

3:59P.M. 天気/曇り
移動都市ヴォルモンド、感染者居住区、ドデカフォニー通り

フォリニックお姉さん……怒ってるんですか?

彼らのあの態度が何を意味してるのか、はっきりとわかったわ……

でも、でもアントならきっと大丈夫、彼女は私たちの誰よりもリターニアのことを知り尽くしてるんだから!

うん!アントお姉さんならきっと大丈夫。

きっと……

……

でもやっぱりここら辺はちょっと静かで怖いような……?

そうね、私から離れないでね。

どうやら一般の住民だけでなく、感染者もたくさんいるようね、でも重要なのはそこじゃない。

さっきの暴徒を阻止するときに思ったのよ。この大通りの様子は、どう見たって普通の街並みと変わらないわよね?

ただ感染者を一か所に集めて生活させている、明らかな差別の待遇は見られない。

うん……

でも実際は、感染者たちの自由は奪われ身動きができない、一部の「物に困らない」感染者を除いて、ほとんどの人は収監されてるようなもの……

ただ牢獄が町となって連なり、収監された仲間が数十倍に増えただけ。

ここを見て、このパン屋はもうどれぐらい店を開けてないんだろう?

あ……オリジムシが通っていったのが見えました……すごく汚くなっていますね。

店口の埃と落ち葉が掃除されてない、このエリアは正常に使われてないのよ。

特殊な事態とは言ってたけど、街中でパンを売る人すら見えないのよ?公共交通機関も止まっているわ、不自然すぎる……

き、きっとこの前の出来事?で店主さんがびっくりして店から飛び出しちゃったとか?

でも少なくとも彼らにも生きる権利があるはずよ、彼らだって――

フォリニックお姉さん……!声を小さく!シーッ!

……

……彼らを責めているわけじゃないわ。私はただ……「武装した感染者」について喋っただけよ。

彼らはもしかして……

あの憲兵は「サルカズ」って口にした、それを先に確かめなければいけない。

もし本当に私たちの知っている「感染者武装組織」と関係があるんだったら、警戒しなくちゃならない。ここの状況はあの憲兵が言ってたのよりももっと複雑なのかもしれないわね。

そうなんですか?

感染者の様子が良好ってことは、事態はまだ絶望的ではないってこと。

彼らはきっとまだ私たちに何かを隠している。

フォリニックお姉さん?

そう気を張り詰めないでください、アントお姉さんはとても賢い人ですから。

私が……

さっきから、フォリニックお姉さんはずっと見てて怖い様子でしたよ。

大丈夫です。私たちも一生懸命頑張ったら、ちゃんとこの事件を解決できますって、先輩オペレーターの皆さんのように!

だから少しはリラックスしてくださいね?

……ふふ、またリサちゃんに慰めてもらっちゃったわね。私ったらどうしちゃったんだろう?

えへへ、悩みに歳は関係ありませんよ。

お二人とも、お待ちください――!

あなたでしたか。

助けて頂かなくても結構ですと言いましたよね、ただ許可を頂ければいいと……

すみません、フォリニックさんはそうおっしゃいましたが、なにぶん状況が特殊でして、お二人にとってここは未熟の地、何か事故でも遭われたら、こちらも責任を負いかねませんので。

……フォリニックお姉さん。

わかりました……現地の方が傍にいらしてくれれば、ここの住民たちにも怖がられずに済むかもしれませんしね。

そうですね!おほん!ドデカフォニー通りはもともとヴォルモンド内で最大の感染者集中地区でありまして……

しかしとある原因で、抗議者が最も多い地区になってしまったと。

ではフォリニックさんは、これからどうするおつもりですか?

私としてはここに深入りするのはあまりおすすめしません……けどヴォルモンドの現状を知りたいのでしたら、よい選択かと思います。

……先にあたりを見て回りましょう、まだ急ぐ必要はありませんので。

もしアント先生のことについてお話していただければ、こちらも嬉しいのですが。

フォリニックさん……アント先生のことをとても気にかけてらっしゃるのですね。

彼女は私の同級生で、数少ない私の親友です、ロドスにとっても欠けてはならない人員でもあります。

……そうでしたか。

あ、こちらを歩きましょう、シャオケル広場への通り道です。


アントはここで何をしていたんですか?

あぁ……ここの感染者の治療と、感染された人たちの心理ケアを手伝っていただいてました。

天災トランスポーターの誤りで、ヴォルモンド町は大峡谷が出現する前に回避できなかったんです、それで多くの損害を受けてしまいました。

アント先生はここから離れることもできたんです、でも彼女は残ることを選びました、彼女はヴォルモンドが現在地に停泊したあと臨時医療拠点を立てたんです、感染者たちをよりケアできるように。

アント先生は……ここの感染者たちにとっては女神なんです。

……彼女は当然のことをしたまでです。

うん、そうね、座学より、彼女はやっぱり実践のほうがお似合うね。

……

……ふふっ、そうね、まったく、彼女がドヤ顔してるところが目に浮かぶわ。

フォリニックさん、ヴォルモンドに来てから初めて笑顔を見せてくれましたね。

……そうですか?

今日のフォリニックお姉さんはほとんど怖い顔をしていました。

はぁ……

前に……前に人がたくさんいますよ、ここらへんの人たちがみんな集まってきたんでしょうか?

……放っておいていいのですか?

一か所に集まってるだけですし、逮捕する理由にはなりませんよね?

こっちを見てきました……

……

……

急に静かになりましたよ?

……いや、何かおかしい……彼らは誰か話しているのを聞いている?

え?

彼の後ろに、集まりの一番後ろにいる人って――


あれは、サルカズ……?

サルカズ?

フォリニックお姉さん!

わかってる!誰かが突っ込んできてる!ねえ、あなた、ちゃんと自分のことは自分で守ってください!

は、はい!
