


報告読ませてもらった。

レユニオンでのお前たちの成果はお世辞にも褒められるものではない。

しかし、それでもお前たちは確かに予想外の収穫をすることは出来たようだな。

ありがとうございます――。

ああ、礼はいらない。少なくとも今回は必要無い。

お前たちは立派な戦士だ。死ぬ前にお前達のどんな栄誉だろうとお前たちの血と火が奪うことになるだろうが。

摂政殿下はサルカズの取るに足らない実践の軌跡だろうが熟知しておられる。お前達のことも少なからずな。

この殿堂において価値を失いつつあるということは何も感染者だけではないということをお前は分かっているのか?

…分かっています。

そうだ。

もし私の予想通りなのであればロドスアイランドはあの不愉快な人物を迎え入れている。

お前たちのことについては…お前達から触れるべきだろう。

――!

(摂政王がWよりも一歩先を行っている?ここまで遠く離れたロンディニウムで――?)

傭兵は利益に忠実であるべきだ。この出発点に関しては必ずしも悪いことでは無い。

いざこざが落ち着けば、殿下の座に戻り――。

――お前はお前の栄誉を得られるだろう。

…他の戦士達はどうなるのでしょうか?

あの感染者の青年は彼女の悪巧みを有している。お前たちはまだ気付いていないのか?

しかし、殿下はこのような茶番劇に入り込むつもりは毛頭無い。殿下と私は自分で判断をし、引き続きヴィクトリアでレユニオンを見続ける。

Wからあのチームのコントロールを奪うには足りないのだ…「効率的な手段」が。

それに私達は今後も支持者とすて、大地の各地で活動を続けている感染者達を扇動し続けれなければならない。

俺たちはこれからもレユニオンを利用し続けるのでしょうか?それによる発展が殿下のためになるのであれば…。

放すとでも?いいや、年端もいかない傭兵よ。

まだ混乱が足りないのだ、まだまだな。例えリーダーから離れたレユニオンだろうと、災いの種にはなることが出来るだろう――。

――しかして、その発言は殿下への質問として見ても良いのかな?

そ、そういう訳では。

かまわん、顔を挙げろ。

そうだ、そう。

しばらくは帰る必要はない。長い道のりにおいての時間は掛かりすぎているが、そこで起こった事の全てが加速をしている。

しばらくはここにいて、数少ない息の付ける時間を楽しもうじゃないか。

…ありがとうございます。

では、殿下は私をまだお待ちになっておられる。この場で解散するとしよう。

覚えておくがいい。まずは自分のことをするのだ、ヘドリー。

…ヘドリーか。

お前が何を見つけられるのか楽しみだ。


…はあ。

これはつまり…私たちって軟禁されたってことか。

考えていなかったという訳ではないが、想像以上よりもよっぽど良いだろう…

だがまだ俺たちは能天気過ぎるのかもしれない。

どっちがマシなんだろうな?自分が死ぬと勘違いしておくのか、摂政王が何も知らないだろうと勘違いしておくのか?

全部手の内だよ、彼は…ずっと全てを掌握している。

そりゃそうだろ…あのテレシスだぞ。あの物語の中での彼とテレジアは何というか向かう所敵なしだ…。

あの戦争は俺達から全てが忘れ去られて、あの物語も…物語だけじゃないだろうな。

Wにはどう警告をするべきか?今のレユニオンの事はどれだけ前へ進んでいるのだろうか?

私たちは道のりでたくさんの時間を過ごしてしまっている。もしかすると今はもうタルラと仲違いをしているのかもしれん。

あるいはこの茶番は龍門で終わるのかもな。

…それは早すぎないか?

それがWの計画に合致しているからな。もしタルラが本当にこれらの感染者を破壊しようとしているのであればWはまずはタルラを壊しに行くだろう。

サルカズのやり方というのは手段を選ばないからな。

とある傭兵の死によって彼女は今とても不機嫌だ。

彼女だって分かっているだろう。

時勢はここまで来ているんだ。彼女だってこれ以上はためらっている訳にはいかないんだが、彼女は手を下す気持ちが欠けてしまっている。

そして私たちも受け身になってしまっていると。

俺には今もまだ直属の部隊には「待機」命令を下す権利は残っている。

ヴィクトリアは混乱しているし、暗号も容易には気付かれないだろう。

それだけじゃない、摂政王が掌握をしている最も敏感な地区を迂回して…カズデルへと出発させる。

カズデル?

あそこの戦場の廃墟ではもう誰も聞きやしない。

それでも俺たちは結局、あそこで長い間もがいていた。

何処かの廃墟の下には秘密の発信所がある。信号塔は破壊されたように偽装されているがラインは無傷だ。

待て、つまりそれは…。

…お前は一体いつからそれを準備していたんだ。

最初からだ。たくさんの金を使ってな。

…はは。

お前は…あいつらに今のあなたの表情を見せたらきっと驚くだろうな。

いつの間にか戦場に行って、また帰ってきて、いつもあなたは何かを考えている。まるで間違いを犯した子供のように。

お前はとっくに戦意を喪失していたと思っていたのだが。

いいや、逆に俺はむしろ俺が何をすべきかっていうのがよく分かったんだ。

どうしてだ?

俺は選ばれなかった、逆に言えば解放されたってことだ。違うか?

Wがきっとお前に何かを話したのだろうな。お前がチェルノボーグを離れる前に。

お前は彼女がそんなことを言う人だと思うか?

そうだな。もしそうなのであれば今日ほど面倒では無かっただろう。

だが彼女は確かに城の中心から離れる前の俺を探していた。あの時、彼女は俺達の意味に気付いていたんだろうな

彼女は――。


傭兵の命は値段で推し測ることが出来るのかしらね?

当然だ。今までもそうだっただろう。何を今更言っているんだ?お前がこの道理を一番よく知っているだろう。

それは誰が決めるのかしら?

戦争そのものだ。

そうね…戦功、戦績、殺し合いの中で名利を奪い合って、価値を高め、道具として認められる。

つまらないわ。

でもこれからはそうじゃないわ。少なくとも私達はもう必要はない。

…どういう意味だ?。

サルカズの傭兵は一人一人値札を付けるべきなのよ。

他人に与えられることもなく、他人に操られることもなく、彼らは自分の手で自分の値段を書くの。サルカズの敵となった全ての人の血を使って。

お前は..お前はここの人全てをカズデルから離れさせたいのか…?

そんなに驚くことじゃないわよ、あいつらに自分というものを決めさせるだけよ。

何かおかしい?

…。

おかしくないでしょ。

よく考えてみてよ…あなたがカズデルを何をすべきなのかよく考えないと。

…それはテレシスの眼下ということだぞ。

そんなこと言わないでよ。あなたにだって計画があるって自分で言ってるじゃない。

…。

落ち着いて..あなたは以前は私の頭だった、ヘドリーなのよ。

あなたが出来るならそれで良いの、そうじゃないと次が面倒よ。


…面白い冗談だ。スカーズショップの地元の仲間達は喘息を併発するまで笑うだろうな。

議会はこの状況が発生するのを喜んで見ているということは無いだろう。あいつらは多くの金を支払って、多くの工夫をこらしている。

あいつらも多くの人を殺している。

そうだな…そいつらもそうだった。その中には俺たちと仲が良い人もいた。

またお前は何を勝手に考え始めているんだ。

ああ…でも俺はロンディニウムを離れることが出来ないどころか、あの屋敷すらも離れることは出来ない。。

これはお前がやるしかないんだ。

「トランスポーター」の身分は便利だな。

「タルラの命令に従って行動を続けろ、ヘドリーはしばらくは復帰することはない」というので大丈夫だろうか?

その発信所が動作をしている限りは、俺達は返信を受けることが出来る。後は彼らが何とかしてWに連絡をするだろう。

…ふん。

どうすればいいか位分かっている…

私に命令をするな。


…。

はあ…面倒くさいわね…。

ようやくあの竜女を探そうとしていたのに…あなた達って本当に時間を選ばないわね。

出てきなさい。
チェルノボーグの廃墟はカズデルとは少し違う。
街には生活の気配が残っていて、ここまで踏みにじられていても、過去の面影が残っている。
少なくとも徹底的な破壊じゃない。
そう、例えば…
この二人の子供。武器を苦労して持っている子供。

――魔族め。何をするつもりだ!

だ、だめだよあの人を挑発しちゃ…。

あ…ご、ごめんなさい、僕たちすぐにここから離れるから…。

ええ――。

あなたが手に持っているそれって、制式軍刀?

そうだ、サルカズの刀…見て頂戴。あなた達が全然持ち上げられもしないのに、そんな荷物を引きづる必要なんてある?

あなたは抵抗したいの?私を殺したいの?

ひっ――。

そ、そうじゃない――あ!。

ルブリョフ…お前足が!

あら、あなた怪我してるじゃない。

天災が直撃したチェルノボーグは安全とは言えないわ、感染するわよ。

俺はお前たちのような人にはならないぞ!

あら。本当に強い子なのね。

知っているでしょう――

――サルカズの刀を引き継ぐことにはどういう意味があるのか。
