チェフェリン、天災トランスポーターのヴィットマンの全資料を要求します。
ヴィットマン……?なぜ彼を?
あるお爺さんが、暴動の中ヴィットマンが指揮していたのと、動力炉を壊したのを見たと話してくれました。
……お爺さん?そんなの信用できるのか?
彼は自分を最後の「冬霊人」だとも、言っていました……
……か、彼はまだ生きていたのか?いや、偽物を装っているのかもしれんぞ。
ああいう人は嘘をつきません……私の直感頼りですけど、でも、彼は嘘はついていないと思います。
これは彼の日記と、所持していた短刀です。証拠となると思って、勝手に……
だが彼は……
思いもよらなかった……彼とその他連中はもう……自ら命を絶ったのだと思っていた。
いずれ会おうと思っていたが、わ……わからなくなってきた、私は彼に会いに行くべきなのか?
お爺さんは私にたくさん話をしてくれました、事件の首謀者は冬霊人ではないことも。
お爺さんはあなたのことを恨んでいたりしていませんでしたよ。話をしているときの彼は、とても落ち着いていましたから。
理解できないわけではない……だがあの反乱者たちは確かに「冬霊」を自分たちの略奪の口実にしていたのだ。
それはただの言い訳――
たとえただの言い訳だろうと、やつらが暴力を振るったことは事実だ。そしてやつらは次に、穀倉の公開を要求してきて、何もかも綺麗さっぱり奪い取るつもりなんだ。
何より冬霊の血脈はとっくにヴォルモンドの住民と混ざりあっている、今更……ゴホッゴホッ……
言い訳がどうであれ、向こうが己の命運を握っているとは到底信じきれん。
死んでいたはずの天災トランスポーターが、実はまだ活きていて、全員を騙して、反乱を煽動した。
事件の全ての点をつなぎ合わせれば、彼が黒幕である可能性が一番高い。
……ああ、それで全ては繋がる、もしヴィットマンが本当に生きていればな、彼は確かに反乱を煽動し得る人物だ、ヴォルモンドが飢饉に直面していることも知っている。
その動機は?
……大峡谷だ。
天災が発生したあと、大多数の人が町の損害原因は彼にあると言っていた。
たったの数か月間、彼に対する大きな暴力事件が最低でも七回は発生した……細かいものも入れれば、詳細は計り知れない。
事件の後、彼はほとんど引きこもってしまった、酒に溺れ暴れ始めた、アント先生が……彼の家の扉をこじ開けたまでは。
こ、こじ開けた?
アント先生は苦境にうずくまってるヴィットマンに救いの手を差し伸べてくれたんだ、その後、ヴィットマンは常にアント先生の仕事を手伝うようになった。
聞いてる分には……いい関係っぽい?
表ではそう見えたかもしれん、私が彼を疑わなかった理由でもあった……だがヴィットマンは元から陰鬱なやつでな、アント先生の傍で手伝っていた時でさえ、笑ってるところは一切見なかった。
理性的な町民や私は彼の仕事に理解を示していたが、しかし……彼が私たちに報復するための口実を得るには十分だった。
感情面から見れば、彼の報復動機は疑いようもなく道理に適ってる、もちろん、何かの説明になるわけではないがな。
誰にでも、ほかの誰かを報復するための思念や理由を持っているのだよ。
……報復、また復讐ですか。
それと……さも自分には無関係みたいに話さないでください。あなたは以前確かに、ヴィットマンは死んだと言いましたよね。
あなたは死者の身元確認の職務を疎かにした上、この事件発生の可能性すら疎かにしたのですよ。
まだヴォットマンが生きていると決まったわけでは――ゴホッゴホッ――ゴホッゴホッ――
大丈夫ですか――
――いや、ちょっと待て。
なぜ外のわめき声が止んだ?
長官!
町民たちが勝手に動き始めました、彼らは、彼らはドデカフォニー通りを包囲するつもりです!
ふざけるな!早くそいつらを阻止しろ!
こちらはまだドデカフォニー通りに何が隠れ潜んでいるのかすら分かっていないんだぞ、万が一その「レユニオン」がすでにそこに潜り込んでいたらどうする?
で、でも皆さんすごく興奮しています、まったく話を聞いてくれません――!
「レユニオン」の情報もどこからか手に入れてしまいました……!
チッ……煽動させられるばかりのアホ共め!
町の騒がしくなったな。
それだけじゃない……誰かにここを見つかってしまったようだ。
民兵を組織して町外捜索に乗り切る決心がついたということは……向こうはもうすでに開戦するつもりがあるということだな。
……町の連中にここがバレた、オレたちを焼き殺すつもりだ。
……焼き殺す?
アーツ習得はあいつらの義務教育だからな、車夫だって扱える、火を放つぐらい、あいつらにとっちゃ簡単なことだ。
……ここももう長くない、もしかしてロドスの連中が引き連れてきたのか?
……いや違う。
むしろ思うのは……町の憤ってる人たちは、俺たちを首謀者に見立て、大罪を犯した極悪の感染者と見立て、駆逐するともりなんだろうな。
ただそう思ってるだけなんだろう。
……マドロック。
忘れるな、オレたちの仲間はこの町で亡くなったんだ。
お前の選択は尊重する、だがお前はまだ若いんだ……このことが何を意味するのかまだ分かっていないんだ。
ただ分かってほしいのは、オレたちはそんなお人よしじゃないってことだ。
……一旦手を出してしまえば、都市から追い掛け回されてしまうぞ。
逃げ回っても、放火した殺人犯、反乱を挑発した、町を強奪した犯人にされてしまうんだ。
結局のところ一緒じゃないか。
……
普通のサルカズのやり方に従えば、簡単だ、この町を壊してしまえばいい、全て壊す、難しいことじゃない。
一番厄介な都市防衛設備や、自律アーツユニットは、すでにあいつらの内輪もめで使い物にならなくなった。
お前が「やれ」と言ってくれれば、この月は永遠に冬霊山脈の荒野に留まる、ここに春は……二度と来なくなる。
……今年の冬は、長引くなぁ。
さあ、心を決めろ、マドロック。
私たちの住処を取り戻せ!感染者と賊どもをここから追い出すんだ!
武器を配れ!男は全員受け取るんだ、アーツに自信があるやつはみんなここに来てくれ!
なんだなんだー?なんか戦争でもする感じなんだけど?
そうね、ほぼ戦争で間違いない。
うわあ!もうグレースロート姉、毎回急に現れるのやめてほしんだけど?
少なくとも彼らは……戦争だと思っている。
一体何が起こってるの?ほかのオペレーターたちの状況はどう?
……あまり良くない、この攻勢はどうやらチェフェリンの決定ではない、もう制御できなくなり始めている……
フォリニックがある手がかりを見つけたって言ってた、この写真を見て、写真の男の名はヴィットマン、最重要容疑者の一人よ。
エアーズカーペはもう単独行動を始めた。いい?この人の位置をマークしておいて、この叛乱の首謀者の可能性が高い。
人探しだね!任せて!
――レユニオンのほうはどうなってるの?
彼らは小さい廃村に居座っているよ、毎日人の出入りはあるけど、でもあのデカブツに動く気配は見当たらなかったかな
あっ……でもアタシが道を探していた時、何人か町の外で巡回しているのを見かけたけど……
もしかして……
な、なんだありゃ――!?
石?石で出来た巨人?は、早くアーツを使え――火なんか使ってどうする!火が効くわけないだろ!
ほかのアーツを扱えるやつはいないか!?早く、あれを止めろ!あのバケモノを止めるんだ!
(爆撃音)
ダメだ、まったく効いてないぞ!
これだから劣等生は――あれに生命はない、アーツで固められた巨大な岩石にすぎないのよ!
先に操縦者を探し出して、そして「蓄音機」を奪い返す!それであれをやっつけるのよ!
(爆発音)
そう簡単にやられてたまるかよ!?
諦めろ!目をこじ開けてよく見ろ、誰が俺たちをここまでさせた、誰がヴォルモンドをこんなに廃れさせたんだ!
(戦闘音)
正しく貴様らじゃないか!クソ冬霊人め!感染者とつるんで町を奪いに来やがって!
アホかてめぇらは!脳みそ音楽と芸術しか詰まってない能無しどもが!ヴォルモンドがもうじき終わるのがまだわからないのか!
分かっているとも、町を貴様らに引き渡してしまったら、すぐに終わってしまうことをな。
チェフェリンはてめぇらにに穀倉の備蓄状況を公開してやったか!?いつ正規航路に戻れるか教えてくれたか?ないだろ!俺たちに希望はもうないんだよ!
(爆撃音)
あんた達みたいな連中が、私たちの住処を破壊したからでしょう――!
違うな!てめぇらみたいな偉そうにしてる貴族の旦那様方が俺たちを崖っぷちにまで追い詰めたからだ!
それがあなた達が好き勝手凶行を働いた理由!?
(戦闘音)
――
フォリニックお姉さん!彼らを止めないと!
犯人の手掛かりをもう掴んでいます、もう以上お互いを傷つけさせてはいけません――
彼らを説得させましょう、議事庁に向かってくる人たちを止めましょう、それに……それに彼らはロドスの事情も分かってくれていますから、きっと何か方法が――
フォリニック……お姉さん?
どうして……私の手を引っ張ってるんですか?
……
早く彼らを止めないと――
……(黙って首を振る)
……フォリニックお姉さん……?
戦場で、命は瞬く間もなく散っていく、時は容赦なく過ぎ去っていく、言い争いや罵詈雑言を投げ合う余地などない。
彼らはお互い何を争っていたかすら忘れてしまった。
みんな何のために戦場に足を踏み入れ、命を無駄散りしているのかをわかっていない……
そうね……武器を取った後も、心に理想を思い描ける人なんて、ごく少数しかしない。
今、私の目の前で、彼らは戦っている、相手を殺そうとしている、大声で汚らわしく相手を罵り、呪い、貶し、責任を押し付け合っているじゃない。
滑稽ね。
……行こう。
その顔……あまり乗り気じゃないな。
乗り気じゃない……?俺たちは最っ初から……いや、ヴォルモンドに足を踏み入れた時から、もう何を言っても無駄か。
……俺たちは火災で感染者を四人失った、俺はできるだけ止めに入ったが、でも今は、ほかの感染者に……態度を示さなくてはならない。
でなければ俺たちはすぐに散り散りになってしまう、いや、怒りと欲に安寧は得られない、あのころに戻ってしまう可能性だってあるかもしれない……
お前って本当にレユニオンが嫌いなんだな。なんだって当時入ったんだ?
……そりゃあ……
まあいいや。
戦場に行くぞ。