・ここで私を待っていたのか?
そうだ
・君を探すのにかなり時間を使ってしまったな。
今は各状況をまとめて報告してから行動に移っている。その前に、お前にセントラルシティの現状を報告したほうがいいだろう。
アーミヤは現場の処理で忙しい、今回の討論は、彼女抜きでやる。
任務の概要はもう見ただろう?あれぐらいの資料の量なら君ならば造作もないはずだ。
・ようやく私が必要だと認めたのか?
・……
・私が配置指揮しかできないって思っているのだろう
「ようやく私が必要だと認めたのか?」選択時
最悪な状況の場合でも、お前をむざむざと死なせたくないだけだ。
(分岐終了)
「……」選択時
私の顔に気になるところがあるのなら、直接言ってくれ。じっと見つめるな。
(分岐終了)
「私が配置指揮しかできないって思っているのだろう」
君は覚えてないかもしれないが、以前の君は夜明け前の4時に沸かしたお湯を口の中に注いでインスタント食品をもどして食べていたぞ。
それが本当かどうかは自分で試してみるといい。
(分岐終了)
無駄口は終わりだ。時間に余裕はない。
先のロドスと龍門の協力でレユニオンを撃退したとき、メフィストとクラウンスレイヤー率いる両武装勢力の殲滅に成功した。
その後、龍門に潜伏していたレユニオン勢力も完全に無効化した。
アーミヤから報告は受けている。君たちはレユニオンの特殊部隊の指揮官であるフロストノヴァという感染者と、龍門都市の下層地区で厳しい戦闘があったと。
戦闘はこちらの勝利で終結したともな。
・誰も勝ってなんかいない。
・違う。
・あれは勝利とは言えない。
理解はしている。PRTSが申告してくれたデータによると他オペレーターの力を借りてロドスで敵感染者の遺体を処理してるようだが。
・彼女は敵ではない。
ドクター、「敵味方はわきまえろ」。
……いや、これでは誤解されるな。最後まで聞いてくれ。
……?
君を責めているわけではない、ドクター。
アーミヤの供述から敵指揮官の状況は理解している。現場にいたのは君たちだ、彼女らをどう扱うかは現場にいた君たちでしか決められない。
私に職務の域を超えてまで立場を判断する権限はない。
君は感染者の動機を理解しようとし、彼女の――フロストノヴァ――が行った行動の結果をすべて背負い込もうとしているのだろう。
いや、そうした。
もし君が純粋にこの世界を理解しようとしているのなら私に君を責める理由はない。
ロドスのオペレーターにお前の行動を保証させることもできる。諦めるな、ドクター。私は君の決めたことになるべく干渉しないでおくとしよう。
あとから来た結果は、私がロドスが請け負う部分を解決する。
君の責任と権限は互いの存在で成り立っているんだ。「敵味方をわきまえる」ことは私ではなく君自身が判断しろ。
……
(小声)君が彼女らとともにいようとするのならばだが。
・全てを認めてくれる……というのか?
そんなことは言っていない。
とにかくだ。フロストノヴァ及び彼女が率いた部隊、つまり「スノーデビル」も感染者遊撃隊に属していた。
現在、レユニオンの主力精鋭部隊は残り二つ、遊撃部隊はその一つだ。
もう一つは、サルカズ傭兵の「W」が率いるサルカズ傭兵軍。
私の知る情報だと、Wは手段を選ばない、レユニオンのサルカズ傭兵軍のトップの地位もそうやって盗み取ったらしい。
今は歴史を勉強する時間はない、簡潔に話そう――サルカズ傭兵軍は信用できない。Wにとっても、レユニオンにとっても、だ。
サルカズ傭兵軍はただの傭兵組織ではない。やつらはカズデルからあふれ出て、各地に流れた軍事力の化身だ。
やつらを傀儡にしようとする者は、やつらを糸引く者を引き寄せるだけだ。
・サルカズをよく知ってるようだな。
問題はそこではない。
問題なのは、スノーデビルが所属している感染者遊撃部隊は傭兵とはまったく異なるという点だ。
組織の構図、部隊編制、行動方式と信条……遊撃部隊と傭兵の間に一致する箇所は一つもない。
レユニオンが武装する以前、あれは独立した感染者遊撃部隊だった。一部の地域の感染者の間では後発のレユニオン以上に有名だ。
……遊撃部隊として成立する以前、あれはウルサスの強大な軍事組織の一部だったんだ。
・北西凍原の遊撃隊か?
――
どこでその情報を拾ってきたのかは知らないが、ドクター、私は君を賞賛するとしよう。
たとえこういった基礎的な情報でも、自ら進んで獲得しようとするその姿勢に、ほっとする。
・回りくどい褒め方はやめてくれ。
・……
・皮肉を言ってるのか?
話はここまでだ。本題に戻ろう。
私たちは今、セントラルシティの基盤の工業構造地区にいる。
これから、私が指揮する三小隊で複雑な地下通路、下水管道と工業階層を潜り抜け、セントラルシティの中央地区に入る。
注意してほしいのが、ここで出会う敵は、ただのレユニオンの暴徒ではないことだ。
私たちが出会うのは、過酷な訓練を生き延びた……「兵士」だ。遊撃部隊はウルサス軍現役時の訓練方法でレユニオンの「兵士」を鍛えているからな。
セントラルシティ内の通信手段が何者かによって切断されていると偵察オペレーターから報告されている。レユニオンは通信を維持しようとは考えていないのかもしれない。
これは現代の通信手段で連絡を取っている部隊にとって大きな制約になっていることを意味する。
つまり、レユニオンには特殊な通信手段があるかもしれない、もしくはまったく戦闘の準備をしていないのかもしれないが。
一か月ほど前のチェルノボーグ事変を見るに後者の可能性は極めて低い。しかし、通信の切断で下層にいるレユニオン部隊に命令や通信が入ることはない。
ほとんどの時間は、やつらの手にある。
おそらくやつらはまだ知られていない。通信チャンネルはその信号を――国家と都市でしか識別できない信号をキャッチできていない。ウルサスの辺境地域に自分たちの国境を描いているという信号を。
ここは嵐が吹き荒れてる都市区だ。わざとだろうがそうでなかろうが、混乱は重い霧のように周囲を覆い隠していく。
私は先に行く、崩壊の種子はすでに蒔かれた。
・つまり?
レユニオン内部で亀裂が発生した。
・確信はあるのか?
このような出来事はこの世界じゃ珍しくない。
・まだ私に言ってないことがあるんじゃないのか?
言える範囲内で全部だ、残りは時間が空いたときまで取っておく。
戦闘前の準備でも、効率のことを考えなければならないからな。
ドクター、R-4小隊のオペレーターに通信を入れてくれ。彼らにこの装置を取りに来てもらう。
・……ちょっと待て……
まだ何か?
・この装置、ローズマリーのものに見えるんだが。
そうだ。
どうやら、ローズマリーとの交流はあの生体処理室での会話だけではなかったようだな。
・彼女が戦闘の準備をするところを見た。
・彼女にこの装置を使う能力があったとは。
エリートオペレーターひとりひとりは相応の能力を持っている。だから戦闘全般での作業を負担しなければならない。
……君はローズマリーの戦闘方法をまだはっきりと知らないようだが。
言っておくが、彼女らが負担しなければならないことはたくさんある。ロドスの前線指揮官はマルチな部分を負担して、オペレーターたちの業務を分担している。これも必要なことだ。
この後の戦いで、お前はある事実に衝撃を受けるだろうな。
・え……?
ローズマリーの戦闘に驚かない人はそういない。
覚悟しておくといい。
おーいドクター、来たぞー!
敵の巡回部隊は俺たちが食い止めました、今は順調に処理をしているところですので。
・戦闘が始まったのか?
ドクター、その位置はちょっと危ないかも…
その位置にいないほうが良いですね。
・配置についたばかりなんだが。
そこは、そこはー…
ドクター、彼女の傍は本当に危ないんですって!
……敵
・まさか……
・……ローズマリー?
敵。
ドクター、どいてください。あれは私の家族を殺した……敵!
・どうしたんだ?
・……?
・ローズマリー、何が……
……
ドクター、どいて下さい。道の真ん中でぼーっとしないでください。
私、アーミヤさんとは違うんです。アーミヤさんのアーツは家族を避けて、正しく本人に罰を与えられる……。
私は無理。私にはできない。
だから、ローズマリーの戦場に入らないでください。
・……
ぐわあああ!
な、なんなんだ、あのでかい箱を背負ったガキは……!
目が見えない、俺の目が、あ、頭がぁ!痛い!痛いいい!!
何かにちぎられる!
……
しませんよ。
もうずいぶん人をちぎってないですから。
・な、なんなんだ、あの剣は――
・ローズマリー!?
レユニオン……
私の記憶に残したりはしない。
決して。