人々はあらゆる作品において悪は正義には勝てないと言われる。
私はこれは当然、反論の余地も無いものだと思う。

本当に行くの?

報道を見る限りでは暴徒と警官達が言い争っているとは言っていたけど。

血を流している人も見た、たくさんの人が血を流しているみたい…

真の愛するな。

記者たちはやたら誇張したがる。お前も知っているだろう、あいつらはそれで飯を食っているんだってこと。

心配するな、彼らを驚かせていけない。

だけど…

タバコ屋の主人によれば、最近はお酒を買いに来る貴族の人も少なくなっているって。サンタンリー卿の家で働いているニーナおばさんも家に帰ってきているし、ロード一家はしばらく働いてはいけないそうよ。

あなた、もしかして、もしかしてなんだけど――

デタラメを言うんじゃない!

…

ごめんなさい、そんなにも大声を出さないで。許して。

ロバン、私はただ、本当に心配なのよ。

安心しろ、怖がる必要は無い。俺がいるんだ、俺を信じてくれ。俺はいつだってお前達を守ってやる、そうだろ?

それに俺達軍警察もこの都市にいる。俺達の軍隊は都市の周辺にも駐屯している。俺を信じろ、何も怖がる必要はないんだ。

ロバン…。

安心しろ、ダリア。この家も、俺達の都市も、俺達が守ってやる。これは俺達が自分の役目として誓ったことなんだ。

悩む必要はない、だろう?この冬ももうすぐ過ぎる。暖かくなったら、ゆっくりリラックスしような?

ゾヤには秘密で、俺達2人さけで、こっそりと行くのも良いんじゃないか?

…くす

まあ、あなたという人は、どうしてそこまで年を取っているのに、まだ正直になれないのかしら?

今はこんなにも寒いし、その時は雪が解けて、道は泥だらけ。何処に行ってリラックスをするというの?

丁度冬送りの時で良いんじゃないか?その時になれば俺達は踊りにも行って、お前は家から蜜酒を持ってきて、俺は自分の手で餅でも作って食べさせるよ。

ふふ、偉そうなことを行って。あなたは覚えているのでしょうかね?…考えておくわ、その時になればゾヤも学校が始まるでしょうし。彼女が寄宿学校に行ったら、また行きましょう。

ああ!ん、あの子はあとどれくらいで学校が始まるんだ?まだならば俺が学校に送ってやろうか?

何を言っているのかしらね!

ゾヤ?ゾヤ良い所に来たわ、早く来て、お父さんが夜勤に行くから、さよならを言いに来て。
全ての幸せなことというのは、その時に強く爆発をし、比類の無い存在感を示すのかもしれない。
いつものように淡々とはしていたが、振り返ってみると、それがどんな時間だったのかに気付いたかもしれない。
ただの普通の会話で、単調な日常に過ぎない。
春が来ることを黙認しているかのように、郊外の雪は解け、人々は草刈りをして干し草を拾ったり、薄蜜酒の香りの中、足の泥を踏んでいた。
当たり前のように、おはようと言って、おやすみを言って、こんにちはを言って、さよならを言う。
あの日までは――
私達の都市は眼前で、歪み、変形し、爆発した。

左前は、誰もいない。

いい機会。

…

信号が無いと外にも連絡は取れない。

ふう、ようやくあいつらの巡回の法則が分かった。ここまで来れば大丈夫だろう。次は塀を越えることさえ出来れば…

今度こそは成功させないといけない!

!

(どうして、誰かが来ているの!このポイントは巡回部隊はいないはずなのに…まずい、まずは何処か隠れる場所を探さないと)

(漠然とした会話の声)

(少し興奮をした会話の声)

(よし、しばらくここに隠れておけば大丈夫そう)

(あの声、レユニオンを自称している人たちのようだけど、一人以上来ている…。左のほうは、普段は巡回しているような兵士達には見えない)

(どういうことなんだろう、突然現れて私達を学校に閉じ込めて、あの暴徒たちは一体何をしようとしているの?)

…!あいつらが近づいてきた!

お前さ、メフィストってどう思う?

彼が本当に自発的に仕事を引き受けて、向こうの学生と付き合うと思うか?俺は彼がそんな好意を持っているなんて信じられないんだが。

彼らはあの生徒たちをピーターハイム学校に閉じ込めていたが、貴族の子供達はほとんど連れて行かれたな。一体どうしてあんなに遠くまで走っていったんだ?

あの学校は俺達が駐留しているところからも距離があるしな。メフィストは彼が本当は何をしたいのかが、俺達でも掴みにくいな…。

ともかく、大局だからと言って、無茶はしないでほしいところだ。

あの**狂った奴がどう思っているのか知っているやつなんているか?彼はわざとそうしているのかもしれないがな!

あいつは狂ってるよ!化け物だ!*!

おい、落ち着けって。何と言おうが、俺達は彼らの仲間なんだからさ…。

どうやって冷静になれって!?彼があんな悪辣なアーツを使っていたのを見なかったのか?

…小声で話せ!

彼は本当に俺達を仲間として見ているのか?全員をだましているんじゃないのか!

静かにしろって言ってるだろ!ビルの中の学生たちを驚かせるな!

…*!

すまない、興奮してみたいだ。

俺だって分かる、お前の気持ちは十分に。誰だってそうじゃないんだ。

正直、時々俺はメフィストを殺したく思う。大尉が許さないというのであれば、必ずすぐにでも彼を殺しにいく。

そんな馬鹿なことは言うな。彼を殺したいのか?大尉がそう思っているとでも?

だがだめだ。俺達は同胞であるかぎり、そんなことは許されない。俺達はお互いに傷つけるべきじゃない。そうじゃないと俺達の初心と一致しないだろう。

だが、確かに、お前が怒るのも当然だ…。彼が今回の行動で一体何をやったか。

これでは彼の部下たちを放任して、俺達は他人の家に侵入をし、人を殺したり、火を点けただけの暴徒なんじゃないのか?

(メフィスト?それは誰?)

(あの人達は一体何を…殺人!?)

(聞き間違え?あの人達は学生たちには手を出さなかったのに、どうして…)

はっ、良いこと言うな。俺達は暴徒じゃないってか?

お前達大尉の部隊はそうじゃないのかもしれないが、言わせてくれ、俺達はこの街では何も良いことはしていない。

どれくらいの街が壊れたんだ?家から引きずり出して殺した人はまだ少ないのか?今外ではどんな混乱が起きているっていうんだ?お前もよく分かっているだろ。

俺は…。

それは仕方が無いことだ。ここの人たちが俺達の中で違うチームがあることを区別出来るなんてことは期待出来ないからな。

全ての同胞は、誰であろうとお前の言うように、俺達全員はここにいる人の目からすれば暴徒でしかない。

…お。ロレンナ、来たのか。外部警備の引き継ぎの準備は出来たのか?

問題は無い。

よし、大尉が今回リーダーから受けた新たな任務にも時間が迫っている。制圧された地域の仕上げ作業は全てお前たちのチームに引き継いでもらう。

…それとサルカズの傭兵達だ。あいつらの行動には気をつけろ。

そうだ、学生には注意しなければいけない。大尉は彼らを残していったが、当然意図があるのだろう。彼らを傷つけないようにする必要はあるが、外にも出してはいけない。

分かった。あの子達がこのまま大人しくしていれば、俺も楽なんだが、もし彼らがそうでなければ?

俺は出来るだけ彼らを傷つけるなと言っているんだが。

だが本当に必要な時は?学生の中にはオリジ二ウムアーツを使える者がいないという訳でも無いし、彼らが反抗をするのであれば、俺達も少しは行動しないといけないだろ。

…。

ロレンナ、お前が言っている意味は分かる。お前は腹が立っているのだろうが、無茶をしてはいけない。これは大尉からの命令なんだ。

お前は感情をコントロールするんだ。個人の感情がお前の判断を左右しすぎないようにしてくれ。

はっ。大尉の言うことであれば当然聞くさ。

そうあって欲しいがな。

30分後に移動を開始する。その後のここは任せる…具体的な対応もだ。

判断を任せる?それでもお前は本当に安心出来るのか?

命令を聞きはするが、何も自分でやる必要なんてない。脅迫、恐喝、恐怖、残りの人を恐怖で大人しくさせる方法なんていくらでもある…。

いや、冗談だよ、そんな目で俺を見るな。どうすれば良いのかなんて分かっているさ。

ちっ、マジでひでえこと言うな。

正直、次の計画なんて気にもしていない。でも、この都市が終わったら、俺達は最後はどこに行くことが出来るんだろうな?

…

俺達はもともと何処にも行けないんだ。

いいや、俺達は何処にでも行ける。いつか行きたいところに行くんだよ。

ふっ、本当に素晴らしい話だが、そんな日が来るか?

…

(…あいつらは何を言っている?あいつらは何者なんだ!?)

(冗談じゃない、あの野郎!突然占領したと宣言をして、私達を無理やりここに収監したけど、今のを聞いた限り、あいつらには自分たちの意図があるって言っているの?)

(それに、問題になっているのは学校だけじゃないって…)

(くそ、外は一体どうなっているの?)

(これ以上延ばす訳にはいかない、はやく此処を離れないと)

(お父さん、お母さん…)

(あいつらはここには気付かなかった、チャンス…今のうちに!)
(???が去ろうとする足音)

ん?

なんだ?さっき何が音がしたような…

…まさか?聞き間違いだろ

そうか?おかしいな…

とにかくだ、今の状況はそういう訳だから、あとはよろしく頼んだ。

さっさと行け、お前たちの任務を滞らせるんじゃない。

…

おい、あいつ行ったぞ。

ああ、あいつはあいつのすべきこをする。俺達も俺達がすべきことをやる。

俺達がやるべきことって?さっき言ったことは覚えているが、お前の仕事はこの学生達を監視し、彼らを動き回らせないことだろ。

そうだ。それで、お前は何が言いた?

とぼけるなよ、さっきのお前は言っていたことどういう意味だ?

…

ああ、お前も気付いたのか。

最近は大尉のもとでよく過ごしているようだな。的確な訓練というのがお前を鋭くさせるとは思いもしなかった。

無駄話はやめろ。

良いね、俺も回りくどいのは嫌いだ。

もし、俺がわざと逃げたばかりの女子学生を放置しておいたと言ったら、信じるか?

もしかして、お前、俺が本当の馬鹿だと思っているのか?

そういう訳じゃない。

そうだ、お前、ここの地元の人間だったよな。

お前だってそうだろう?隠すなよ、旧区で会ったことがあるぞ、裁縫家のロレンナ。

やめようぜ、そういうのは。今にそれが何の意味があるんだ。俺とお前はもう感染者なんだ。

俺達が何をしたのか、地元の人であれば何を説明出来るのか、みんな心の中ではよく分かっているはずだ。

…さっきの学生、もし俺が直接彼女を捕まえたら、彼女はどうなるか分かるか?

俺だったら、少なくとも彼女の片方の足を間引いて、おとなしく寝室にいるということを身に着けさせるだろうな。これは命令違反じゃないだろう?

はっ、お前ってマジでひどいやつだな。

あるいは彼女をあっさり殺してしまうか。どうせ大尉のチームはもう出発するんだ。彼ら遊撃隊の人以外に、ここで一人二人殺されて気にする人なんているか?

他の学生に見せつけてやらないとな、大人しくしないとどうなるかってのを。

…

お前はそんなことをはしない。大尉の言うことを聞いてるだろ。俺は知っているんだ。

お前の言うとおりだ。

パトリオットのじいさんも下の連中にはなかなかやりにくいだろうな。1週間以上の間、彼らはここの学生たちにひどく騒がれているし。

何かしておかないと、学生たちは怖がるということを知らない。三日間で大胆にも外に出たいとすら思っている。

あの子達には状況は分からないし、外がどれほどのものになっているのかも分からない。

まあ、一部の貴族の子弟が少し役に立つ以外は、他の学生は何の役に立つのかっていう話だけどな。

大尉は俺達の学校を強制的に支配下に置くように命じたのは、あの小さなものを守るためなんじゃないか?

…。お前がそんなことを俺に言っても何の意味も無いけどな。

おや、お前はさっきわざとあの学生を見逃しただろ?俺が彼女を捕まえるのが怖いんじゃなくて、重い手を下すのが怖いんじゃないのか?

そんなわけ。

口を固くするなよ。

気になるんだよ。お前はここの住民に同情でもしているのか?

例え彼らがそうしていたとしても、お前の兄弟も、お前達が病気になったのも…あいつらを憎みはしないのか?

ああ、お前の表情を見るに、恨みが無いようには見えないな。

うるさい、有る事無い事言うな!俺はただ一人の学生が学校の中でウロウロしていても、何の騒ぎにもならないと思っているだけだ。

それだけなんだ

自分に嘘を付くんだな。

は、嘘つきが!何が自分に嘘を付くだ、まさにお前もそうだろ。話をそらすな。さっきお前もあの少女を見つけたんだろ。

口では乱暴なことを言うくせに、どうしてお前はあの少女を引っ張り出して殴らなかったっていうんだ?

お前とは違うからな。

そうか?お前こそ、口をこわばらせるなよな――

俺はお前とは違う、俺はお前なんかじゃない。

俺は彼女をどうにかしない、彼女が学校だけでうろつくようなやつじゃないってことを知っているkらだ。

彼女が逃げようとしていたのは知っている。あの学生は、彼女の方向性ははっきりとしている。彼女の目的はここから逃げることだ。

このキャンパスを出るってことは、自発的にこの「統制」された場所を離れるっていうことだ。外はここのように太平では無い。

…待て。

お前は*何故あいつを止めなかった!**この馬鹿が、出ていったとしても、これでは…。

そういうことだ。外に出て、あいつは自分で死にに行った。

何故止めなかったのか?彼女を捕まえても、俺では彼女をどうすることも出来ないからだ。

だから俺は彼女を解放した。

俺はお前とは違うと言ったな。お前はまだ心を鬼にすることが出来ていない。今でも、学生達を心配する気持ちがある。

だが、俺は俺と家族がこの都市で受けたことを忘れはしない。

俺はここの全ての人が嫌いなんだ。

あの学生にはあまり早く死んでほしくないところだ。はは、目を大きく開けてよく見て、よーく見て、この都市が今受けている全てのことを見てもらいたい。
私はこのような都市の一面を見たことがない。
家が破壊され、道路はふさがれ、窓は寒風を恐れるように閉じられ、壊れたレンガは押し倒された積み木のように道端に捨てられていた。
あちこちから火があがり、悲鳴が煙のように漂っていた。
武器を持った者は声をあげ、歓声をあげ、壁や地面にあいつらのマークを彫った。
私はあいつらの名前を聞いた、犯人が誇らしげにあいつらの名前を言ったのを聞いたんだ。
あいつら自分たちをこう呼んでいた――レユニオン・ムーブメントと。
(爆発音)

…っ、いた…

(学校から中央区まで2時間掛かった?大体それくらいか)

(耳から音が聞こえなくなっているのは一時的なはずだから対して問題じゃない。左手は…感覚が無くて、小指が折れたみたいだ。う…)

(腹部にも痛みはあるけど、まだ大きな問題じゃない)

(慌てるな、怖がるな、ゾヤ。もうここまで来たんだからこのまま行けば良いんだ。急ぐ必要は無い、あの人達を避けることに気をつけるだけでいい..)

(…ひっ)
(爆発音)

(また爆発、今後は公園のほうであったみたい)

(一体これで何回目なの!?)

(一体何があったのお…!警察は、軍隊は?どうして誰も介入して秩序を保とうとしないの?)

(前は通れなさそう。戦っているのはレユニオンの人たち?他にも抵抗している人がいるようだけど…)

くそ、もう少しで家に辿り着くところだったのに、よりにもよってこんな時に!

逃げろ、逃げろ!

なんだあの野郎は!化物、化物じゃないか!

(群衆が騒いでいる、このパニックの度合い、尋常じゃない…)

あの、すいません、先で一体何が――

どけ!道を塞ぐな!
(どつかれる音)

!

何しているんだ、行け!逃げろ!!

私の子供、私の子供がまだそこに!

奴らが来やがった、*スラング*、行け、さっさと走れ!

うぅ、ママ、ママ…。

気をつけて!

(うっ、傷口に当たった、痛い…)

大丈夫、怪我は無い?

うう、うわああ!!やだ!やだ!離して!

あ、待って!
(足音)

退け!退け!

(やっと警察が来た!これで大丈夫なはず)

前方で緊急事態が発生、この街は現在は封鎖中だ

おい!死にたいのか!?前に行くな、あそこにもレユニオンがいるんだぞ!

…待て、お前ゾヤじゃないか!どうしてここにいるんだ!。

ヴァレリーおじさん!

これは一体どいういうことなの、都市を破壊したレユニオンって一体何者なの?

俺達を解放しろ!

ここを離れよう!あいつらは人を殺している、警察は何とかしてくれないのか!?

慌てるな!落ち着くんだ!ここは俺達が処理――
(殴られる音)

ヴァレリーおじさん!

俺は大丈夫だ…

押すな!止まれ!お前達**落ち着け!
(殴られる音)

警察は何をやっているんだ!お前達みたいなやくたたずのゴミは早く行って、あの感染者どもを止めてくれよ!!

あいつらが来る、あいつらが来る、俺達は殺されるんだ――

ねえ!そんな酷いことは言う必要は無いでしょ!

ゴミが!どけ、どけ…死にたくない…。
(市民が走り去っていく足音)

あいつらを止めろ!

ひどすぎる、あいつらはどうして…!ヴァレリーおじさん、大丈夫なの?

大丈夫だ、この二日間、多くの市民がパニックに陥ってしまっている。こういうことも多すぎて慣れてしまった。

どうしてこんな…。

それは重要じゃない、今はお前と話す時間は無いんだ。

民間人達を止めないといけない、あの先は危険だ、あいつらは化け物だ。普通の感染者じゃない!

アントン、君は小隊を連れていき、彼らを止めてくれ!

はい!

ふう…

ゾヤ、どうしてここにいるんだ?どうやってここまで来た?

あいつらのボスは学生はそれぞれの学校に収容されているはずだと言っていたことを覚えているんだが。

お前の学校はここからあまり近くはないはずだ。お前はどうやって…どうやって出てきたんだ、とにかく今は着いてきてくれ!ここは危険だ!

ちょっとまってよ、おじさん、これは一体どういうことなの!?

私は小道を歩いて、ずっとあの人達を避けてきたけど、街はますます荒れてしまってる。

あちこちで爆発したり、崩れてしまったり、怪我をした人だっている。あいつらが人を放っているのも見た。あいつらはどうしてこんなことをしているの?

私の家族は…お父さんもレユニオンに対抗しているの?今はどこにいるの?それに、私のお母さんは?お母さんに会いに行かないと…。

…

どうしたの…どうして、何も話してくれないの…

ヴァレリーおじさん、私のお父さんとお母さんは…

…お前のお父さんは危ないところにはいない

本当!?

だが――

お前の家がある街は最初に襲われたブロックの一つだ。

レユニオンを名乗る感染者達は非常に危険で、市内外では想像もつかない破壊をもたらしている。最も危険な地域の住民を優先的に避難させるしか無いんだ。

俺と…お前の父は、この決定を全面的に認めた。

俺達はその時の状況で判断をしなければいけないし、俺達は自分の肩にある腕章に責任を持たなければいけないんだ。必要であれば取捨選択だってする。

…救助隊がお前の家のある街に着いた時には、もう取り返しのつかないほど申告になっていた。

それは厄災と言えるほどで、どうしてそうなっているのかが想像も付かないものだった。

高温で全てが解け、草木、レンガ、鉄筋、あらゆるもの全てが、その焦土の上では雪が積もることが出来ないほどだ。

お前の母は避難しているかもしれないという嘘を付きたくはない。お前はずっと賢い子供だし、こんな嘘でお前をだますことなんて出来ないだろう。

すまない。俺達は遅かったんだ。

…

あなたは私をだましている。そうなんでしょ、きっと私をだましている…そんなことあり得ない。

ゾヤ!

ゾヤ…聞いてくれ、これが本当なんだ。

そんな訳ないよ、お父さんが言ってたんだ…。
彼は私達を守るって言ったんだ。

何も心配することはない。

それに俺達軍警察もこの都市にいる。俺達の軍隊は都市の周辺にも駐屯している。

この家も、俺達の都市も、俺達が守ってやる。これは俺達が自分の役目として誓ったことなんだ。

ゾヤは将来どんな仕事に就きたいんだ?

父さんと同じようになりたい?はは、そうか、でもそれは大変だぞ。

ゾヤも大きくなれば分かる。お前も本当に父さんの役目を理解して、それでもまだ考えを変えないというのであれば、父さんはゾヤが同僚になることを楽しみにしているよ。
…
そうだ、彼が言ったんだ。
守るのは彼の天職であり、彼は私と母を守り、家庭を守り、彼は…
「この都市を守る」んだって。
泣いちゃいけない。
まだ泣いちゃいけないんだ。
私はお父さんと同じ人になりたい、私もそうなりたい..

…

ゾヤ。

…大丈夫、私は大丈夫。

話を続けて。

ああ…。

とにかく、あの憎い感染者達はどこから突然出てきたのか、あいつらの数が多すぎるというのが現状だ。

一部は規律あるようには見えるが、それよりも多くの感染者は暴徒化していて、都市を混乱させている。

軍隊はまだ来ていない、通信が問題はないのに。何があったのかはよくは分からない。

俺達軍警察だけではもうあいつらを止めるのは難しいが、これからは俺達と一緒に行動をしたほうが安全だ。

そうだ、お前の父さんは今はチームにいないんだ。彼はピーターハイム高校のほうに向かっていった。

ピーターハイム高校…どうしてピーターハイム高校に?

お父さんは何をしにいったの?

お前も聞いているだろ?お前が通っている学校を含めて、感染者の一部が集まっているんだよ。

おかしなことに、彼らは生徒達に何かしようとはしていないみたいで、これまでは何も動きは無かったんだ。

しかし、この2日間でレユニオンが撤退をしているという情報があった。あいつらが何をしようとしていたとしても、俺達は対策を準備しないといけない。

俺達は人手を分ける訳にはいかない。一部地域では大きな衝突はないんだが、それよりも多くの地域はひどく混乱している。だからピーターハイムの動きには少数の人を派遣して調査するしか無かったんだ。

だから、お父さんが?

彼は自分から請願したんだ。君のお父さんは経験豊富だから、彼が行くのは私としても少しは安心だ。

お前が無事なのであれば、彼も安心することが出来るはずだ。残念だが、今はぐちゃぐちゃだから、すぐに彼に連絡することは出来ないが…。

どこも人手が足りないんだ、**!この感染者どもは一体どうしてこんなに狂っているんだ!

残りは後にしよう、ここにいるのは危険だ。軍隊の支援はいつ来るのかも分からない…くそ、こんな時に第三師団は一体どこに行っているんだ!

…

とにかく、ゾヤ、お前は避難をするんだ!軍隊がここを接収さえしてくれれば、この暴徒達なんて俺達の敵では無いと信じている!

安心してくれ、人手が足りるようになれば、すぐにピーターハイムの学生を助けに行かせて、お前の父さんもどうにかする。当然、お前の学校も、他の学校も同じだ!

…

もし、人手が足りないのであれば、私が行くよ。

何?

もし人手が足りないのであれば、私がお父さんに会いに行くよ!

何を訳分からないことを言っているんだ!無茶苦茶だ!絶対にだめだ、危険過ぎる!

しかもお前一人が言って、何の役に立つっていうんだ!

ヴァレリーおじさん!

私だって分かっているよ、緊急事態だってことくらい。そして今を見るに事は…。どんどん悪くなってきている、そうでしょ?

待つ時間が無ければ無いほど、長ければ長いほど危険になる。支援が無ければ、私達は人手を分けることすら難しいんでしょ。そうなら、助けはどうしても多く必要なんじゃないの?

私なら助けることが出来る。私はあいつらの学校での配置を研究した、いつ巡回をして、1チームがどれくらいの人数なのかも!

同じ学校では無いけど、あまり差は無いはず…。

前にピーターハイム高校に行ったことだってある、そこのキャンパスのレイアウトだって知っている。それに、少なくとも私はレユニオンの眼前で無事にここまで来たんだよ!

私には能力がある、助けることだって――

それは違う!

!

これはお前が前に警察で見たことがあって、体験した演習でも無いし、模擬訓練でも無い。お前が思っているほどに簡単なことじゃないんだ。

ゾヤ、俺はお前は能力があって、お前はいつだって優秀だっていうことは知っている。でもお前はまだ学生で、お前はまだ大人になっていなんだ!お前は自分の安否を大切にするべきであって、それはお前がするべきことじゃない!

…

分かってるよ、それがみんなに迷惑を掛けるってことも、何の役にも立たないかもしれないってことも。

でも、私は…。
でも、それ以外に私には何が出来るの?

私はやっぱり…
私は考えるのが怖い、行動しないといけない。

お願いします。私を行かせて…

はあ。

俺がこれ以上何かを言っても、意味は無いみたいだな。

ごめんなさい…

これを持っていけ。

え?

これは…?

軍隊の通信装置に連絡することが出来る。これがまだ有効なのかは確認出来ていないが…。

運が良ければ、ピーターハイム高校まで行って、軍隊に直接連絡をし、そこの状況を報告することが出来るかもしれない。そうすれば俺達はとても助かる。

俺はお前を止めることは出来ないのを知っている。正直なところで言えば、今はやることが多すぎて、俺はお前を見ておく気力さえ無い。おまえの去就はお前自身が自分で責任を持つしかない。

だがな…ゾヤ。お前は公職者ではないし、お前も俺達が守るべき対象だということははっきりと覚えておいてくれ。

強がるんじゃないぞ、どんなことがあろうと、自分を守ることを優先してくれ!

お前の父さんだって、お前が危険にさらされているのを見たくはないはずだ。

…ありがとう

ありがとう、ヴァレリーおじさん。

私は絶対に…。
きっと何が出来るって?
私は言葉を続けはしなかった。
こんな時の保証というのは、無力な慰めあいにしかなっていないということを、双方とも分かっているからだ。
私は人混みを抜けて、崩れた瓦礫を避けて、都市を傷つけた凶悪な輩を避けた。
私は何も考えず、考えることも出来ず、ただ一つの目標に向かって進んでいる。

(ふう、やっとここまで来れた)

ピーターハイム高校…前回来た時は学校単位での交流会の時だったかな)

(ここのレユニオンも巡回をしているみたい。一時間ごとに一チームが巡回をしている…避けるのは難しくはなさそう)

(問題は無いみたいだけど、どうしたんだろう、静か過ぎる気がするような)

(ん?あそこは…)

!?
これは何?

(これは一体どういうことなの!?)

(これって、これって全部、学生?)
これは何なの?

(あるいは、これはかつて学生だったもの)

(地上には壁があり、火の跡があり、周囲は焦げている…。しかもこの学生達の試飲は火ばかりじゃない..)

鋭利な武器に鈍器、踏みつけもある?

(くそ、一体どういうことなの、どうしてこんなことになっているの!)

(もしかしてレユニオンが?でも、この傷は暴徒によるものじゃないように見える)

(それに、学生が役に立つという訳じゃないけれど、レユニオンは学生には攻撃はしないはずじゃ?)

え?これは…

え…?
黒焦げの床に、学生服の中を一つの音符だけが楽譜を滑り、鍵盤に次々と衝突していった。
それは私が考えたことも、夢で見たこともない場面だった。

もう暖かくなりそうだな、なあ、ゾヤ、この服はどうだ?

ん?あ、前から準備していたんだよ。母さんと約束していたんだ。えっ、普段は制服を着ているから慣れないけどな。

一緒に連れて行け?だめだよ、そりゃだめさ。

母さんとのデートなんだから。

あ、あ…

お父さん…?
この冬が過ぎたら、天気も暖かくなるし、一緒に冬送りに行くんじゃなかったの?
薄蜜酒を少し飲んで、ストーブでケーキを囲んで。手を繋いだり、歌ったり、踊ったりして、柔らかくなり始めた泥の土地を踏んで、凍土でも小さな花が咲き初めて。
この都市では、春はそうやっていつも来ていた。

はい、手続きはこれで問題ありません。

これが新しいログカードなので、どうぞ。

ありがとう。

(よし、今回も出来た)

(慣れてからというもの、難しくは無いね)

(お腹空いたな…後で食事券をチャージしておこうかな)
(賑やかな話し声)

前は本当に楽しかったね!ドクターはすごいよ、チーパイで一度も負けたことが無いんだもん。コインの「嘭」を少しずつ変える方法も教えてくれたし!それに…ほら!

ふふ、確かに面白いわ、今度はリェータも一緒に来ない?

え?私は良い…

来てよ!来てよ来てよ来てよ!!

おい…グム、声が大きすぎるぞ。

ああ、あいつは来なくていい、私に負けるのが怖いだろうからな。

はあ?誰が負けるって?やってやるよ、一体誰が誰を怖がっているかなあ!?

良いぜ、やってやるよ!!

…

あの制服、彼女たちは――。
あの高校の生徒は…!