お前…何処で見たような…同胞よ。俺たちは戦場で会ったことがあるよな。
…あー、えー。お前はチェルノボーグに来るべきじゃなかったな。ロドスの情報は既に部隊全員に配られているし、お前も部下も死ぬことになる。
でもまあ、お前たちがいくら優秀であってもWの担当する防衛線をそんなに簡単に通り抜けられないだろう。あれを除いて…
そう言えば、彼女がそんな選択をしていたな。まあ俺たちも予想していたが。
・お前たちの中には私達と一緒に戦った人がいるだろう。
・それが私達が戦場で話をしている唯一の理由だ。
…テレジアは卓越した指導者であり、彼女は多くの人々のこの大地に対する見方を変えてくれた。
理想的な見方というものを。
焦って反論なんてするなよ。俺はカズデルが直面している残酷さをお前よりも知っているからこそ、彼女を否定したくはない。だがな、俺達は偉大な過程よりも取るに足らない結果が欲しいんだ。
今の摂政王の手腕だけがサルカズに新たな未来をもたらす。決して氾濫した善意じゃなくな。
・私達は手を携えて一緒にやってみてもいいだろう、少なくとも共倒れする必要はない。
愚かな考えだ。サルカズの長い憤懣をどうやって鎮める?長きに渡る傾きをどうやって正すというんだ?
未感染者、ウルサス、感染者、レユニオン、サルカズ、カズデル。
同じことなんだよ。レユニオンに取り組んできた日々の中でそれはより確信出来るものだった。
摂政王殿下は俺達のための新しい家を開拓することが出来る。俺はその可能性に従うことを選んだだけだ。
昔のようにお前たちはテレジアに従っているようだな。
…良いだろう。
Wがお前を中に入れたからにはお前は何か代価を支払ったんだろう。
何を支払ったんだ?時間を稼ぐためにお前を庇って命を落とした部下か?そしと…お前自身か?
・…。
今のお前の名前を教えろ。
・――Scout。
・傭兵は全員偽名なんだろう、ガルソンだ。
・選択肢1
よく耳にするコードネームだが尊敬の意を表すために、お前の本名をこの刀に刻ましてもらいたい。
・選択肢2
…お前の言う通りだ。
抵抗はやめろ。
…それとお前の12人の隊員は既に全滅したことが確認されている。
レイファ、ミミ、サムタックはレユニオンの術師の包囲網のど真ん中で死んだ。一人は立って死んでいたな。
マリー、ロングトーン、スリンカー、スコーピオンの前線は占拠されW自らが先頭に立った。
ムラム、カクテル、ユランは私達の小隊によって共に死んだ。包囲を突破した者もいたようだが、それらはヘドリーの刀兵によって斬首された。
プータルは先程のビルの下で死んでしまったが、変わってるなと思うが逃げることが出来なかった平民を救うためだったようだな。
ソラナはまだ息は残っていたから連れられていったが、まああいつのことだから自殺する方法でも見つけるだろう。
…まだ黙っているつもりか?
隠れようとするな。お前には聞こえているだろう。影がはっきりとしているからな。お前の息はひどく乱れているし、傷も軽くない。
どうして彼らの名前を知っている?
Wがわざわざ言っていたんだよ。お前たちのような者は兵牌のようなものを身につけるってな。
「少なくともこれで誰を殺せば良いのか分かるのよね。ここはカズデルじゃないから、間違って殺しちゃったら大変だもの」とな。
あれは兵牌じゃない。犠牲になったオペレーター達だって…兵士ばかりという訳じゃないんだ。
俺はWが自分でやるものだと思っていた。
あいつは…ふん。私があいつが自分の手でお前を処理するのが忍びないのだと言ったらお前は信じるか?
摂政王の派遣してきた指導者はお前に既に殺されたんだ。引き受けたいのはあいつ一人だけじゃないし、あいつは今は忙しい。
あの時のお前がWと約束をしたようにな。
お前が任務を完了させたら、私達は「奥の知恵」で全力でお前を殲滅しに掛かる。
…
…お前は市街戦の途中で未だに時間を割いて個人を救っている。だが今、それに関しては私達の管轄範囲ではないだろう。
それにパトリオットがそこにいるし、お前には必要はないことだ。
…それならば、それでいい。
お前たちは…変わったな。過去のWはわざわざ死者の名前を覚えるような人では無かったのに。
あいつは確かに変わった。だがそれ以上に多くの時間で狂人となってしまった。
お前の純然たる戦地での経験はファウストのオリジ二ウムアーツに匹敵するものがある。もしかしたらお前の動揺を誘うためだけに、私にわざとアーツで捕らえさせて故意に名前を書き留めようとしたんじゃないのか?
…変わらないな。いつも何かを楽しもうとする機会を見逃さないところは。
お互い様だ。お前だってWしか思いつかないような狂っている取引に応じたのだろう。
俺の命をチャンスと引き換えだ。またこのチャンスを掴むべき人に握らせるのもいいだろう。
それに俺の犠牲になった隊員達も同じだ。あいつらは自分の理念のために死んだ。あいつらがいなければ成功はしない。
…時だけが経っているように見えたが、みんな少しずつ変わっているんだな。
お前もな、過去のお前であれば今のように敵に一息付かせる時間を与えることは無かっただろう。
ヘドリーがお前に注意していただろう。
――
ならば何故抵抗をする?
…チッ、いなくなったか…。
…。
このまま逃げ切ってくれれば良いんだが…
(こっちの方向からか?)
(…)
(間違いない、ここだ。早いな)
(面倒な奴だな。あいつが怪我をしていなければ、私は誰かに顔を合わせることすら出来ないんだが…)
(待て。)
(あいつ…城の中心へと移動しているのか?)
…くそ!
中心にこんなにも近づいて、お前は一体何をしたいんだ?
どうして素直にチェルノボーグから離れてくれないんだ!?
…お前はサルカズとは似てない部分があるな、イネス。
――これからも積み上げていくべきなんだ、お前はサルカズの傭兵なのだから。それにここは戦場だ。
今のお前は走れないはずだ、出血が多すぎるし、めまい、手足も冷えてしまっている。立っていられるはずがない。
自分の傷くらい分かっているさ。ましてやここには多くのレユニオンもいる。
お前たちに対して…お前とヘドリー、そしてWに…一つ提案がある。
…殿下の身に免じて。
お前の目で真実を見るんだ。その前に無駄死にはするんじゃないぞ。
俺たちは…サルカズはこのまま利用されるべきじゃないんだ。
アーツの話をしているのか?それで何が見えるんだ――
――
――――
――これは…こ…誰が…
…
…サルカズか?
――!
あり得ない、気付かれただと――!?
(チャンスだ――!)
久しぶりだな。
ん…お前は?お前が…生きていたとは。
ああ。
俺はずっとお前に付いていた、イネスを頼りにな。お前のような達人は苦手だしな。
取引の内容には命を賭けるが、俺たちとて手加減をするつもりは無い。でもまあやっぱり俺はお前が欲しいんだがな…。
だが、今はもうお前にチャンスを与えることは出来なくなったんだ。ここは中心に近すぎる。Wは誰の注意もここにはさせたくない。
ああ…聞いている…今は彼女が隊長なんだろう…
お前は…それで…。
…すまない、もう寝てくれ、旧友。
お前たちは…ここにいるべきじゃない…。
…分かっているさ、古い友人。
ずっと分かっていたんだ。
ヘドリー!
さっきは動揺していたがどうしたんだ?
――早く行け!
私達はすぐにWに知らせなければいけない――
ちっ!あいつが近づいてくる!
…