
Mon3tr、持ちこたえろ!

(甲高く叫ぶ)

狙撃オペレーター、続けて彼の躯幹部を撃て、彼の鎧はすでに破損している。術師オペレーター、その他遊撃隊員を牽制、手を出す隙を与えるな。

(悲鳴)

退け、Mon3tr、近接戦闘は不利だ!お前ではもう彼の前進を止めることはできない!

剣を出します!彼を……彼を直接掴んでも、抑えられないなんて、感じる、まるあれは雪崩のような……

エネルギーを集束するんだ……集束。もっとだ、線になるまで集束して、彼の心臓部を狙え!

(甲高く鳴く)

ロックオン。今だ!
(大きな銃撃音)

――

(うめき声)

これでも倒れないか……

どれだけ粘るつもりなんだ……!

「戦いは常に死闘、戦うごとに命をかける、その命は血脈に回帰する、すなわち命は他者の中で永久に生きながらう……」か。

前衛オペレーター、遅れをとるな……撤退しろ。彼の身体も「食人」の儀式を放つ、彼自身が巨大な呪術装置なんだ……

ボジョカスティ、多くのサルカズは、君みたいなウェンディゴがむざむざと犠牲になることを望んでいない。

いいや。私が、犠牲になるとでも?

私はまだ動ける。私はまだ、お前たちを殺せる。

わが肉体は、まだ、私の命令に、従える。

私はまだ苦痛と……悔しさと遺憾を、味わっていない。

それだけか?まさか、お前たちはその程度なのか?

ボジョカスティさん……止まってください。どうか……もうやめてください!これ以上戦っても苦しむだけです!

戦士たるもの。

戦士たるものは、いかなる死者も、背負わなければならならない。

私は、彼らの痛み、彼らの憎しみ、彼らの沈黙を、背負っているのだ。

もし、私が、足を止めれば……

彼らの死は無駄になってしまう。

苦しむ?それはお前たちの、ほうだ

お前たちでは、私には勝てない。

うぅ……

あなた……悲しまないで。

後入りはしないって?もうよしてください、あなた……

はぁ、私がうるさく言っても頷いてくれないんでしょうね。あなたは本当に石みたいに頑固ですから、あなたを説得できたことってあったかしら?

まだ戦争を続けるつもり、そうでしょ?

約束して、ボジョカスティ、約束。死なないで。

私はただもうこれ以上あなたが苦しんでほしくないの。私が離れても、ここにはあなたを迎えてくれる家族がまだいるのよ、ほら見て、グーロちゃん……

この子の寝顔、ほんとうにたまごみたいにプルプルしてて可愛いわ。

まだ固く生えそろえていない、赤くて小さな二本の角だって……

これは命。私の命の続きなの。子供は、この大地の全て人たちの未来なの。

あなたが私を食べないことは知っているわ。あなたはウェンディゴの伝統を毛嫌いしているものね。

でも本当はあなたの命のなかで一緒に生きたかった。

でも、命というものは……いつかは朽ちる。

どうしたの、元気がないわ。過度な悲しみはあなたを壊してしまうわ。この子もまだまだあなたの世話が必要なの、ここで行ったり来たりしても、あなたが壊れてしまう。

……ううん、ボジョカスティ。あなたは冷血な怪物なんかじゃない。

あなたの私への愛は本物よ。他人を嫌がることに長けたこんな女でも、あなたは変わらず愛してくれた。

驚いてるって……そんなに驚かないでよ。私もあなたを愛しているわ、あなたが大きな器で温かく私を愛してくれたように。

ボジョカスティ、私の愛するボジョカスティ……あなたの未来の家族も、私の家族よ。

あなたを愛しているわ。

ヘレン、私は君の愛に相応しくなかった。

君を守れなかった。約束も、守れなかった。

私の家族も、誰も、守れなかった。

君の愛に……相応しくなかった。

信頼されていた人が、約束を破る。

約束を破った人が、まだ生き長らえている。それでも、約束は、まだそこにある。

約束には、後悔もある。

……

死者、だけではないのだ。フェリーン人、お前の後悔は、どこにある?

私は……

お前は、背負っていかなければ、ならない。

この街の人たちを。ウルサスの感染者を。この大地で、親を亡くした子らを。この大地で、過ちを犯した親の子らを。

みな背負わなければならないのだ。

親父、頼む!どうか、どうか帝国側につかないでくれ!

命令だから?帝国の命令なんざただの笑い話だ!

いや、ごめん、親父……あんたを皮肉ってるわけじゃないんだ。違うんだ。俺はそんなことしないよ。

でも帝国の法令は、俺たち全員に仕向けた残忍な騙しなんだ!

俺の友だちのヤクタは、鉱石病感染者って診断されて、橋の上で鞭打たれて死んだんだ!

親父はあいつの詩が好きだったろ?夜に大声で詠って、感極まってたじゃないか?

そのあいつが死んだんだぞ!あいつは暗い死の道に上って、永遠に俺たちから離れた、もう二度と戻ってこないんだぞ!

詩人として、文学以外は、誰だろうとあいつを死なせる資格はない!

帝国の感染者法令は、俺たちの心の中を蹂躙する悪徒なんだ!

あの手の死は、見てくれ、感染者の死っていうのは、命を奪う側も奪われる側も人としての尊厳を失うんだ!

帝国の兵士たちは、こんな尊厳もクソもないことで皇帝から恩恵を得ているんだ。あまりにばかげてる!

カズデル出身の親父と、親父と一緒に過ごしてきた感染者のサルカズ人なら……俺たちウルサスの感染者をきっと理解してくれる!

……なんでそんな無関心なんだよ。あんたの心は鉄で出来てるのか?それとも、あんたはサルカズだけど感染していないから、これっぽっちの同情も感じってことかよ?

俺たちサルカズ人は……サルカズ人以上に鉱石病に罹りやすい種族がいるか?

だったら、俺たちの中に鉱石病に罹った人が出れば、あの罪名がどれだけばかげてるか分かるだろ!

その時なら、親父は親父が行ってる血まみれな道から、仁慈に満ち溢れた道に乗り換えることができるかもな!

親父……もういい、もういい!あんたはあのボジョカスティだ!あんたみたいな強靭な軍人に鉱石病が罹るわけがない、俺があんたの代わりだよ!

病が俺の遺体からあんたを見上げて嘲笑ったとき、そのときやっとあんたは自分の過ちに気づくんだ!

後悔しても遅いからな、親父!

……グロワージル、お前は無関係だった。お前に罪はなかった。

感染したのは、私だ。隠してきたのも、私だ。

父さんは終始、見て見ぬふりをしてきた、真っ当な道にも、行けなかった。

私は今となって……後悔している。

本当に、後悔しているんだ。

息子よ……父さんはお前を殺してしまい、お前を、無駄死にまでしてしまった。

父さんは……お前の父親として、相応しくなかった。

私が戦いを止めることは、彼らに背くことだ。

増えていく……見える……こんなにもたくさんの。

パトリオットさん……こんなに、こんなにたくさんの後悔と恨みが……言わなかった、誰にも漏らさなかったのですか?

……

私の悔やみ恨みは、私にしか受け止められない。

Mon3tr、彼に近づくな!

なぜ、殿下のような方でも、予測できなかったのかと、いつも思う。

――

あなたは答えてくれなかった。殿下の死は、今でも、謎のままだ。

だが私は知っているぞ。あの方は逃げない。あの方は最初から最後まで、微笑んでくださるだけだった。

私が戦いを止めれば、全ての抗いに、意味を失う。戦いを止めることは、逃げることだ。

止めることはできないのだ。

私たちは血縁関係がないんでしょ?お父さんって呼ぶの、ちょっとおかしいかも。

……顔色悪いよ?

違う!そんなんじゃ……兄弟たちが私を怖がっているからじゃないってば!

ねぇねぇ、何か方法はあるの?彼らが私たちのせいで遠くまで行って隠れないようにする方法?

あるんだったら、お父さんって呼んであげてもいいよ!

え?はさむ?その単語はどういう意味なの、私まだ教わってないよ。

はぁ、お兄ちゃんは何でも上達するのが早いって、私みたいに手順通り習わないのと違って……じゃあそのお兄ちゃんは今どこにいるの?

えっ、ちょっと!?なんで急に抱きついてくんのよ!冷たいから火傷しちゃうよ!

……泣いてるの?私の肩に水滴が落ちたような……

泣いてない?みんなお父さんのこと血も涙もないって言うから、お父さんは泣かないってこと?

でもお父さん泣いてる……

……ふざけて言っただけだって、本心じゃないってば!お父さんが泣いてるのって、凍って痛いから?

お父さん、お父さん!もうあんな風に言わないから、それに、私が大きくなったら、大きくなったらね……大きくなったら絶対凍っても大丈夫な薬を作ってあげるから!

そうすればもう痛くて泣いたりしないでしょ、ね?絶対大きくなってみせるから!

家族?

あ、私の兄弟たちと、お父さんと私は家族ってこと?ここにいないお兄ちゃんも?

うん……じゃあ、お父さんは、みんなのお父さんだね!

私もお父さんと一緒に、おばあちゃんの仇を討って、私たちをイジメる人たちを殺してあげる!

そんなこと言っちゃダメ?

どうして!お父さんだって毎日悪い人たちを殺してるじゃん!

どうして私がお父さんみたいになってほしくないの?お父さんはいい人じゃないの?

どうしてお父さんも悪い人なの?わかんない、ちゃんと説明して!どうしてお父さんが悪い人なの!

お父さんなんてキラい。キラい!

……お父さんみたいじゃなかったら、街に入れるの?

お父さん……私たち、本当に街に入れるのかな?

お父さんが言ってたリングキャンディーって……本当においしいのかな?

お父さんみたいな人じゃない人でしか食べれないんだったら……うぅ……!

私分からないよ。

お父さん……

どんないい人でも、悪い人でも、私なれるよ。

お父さんと、兄弟たちとずっと一緒にいれれば……それでいいよ。

お父さんは私の家族だもん。私知ってるよ、お父さんは私の最高のお父さんだって。

もちろん、二番目は……三番目は……

イェレナ……イェレナ……私の娘よ。

私の愛しい娘よ……父さんは、何も、お前のために、できなかった。

何も、してやれなかった。

お前に、何もしてやれなかった。

何も。

……

多すぎる、多すぎます……

コータスの少女よ、お前が、ロドスのリーダーだな。

お前は一体、どこから来た?

お前たちのあるメンバーが、私にお前のこと。

お前たちの戦士は、どれも優秀だと、話してくれた。だが優秀だったとしても、いずれは死ぬ。

お前はまだ、私に見せてくれる、価値があるか?

セントラルシティは、阻止したいが、私には、勝てないのか?

アーミヤに触るな!
(斬撃音)

一本、二本、三本……四本目!
(斬撃音と砕ける音)
盾が、砕けた。
矛が、折れた。
だがその大きな怪物は、足を止めなかった。

ふっ。

甲冑を、貫いてきたか。この甲冑も、もう限界だな。

……一歩でも近づけさせない……!

そこのフェリーン、お前は強い。私にとっては脅威だ。

待ってください、パトリオットさん。

お前まで、あと十歩だ。待つ必要は無い。

あなたはもう限界です、私にはわかります。

それにあなたはフロストノヴァさんみたいな、術師ではないんです……
(アーミヤのアーツの音)

もう十分じゃないですか。

このアーツは……私に全部見せてくれました。あなたが見てきた全てを。

……もういいじゃないですか、パトリオットさん。
もういい。

これは……一体……なんだ?

今の一撃は、的確だったぞ。

もう、足を引きずることすらできん。

……すべての損傷が、蓄積され限界に達したんだ。

ボジョカスティ……

(お前たちを、潰したあと、遊撃隊に、お前たちの名を借りて、タルラを殺す、算段だったが。)

(もう、必要なさそうだ。お前たちは勝った、正しさを証明したのだ。タルラを、殺しにいけ。)

(パトリオット……さん?)

(私にどうやって、感染者を、隷属する者を許せと?)

(私の命を、もらえ。勝者としての、戦利品だ。)

お前たちの、勝ちだ。

ケルシー卿、これを、持っていけ。

――これは?

チェルノボーグを停止させる鍵だ。

艦橋区に、行くのならば……これが必要だ。

パトリオットさん……あなたは……ただ……

うぅ……

いいや。

私は確かに、お前たちを殺すつもりだった。

だが今は、お前たちが勝った。必然だ。

・どうしてここまでしたんだ?

お前たちを信じていなかったからだ。

私は、戦争の結果しか信じない。

私の娘は、無邪気だから、活路も作るが、偽りの結末も作り出す。

私はそうはしない。私は結果を待つだけだ。

それに、最善の結果が……これだった。

私の兵士たちは、驚きのあまり、実力を発揮できなかった。彼らはこれからも生き続ける。

死ぬのは……私だけよい。死に場所をやっと得た。

……何が起こってるんだ!

クロージャ、生体処理室13番ポッドだ、数値グラフをくれ!

ポット内の温度が急激に上昇している!エネルギーが放出されているぞ!

待て、形状が変化している!処理から十四時間経ったのに、どうしてこの段階に入れたんだ?

PTRS、誰がこのポッドを使ってたんだ?

ドクターだって?龍門攻防戦で死傷したオペレーターでもいたのか?中にいるのは誰なんだ?

なに?

待て、もう少しゆっくり話してくれ。ドクターが誰を置いたって?

ケルシー卿よ!

聞いている、ボジョカスティ。

我々ウェンディゴは、自ら流浪に身を置き、一切を失った

だがウェンディゴの伝統まで、失ってはいない。

先祖たちは、私を作り、私を育て、私を見守ってきた。だから、代わりに立ち会ってくれるか。

ボジョカスティ……

……私に務まるだろうか。

あなたが、最適なのだ。

……

……「私はここに一人のサルカズの見証人として立ち会う。ボジョカスティ、カズデルのウェンディゴよ、生涯血肉に背かず、また親族に疾しきことあらず。」

「光に照らせし御身に彼の今生を置かん……」

「彼の魂は、これよりウェンディゴの滾る血脈に戻られる。」

これはただの呪文だ。

私にとっては、違う。

ありがとう、ケルシー卿。

こういうのは嫌いだと思っていた。

私も、年老いたからな。

そんな……

ここはどこだ?

……

はっ、なるほどそういうことか。

タルラは本当に俺たちを裏切ったんだな。

俺たちがただ泣き寝入りするとでも思ってんのか!?

お前たちじゃ相手にならないがな。

来世があるんだったら、その時に復讐しに来い。

死ぬってわかるから、諦めろと?

そうやってお前たちに訳もわからず殺されてしかも――

???

彼らを殺しちゃいけないよ。

……?

彼らを放してやるんだ。

メフィスト……?

魔族、ぼくが君たちに痛みを知らない身体を授けるからさ。放してやってよ。

俺たちはお前の牧群なんかより強いぞ。

ぼくの命を君たちに共有してあげる、そしたら君たちは正真正銘永遠に戦い続けられる、疲れ知らずに戦い続けれる。

……いいだろう。

だがこいつらが出て行くまでは、俺の仲間たちが監視する。まだタルラの命令を捨てる訳にはいかねぇからな。

おい、射手たち。出ろ。

メフィスト!?

(どうして俺たちを助けたんだ……?まさかタルラがまだ何か企んでいるのか?)

だが、どうしてお前がわざわざここに来たんだ?

……ここに入りたいからさ。ここにどんな秘密が眠ってるのか知りたくてね。ロドスがどうしてここからあの人を連れ出したのか知りたいんだ。

録画でここからあの人が出てきたのを見たからね。

メフィスト……?なぜ?

君たち、歌は聞きたいかい?

だが、ファウスト隊長が、言っていた……

ああ、そうだね。ぼくはもう歌えない。

うん、でも試してみてもいいんじゃないかな。

子守歌だったかな?誰から教わった曲かは忘れた……もう憶えてないなぁ。

でも誰かがぼくの夢の中で、ずっと鼻ずさんでいるんだ。
眠れ、眠れ♪
ハリネズミのお人形と小熊たち……

ウルサスの、感染者は、どこに向かうのか?

暗晦な夜は、幾つの星を……遮るのか?

……大尉、大尉!

最後の命令だ。

大尉……

戦い続けろ。生き続けろ。

お前たちの道は、お前たちで……進むんだ。

人が行かねば、道はできない。

私はいずれ死ぬ定めだ。ただ今なのかは、知らない。

我々の死は、一体何を、変えられるのか?

この答えは、お前たちが、見つけ出せ。
静かな黒に沈め……
兄も、姉も、妹も、弟も、夢の世界よ夢の世界、彼らの身体を覆い隠せ……♪

“ミス”?どうしてここで泣いておられるのですか……

泣いてなんかないわよ!

はいはい、わかりました。しかし、ここは近衛局ビルの入口ですよ?

他の人に泣いているところを見られても、よろしいのですか?

どうせ……どうせほかの人なんていないわよ!

ではこうしましょう、小官がスワイヤーさんの座っている階段の一つ前に座ります。小官は体が大きいので、あなたを隠せば、誰にも見られません。

あんた何やってのよ……

あー。失敗したから、気分がよろしくないんですね?

Missy、小官らは失敗したってことですよ。

あんなやつなんか……もう知らない!

ええ、そうですね。わかりますよ。

……

ちょっ、叩かないでくださいよ。小官がどう答えてもどのみち叩かれなきゃいけないんですか。

ようやく……

私の……人生に……終わりが来た。

ヘレン……グロワージル……イェレナ……

お前たち……

やっと……家に戻れるのだな……
いや。
――違う。

――

違う。

幻覚だ。

なぜ……私は、幻覚など、慰めなどいらん!

誰だ……

誰が私に……幻覚を見せている!

え……どうして……どうしてパトリオットさんは……抜け出せた?

なる、ほど。

――お前か。コータス。お前なのだな。

お前、こそが……継承者。

テレジスは、嘘をついていた。殿下には……継承者がいたのだ。

お前が魔王だな。

あ……!

私は魔王の手によって……死ぬ。

私が……なぜ?

運命には、終始逃れられないということか。

いや。違う……

違う。

アーミヤ!?ダメだ……!?

ご、ごめんなさい!で、でもケルシー先生……

伝承で聞いたことがある、過去に、サルカズの君主は、その者が願う光景と慰めを、褒美として与えていた。

功を建てた臣下たちは、高く聳え立つ城と、亡き愛する人を夢見ていたと――

無数の戦士たちが、その幻を求め、戦い続けたと。

私、私はただ……パトリオットさん、私そんなんじゃ、そんなつもりじゃ……

……あなたの命の最期は……こんなに悲惨じゃダメなんです!

私……見えたんです、あなたが二百年間も……

ずっと……ずっと戦い続けてきた、失った、全部……全部失っていくところを……

私……あなたの結末がこんな風で……終わってほしくないんです!

私の、結末だと?

……違う。

本当はあなたに……もっといい……

やめろ!

私の結末が、他者から与えられて、良いものか!

幻覚だと?違う!そんなものは結末などではない!

悲惨なら、悲惨でいい。愚かなら、愚かなままでいい!

これは、私の結末だ。私が得るべき……結末だ。

私が生きてきたもの、抗ってきたもの、失敗してきたものだ。

もう、充分だ。

どうして、どうして……それで充分と思えるのですか?

誰もがこうやって全てを失うのはおかしいです!

……お前はまだ、子供だからだ。

私はもう子供ではありません!戦いだってたくさんしてきました!。

……良い結末は、望んで得るものではない。子は、子守歌に夢中になるといい。

お前も私の娘も、まだ、子守歌に夢中になるような子供だ。

フロストノヴァのあれは、彼女には荷が重すぎる……重すぎたのだ。

彼女の観点は、賛同できない。彼女はまだ……子供だ。まだ、幼い子供なのだ。

鉱石病、奴隷の主、この大地は……子ひとりすら逃さない。

タルラは彼女を、死に追いやった。

ではなぜ私たちは共にタルラに対抗できないのですか――

お前は私に、何をもたらしてくれる?

タルラが私に与えてくれたものは、お前には、まだできん。

その後で、お前はまた、どう変わる?

これが運命というものだ、私はもう充分に、味わった。

私は決して運命なんぞに、屈しない。

たとえ運命が、私に同じ結末を、与え続けてきたとしても……

私は、やつと戦い続ける、太陽が、再び昇ったとしても。

だが……お前なら変えられるかもしれない。

私は運命と幾度と、抗ってきたが……やはり、勝てなかった。

だがお前なら……お前なら、違うのかもしれない……

お前は本当に、あの殿下を受け継ぐ資格があるのか?

あ……

お前は本当に、ここから離れられる力を持っているのか?

……

お前は本当に、果てしない荒野に踏み入れる度胸があるのか?

私一人ならできないのかもしれません。

でも私は独りではありません。

もし……

この全てが……お前たちのものならば。お前たちが……成し遂げろ。

あの……レユニオンの、暴君の、運命は……お前たちで……翻せ。
待て。
違う。
ケルシーは重い灰色の空を見上げた。
私はどこかで見たことがある?
まさか……

アーミヤ……アーミヤ……?

サルカズの預言は種族全体の意識記憶が融合してできたもの。オリジニウム多発地域で起こったオリジニウムのエネルギー爆発……天災に運悪く遭遇したセントラルシティ。

祭壇……アーミヤ……ウェンディゴ……魔王!?

待て、もしこれが直接影響を及ぼすのなら……ありえない!古のウェンディゴの最期の血筋がサルカズの一族を繋ぎ合わせたとでも言うのか!?

この予言は……この予言は!?

雪?「食人」のボジョカスティと全祭壇が共鳴した!?私がさっき施した……ウェンディゴの回魂の儀も……!

全オペレーターに告ぐ!!

彼が何を言おうと……ボジョカスティがこれから何を言おうと!

【一文字たりとも信じるな!】
そのウェンディゴは忽然と口を開け、喉から出た掠れた声は全中央区に響き渡るようだった。
我、満身創痍の諸城を見たり。
我、大地に蔓延る源石を見たり。
汝、黒き冠を頂き、千万の生霊、記憶にせん。
魔王、将に全ての族を、尽く隷属せんを見たり。

あ……!?

……なん……だと?

ばかな……ありえない……

パトリオット!予言はデタラメだ!あれはオリジニウムアーツによる生理的残留物にすぎない!

だ……だが私は……予言が全て……実現されることを……知ってしまった。

私も魔王の手によって、死にゆく。

……卿。違うんだ。ケルシー卿。

ボジョカスティ!!お前は生涯をかけて運命に抗ってきたのではないのか!

幼き、魔王よ……

……お前は、お前は……
この大地で最も恐ろしい災いなのかもしれん。
彼女は死なねばならない!
さもなくば、この大地が死にゆく!

お前を生かしては、おけん。
恨むなら私を恨め。
甲冑がぶつかる音が君の耳に入ってきた。
満身創痍のバケモノは、突然とアーミヤに手を伸ばした。

――アーミヤ!

ア、アーミヤ!

……
コータスの女の子は避けなかった。死の影は彼女の硝煙に塗れた顔に襲い掛かったが、彼女は後ずさず、叫びもせず、ただパトリオットの双眼を直視していた。
彼の魂を覗き込むかのように。
それと同時に、鈍い黒色をした剣と光を放つエネルギーの束が、巨人の不死の躯へ突き刺さっていった、しかしそれでも彼は揺れ動くことはなかった。
パトリオットが黒衣を纏った少女の小さな頭を握りつぶせるところまで手を伸ばしたその時……
そのウェンディゴの動きは、音を立てて忽然と止まった。
彼の兜からは何かが滴り落ちたようだった。
……
一分が経過した。
この悠久な一分の中で、君が聞こえてくるのは、移動都市が放つ殷々たる音以外、何もない。
君は、目の前の怪物がすでに死んでいることに察する。
一歩も退かず。一秒たりとも諦めなかった。だがそれでも、死は彼の今生の進軍を止めたのだった。
ストーリータイトル「パトリオットの死」