で野営がてら作物を収穫していたんだが、量はそれほど多くなかった。とはいえ、処理するのにも一苦労を要してしまってな。

ジェラルド
ジェラルド

レイモンドは自分の獲物を血抜きしていて、私は火を起こしたんだが、火花が空へ上がっていく様を見ていると、なぜだかアイリーンのことを思い出してしまう。

クレマン
クレマン

ジェラルド……

ジェラルド
ジェラルド

久しぶりに彼女のことを思い出したよ。そして気付いてしまったんだ……

ジェラルド
ジェラルド

もうほとんど、彼女の顔が思い出せなくなってしまった。

ジェラルド
ジェラルド

あの人は私たちの中でも変人の類だったよ。昔、修道院のあちこちに咲いてる花を見たり、鐘の音を耳にすると落ち着くなんてことも言っていた。

クレマン
クレマン

……今はもう、そんなに花はないけどね。

ジェラルド
ジェラルド

そうだな、残念だよ。

ジェラルド
ジェラルド

彼女は本当にあの鐘の音が好きだった。鐘の音を最後に聞いてからじゃないと、目を瞑ってくれなかったほどにな。

クレマン
クレマン

だから君は好きじゃないんだね。

ジェラルド
ジェラルド

……それか恐れているんだろうな。また鐘が悪い報せを伝えてくるのではないかと。

クレマン
クレマン

あの時もし薬が足りていたら、彼女の怪我もあんなに悪くなることもなかったし、最後に亡くなってしまいことだって……

ジェラルド
ジェラルド

過ぎてしまったことに、もしもなんてものは通用しない。

クレマン
クレマン

……彼女が最後に、せめて救われたことを祈っているよ。

ジェラルド
ジェラルド

ああ、そう願いたい。

クレマン
クレマン

……

クレマン
クレマン

なあジェラルド、本当に……行ってしまうのかい?

ジェラルド
ジェラルド

ああ。

クレマン
クレマン

やっぱり、急すぎるよ……

ジェラルド
ジェラルド

すまなかった。本当なら事前に一声かけておこうと思っていたんだが、なかなかタイミングがなくてな。

クレマン
クレマン

レイモンドやフォルトゥーナたち、多分しばらくは悲しむと思うよ。あの子たちはずっと大の仲良しだったんだ、今回はきっと堪えてしまうね……

ジェラルド
ジェラルド

レイモンドはまだ若すぎる。ここへ来た時だって、物心がまだついていないほど幼かったんだ。だからサルカズであることが何を意味するのかが理解できていない。

ジェラルド
ジェラルド

だがいつかは理解し、それを受け入れなければならないんだ。

ジェラルド
ジェラルド

それがサルカズとしての宿命みたいなものだからな。

クレマン
クレマン

そんなことはないよ。宿命だなんて……そんな人聞きが悪い。

ジェラルド
ジェラルド

……そうだな、お前の言う通りかもしれない。だがどうしてもほかの言葉が思いつかないんだ。

ジェラルド
ジェラルド

……まあいい、私は最後にアイリーンへ会いに行くよ。

ジェラルド
ジェラルド

これからはそれぞれの道を歩くことになるんだ、ここでお別れをしよう。

(ジェラルドがその場を立ち去ろうとする)

クレマン
クレマン

……ちょっと待って、ジェラルド!

クレマン
クレマン

わ、私も君たちと一緒に行けるよ!少しだけ遠回りするだけじゃないか、大したことはないよ!

クレマン
クレマン

そうだ……ほら見て、今ちょうど花が咲く時期だろ?だから花を摘んでアイリーンに……!

クレマン
クレマン

私も君たちと一緒に……

ジェラルド
ジェラルド

いいや、クレマン。勘違いしないでくれ。

クレマン
クレマン

そんな、勘違いなんかじゃ……!

ジェラルド
ジェラルド

お前は付いて来ちゃダメだ。そこの階段を上がって、上に行くべきだ。その先から見える風景のほうが美しい。

クレマン
クレマン

……じゃあ君たちも、いつか美しい風景に出会えるのかい?

ジェラルド
ジェラルド

……

ジェラルド
ジェラルド

さあ、鐘を鳴らしに行ってくれ、クレマン。時間を無駄にするんじゃないぞ。お前が向かうべき方向はそっちのほうだ。

 

ジェラルド
ジェラルド

これから達者でな、兄弟。

 

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

何言ってるのよ、フィーヌ!レミュアンさんはなんの関係もないから!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

いいやウソだッ!あのラテラーノ人以外に、あんたの銃を直せる人なんかいないでしょッ!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

なんでそんな風に考えちゃうのよ!?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

私はウソなんか言ってない、あなた分からないの?私の今の感覚が、あなたには分からないっていうの?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

できることなら分かりたかったさ……でもねフォル、もう分かんないのよ!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あんたはウソをついていないって、ヘイローは教えてくれている!あたしと同じくらい苦しんでいるって!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

でもそれが本当だったら、なんでワッフルなんか作る気持ちになれるわけ!?どうしてなんの負い目も感じないであのラテラーノ人と関われるわけ!?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あたし、もうあんたのことが分からないよ……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌ……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

それは……私もみんなにいい暮らしを過ごしてもらいたいと思ってるからだよ。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

……それってどういう意味?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

私たち、もう後がないでしょ?ステファノお爺さんやみんなが言わなくて、私分かるもん。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

ラテラーノは必ず私たちを連れて帰る。前に大人たちの会話をこっそり聞いたの、そしたらこの修道院はラテラーノが必ず取り戻したいと思ってるくらいすごい建物なんだって。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

でもそれだとジェラルドさんたちは多分……きっと私たちとは一緒に来ることはできないはず……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

だから私がんばって証明したいの!ラテラーノの人に、ジェラルドさんたちも、とってもとっても優しい人なんだって!もしかしたらそれで――

デルフィーヌ
デルフィーヌ

それをしてどうなるの?あいつらが同意して、ジェラルドさんたちも一緒にラテラーノに連れて行ってくれるとか考えてるわけ?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

そう、やっと分かったよ……あんたがいつもレミュアンって女の言うことに大人しく従っていた理由がそれなのね?自分ならほかのみんなを説得させられるって。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

物乞いみたいに、地面に頭を擦りつけながらあの女に頼み込んできたんでしょッ!?レイモンドたちを見捨てないために、あたしたちはあいつに懇願しなきゃならないって思ってるんでしょッ!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌ……

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あいつらの考えを少しでも変えようとしてるみたいだけど、それが成功した試しはあった?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

それは……今も頑張って説得して……

デルフィーヌ
デルフィーヌ

いくら頑張ったって、あいつらは絶対に考えを変えないよ。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あんたが勝手に、頑張ったら成功すると一方的に思い込んでいるだけよ、フォル。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あんた分からないの?あんたとあたし、レイモンドたちとどう違う?キャロラインとどう違うの?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……レイモンドは私よりもできることが多し、キャロラインは私よりも頭がいい、でしょ。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

ほら、自分でもよく分かってるじゃん。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あいつらはあたしたちを同族として受け入れながら、同時にあたしたちの本当の家族たちを蔑むように区別している人間なのよ。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

そんなヤツらなんかまっぴらゴメンだわ。あんなヤツらがひしめき合ってるラテラーノなんか行く気にもならない。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

でも……フィーヌ、私たち約束したじゃん。この先絶対この荒野から抜け出して、ラテラーノに戻るんだって。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

毎日お腹いっぱいになれて、寒さに凍えることなく、こんな単調な荒野じゃなくて、いつでもきれいな花たちを見ることができる日々を送るんだって……

デルフィーヌ
デルフィーヌ

……あれは子供の頃の絵空事でしょ。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

それが絵空事になっちゃったって思ってるだけでしょ?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あたしはあんたほど楽観的じゃない。ただ少なくとも、あのラテラーノ人が来てから、修道院内の雰囲気はどんどんおかしくなってきた。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

そう……確かにあたしたちの暮らしは過酷なものだよ、でもあたしは一度だってこの暮らしを嫌いだと思ったことはなかった!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

ステファノ爺ちゃんの毎週のミサも、ジェラルドさんが話してくれる昔話もあたしは好きだ。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

お腹いっぱい食べられなかった時、キャロラインはこっそり干し肉を渡してくれるし、ニーナさんもレイモンドに野菜粥を具だくさんに掬ってくれて、みんなで一緒に分け合った……

デルフィーヌ
デルフィーヌ

それだけでも十分なんだよ……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌ……

デルフィーヌ
デルフィーヌ

でも今はどうなった?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

どいつもこいつもラテラーノこそが、なんてことを言っておきながら、あいつらがあたしたちの暮らしをメチャクチャにしたことしか起こってないじゃない!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

でもフィーヌ、それを全部レミュアンさんのせいにしちゃダメだよ!そんなのただの八つ当たりだってば!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

八つ当たりだって?そりゃそうかもね。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

でもフォル、あいつらが裏で何を言ってるか知ってるの?ジェラルドさんがこっちに来る回数がどんどん減ってきてること、あんた気付いていないの?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あんたあのレミュアンに飯を届けに行ってる間に、そのふざけたワッフルを作ろうとしてる間に、キャロラインたちが……何を食べてるのか知ってる?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

そうよ、あんたは何も分かっちゃいないんだ。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

え……?待ってフォーヌ、何を言ってるの?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

キャロラインたちがどうしたの?あたし何も聞いて……

デルフィーヌ
デルフィーヌ

そう、あんたは何も聞いてないし知ってすらいない。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

でもそれはあんたのせいじゃない、あたしが言わなかったから。だってあたしも直接見なかったら、ここまでひどくなってることに気付いていなかったはず。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

ねえフォル、もしあんたのヘイローが、ほんの少しでもあたしの今の気持ちを汲み取ってくれるんだとしたら――

デルフィーヌ
デルフィーヌ

今すぐその守護銃をあたしに渡して。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

な、何をするつもり?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

いいから、それを渡して。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

そんなものに祈りを捧げる必要なんかこれっぽっちもない。

デルフィーヌ
デルフィーヌ

さっさと渡してッ!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌ、あなた今おかしいよ……そんなの危ないし、わ、渡せるわけないよ!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

どうして渡せないの?この前だってそれを共有しようと言ってたじゃん?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

そうは言ったけど、それとこれとは別だよ!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

あなた私のことが分からないって言うけど、それはこっちのセリフでもある……あなたこそどうしちゃったの?目を覚ましてよ、フィーヌ!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

覚めてるよ!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

今までにないほどに!何が祈りよ、何がサンクタにしかない繋がりよ!そんなのもううんざりだっての!

デルフィーヌ
デルフィーヌ

そんな特別なものなんかいらない!あたしはただ――

(デルフィーヌがフォルトゥーナから銃を奪おうとする)

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

ダメ……!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌ、やめて――!

(銃声が鳴り響く)

デルフィーヌ
デルフィーヌ

うぐッ――!?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……へ?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌ……?

デルフィーヌ
デルフィーヌ

……あっ……うっ、ぐふッ……

デルフィーヌ
デルフィーヌ

あたしはただ……みんなと、ずっと一緒に……

(デルフィーヌが倒れる)

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌ、どうしたの?ねえ、冗談はやめてよ……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌうううう!!!

スプリア
スプリア

ふぅ、やっと見つけたよ~。

スプリア
スプリア

どう、そっちは順調そう?

フェデリコ
フェデリコ

スプリア、単独行動する際は事前に声をかけてください。

スプリア
スプリア

融通利かせてよ~、こっちだってはやく任務を終わらせるためにやってるんだからさ~。

スプリア
スプリア

そうそう、いい知らせがあるよ。レミュアンを見つけた、この修道院にいる。

スプリア
スプリア

それと悪い知らせも……そのレミュアン、私たちに協力するつもりないみたい。

フェデリコ
フェデリコ

……

スプリア
スプリア

あの人はいつだって自分で考えて自分で動くタイプだからね、私じゃ説得しきれないのも当然か……

スプリア
スプリア

ってちょっと、怖い顔しないでってば。だったら自分で彼女を捕まえに行ったらどうなの?

フェデリコ
フェデリコ

分かりました。

スプリア
スプリア

え?分かったって……あなたまさか、本気でそうするつもり?冗談だよね?

フェデリコ
フェデリコ

いえ、冗談は言っていません。

スプリア
スプリア

……

リケーレ
リケーレ

スプリア、一つ役場内での共通認識ってやつを教えてやろう。

スプリア
スプリア

なにそれ?

リケーレ
リケーレ

フェデリコは冗談を言わない。いや、言えないんだ。そういう機能を備えていないからな。

スプリア
スプリア

……

フェデリコ
フェデリコ

レミュアン枢機卿補佐官なら私が探しに行きます、その後に彼女の考えを伺いましょう。

スプリア
スプリア

……なに、私がウソついてるって思ってるわけ?

フェデリコ
フェデリコ

あなたが言ってることすべてが真実と断定することはできません。

スプリア
スプリア

ねえフェデリコ。

スプリア
スプリア

なんであなたが教皇庁で働いてる多くの女の子たちからブラックリストにぶち込まれているのか、今ようやっと分かったよ。

フェデリコ
フェデリコ

スプリア
スプリア

まっ、そんなこと今はどうだっていいや。それよりそっち……もうここの人たちとは話がついたの?

修道院の住民
修道院の住民

あれ、リケーレさん……?

修道院の住民
修道院の住民

そちらの方もあなた方のお仲間さんで?

リケーレ
リケーレ

ああ、そうなんだ。みんな同僚でな。

???
年老いた修道院の住民

……サンクタの若いの、まだほかに何かあるのかい?

???
年老いた修道院の住民

ここにはもう何もない、何もないのさ……だからこれ以上話し合っても時間を無駄にするだけだよ、あんたたちもここに来るべきじゃなかったんだ……

修道院の住民
修道院の住民

やめてくれよニーナさん、そんなこと。ラテラーノに知らせを入れたのはもともと俺たちのほうからじゃないか……あなただって最初は反対していなかっただろ?

???
ニーナ

反対……していなかったのかい、私は?はぁ、だったらステファノに言っておくべきだったよ、もうラテラーノに期待するのはよせと。

???
ニーナ

……いや……そうさ、そうさ!そいつらを追い出すんだよ、ジュリアン!ラテラーノ人をここに来させるべきじゃなかったし、助けだって必要ない!さっさと追い出すべきだ!

リケーレ
リケーレ

……

ジュリアン
ジュリアン

ニーナさん!少し落ち着いて!

ジュリアン
ジュリアン

一体どうしちゃったんだい!さっきまでこの人たちをもてなさなきゃって言ってたじゃないか!

???
ニーナ

わ……私は……

リケーレ
リケーレ

どうやら少し二人っきりにしたほうがいいみたいだな……何かこっちで手伝えることはないか?

ジュリアン
ジュリアン

ほ、本当にすまない!ニーナさんはちょっとカッとなっただけで……その、手伝いなら結構だよ。私が彼女を休ませておくから、ほかに何かあったらまた後で話そう!

(ジュリアンが立ち去る)

リケーレ
リケーレ

そ、そうか。ちゃんと安静にさせておくんだぞ。

リケーレ
リケーレ

ふぅむ……

リケーレ
リケーレ

なーんか様子がおかしいな。

スプリア
スプリア

そっちも順調とは言えなさそうね。

スプリア
スプリア

さっきのあれ、一体どういうこと?

リケーレ
リケーレ

本人は至って普通だったのに、なぜああなったかはこっちもさっぱりだ。一体なにが……

リケーレ
リケーレ

フェデリコ、ここの住民に事情聴取をすると言い出したのはあんただ。なにか分かったことはあったか?

フェデリコ
フェデリコ

さきの女性は情緒が不安定化しており、その際対話の途中で思考が変化することも珍しくはありません。ただ当人が会話内容を忘れる前に、態度を急変させることは異常です。

リケーレ
リケーレ

それってつまり?

フェデリコ
フェデリコ

……この現象について思い当たる節があります。

フェデリコ
フェデリコ

しかし、これはあくまで私個人の推測によるものですので、この現象の可能性が討論に値するまで大きくなるまでの間は、黙秘を選択します。

スプリア
スプリア

じゃあ言わなくていいじゃん……。

スプリア
スプリア

で、ここの住民たちの情緒がちょっとおかしくなってることはいいとして、さすがに何かほかの収穫はあったでしょ?

スプリア
スプリア

ほらほら男子たち、そろそろお話合いの時間だよ。

スプリア
スプリア

つまり……あの主教様は、ここに住んでいるサルカズたちのために、私たちにこんな面倒なことを押し付けたってこと?

スプリア
スプリア

ラテラーノは彼らを受け入れるって、私たち言ったよね?なのにサルカズのために、みんなを寒さと飢えに晒し続けても構わないだって?しかも特使まで拘束して?

フェデリコ
フェデリコ

ええ。

スプリア
スプリア

……マジ?この間まで大罪人のアンドアインの対処でてんやわんやだったのに、今度はやさしいやさしい主教様を相手にしなきゃならないってこと?

フェデリコ
フェデリコ

はい。

スプリア
スプリア

*口笛*こりゃまたなんとも……

スプリア
スプリア

あんま恨みとか憎しみとか私気にしちゃいないけどさ、相手は逆にそれで頭がやられちゃったってことなのかな?

スプリア
スプリア

そりゃレミュアンがあんな要求を同意してくれないわけよ……この前までロンディニウムで大暴れしていたせいで、大公爵たちに死ぬほど恨まれてるわけだし、サルカズたち。

スプリア
スプリア

そんなタイミングで、万が一サルカズとごたついてることが外に知られれば、教皇様の全国が仲良く手を取り合う計画が台無しになっちゃう。

リケーレ
リケーレ

聞いてるだけでも深刻だな。

リケーレ
リケーレ

フェデリコ、確かレミュアンとオレンの任務はここに支援を提供し、修道院をラテラーノに回収させるものだったはずだよな?

フェデリコ
フェデリコ

はい。

スプリア
スプリア

建造された背景は特殊だし、有用性も高いこの修道院を要塞として再利用する、か……合理的な判断ね。

スプリア
スプリア

特にこっちがイベリアと関係を修復する際にはもってこいだよ。

リケーレ
リケーレ

まあ少なくとも、今のところここで手荒な真似をする必要はなさそうだ。

リケーレ
リケーレ

そうだフェデリコ、さっきあんた、あのサルカズの正体を見抜いていなかったか?

フェデリコ
フェデリコ

はい。

リケーレ
リケーレ

あいつは何モンなんだ?

フェデリコ
フェデリコ

傭兵です。

スプリア
スプリア

あなたたちの会話って、「夜なに食べた?」「ご飯を食べました」と同じくらいホントつまんないね。

スプリア
スプリア

ねえフェデリコ、あなたに一文字でも多く喋らせるためにいくら払えばいいの?言ってくれれば、あとで経費に落としてもらうよう教皇様に報告しておくからさ。

フェデリコ
フェデリコ

そんなことは考慮しておりません。

リケーレ
リケーレ

そこは勘弁してやれ、スプリア。そうだ、レミュアンが無事なのは分かったんだが……オレンのほうはどうなんだ?

スプリア
スプリア

あいつならとっくにここから逃げていったよ、レミュアンですら行方が分からないってさ。

スプリア
スプリア

保身に関しちゃあいつの右に出る者はいないからね。だから私に言わせれば、あいつは……今頃どこかで悪巧みしていたりして?

リケーレ
リケーレ

そうか……ん……?

(鐘の音が鳴る)

スプリア
スプリア

あれ?

スプリア
スプリア

……鐘の音だ。どっからだろ?

フェデリコ
フェデリコ

これは間もなくミサが始まることを知らせる鐘です。

リケーレ
リケーレ

俺たちもそれに参加したほうがいいか?それかミサで修道院内に人がいなくなった間に、オレンを探しにいったほうが……

フェデリコ
フェデリコ

私はミサに参加します。

スプリア
スプリア

ありゃま、意外だね。

フェデリコ
フェデリコ

修道院の全体的な状況を確認し、それをもとにここのシステムが未だ無事に稼働してるか否かと、外部の介入を必要とするか否かを判断する必要があります。

フェデリコ
フェデリコ

大勢の住民たちが一斉に集うミサに参加することは、それを観測するためのいい機会と考えているので。

リケーレ
リケーレ

なるほど……

リケーレ
リケーレ

言われてみればそれもそうだな。しっかし、てっきりもっと明確な問題から先に解決すると思っていたぞ、オレンのこととか……もしかして何か心配事でもあるのか?

フェデリコ
フェデリコ

……いえ。

フェデリコ
フェデリコ

私はただ、私個人が合理的と判断する方法で自身の責務を果たしたいと思っているだけです。

修道院の住民
修道院の住民

あれ?鐘が鳴ってるぞ?

修道院の住民
修道院の住民

おっかしいな……主教様がミサを行う日にちにゃまだ全然なってないのに、なんで鐘の音が……

修道院の住民
修道院の住民

あっ、クレマン!ちょうどいいところに。こりゃ一体どういうことだ?

クレマン
クレマン

鐘は主教様の指示によるものだよ。今日だけは例外的にミサを行うことになったんだ。

クレマン
クレマン

さあ、みんな礼拝堂に向かってくれ。

修道院の住民
修道院の住民

そりゃ……行くには行くが、まだ手元の仕事が……

修道院の住民
修道院の住民

ていうか、なんで急に今日ミサを?あのラテラーノ人と関係があるのか?あいつらもしかして……その、俺たちに厄介事を持ち込んできたからなのか?

クレマン
クレマン

どうしてそう思うんだい……?

修道院の住民
修道院の住民

いや、別になにも……そうだ、もしかしてジェラルドたちがいるから、俺たちをラテラーノに連れていってくれないとか?

クレマン
クレマン

……そんなこと誰が言ったんだい?

修道院の住民
修道院の住民

ただの当てずっぽうさ。だってサルカズとサンクタって仲悪いんだろ?だからみんな、それさえなければ俺たちはとっくにラテラーノに入れたんじゃないかって……

クレマン
クレマン

……

修道院の住民
修道院の住民

いや、今こんなこと考えても仕方がないな、主教様がどうお考えになられてるのかも分からないんだし……

修道院の住民
修道院の住民

今のは聞かなかったことにしてくれ。今回の出来事で誰かを責めてるわけじゃないし、誰のせいでもない。ただ……寒さでみんな頭がやられちまっただけだ。

クレマン
クレマン

うん、分かるよ……

修道院の住民
修道院の住民

みんなもしラテラーノに行けたら、食い扶持も繋がって、食べ物も着るものも困らないって思ってるけど、本当なのかな?

修道院の住民
修道院の住民

入れなくても、近くに森があれば助かるんだが。少なくとも枝を拾って火を起こして、冬の間は小さい子たちに暖を取らせてやりたいものだ。

クレマン
クレマン

そうだね、せめて子供たちに寒い思いをさせちゃダメだ……

クレマン
クレマン

ラテラーノに行ったら、私たちもいい暮らしができるのかな……?

修道院の住民
修道院の住民

そう願うしかないよ……じゃなきゃほかにどこへ行きゃいいんだ?

修道院の住民
修道院の住民

あんたも心配しすぎだぜ、クレマン……主が、きっと俺たちを見守ってくださる。

クレマン
クレマン

……

(遠くから銃声が聞こえてくる)

修道院の住民
修道院の住民

なんかいま音がしたな……今度は一体なんなんだ……?

クレマン
クレマン

(さっきの音は……)

クレマン
クレマン

(銃声?)

修道院の主教
修道院の主教

……

(鐘の音が聞こえてくる)

修道院の主教
修道院の主教

クレマンが鐘を衝いてくれたか……

修道院の主教
修道院の主教

では、儂も最後の準備をしておかなくては……

(扉が開く)

修道院の主教
修道院の主教

おや、もう誰か来てくれたのかね?

修道院の主教
修道院の主教

フォルトゥーナ、そなたなのか?

修道院の主教
修道院の主教

そなたは昔から時間通りに来てくれる子だ……まだ誰も来ていないから、先に座っていなさい。

修道院の主教
修道院の主教

儂はまだ準備が……フォ、フォルトゥーナッ!?

修道院の主教
修道院の主教

な、何があったのだ……!?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……ステファノ……お、お爺さん……

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

たす、けて……

血に染まった女の子が一歩一歩、愕然とした老人のもとへ歩み寄っていく。
淡い光がようやく照らし出してくれた女の子の顔を見れば、ぽつりぽつりとこびりついた血の跡と、額の表面から剥き出しになった黒い歪な角がそこにはあった。
女の子の目の前には淡く輝いている、銃を持った聖徒の像が聳え立っているが、背後には拭いきれない血色の道が引かれている。
礼拝堂の床にサンクタの血が滴り落ちる音は、夢から覚めてしまうようほどおぞましく、鼓膜を震わせるほどおどろおどろしい。
次第に、これまで祈りを捧げてきた守護銃が、それを握りしめていた手の中から滑り落ちていった。

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

フィーヌが、フィーヌが……!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

……う……うううぅぅぅ……!

修道院の主教
修道院の主教

あぁよしよし……泣くでない、デルフィーヌがどうしたのだ?

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

怪我をしてしまって……!

フォルトゥーナ
フォルトゥーナ

わた、私が怪我をさせちゃって……はやく……!ステファノお爺さん、はやく彼女を助けてあげて……ッ!

(クレマンが部屋に入ってくる)

クレマン
クレマン

主教様!ご無事ですか!一体なにが――

クレマン
クレマン

……フォルトゥーナ?どうして君がここに……それにその血は……一体……?

クレマン
クレマン

一体なにが……

(リケーレが駆け寄ってくる)

リケーレ
リケーレ

どうした!なにが起こった!?

リケーレ
リケーレ

なッ、これは……

スプリア
スプリア

ちょっとちょっと、ウソでしょ……

スプリア
スプリア

……こんなの冗談じゃ済まされないわよ……!

クレマン
クレマン

君たち……これは一体どういうことだ!説明してくれないか!?

クレマン
クレマン

どうしてフォルトゥーナにこんな、こんな黒い角が生えているんだ……!?

スプリア
スプリア

……

ほかの者たちに視線を向けられていながら、赤衣の執行人が礼拝堂へ足を踏み入れた。
堕天使は未だ主教の胸の中で悲痛の涙を流しているが、ステファノはそんな彼女から礼拝堂へやってきた彼に視線を上げざるを得なかった。

フェデリコ
フェデリコ

ヘイローにノイズが走り、前頭部に角が生えたことは、明らかに堕天した証です。

フェデリコ
フェデリコ

彼女は、戒律に背きました。

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