
うぅ……

ここは……

うっ――!

(ひどいめまいっ……!視力と……聴力は……問題なさそうね。)

(足首は……感覚が無くなってる。)

(……すごい静か、ほかの皆さんはちゃんと避難できたのかな?)

(……)

(本当にすごい静か……待って、敵は私をここにほったらかしにしただけなの?)

……目が覚めたのね。

イヤア――!?

……そんなに緊張しないで。

あ、ごめんなさい!突然だったのでびっくりしちゃって――

あれ?あ、あなたは?確か、ロドスの――

オペレーター、グレースロート。

静かに、ここら辺の反乱者はもう片付ておいた。

片付けたって……

……こんな事態でも、あなたは彼らを敵と思いたくないのね。

安心して、命に別条はない、あとのことはチェフェリン・ホーソーン長官に任せてあるから。

……ありがとうございます。

あ――フォリニックさんは――

彼女も無事よ、ほかのオペレーターが助けに向かったから、ただ……

アントは本当に……犠牲になったの?

……はい、本当にごめんなさい。

だからフォリニックはあんな様子なのね……

数名のオペレーターだけではこの地区を治めるのは不可能です、先にダウンタウンに戻って、作戦を組み立て直しましょう。

そうね、歩ける?足をケガしてるけど。

あ……試してみます、痛ッ……

ほらっ、手を貸して。

ありがとうございます……

――あともう一つ質問があるんだけど、タジャーナさん。私がアントの付き添いでここに来た時、ヴォルモンドはまだ栄えてた。

でもどうして今のヴォルモンドには、正規の憲兵が一人もいないの?
(斬撃と殴打する音)

うっ!

武器を下ろせ、自分を見て見ろ、ロクな装備も持っていない、そんなんで戦えるとでも思っているのか?

お前らよそ者に、一体何がわかる!あんな貴族の犬どもに手を貸して、お前らになんのメリットがあるっていうんだ!

……メリットなんてない、あなたたちの政治にもなんの興味もありません、ただ聞きたいのは……あなたは冬霊人ですか?

冬霊人――?ハッ、俺はあんなろくでなしじゃねぇ、あいつらの抗争は認めているがな!

お前らはどうなんだ?アント先生は確かにいい人だった、だがお前らはどうだ?お前らはあいつらに塩を送ってるだけじゃねぇか!

ヴォルモンドは――いや、このリターニアは腐ってやがるんだ!今日のあいつらは火を放って感染者を殺した、明日は貧しい連中を焼き殺すつもりでいるんだぞ!

……

証拠はあるのか?

――ヴォルモンドには憲兵が一人もいない!一人も!いないんだ!

どうしてかわかるか?

ヴォルモンドは周辺の町と組み合わさって一つの集落を形成している、天災が起こった時、全ての町の面倒を見るには憲兵の数が足りない――

んなわけねぇだろ!もし本当にそんな普通な理由だったら、不満が爆発するわけねぇだろ!?

――時間稼ぎをしても無駄です、言うの、言わないの?

――フンッ。

ある婚礼のせいだ。

……婚礼?

塔に居座る大貴族がもう片方の貴族の女性を娶った、それで全ての憲兵が近くの移動都市に出向させられたんだ!

貴族どもの酒池肉林がどれだけ続いたか?お前にわかるか?

……

そうだ、それとだ、貴族どもはどちらが移動都市を移動させもう一方の領土に顔合わせしに行くか、一か月もの間言い争っていたな――

俺たちの憲兵隊はそんなことで貴族の邸宅周囲に押し固められてるんだ、メンツと名義上の安全のためだけに、滑稽だろ?笑えるだろ?

――クスリとも笑えるわけねぇだろうが。

確かにちっとも笑えませんね、でもまだ火災についての手掛かりを聞いていませんが。

フン……

……お前、感染者を治療してる医療キャンプを燃やそうとするやつがいると思ってるのか?感染者が燃やしたとでも?

]感染者を辟易してる連中があんなことをするんだ、お前が信じるべきは俺たちのほうだ――

――「レユニオン」を信じるべきだ!
(爆撃音)

長官!反乱者たちは投降の呼びかけに応じてくれません――!

彼らの人数はそれほど多くない……

この災難の本当に恐ろしいところは、双方兵士でもなんでもなく、ただの一般市民であること。

全力で最悪の事態を避けなければいけない。

グレースロート先輩!タジャーナさん!お帰りなさい!

……そしてこの事件を起こした主犯に一切の代償を支払ってもらう。

タジャーナ!

伯父さん……ごめんなさい、ミスを犯してしまいました。

……いや、無事ならなんだっていい。

オペレーターフォリニック……あなたも無事でよかった。

グレースロート……そうよ、あなたはアントに付き添ってヴォルモンドに向かった、憶えてる……

今何が起こってるか知ってますか?

……大方は。

あなたは……あなたが彼女の傍にいてあげれば、この悲劇は避けれたと思いますか?

フォリニック、よせ――

できない、ヴォルモンドは外部の力では解決できない多様な矛盾を含んだ難題を抱えている、私たちではどうしようもできない。

……

……でもせめて、彼女の傍で全力を尽くせてあげればよかった。

ごめんなさい、一緒にいてあげられなくて……

いいえ……はぁ、自分の気晴らしのためにあなたを責め立てるなんて、私は一体何をやってるんだか……

謝るべきは私の方なのに。

……ロドスの諸君。

先に感謝を伝えさせていただきたい、タジャーナを救ってくれて本当に感謝する……

……ロドスは、感染者救助を理念とする組織ですから。

チェフェリン・ホーソーン、リターニアが長らく行った措置は確かに人々を散漫させた、だとしても、私たちが正式に行動を開始する前にあなたに質問をしなければなりません――

あなたはヴォルモンドの代表として、ヴォルモンドが特殊事情下で、感染者に「規定外の措置」を取っていないと保証できますか?

……ミス・スズランと君の調査がその証左だ。

ヴォルモンドは決して感染者をぞんざいに扱う意思はない、決して感染者を救護してくださったアント医師を恨んだりなどしていない。

これで満足してくれるか?

……

フォリニックお姉さん、チェフェリン長官を信じましょう。

なぜだ?

えっと……その……まだ言えません!でも私は彼を信じてます!彼は感染者を辟易するような人ではありません!

リサ……わかった、しばらくはあなたのその態度を信じましょう。

ご理解感謝する。

それと、次はどうすればいいのか、諸君の意見を伺いたい。

……私の現場状況への理解度はオペレーターフォリニックには及ばない、作戦任務の時は、オペレーターフォリニックの指示に従う。

彼らの、人数はそれほど多くない。

ほぼ制圧に成功したこの人たちも、ただの野次馬に過ぎません。

平時のヴォルモンドからすれば、百人程度の暴徒などどうってことない……

憲兵に関することで、興味深い噂を耳にしました。

――あれは私の従軍人生の中でも数えるぐらいしかない呆れた決定の一つだ、変えられない事情を今は置いてもらって構わないか?

話の最中にすまない、例の噂の捕虜の話を教えてくれないか、「レユニオン」を自称しているあの捕虜だ。

え?

……私たちはかつてある単独行動していたレユニオンと接触した、彼は各種原因で憤ってる市民とは、完全に比べ物にならない。

彼は凄腕の歴戦の戦士よ、もし彼みたいなやつに小隊を持っていたとしたら、とてつもなく厄介になる。

あの武装集団か……悪いニュースだ。

……レユニオン……

チェルノボーグ……ウルサス……あぁ、またウルサス……

あの忌々しい名を一文字たりとも口にしたくないわ!

……

あの火災は全ての導火線だったんだ、現状を鑑みれば、衝突する可能性が大きすぎる。

これらの問題があの火災を引き起こしたのか、それともあの火災がこれらの問題を暴露させたのか、果たしてどっちなんだ?

私たちは……私たちはもう争う選択肢しか残されてないのでしょうか?

……これはヴォルモンドの命運を決める選択になる、そんな粗雑な決定で数千人の命を翻弄するわけにはいかない。

先に議事庁に戻って正式な決議を出すべきだ。

だが……どうやら相手はそんな機会を与えてくれないようだ。

……彼らが本当に「レユニオン」ならば、手加減はいらない。

……

……わかった。でもオペレーターフォリニック、あなたはここでケガ人の治療に専念して。

私がこの手であいつらを――

リサは、スズランはまだ正式な医療オペレーターではない、正式なのはあなただけ。

あなたが優先するべきなのは無関係な民衆の保護よ、敵を潰すことじゃない。

私は……

フォリニックお姉さん、どうかここに残ってください。

フォリニックお姉さんが恨み任せで戦ってしまえば……もうフォリニックお姉さんじゃなくなってしまいます。

……わかりました。

では、あなたたちにお任せします。