この子を君に返してやってもいい、ウェイ。
――
やめろ!
……その子に手を出すな。
ああ。お前ほどの人斬りが相手だ、本当に苦労した。
もちろんこの子は返してやってもいい……だがこの子に付けてある手錠は龍門の半分を吹き飛ばしてしまうことになるぞ。
貴様……
ウェイ、これはかつてお前がやっていた方法だ、お前が私を龍門から追放させた方法だ。
そして今、私たちの立場は逆転した。今度は私が客人となり、こちらが一服盛る番だ。
コシチェイ。貴様は私の兄弟を殺した。
違う、違うぞ、ウェイ。お前が自分の兄弟を殺したんだ。
私の存在はさして重要ではない。お前の兄弟の悲劇は、もしかしすれば一匹の一角獣の密令から、あるいは真龍の憤怒から来ているのかもしれない、だが情報を漏らしたのが私なのかどうかは、そう、重要ではない。
重要なのは、ウェイ、唯一正しい真実は――お前がその手に持つ赤霄剣で、自ら自分の兄弟を殺したことだ。自らだ。
斬龍の剣か?お前たちが鋳造したその剣は、同類を殺すためにあるだけだ。
よくもベラベラと減らず口を。
よし。ではお前に選ばせてやろう。
選びたまえ。私を殺して姪を取り戻し、この街を滅ぼすか、私たちを何事もなくこの街から出すか。
――
剣は仕舞いたまえ。君ならどうなるかはわかるはずだろう。
(歯をきしむ音)
落ち着きたまえ、ウェイ。お前に選択肢を与えてやったんだ。選ばないのなら、私も、お前も、お前の市民たちも、それとこの愛らしい姉妹たちも、みんな死ぬ。
何を企んでいる?
ウェイ、ウェイよ……わかるぞ、とてもよくわかる。
お前は常にどちらかを選べた、違うか?
お前の大事な市民たちが、自分たちの命を天秤に置かれ、もう一方は名も知らぬ幼い龍を置かれて量られていると知ったら、彼らは何を思うだろうか?
私にこの子を傷つける理由がないことも加味してもだ。
……私が貴様をこの街に足を踏み入れることを許してしまった以上、貴様を再びこの街から出す理由はない。
タルちゃん!
本当にそう思っているのか?
……
私自ら貴様を殺す。
いいや、その必要ない。
私は相応しい人の手によって死のう。
そうだな、私がこの子に手錠をかける前に、この子を助けることはできるぞ。
だがお前は私を防ごうとする、私に勝とうとしている、私を倒し、私を滅ぼそうとする……私が何をするか知ろうとしている。
ウェイ、お前は私を恐れている、違うか?
来た。
彼女がやってきた。
この手で彼女を殺してやろう。
赦罪師、答えよ。
レユニオンの首領と、結盟する価値はあるのか?
ご自分がよく存じてる以上私に問う意味などありましょうか、摂政王殿下?
経験も、背景も、資本も持たぬ若者に、己の力のみでウルサスの重要都市を奪えることなど出来はしないでしょう。
非感染者である統治者たちは、彼女の行為のロジックをはっきりと分かっていません。
彼らは恐怖を抱き、過激に反応し、破壊的行為を用いて混乱な局面を解決しようと試みるのです――感染者がもたらした混乱の局面を。
我らサルカズにとってこの上なく身に染みることでございましょう。
では彼女とここに残った隊は、お前はどう考える?
見込みはありません、殿下、殿下が予見したように、なんの見込みもございません。彼らは正規な軍ではございませんゆえ、我らに必要なのは十分な暴力で事足ります。
彼らを取り除いてもタルラの力を弱めることはできない。我々には彼女を滅ぼす機会が一つ少ないのだ。
その通りでございます、殿下。彼女がもたらした局面、彼女が局面を動かすための力は、まさに彼女がただの感染者を率いる頭領ではない証明でございます、あるいは彼女は王冠を引き継ぐ継承者なのかもしれません。
ですが、彼女は陰謀家でございます。
だとしても、私にはサルカズ全体の呼応が必要だ。
では、いい知らせが二つございます。一つは、「魔王」の捜索に、目途がつくこと。
ロドスは一度たりとも手放してはおりませんでした。
それでは間に合わん。すぐ彼女に始めてもらわなければならん。
どうか怒りをお鎮めになって、私に二つめのよい知らせを言わせてくださいませ。
「彼女」はすでに準備を完了しております。
これこそが我らが持つべき力。
サルカズの正統なる王は、どこぞのいかなる名も知れぬ継承者よりも強い。