ここにはきみの欲しがってるすべてがある。
ひと時の安寧、争いのない大地、母の抱擁。
きみの意識は無限に拡張し、きみは縛り付けている鎖から抜け出した、きみは自由になった。

・自由とはなんだ?
・自由になった!
だがきみは正真正銘自由になった。
きみは時間という大河に流れる一粒の石のように、それはきみの責任や、宿命、欲望、人とのつながりを流してくれる、だがきみ自身は、永遠にここに残り続けるんだ。
きみは如何なるものも手に入れなくなる、如何なるものもきみを手にすることはない。

・これ以上に素晴らしいことはない!
・責任、宿命、欲望、人とのつながり……
あるいは、きみはただ衝突によって昏迷状態に入ってしまい、瞑想状態の自分と無意味な会話をしているだけなのかもしれない。

・私はここに自分の王国を建てる!
・いや、後悔してるんだ、私は苦痛のほうが好きなんだ。
【私はここに自分の王国を建てる!選択時】
素晴らしい選択だ、私の国王よ、ここは大地よりも広大だ、ここできみが望むすべてを創り上げることができるだろう。
ならまず、先に国を建てよう、国の名前は存在国というのはどうだろうか?
虚無の上に建てられたこの国は永遠に滅びることはないだろう――
おっと、クソ、どうやら私たちの偉業はここで中断しなければならないようだ。
窓に差し込む一筋の光のように、強烈な疲れと痛みが瞬時にきみの全ての意識を占有する。
【いや、後悔してるんだ、私は苦痛のほうが好きなんだ。選択時】
きみは苦痛が好きだ、捧げるのが好きだ、己を犠牲にするのが好きだ、自分を傷つけるのが好きだ。
賢明な人ならいつも正しい失敗を望む、歯止めの効く損失を求める、そうすれば自分たちを最も効率よく成長させれると思っているからだ。
傲慢はよくないよ、私の虚無なる書記よ。
そうだな、ならはじめに、きみが最も好む苦痛を与えてあげよう――
きみの全身の筋肉に、極度な痛みが伝わってくるはずだ。
兵士よ、きみは無数の苦痛を味わった、無数の失敗を目にした、その中にきみを楽しませてくれるものなんて数えるほどしかない。
だがきみをここまで連れてきたのがまさしくそれらだ。それらは毒薬だ、鎖だ、きみから安寧を奪っていくものたちだ。
あるものはもう挽回することはできない、あるものはきみが背負いこむ必要がなくなったのだ。

・君の言う通りだ、そろそろ休もう。
・いや、私を待ってくれてる人がいるんだ。
【君の言う通りだ、そろそろ休もう。選択時】
わかった、愛しい人よ、その通りだ。
さあリラックスして、きみのために子守唄を唄ってあげよう、きみは永久に眠り続ける、いかなる邪魔すら入らない。
ああ、だが、眠りに入る前に、強烈な感覚が突然きみを襲い掛かる――苦痛だ!
【いや、私を待ってくれてる人がいるんだ。選択時】
ああ、そうだな、そうとも、あの子らはいい子だ。
でも考えたことはあるか、きみが居なくとも彼らは進み続ける、きみは彼らに責任を負っていないんだ。
きみの責任、きみの宿命、きみの欲望、きみと彼らのつながりは、すべてきみの妄想なのではないか?
……わかった、決心はついてるんだね、なら、きみにサプライズをやろう、そうだ、きみの最も好きな苦痛を与えよう!
きみの全身の筋肉に、極度な痛みが伝わってくるはずだ。
そのあとに聞こえてきたのは、はるか遠くに感じるが耳慣れした声だった。

……タ―、ドクター!
アーミヤ?いや、違う、アーミヤよりも大人びた声だ。

こんなに長時間寝込んだのにまだ起きねぇのかよ、めんどくせえなあ。
(殴打する音)
……それと暴力。
自分の顔面に衝撃を数回くらったのを感じた、どうやら相手は有言実行な優秀な人物らしい。

どうする、これでも起きねえな、どうせアーミヤはいないんだ、ドクターを掴んで大風車でもやってみるか。

だいふうしゃ?面白そう、おいらもやりたい!
相手はどうやら過激な手段に移るようだ、それに挟んできたもう一つの声には、純粋さを帯びていた。
この場合における純粋という美しい特質が意味することとは、彼女は本気ということだ。

・いやだ、私は戻る!
・目を開く。
ああ、残念だ、ある種の旅はきみの意志によって決められるものでは無いんだ、きみはもうこの旅に踏み込むチャンスを失ってしまった。
だが緊張するな、チャンスならまだいくらでもある。今は、ともに目を見開こう……

ガヴィル、だいふうしゃってどう遊ぶの?

大風車ってのは、自分が相手の足もしくは腕をつかんで、回りだすんだ。

そろそろかなーって思ったらそいつを投げ出す遊びさ。

なんかすっごく面白そう!やってみてもいい?

いいぞ、アタシがドクターを受け止めて……ん?

ドクター、やっと目が覚めたのか?

あっ、ドクターが起きた!

ケーちゃん、ドクターが目覚めてすぐ飛び掛かるのはよそう、また気を失うかもしれない。

うん、ごめんね、ドクター!

・二人とも大丈夫か?
・……
・さっき私にビンタしなかったか?

大丈夫だ、あれぐらいの高さ、どうってことない。

おいらも平気だよ!

おいおい、嘘だろドクター、まさかまた記憶が吹っ飛んだじゃねぇだろうな?

・記憶を失くした。
・お姉さん、だれ?
【記憶を失くした。選択時】

ドクター、忘れんな、アタシは医者だぞ。
【お姉さん、だれ?選択時】

冗談を言えるってことは、問題はなさそうだな。

した。

とりあえず、ドクター、アタシが簡単に状況を説明するよ。

簡単に言うと、墜落した。

すごーく高いところから落っこちてきたんだよ!ヒュ――!ボーン!ってね。

・もうちょっと詳しく。
・……
・簡単すぎるだろ!

チッ、わーったよ、とりあえず、ドクターは運が悪かったな、アタシらが攻撃を受けたときちょうどお前の座席の近くで爆発が起こったんだ、爆発で吹っ飛ばされて壁にぶつかって気を失ったってわけだ。

だが安心しろ、お前の傷はもう手当してある、大した傷じゃない、それにロドスに来たばっかの時より、体質が結構良くなってんじゃねぇか。やるな、ドクター。

うぅ、ドクター、ごめんなさい、おいらがドクターを受け止めるべきだった、でも爆発音にびっくりしちゃって……

お前のせいじゃねぇよ、まさか、アタシもあの連中が対空武器を持っていたなんて思いもよらなかった。

・つまり前から攻撃されるということを知っていたのか?

ああ、言ってなかったか、アタシの実家に連中はみんな戦闘狂なんだ、みんなアタシには敵わないけど。

ほかの人たちは?

墜ちてるときに、高度をコントロールするとかなんとかで、先に途中で飛び降りたぞ。

お前を守るために、アタシとケオベは最後に飛び降りたんだ。

ああそうだ、Lancet-2はたぶんまだ飛行機に残ってると思う。

その飛行機はどこに?

見間違いじゃなければ、あっちに墜ちたかな、ほら、あのあそこの山の斜面んとこがたぶんそうだ。

先に見に行ってみよう。

わかった。

見ろ、アタシらの飛行機だ。

うお、煙を吹いてるぞ、どうやらもう使い物にはならないな

でも見た感じ修理すればなんとかなりそうだ。

ドクター、ガヴィル、飛行機のとこに人が!

ん?あれは……

私に近寄らないでください、私にはロドスの資産を保護する義務はありますが、その前にただの医療ロボットにすぎないんです、うぅ……

おい、このロボット喋れるぞ。

ああ、まさか空からこんなすげーロボットが降ってくるなんてな、中にまだ喋れるロボットがいるかもしれねぇ。

おい、もしかしたら、中に人が入ってるんじゃねぇか?

さあな、こいつも持って帰ろうぜ、きっと首長も喜ぶはずだ。

そりゃいいな、お前ら、こいつも担いでいくぞ!

助けてください――

やめろ!

……&%(なにモンだ!?)

アタシらのモノを奪うたぁ、良い度胸じゃねぇか!

……¥%%#(これがお前らのものだって証明できんのか、こいつは空から降ってきたものなんだぞ!)

!@#%……&(そうだ、俺たちが先に見つけた、だから俺たちのモンだ!)

チッ、確かにその通りだ。

ガヴィル、彼らはなんて言ってるんだ?

ん?ああそうだった、ドクターがアタシらの言葉わからないのすっかり忘れていたわ。

ここもサルゴンだけど、ここの人たちは普通のサルゴン語を話さないからな。

じゃあこうしよう、お前に話しかけてるのがあったらアタシが代わりに通訳してやるよ。

そのほかの時はなんとなく察してくれ!

……&*#(コソコソなに話してやがんだこのヤロー!)

アタシらが話してんのは、それがお前らのモノなんだったら、お前らを全員倒してしまえば、アタシのモンになるって話だ!

&&……!(なんだとぉ?この女ふざけたこと言いやがってぇ、お前ら、やれ!)