
…。

…すごく暑い…。

痛い…。

あの女、まだ話さないのか?

喉が乾いて…喉が火に焼かれているよう…。

…一体どれくらい経ったの…?

すごいな、こんなに日に吊らされて、よく我慢できるものだ。

おい、あの女を死なせるな。宝のありかをまだ言ってないんだぞ!

…出来ません…あなたには教えられません…。

あの女には喋るまで水を飲ませるな!

私は死ぬの…かな?

…。

まさかカジミエーシュに着くとは思わなかった。

暴漢ってどこでにもいるものなんだね。

あ?お前はどっから来た、まだ生きたくねえのか?

おい、ちび、早く俺に渡さねえと――。

あ、い、痛え。

よく見ろ。あの格好を…この辺りの人間じゃねえみたいだ。

やつがどこから来たかなんて関係ねえ!あいつは一人だ、死にに来ただけだろ!

それで、あなた達の問題は全て解決したの?

ぐはあ!

くっ…。

はい、これであいつらはしばらくは目覚めないはずだよ。急いでここから離れよう。

あ、あなたは…。

心配しないで。もうあなたを傷つける人はいないから。私が連れて行くよ。

――

すみません、わ、私、頭が…目眩が…。

顔色が良くないね。大丈夫、私がおぶるよ。

しっかり掴んでね。

はい…。
晴/視野度 14km
とある村の中

銃を持ったちびを見なかったか?

私はずっと家にいたから外で何が起きたか知らん。

もしお前がやつらを隠していることを知ったら、ただじゃおかねえからな!

――――

あいつらは帰りました。グラニ騎警さん、クローゼットから出てきても大丈夫ですよ。

はぁ~!。

またおじいさんに助けられちゃったね。

キャロルも大丈夫かい?本当にお疲れ様。

ルークおじさん、ありがとうございます。もう大丈夫です。

みんなの助けがあってあなたを助けることが出来たよ。

キャロル、心配するな!

騎士のお嬢さんとはもう相談しているんだ。彼女は必ず村を救ってくれる!

え?お嬢さん?

あ、はい、私も女の子だよ。

へ?

う!私だって女の子としてのプライドくらいあるよ!

ご、ごめんなさい。

…。

服装は似ていないけど…。

もしかして、あなたは…新しく就かれたカジミエーシュの騎士さまですか?

あなたは私達の村を救った後、税金を徴収するつもりなのでしょうか?

いやいやいや、私はカジミエーシュでもないし、ましてや騎士でもないよ。

ヴィクトリアにも騎士はいるけど、私は以前は騎警だったんだ!

騎警は騎士と違って、公務治安が職務なんだ。騎馬警察が仕事をしてもリターンは求めないから税金は徴収されないよ。

ヴィクトリア?

カジミエーシュの外にあるところだよ。私の祖先もカジミエーシュから移住したクーランタ人なんだ。

今回のあなた達の依頼を受けたのも、カジミエーシュにも行ってみたいからなんだ。両親の故郷はどうなっているのか…。これほど深刻な事態になっているとは思ってもいなかった。

…メッセンジャーに依頼した手紙は全て海に沈んだと思っていました。

何しろ民間の互助組織は私達のこんな辺鄙なところは気にしないから。

しかし、どうしてカジミエーシュ政府は支援の手を差し伸べないんだろう?

んん…首都の騎士達が私達のような遠い村に注目すると思いますか?

それ故に数年の間、私達はむしろ穏やかな暮らしが出来ています。都市の不安定な暮らしはあまり私達を惹きつけませんでしたし。

滴水村の人たちは代々この山間地帯の近くに住んでいます。

ここでの生活はそれほど豊かではありませんが、少なくとも自給自足は出来ます。

時には災害を避けるために一時的に村を移すことはありますが、それでもここが私達の家なんです。

ですので、この土地を諦めるということは出来ません…。

だけど今、村は賞金稼ぎ達によって破壊されてしまっている――。

…騎士の宝というもののせいで。

ここ数年、近くのいくつかの村は賞金稼ぎのよく向かう場所となってしまっています。

カジミエーシュ北部の支配区では常に動乱があるので、賞金稼ぎがそこに行って金儲けの機会を探しているんです。滴水村はその北へ向かう際の必須の通り道となっています。

もともと賞金稼ぎはこの村を出入りしていたのですが、被害は何もありませんでした。

一ヶ月ほど前、山中でお供の騎士の石棺を掘り出した賞金稼ぎの一団が小箱の埋葬金を持ち出しました…。

これってカジミエーシュの紋章が描かれた金貨だよね?

私がここに来たばかりの時に賞金稼ぎが来て面倒なことになったんだけど、この金貨はその謝罪としてもらったんだ。

はい…その金貨は賞金稼ぎの間で伝説となり、私達に大きな迷惑を掛けているのです。

”カジミエーシュの古代騎士たちは彼らの精神と財産を持ち、故郷の名も無き地に葬れば、永久に土地を守るだろう。”

犠牲を恐れず、危険を恐れないカジミエーシュの血脈こそが、あらゆる障害を打ち破る”

このような伝説がどんどん遠くまで広がっていき、賞金稼ぎが近くに集まったのです。

最初、賞金稼ぎたちは大きな騎士の宝の見つけ方を探していましたが、いつの間にか”滴水村の誰かが騎士の宝の行方を知っている”という報せが入ってきて――。

――――しっ!みんな話さないで!

ダメだ、見つからねえ。もう一度最初から探し直せ!

ここにいるのは安全じゃないね。おじいさんをいつまでも巻き込む訳にはいかないし。

とりあえず、ここから離れよう。

お前さんたちは自分の安全に気を付けるんだ。騎士…いや騎警の嬢ちゃん、村長はあんたに任せた!

おじいさん、安心してよ、私が必ず守るから――。

え?村長?

…滴水村村長キャロル、就任してまだ半年ですが私にだって村長としてのプライドくらいはありますよ。
(戦闘)

廊下が暗い!そして狭い!

す、すみませんが身を隠すのには便利なのはこの小さな屋根裏部屋なんです。

製粉所や穀蔵、配電所、村の多くの施設が賞金稼ぎによって破壊されてしまいましたが、彼らはこのような小さな所は気にしません。

そうだね…うん、それでも私達はよくこんな隙間に入ることが出来たね?!

キャロル、顔が近すぎるよ!

ごめんなさい…えっと、騎警様?

騎警様なんて呼ばなくていいよ。グラニって呼んで。

あの、グラニ。あなたは先程私達の村から騎士の宝を見つけたいという依頼を受けたと言いましたが…

うん、そして依頼の中にはあなたが既に宝の情報を持っているとあったけど?

宝を開けるために必要な鍵と宝の位置は、歴代の村長が代々口伝えで秘密にしています。

具体的にはまだ言えません…ごめんなさい。あなたには隠すつもりは無いのですが。

問題ないよ。少なくともあなたが私のことを信頼してからで大丈夫だから。

この情報を知った賞金稼ぎは、村人達を脅し続けました。

彼らは村の田畑を壊し、越冬の食糧を奪い、村民に迷惑を――もしあの時私が立ち上がらなければ、村は本当に終わってしまいます。

彼らに宝の情報を知らせれば、少なくとも彼らは他の村人は傷つけないでしょう。

そんなに辛い思いをしても…。

…はい、よく分かっています。これは一時しのぎに過ぎません。

良かったです。あなたが来てくれて。

あの、キャロルさん…。

依頼の内容は宝を集めてくれる人が欲しいというものでしたが、私達が望んでいるのは賞金稼ぎを追放し、村に安寧を取り戻して欲しいということだけです。

宝は私達にとって、今唯一の解決手段です。

金貨は花のように1日で無くなってしまいますが、私達はずっとこの土地で暮らしているのです。この土地は私達にとって唯一の故郷なのです…。

宝物を使って賞金稼ぎを追い払う。良いね。

十分な活動資金があれば、小さな部隊くらいなら雇えるよ!

はい。

目的が明確になったうえでの急務は、やっぱりこのごろつきだらけの村から後にすることだ。

ここの窓から外が見えるけど――うーん、ちょっと高いね。

キャロルさん、この窓から外は見える?賞金稼ぎはまだ探しているかな?

わ、私にも届きません。窓が高すぎます…

じゃあ抱き上げるよ…

ふぅ!これなら見える?

はい、見えます――――

えっ?!

キャロルさん!動かないで!

で、ですが、あれは何でしょうか…。

先程誰かが窓の外を飛んでいった…?