
こ……これは……

……

ロドスの物資箱で間違いないわね、番号と、日時が書いてある。

……前回の定期連絡の時に、私自ら送った……

……

フォリニックお姉さん……

火災はどのように起こったんですか?

事故――と本来はそう決定づけられていました、しかし……

しかしここに明らかにアーツの痕跡が残っています、アント先生はすごく真面目な人でしたから、危険な可燃物を置いてくはずがありません。

私たちでも明らかな発火原因は見つけられませんでした、テントの金属ポールも融けてました、死体すらも……

あ……

……大丈夫、続けてください。

遺体の状況分析の結果、被害者たちはほとんどテントから離れることができませんでした、足掻いてた痕跡もありません、おそらくは一瞬だったのでしょう。

私はアント先生や患者たちが普通の火災で簡単にやられるなんて思っていません……アーツによるものを、除いては、炎は一般のものとは違って、おそらくはある手段に頼って瞬時に高温に達したものかと……

――ここに感染者は何名いましたか?

え?あ……町の感染者は三名です、ケヴィン、ヴィットマン、エックハルト、彼らはここで治療を受けていました、それと……

……

それと……トール、トールヴァルトも。

彼は長官の一人息子で、私の昔からの友人でした……彼は感染者ではありません、ただ手伝いしに来ただけなんです、善意による。

……タジャーナさん、つらいのでしたら、吐き出したほうがスッキリしますよ。

え?

私感じるんです、ここには悲しみに満ちています。

ここには……ここにはたくさんの悔しさ、楽しさ、苦しみがありました、でも今はどれも消えてしまっています。

それって……それも何かのアーツなんですか?

いいえ――ただたくさんこれらの感情を見てきただけです、皆さん自分の思いを隠したがっていますけど、良くないですよ。

私の思い過ぎなのかもしれません、でも、自分に無理をしてしまったら、周りの人に心配されちゃいますよ?

泣いてもいいんですよ、誰だって同じ気持ちですから。

うん、ありがとうございます、私自身もわかっているんです、でも今はまだ……気を緩めてはいけませんから。

うん――

……わ、私を見ないでよ、わかってるよ、心配しないでリサ。

うん!

えっと……その、ごめんなさい!

へ?どうしたんですかいきなり……?

……私はロドスから出発するときに覚悟はしていました、アントはとてもまじめな人だから、時間もいつもきっちり守っていた。

オペレーターと音信不通になることが何を意味するのか分からなかったわけじゃない、ロドスは今までこういった別れを何度も何度も経験してきた、私はただ信じたくなかっただけ。

ふぅ……つまり、その、さっきは気持ちを抑えれなかった、本当にごめんなさい。

この謀殺で何かを失ったのは、ロドスだけじゃありませんもんね。

……八体の遺体は全てチェフェリン長官に持っていかれました。

町には感染者処理の専門家がいませんので、彼らを埋めてあげることしかできません……

彼はヴォルモンドと共にいることができないんです、彼らは町の外にある廃土に埋められます、ヴォルモンドがここを離れれば、永遠に故郷を失ってしまう。

本来、私たちの伝統に則れば……少なくともこうはしなくていいんです……

そういうことなら……よく見かけます。

八体の遺体?

八体です、さきほど話した五人以外は、おそらくここで治療を受けていた流浪人かと思われます……

大峡谷が崩壊する時、ヴォルモンドは完全に退避することができませんでした、そのため周辺の多くの商人や、旅人も天災に巻き込まれてしまいました。

その後、ヴォルモンドの状況が日を追うごとに悪化してたとしても、廃土を辛うじて進むこの町の後を追いことしか、彼らには方法がなかったんです。

その間、難民の集団も変化していきました……けどアント先生はみんな同じように扱ってくれました、彼女は助けを求めている人に限りなく手を差し伸べくれてたんです。

だから、非感染者が一名、感染者が七名というわけですね……

感染者の遺体はどうしたんですか?バイタルが停止した数分から数時間内、体内オリジニウム融合率の割合次第で、二次拡散の恐れがあります、専門的な処理をしなければすごく危険です。

あっ、その、チェフェリン長官は感染状態が比較的軽いと判断し、高温で瞬時に遺体を焼却したため、危険はないと……

……専門人員がいないと言ったはずなのでは?

えっと、チェフェリン長官はご自身の経験で判断してただけで、十分に把握しきれていないと言っていました……

経験……どういう仕事をしたら感染者の遺体処理を経験できるの……

でも、そうね、肉親が亡くなっても冷静に保たれるのなら、彼は上っ面だけの男ではないということね。

戻って各感染者の遺体を検査したいです……アントにも会いたい。

もちろん大丈夫ですよ、私が長官に説明しておきます、でもほとんどの遺体がかなり炭化しており、私たちでは判別できません……

大丈夫です――

あ――!

リサ?

このタグは……

あ……アントのIDカードね、焼かれていなかったなんて……

……そうだったわね。

彼女は仕事の時、いつもカードが邪魔だって文句を言ってた。おかしいな話よね?ほかのみんなは首に掛けているのに、一体何が邪魔だっていうのよ……

行きましょ、彼女に……彼女に会いたい。
(爆発音)

爆発音――?

町の――町の方角です!

フォ、フォリニックお姉さん!誰かが近づいてきます!

……ん?

あ、そのロゴは……ロドス……?いつの間に……

その装い……普通の感染者ではないようですね。

リターニア人?それとも前に話していたサルカズ人ですか?

……彼らは身元不明のサルカズ人をリーダーとした、ここ最近町の周辺に出現するようになった感染者の武装集団です、現地の多くの感染者も接収されてしまいました……

自称――「マドロック小隊」です。