6:00a.m.

・偵察部隊を一掃させた後の時間があまりないが。

その通りだ。時間が惜しい。

・オペレーターたちがわざわざ砂地から都市に這い上がっていくことも無いのでは。

えっと……たまにはそういったこともしますから。

ですが、セントラルシティは移動していますし、下層の基盤区画に侵入するのは確かに容易ではありません。

オペレーターたちが地上で移動都市が来るのを待つにしても、都市の移動速度も侵入口の高さもオペレーターたちの行動を制限しかねない。

移動都市底部にある整備口と廃棄口が開けられなかったら、用意しておいた餌とカモフラージュも無意味になってしまう。

だからこそ、私たちの五つの小隊は砂塵のカバーの中、乗り物に乗ってセントラルシティに接近、工具を使って底層の工業区画に侵入する。

・ロドスからは五小隊しか行かせなかったのか?

ウルサスの地方将官にこちらの意図を悟らせるわけにはいかないからな。

あちらが高速艦艇を出して、小隊が上陸する前に殲滅されるわけにもいかないだろう。

そんな事実があったとしてもメディアによる報道も無いだろう。銀行家と保険業界はただ亡くなった人の名前にバツを入れて、その人らの全貯蓄資金を自分たちの保険金庫に入れるだけだ。

その事実を口にしようとする人は誰もいない、政府に目を付けられるからな。

中立の立場にいる我々はある意味で自由でいられている。逆に言えばロドスはいかなる政治勢力の後ろ盾を有してはいけない。

つまり隠密行動は我々が生き残るための一番の原理なんだ。君を助けたときと同じように。

痕跡を残そうが残さまいが、任務成功だろうが失敗だろうが、どうであれ、ロドスは多くても五小隊しか出せない。

・小隊をもっと増やせば戦力も上がるだろう!
・……
・この事件を解決できなかったとしてもか?

龍門級の都市だろうと我々を消すことなんて容易いことだ。

君も見ただろう、単位ごとに組織化された近衛局は各国の精鋭武装組織と比べてもまったく遜色がない、製薬会社なぞ比べるほどでも無い位に。

・ではなぜ協力を?

この陰謀に、感染者が巻き込まれているからだ。

現在、ロドスは龍門から離れて、毎時15kmの速度で次の貿易都市に向かっている。

その前に、荒野で数週間停留するかもしれない。

本艦に戻ってくる通信オペレーターと信頼できる船舶以外、こちらの信号を受信できるものは誰もいない。各都市の移動経路を計算して、あらゆる人とものから避けられる路線を算出した。

龍門がいまさら後悔しても、我々を探し出すことはできない。

・だがそれだけじゃまだ足りないんじゃないか?

・この策はでは痛みも感じないだろ!
・もっと痛めつけないと
・私たちの賭けはこれだけじゃないはずだ。

そうだ。もっと致命傷を与えてやらないとな。

……

ドクターもケルシー先生も、顔が怖いです。

事の必要性は分かりますけど、そんな……怖い笑い方しなくても……

アーミヤ……私は笑っていたのか?

笑っていましたよ。唇は動いていませんでしたけど、確かにそう感じました。

そうなのか。

…よかった!

いや、言っておくが彼との関係を治す気持ちは一切無いぞ。

・ふん、同意見だ
・……
・双方の意思で決める必要はないだろう。

えぇ……

五小隊はそれぞれ私、アーミヤとほかエリートオペレーター三名が指揮する。

作戦小隊3、偵察小隊1、特殊工作小隊1だ。

それと、ある作戦小隊の隊長だが、先に会いに行ったほうが良いかもしれんな。

ローズマリー!待って!

あ……ブレイズさん。

ひどいケガじゃないですか、どうして出てきたんですか?早く戻ってください。

作戦に参加するの?

はい。

代わりを探してくる。Miseryに行かせましょう。彼、君より籠城戦得意だから。

彼だったらぱぱっとやって終わらせてくれるから、だから彼に行かせよう。

私を行かせたくないんですか?

そう、行くべきじゃない。

ブレイズさんって変な人ですね。

今回はあなたが前にやった任務とは違うんだよ!

死んじゃうから?

何を言ってるの!

そんな、なんで……なんでそんな軽々しく言えるの!

あなたはまだ幼いの、こんな危険な任務、行くべきじゃない!

でもアーミヤさんも行きますよ

だって彼女は……!彼女は……!

彼女は……

アーミヤだから……

アーミヤさんも私と同じ感染者でもありオペレーターです。

それに日誌を見ました。AceさんとScoutさんはチェルノボーグから戻ってきませんでした

つまり、彼らはもういません。

私見に行きたいんです、確かめたいんです。レユニオンをまとめてる人がどんな人か誰が何をやってきたのか。

AceさんとScoutさんに何があったのか。

いい?ローズマリー。そんなこと……知らなくていいの。

……ブレイズさん?

(悪態)、私は何を言ってるんだ……

いや、ごめん、こんなこと、口にしちゃいけないね。**、私はなんてことを口にしてるんだろう!

でも、彼らの死は……彼らは……

ブレイズさん。

ううん、私が間違ってた。嬉しさも悲しさも同じ記憶だもんね、ごめん。知らなくていいはずなんかない。

ブレイズさん本当におかしいですよ。話も支離滅裂です。

……あなたを苦しませたくない。なんであえて見返そうとするのかなって?あなたなら……記憶を眠らせることができるのに。

心の片隅に、小さく小さく、寝かせておける、思い返さないように。

思い返さないんだったら……記憶はなんのためにあるんですか?

思い返さなかったら……忘れてしまいます。

私は忘れません。決して誰一人の死を忘れたりはしません。

ハッ、そうね。私と一緒ね。あなたもロドスのエリートオペレーターだものね。

あなたの代わりには行けないのに、本当に、私は……

うっ、くっ……

傷が開いてしまったのですか?

大したことじゃないよ。

送ります。

うおっと。

ローズマリー……アーミヤと仲良くするのよ。

はい、仲良くします。

必要あるのか?彼女に会うことなんて……?

ドクター……

ロドスが雇ってるエリートオペレーターたちは、それぞれの理由で自身の精力と専門分野をロドスのために捧げているんです。

彼らが率いる小隊は全身全霊で自分たちの任務に全うしますし、エリートオペレーターはある程度、戦術の運用形式を決定することができるんです。

でも彼らが全員、私たちの求めていることと一致するわけではありません。

エリートオペレーターのブレイズさん、ドクターも会ったことありますよね。ブレイズさんの数々の噂は多分ドクターは聞いたことがないかもしれませんが。今は他のオペレーターたちがあちこちに言いふらして滅茶苦茶になっていますが。

でもこのエリートオペレーターは、彼女の印象は人によって全然違うんです。

ドクターなら、おそらく……彼女と彼女の選択をゆっくりですけど、理解できるかもしれません。

――

その反応を見るにもう会ったんだな。

え?あー……

じゃ……じゃあ大丈夫ですかね?

・まだほかに何かあるのか?

大体の段取りこんな感じです。ただまあ、うーん……現実的ですけど、計画は計画、行動は行動ですから。

行動こそが重要だ。計画は行動を実行するための過程でしかない、行動に予想外のできごとが起これば計画は全て水の泡だ。

・そのまずい報告が来ないことを願うよ。

まずい……まずいぞ!何かがおかしい!

砂塵の密度がまだ薄い、太陽光の入射角も、よくない!

砂塵の陰に隠れられていません!敵が艦橋から観察されれば、機械の完全稼働前にばれてしまいます!

ですが、これ以上機械にカモフラージュを被せることが出来ません、防塵器機に通気性に影響が出て、上昇気流が生じれば砂塵を浮かばせることもできなくなります!

どうします?位置をまた後退させますか……?多分間に合わなくなりますよ!

……任せてくれ。

ファイヤーウォッチ、光の入射角を監視して、調整する方向を私に教えてくれ。

二アール?何を……するつもりだ?

光の入射角を変える。

この地の苦痛を和らげるためなら……太陽の輝きすらも、傾けてくれることを信じている。

ん?砂丘に誰かがいる?二アール?まだ撤退しないのかな?

彼女は何をやってるんだ?瞑想?ポーズ……ポーズをとってる?

……待って、まぶしいな、全身が輝き始めたんだけど……いや、ちょっ、まずい!まぶしすぎる!

あ、ありがとうございます隊長……

隊長の指がぼくの脳みそにめり込むぐらい強くしなかったら、目を遮ってくれたことをもっと感謝してたんですけどねぇ……

二アールは何をやっているんでしょ?

二アールは大丈夫、ですって?でも……隊長がそう言っても、この光は太陽と比べ物にならないほど強すぎますよ、彼女は何がしたんだだろう?

ん?うぉ……周りの光が二アールとどんどん同化してる?

……うわあ。

隊長、ここの区域の光が、同じ感じに調整されていきますよ。

なるほど、分かりました。つまりですね、見てください。あの耀騎士以外、誰がこんなことできるかって話ですよ。

隊長、砂丘の影を見てください。今は午後だと思います?それとも午前ですか?

え、ぼくは……雰囲気を高めようと思っただけですよ。もう少しで砂塵が吹いたら影が見れなくなりますよ?

はい黙ります、ごめんなさい。

もっと高く飛べ!変な色をした球体が機体を通り過ぎていったぞ!

怖がらないでくださいよ、教官。レユニオンの術師に俺たちを落とす度胸なんてないですよ。

私たちは餌であって、レユニオンに飛行技術のショーを見せるわけじゃないんだぞ!

……うちらがいいショーを見せたら、レユニオンも戦意喪失して投降してくれるんじゃないですかね?

何というか、見せつけ?

見せつけでもショーを見せつけるっていう意味じゃ……!

教官、しっかり掴まっててくださいよ!

――エチケット袋はどこだあ?!

器機が完全稼働状態に入った!アーミヤ、動いて問題ない!

わかりました!

各人員運搬車ドライバー、速度を一定に保てください!地図通り、砂塵のカバーを利用して登壁工具が使える位置までセントラルシティに接近します!行動開始!
(ビーグルにエンジンが掛かる音)

砂塵がこちらの痕跡を消してくれます。防護用具の装着も忘れずに、精密機器に砂塵が入らないようにしてください!

でも……太陽光がはっきりしている、どうして光が砂塵を突き抜けれるんでしょうか?

セントラルシティの底の可視具合がどんどん増している、まるで……アーツみたい。

こんな作戦は……ないはずです。自然光ですよね?

……そんなことは後だ、集中しろ!

了解です!牽引装置、発射準備!各オペレーター、ジップラインがセントラルシティ底部の壁に完全に固定されたかの確認を優先してください!

全オペレーターの移動を確認した後、運搬車両は直ちに撤退!オペレーターの皆さん、今のこの日差しは、きっと、吉兆の兆しだと思います!

……きっとそうだ!

(うっかり光を強くしすぎて、地上を丸裸にしてしまったことなんて口が裂けても言えないな……)

待て、セントラルシティが加速しているようだぞ?

装置に運が味方したとしても、砂塵のカバー範囲は直径1キロ以内だ!範囲内から出たら、やつらに見つかってしまう!

皆さん、早く!
(エンジン音)

間に合わない!減速する!

砂塵の範囲内から出れば、セントラルシティの光学観測装置がすぐにこちらを捕捉して、潜入作戦が失敗するぞ!

残りの隊員も、早く……

・隊員は残りは私だけだ

え?

・私も行く!
・(黙って防塵マスクを着ける)
・フックをくれ、一人で登る。

無茶だ、ドクター!危険すぎる!

オペレーター訓練も受けたことがない人が登るなんて、無茶にもほどがある!

ケルシー先生から戦闘補助の人員を組んでもらってないのか!?

・ないものはない、それがどうした?
・……
・私の身体を鍛えさせたかったから組ませなかったのかも。

いるぞ。

?!

私だ。
ケルシーがドクターの腰に手をまわし、ジップラインに引き上げた。

運命を決めるのは次までにとっておくといい、ドクター。
砂嵐が強く、腰に回した手を確認できないがそれは固かった。ドクターはそれはケルシーの手ではないのではないかと疑った。

各小隊、配置に就いてください!

これからの行動は、一つのミスも許されません!気を引き締めてください!
10:30a.m.
セントラルシティ地下基盤

間違いない、この跡は侵入した跡だろうな。

先に侵入した者は一人だけだ。

先に続いているこの血痕もレユニオンのかどうかはわかりませんが、まだ完全には固まってはいません。

おそらくチェンさんの……!急ぎましょう。

あ、ドクター!

無事に着いたのですね。

・あれが無事と言えるか……!
・……危なかった。
・誰かのおかげで、あとちょっとで会えなくなるところだった。

……え?えぇ!?

だ、大丈夫ですか?ドクター、お怪我は!?

・大丈夫だ、行こう。トラウマができただけだけだから。